艦これの進め方   作:sognathus

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羽黒が戦闘で……


36:鉄と拳

1-3はボスまでは順調に進んだ。

提督は前回と同じ様にスマホでマスの確認をしながら羽黒達が敵と遭遇する前に常に無難な指示をしていた。

 

 

「……今の所は順調ね」

 

「そうね霞ちゃん。でも、本当に司令官さんは凄いね」

 

「私もそう思います羽黒さん。朝潮、司令官の会敵予想には正直に感服です」

 

「前回もそうだったからねぇ。的確過ぎて頼もしいを通り越してちょっと不気味でもあるけどねぇ」

 

「不気味って……まぁ解らないでもないけど」

 

龍田の言葉に提督に気を遣いながらも同意する五十鈴。

確かに彼女の言う通り前回の出撃から今回に至るまで、提督の会敵予想における敵の編成は全て的中していた。

おかげで彼女達は効率的に戦闘態勢への移行ができ、予め気合を入れる等精神面でも助かってはいたのだが。

 

「そんな事どうだっていいでしょ! おかげでいちいち敵との遭遇に神経張り詰めなくていいんだしっ」

 

サブリーダーとして殿を務めていた川内が尤もな事を言う。

確かに彼女の言う通りなのだが、それでも的中が続く提督の予想は多少でも妙に思わないと気が紛れない者も居る。

その事も解って欲しくて五十鈴が川内に話しかけようとした時だった司令部より提督からの通信が入った。

 

『全員気を引き締めるように。間もなくその海域を支配する敵主力と遭遇する。気を付けろよ、今度は戦艦がいるからな』

 

以前からこの海域には戦艦が出ると提督が言っていたので、羽黒達は驚きはしなかったが、それでも間もなく実際に相見えるとなると全員にこれまで感じた事がない程の緊張が走った。

 

進軍によって割れた波の水飛沫を浴びる中、先頭の羽黒は目を凝らす。

提督の言った通り、程なく彼女はまだ僅かにではあるが、敵の艦影らしき影を幾つか発見し、その中に頭一つ背が高いものも認めた。

 

「……来る!」

 

羽黒はその背の高い影から一瞬光が発生したのを見逃さなかった。

敵戦艦の長大な射程の主砲は彼女の警告のおかげもあって先ず第一撃は全員が回避できた。

だが彼女達が回避成功に息を吐いたのも束の間、今度は他の軽巡らの砲撃が襲ってきた。

敵の軽巡の砲撃が届くということは、それ即ち彼女達の射程圏内にも入ったという事である。

羽黒は事前に敵より早く攻撃の指示を出ししっかりと自分達から次の攻撃は先制を取っていた。

 

「先ずは敵戦艦の戦力を奪います! 各艦目標に向けて一斉射、後に私以外は川内さんの指示に従って戦艦以外に注力して下さい!」

 

「あらぁ? 一番の獲物は独り占めってわけぇ?」

 

皮肉を言う龍田に敢えて羽黒も悪い笑みを浮かべて言った。

 

「そういう事です。いいですか……撃ぇっ!!」

 

羽黒の指示通りに艦娘達は最初の一斉射撃を行った後に川内以下5人と羽黒単独に分かれた。

 

 

場所は変わって出撃任務中は司令部となっている執務室。

提督は専用の機器で羽黒の信号が隊列から一人離れるのを確認して唖然としていた。

 

「えぇ……。なんか羽黒一人で戦艦に向かってるみたいだ」

 

「主力対主力というわけですか。でも流石に重巡とはいえ戦艦に単独で挑むなんて……」

 

「映画、次はもうちょっとマイルドな内容のやつを選ぼうかな」

 

司令部ではこんなやり取りがされていた。

 

 

敵戦艦ル級は再度主砲で相手の耐久力が低い軽巡以下を狙おうとしたが、隊列から離れて近付いて来た羽黒に気付き砲身を向けようとするも、その時には副砲の使用が適切な距離となっていた為、舌打ちをして武器を切り替えた。

 

「…………ッ」

 

「勝負です……!」

 

お互いの艦隊の主力同士が砲身を向けて真正面から撃ち合う形となり、二人は互いに激烈な砲撃戦を展開し、その結果羽黒は中破、ル級は小破のダメージを受けた。

 

「コノ…………ッ」

 

受けたダメージの差は大きく、状態はこちらが有利ではあったが、ル級は自分より小さい艦から軽視できない被害を受けたことに憤った。

だが自分をこんな不快な気分にさせた張本人はもう大分弱っているはずである。

こうなっては撃沈されるのを恐れてこれ以上は肉薄するような戦いはしてこないはずだ。

そう、ル級のこの予想は別に至極真っ当なものだった。

だが彼女は運が悪かった。

この時相対していた敵は不幸にもその真っ当な予想には当てはまらない相手だったのだ。

 

「エッ」

 

ル級は思わず驚きの声を漏らした。

先程撃ち合って負傷した相手が尚も自分に更に迫ってきたのだ。

彼女はその双眸に衰えを見せない戦意の炎を確かに燃やし、自分を睨みつけていた。

 

「ナッ!?」

 

もう間合い的に機銃くらいでしかお互い攻撃はできない距離だった。

だがル級はちゃんと把握していた。

自分もそうだが相手も機銃を装備している様子はない事をしっかりと確認していたのだ。

にもかかわらずその敵は尚も接近し、もはやお互いの顔すら詳細に認識できる距離まで来ている。

 

(まさか特攻して自爆に巻き込む気か?!)

 

そうル級が血相を変えて怯んだ時だった。

 

「エ?」

 

ル級は今度は困惑した。

何故ならその件の敵が艤装の砲身を意味もなく向けるでもなく、なんと逆にそれを握りしめて自分に向かって振りかぶってきたからだ。

 

戦場では聞き慣れないゴォォンという奇妙な音に、その時敵味方問わず思わず戦闘を中断して音がした方を振り向いた。

 

「ひっ」

 

それは果たして誰の声だったか。

怯えた声を発した誰かの視線の先には、額に大きなコブをこしらえた泡を吹いて倒れているル級に馬乗りになって、今度は拳を叩き込んでいる羽黒の姿があった。

その姿はまるで鬼神……というにはあまりにも野蛮で恐ろしさを感じさせる程に鬼気迫る雰囲気があり、皆の前でそんな蛮勇を見せていた彼女は殴りながら言った。

 

「油断しましたね! ただ撃つだけが全てではないんです! 間合いが足りなければこうして打撃武器として、それが壊れたらこうして拳で闘えばいいんです!」

 

ゴスゴスという仲間が殴られる鈍い音にすっかり怯えて戦意を喪失した他の深海棲艦達は、その場で川内達に降伏した。




感想返信を含め最近予告を守れなくて申し訳ないです
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