艦これの進め方   作:sognathus

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鎮守府に何かが訪れようとしていた……


26:黒い鳥

「て、提督! 大変です! 今、警戒任務にあたっていた子から報告があったのですが、鎮守府(ここ)に大量のカラスの群れのようなものが近付いてきているそうです!」

 

「へ?」

 

朝、提督が今日の予定はどうするか伸びをして考えているところに血相を変えた大淀が飛び込んできた。

 

「カラスの群れ?」

 

「そうです。もう大分近付いているはずなので窓からでも見えると思いますよ」

 

「えっ」

 

大淀の言葉通りに提督が窓から外を覗いてみると、確かに黒い鳥の群れのようなものが空からもう直ぐそこまで来ていることが判った。

 

「おお、何だアレ……。子供の頃アニメで見たことが……。あっ、ゲゲゲの……」

 

「何またよく解らない事を言ってるんですか。とにかく外に行きましょう」

 

 

提督が外に出てみると例の群れから明らかに生き物ではない大きな()()()がした。

鳴き声でなく飛行音という時点で最早提督にはそれが何か予想は付いたのだが、それにしてもと彼は少し呆れた顔で段々自分達の下に下降してくるそれを見ながら思った。

 

(あいつら一体どれだけ注文したんだ?)

 

黒い鳥の群れとは大量の荷を運んで来たドローンの大群であった。

鎮守府に所属している人数分の荷物にしては明らかにドローンの数が多い。

30機以上は飛んでいると思われたそのドローン達の中には複数のドローンで1つの大きな荷物まで運んでいるものもあった。

 

「マジかよ……」

 

提督はつい無意識に口からそう漏らしたあと、艦娘達から注文代として預かった現金を取りに執務室に戻った。

 

 

「わあぁぁ」と女性達の嬉しそうな声が鎮守府の敷地内で響いていた。

荷物はしっかり個人別に分けられており、自分の名前が印刷されたラベルが貼られた箱を見つけた艦娘はそれぞれ嬉しそうにそれを抱えて部屋に戻っていった。

大量の荷物の中から自分の荷物は何処だろうとワクワクした表情で探す彼女達の様は(さなが)ら宝探しの様相を呈していた。

 

(大きな荷物は多分家具だろうな。早速自分の部屋を彩り始めたか)

 

大きな箱を二人で運ぶ電と霞を見て提督はそう予想した。

見ると他にも同じような事をしている者がおり、提督は箱の形状からあれは化粧台かな等と予想しながらそんな彼女達の様子を暫く眺めていた。

そんな時にピピピという電子音を鳴らして後ろから提督に呼びかけるモノがいた。

 

「ん?」

 

提督が振り返るとそこには自動精算機らしきものを装着したドローンが彼を見据えていた。

 

(なるほど、こいつに払うのか)

 

提督がそのドローンに近づくとそれはガコンという音をさせて紙幣の計数ボックスを開けた。

彼がそこに札束を入れると精算機が自動で計数を始め、ものの数秒でそれは終わった。

精算機ドローンにのみ設置されたと思われるランプが赤色から緑色に変わったところを見ると、どうやら支払った金額に問題はないようだ。

ドローンは最後に精算機の領収書発行の部分のランプを点滅させ、提督に今回の注文に対する領収書の要否を尋ねた。

彼がそこで否のボタンを押すと、ドローンは全ての仕事は終わったとばかりに上昇を開始し、一緒に来た他のドローンの数が揃うまで待ち、やがてそれが叶うとまた何処かへと飛び去って行った。

提督は意味が無い事なのは解ってはいたが、今回の労をねぎらいたくて軽くドローン達に手を振ってその姿が見えなくなるまで見送ると、最後に残っていた自分宛の荷物を少し離れた所に見つけた。

彼がそれを拾おうと近付いていたところで偶然荷物の近くにいた加賀が拾い上げた。

 

「はい。これ、提督の荷物ですか?」

 

「ああ、うん。ありがとう」

 

「何を注文されたのですか?」

 

「それを訊くということは俺も加賀が何を注文したのか訊いても良いという事かな?」

 

若干セクハラめいた発言だと自覚しつつも、ちょっとした悪戯心もあって提督は彼女にその質問は拒否されると見越した上でそう言ったのだが、結果は彼の予想とは大きく違った。

 

「下着です」

 

「アッハイ」

 

「……?」

 

加賀は気にしていないようだったが提督にとっては会話の継続に支障をきたすのに十分な衝撃だった。

彼女は提督が逆に自分の質問に答えてくれなかったので、もしかして失言だったのではと不安な顔をした。

 

「すみません。何かお気に障りました……?」

 

「ああいや? うん、そうか下着か」

 

「はい。こう言うのも少し気恥ずかしいのですが、あの信じられないくらい繊細な意匠や色使いには高揚しました」

 

「そ、そう……」

 

(俺に言うこと自体は全く恥ずかしくないのか……)

 

「それで提督は……?」

 

提督の荷物は届いた荷物の中でも最も小さい箱だった。

彼はその箱を軽く掌の上で弾ませながら先程の気まずい会話を忘れる為にこんな話を持ちかけた。

 

「当てられたら加賀にも使わせてあげよう」

 

「む」

 

提督からの挑戦に加賀はちょっと楽しそうな顔をする。

どうやら受けて立つ気のようだ。

 

「小さいですからね……時計?」

 

「違う」

 

「回答は何回まで許されますか?」

 

「じゃああと2回にしよう」

 

「有難うございます」

 

提督の温情に感謝しつつ加賀は口元に手を当てて考える。

 

(あの箱に入る大きさで時計でないとしたら……コンパス、メモ帳、お猪口に……)

 

「ヒントを出そうか?」

 

「あまり答の核心に近いものでなければ」

 

負けず嫌いな加賀らしい言葉に提督は苦笑して頷くと、トントンと自分の胸ポケットを叩いて見せた。

加賀をそれを見て答は提督が常に持ち歩いている物だと悟った。

 

(男性が大体持ち歩きそうな物、という所かしら。ふむ……)

 

「……煙草?」

 

「正解。それじゃ正解したから加賀に一本……」

 

「要りません」

 

「だよねー」

 

加賀のキッパリした即答に提督は特に気を悪くすることもなく苦笑した。




今更ですが、毎回皆様から頂く誤字脱字報告に感謝致します
毎回というのがもうアレで致命的なんですが、そんな中でもご指摘を頂けていることにはやはり感謝しかありません
なるべく気を付けたいとは思っていますが、注意と文章力が足りない作者で誠に申し訳なく思いますm(_ _)m

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