艦これの進め方   作:sognathus

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3ヶ月ぶりの投稿なのに書いている途中でグダグダになってきたのがとても悩ましかった。


47:四日目の建造

木曾、榛名と建造に資材を費やすこともなく新たな艦娘を手に入れることができた提督。

彼は一連の騒動の後の鳳翔から不意に受けた酒の誘いのことが今になって楽しみになり、先のノーコストで向かえ入れることができた新たな仲間の件もあって上機嫌だった。

 

(今日の建造は良い結果が出そうな気がする)

 

人とは思わぬ幸運に気分を良くしがちである。

それはよく根拠のない自信や希望にも繋がり、特に籤や縁起を好む傾向がある日本人である提督は早速その一面を覗かせていた。

 

「提督、それでは今回の建造に投入する資材をお決めください」

 

「ん」

 

既に提督はこの日の開発は済ませていた。

戦艦が二人となったので、弾着観測射撃ができるようにしたくて少しボーキサイトの配分を増やして、水上観測機レシピを実行したのだ。

結果は偵察機と瑞雲が一機ずつ。

観測機は残念ながら手に入らなかったものの、海域の進行度としてはまだ序盤だったのでそれほど索敵値は必要としなかったし、なにより瑞雲が出たのが提督を喜ばせた。

まだ航空巡洋艦にできる最上型や水上機母艦もいない提督は直ぐに使い道を思いついた。

勿論それは後に航空戦艦へと改装できる山城への適用である。

まだ潜水艦の敵こそ出ないが、現状対潜系の装備を持っていない提督にとってこれは対処できる手が一つできる事を意味していた。

以上の満更でもない結果も相まって、この時の建造に臨む提督の気は、此処に連れてこられてから最も大きくなっていた。

 

(チトチヨ出てくれよ)

 

この先に待つ海域のスムーズな攻略には水上機母艦は必須である。

大型建造を使えば純粋水母である瑞穂が手に入る可能性もあったが、提督の今の環境では、ゲーム内でそれを使用する為の任務をまだ達成できていなかったし、そもそも同じ条件がこの世界でも適用されるのかも定かではなかったので最初から水上機母艦に関しては提督の狙いはチトチヨの一択だった。

 

「燃料300、弾薬30、鋼鉄400、ボーキサイト300……ですね。えっと、何人分建造します?」

 

「ぐっ……」

 

大淀の資材の消費を気にした視線に提督の浮ついた気持ちは厳しい現実に少し戻った。

正規空母は現状欲していなかったので節約系の空母レシピにしたのだが、それでも鉄とボーキの消費が今の提督の鎮守府には大きかった。

少しでも確率を上げたいなら複数回建造をするのが良策なのだが、現状無理に回したらそれだけで遠征や演習くらいしかできずに終わってしまう。

流石にそれは軍人としては仕事をしない会社員のようなものなので、最低限の出撃報告だけは上にあげたかった提督は、ここでは慎重に建造は2回だけにすることにした。

 

「畏まりました。では建造を開始します」

 

 

「飛龍です! 宜しくお願いします!」

 

「北上だよー」

 

「…………ん」

 

新しく迎えた仲間を目にして提督のテンションは既に通常モードに戻っていた。

北上はまだ良かった。

木曾と同じく改造すれば強力な雷巡になるからだ。

だが飛龍に関しては……。

 

(いない! 俺の鎮守府まだ出撃に使える軽空母がいない……!)

 

チトチヨが出なかったのは残念だったが、それ以上に飛龍の誕生は提督にとって未だに自分の鎮守府に出撃に使える軽空母がいない事を自覚させた。

軽空母はまだ鳳翔一人だけなので、その彼女が鎮守府の台所番を動けない以上、水母もそうにしても新たな軽空母入手は提督にとって重要な目標だった。

にもかかわらず来てくれたのは、加賀ほどでは無いにしても大飯食らいの正規空母である飛龍だった。

提督は新たに暫く持て余すことによって暇にさせてしまう飛龍に心の中で詫びながら努めて笑顔で彼女達を迎えたのだった。

 

「ヤァ、ワタシガキミタチノテイトクダヨッ」

 

 

「なんかさー、提督私達見てがっかりしてなかった?」

 

飛龍は、自分を歓迎してくれた提督の態度に何処かぎこちなさと何故か哀愁まで感じたことに疑問を覚え、早速同期仲間である北上相手に食堂でガールズトークを繰り広げていた。

 

「んー、どちらかというとそれは飛龍さんを見て、だと思うなー」

 

「え?! ど、どうして?! 私空母だよ?! 正規空母なんだよ?! つよ――」

 

「それは私の口から説明してあげるわ」

 

「え?」

 

飛龍に最後まで言わせずに会話に入ってきたのは割烹着姿の加賀だった。

その妙に様になった格好に何故か笑みを浮かべた彼女の姿には、何処か憂いを感じさせる雰囲気があった。

 

 

「ふぅ……」

 

その日の日程を終えて演習の結果や艦娘の成長具合を執務室で確かめていた提督は、椅子の背もたれに体重を預け直すと重い溜息を吐いた。

 

「なに、溜息吐いてんのよ。……どうかしたの?」

 

「提督もそんな溜息を吐くのね」

 

話しかけてきたのは榛名と木曾以外の深海棲艦消失の件で一時護衛を名乗り出た霞と山城だった。

二人は宣言通りその日は可能な限り提督の護衛に付き、こうして今も執務室まで付いてきていた。

どうやらこの分だと本当に自室まで護衛をしてきそうだった。

提督はそんな二人にどう対応したものか悩みつつ、そういえば護衛を名乗り出たのは秘書艦の大淀もいたことを思い出した事で更に悩むことになってしまった事を後悔しつつ、言葉を返した。

 

「まぁ主に余裕がない資材と一部持て余している戦力の事で、ね」

 

「ああ、飛龍さんの事ですよね。しかし、これで正規空母は彼女で二人目ですので、少なくとも鳳翔さんの補佐をしている加賀さんとは交代制が導入できそうですよね」

 

パソコンのディスプレイを見ながらブラインドタッチでデータを入力していた大淀が言った。

そのパソコンを使いこなしている様はすっかり堂に入っており、服が事務員風のものであれば見た目も雰囲気も仕事ができそうなOLそのものだった。

 

「ハハ……まぁ、うん。でもせっかくの正規空母なのに初めて任すことになる役割のことを考えるとやっぱり悪いなぁとは思うよ」

 

「それは仕方ないじゃない。確かにうちはまだ加賀みたいな大きな艦を自由に運用できるくらいの余裕は無いんだから」

 

「……そうね」

 

そういえば空母ではないが自分もそういう悩みの一つではないかと思い至った山城は、霞の言葉に困った顔で短い言葉で同意した。

 

「まぁこればっかは遠征をこまめにこなして備蓄を増やすしか無いからねぇ……。俺も最初はこうだったよ」

 

「?」

 

『最初は?』という提督の言葉に疑問が籠もった視線を彼に向ける三人。

そんな視線に提督は気付いた様子もなく、無言で煙草に火を点けると頭を掻きつつ天井を見上げながら()()の事を思い出して物思いに耽るのだった。




ヤマ無し! タニ無し!
今回は特にひっでぇw

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