艦これの進め方   作:sognathus

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物欲を満たす、より前に
『女』に近付く時が来た


22:購買欲

提督は艦娘達を集めるとタブレットの使い方について説明した。

説明を受けた彼女達は最初こそタブレットのディスプレイの色鮮やかさ等に驚き目を見張っていたが、見た目通りに若さを活かした力に偽りはないらしく、指先を使うタップから始まる基本操作等を提督も感心するほど早く覚え、順応を示してみせた。

 

「本当に不思議……。この表示されている小さな絵、私の指にくっついて一緒に動くわ。どんな仕組みなのかしら」

 

「五十鈴さん次僕! 僕にもう一回やらせて!」

 

「皐月、順番ですよ。五十鈴さんの後は川内さんです。軽巡の方が終わったら駆逐艦(私達)の番です」

 

「大淀さんはいいの?」

 

「私は皆にも教えるために一足先に提督から操作の仕方だけは教えてもらったのよ。ありがとうね霞ちゃん」

 

「鳳翔さんや加賀さんはいいわけぇ?」

 

「あの二人は今日はまぁ……な。電と川内はもういいの?」

 

「はい。電は大体解ったのです」

 

「私も。まぁ面白くはあったけど、提督はこれを私達に使わせて何をやらせたいの?」

 

提督は川内の質問に「まぁ待って」とだけその場では言うに留め、皆が一通り落ち着いて操作できるまで暫く待った。

そして最後に遅れて部屋に来た明石がキラキラした目で「有難うございます! 凄く興味深かったです!」とタブレットを提督に返した所で彼は目的の話を始めた。

 

「皆にはこれからこれを使って買い物をしてもらいます」

 

「?」

 

流石にこれには皆の想像力は敵わず彼女達の頭の上には総じてクエッションマークが浮かんでいるようだった。

 

「提督、これで買い物ってどういう事? もしかしてこれに見本の写真でも表示させて五十鈴達がそれを希望すれば提督が取り寄せてくれるのかしら?」

 

「賢い。流石対潜女王、良い勘だね」

 

「……まだ敵の潜水艦とは戦ったことはないけどね。それに女王って……。(おだ)てたって何も出ないわよ」

 

口では憎まれ口を叩くが提督の褒め言葉にはまんざらでもなさそうな反応を示す五十鈴。

その横では龍田が使い手がなくなったタブレットを再び借りて暇つぶしに弄っていた。

彼女はタブレットの画面に小さな印のような絵が幾つか表示されている事に興味を示した。

 

「提督ぅ? もしかしてこの絵が関係してたりする~?」

 

「良いね。龍田も賢い」

 

「あらあら~うふふ♪」

 

五十鈴に続いて自分も提督に直感を褒められて頬に手を当ててお礼の笑顔を龍田は返した。

羽黒はそんな二人を見て自分も何か発見をして提督に評価されたいと思い、思考をいろいろと巡らした。

 

(五十鈴さんが言ってた見本、龍田さんが言っていた小さな絵。うーん……なんだろ。これでどうやって買い物をするんだろ。司令官さんは五十鈴さんを褒めたけど、あの人が取り寄せる事自体は肯定していない。という事はやっぱり私達があれを使って……)

 

「注文……?」

 

自然と導き出した考えが羽黒の口から漏れたのを提督は聞き逃さず、彼は羽黒を指差して言った。

 

「合格!」

 

「えっ」

 

「羽黒の言葉が一番正解に近い。このタブレットは五十鈴が言ったように商品の表示が出来ます。そして龍田が言っていた絵……アイコンって言うんだけど、これをこう、二回タップすることによって……」

 

皆が見てる前で提督が言った通りにアイコンと呼んだ小さな絵を軽く二回叩くとそこから何やら沢山の文字と小さな写真が幾つも載った画面が表示された。

川内がそれを不思議そうに眺めながら提督に訊いた。

 

「提督、これ何?」

 

「これは店で言うところの入り口。朝潮、この画面の上の所の本とか服とか書いてある所、判る?」

 

「あ、はい」

 

「服の所をちょっと指で触ってみて」

 

「分かりました」

 

提督の指示に従って朝潮が言われた箇所を指でタップするとそこからまた「女性用」「男性用」といった分類を示すような文字が更に表示された。

提督はそれを確認すると霞に目を向けていった。

 

「霞、子供の……」

 

「は?」

 

「……婦人用の所を朝潮がやったように触ってみて」

 

「……」

 

提督が誤りに気付いたので霞は不機嫌な顔をしながらも素直に従ってその箇所をタップした。

すると……。

 

「!!」

 

表示された画像にその部屋に居た提督以外の女性が全員息の呑んで目を見張った。

そこには新鮮ではあるが、御洒落という言葉が相応しい服、綺麗な女性が着こなしている写真などが映っていた。

 

「提督……これ……」

 

画面に映っている光景に目を奪われたまま大淀が提督に訊いた。

提督は誰も自分を見ていなかったが一人頷いて言った。

 

「このタブレットそのものが店。そしてこうやって自分が興味がある物を探して……」

 

そこからは提督が未だかつて感じたことがないほど真剣な雰囲気が漂った説明会となった。

女性達はアカウント管理から始まる個別のログイン(入店)方法、どうやって品物を探すのか、どうやって最終的に注文をするか等、提督が話す一言一句を聞き逃すまいと真剣な表情で聞き入った。

 

「……という感じ。注文したら俺に使った分の金額の現金を預けに来て。ただし、いくら買えるからって一度にたくさん買ってしまったら、今の収納家具が少ない君らの部屋じゃ困るから……」

 

「了解しました!」

 

提督が買い物の心構えを説いていたのだが、途中で早く煌めく婦人の世界を開きたいという女性達の元気な声で掻き消されてしまった。

彼はその様子に今はこれ以上細かいことを言っても耳に入らないなと溜息を吐いて諦めると、最後に自分や他者に危害が及ぶ物は購入しない事と付け加えると、タブレットをギラギラと光る目で見つめる狼たちに放った。

 

後は提督がお茶を飲んでいる間、部屋の端の方から女性達の黄色い悲鳴が聴こえたと思ったら、急に黙り込んだりと、とても賑やかな状況が暫く続いた。

そんな音を聴きながら提督はお茶を飲みつつ―――

 

(多分急に静かになった辺りは下着のページでも見て、それと自分達が着用している物との落差にショックを受けたんだろうな)

 

―――などと思っていた。




次は三日目目……いや、提督のまったり回も良いかも

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