艦これの進め方   作:sognathus

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鳳翔さんと酒の席での話


50:対話

「だぁら! わらぁひ思ふんへす! 皆あわぁひを親のよーにしあっへふれるのは嬉ひぃんてすけど……」

 

「うんうん、解る解るよ」

 

すっかりアルコールが浸透して紅潮した顔に据わった目、おまけに回らない呂律といった有様でなにやら愚痴を言っている鳳翔に対してグラス片手に真剣な顔で相槌を打つ提督。

当初はどういう飲み会になるのか少し不安だった提督だったが、結果として彼の眼前には今、想像よりやや斜め上の展開が繰り広げられていた。

 

 

時は1時間ほど遡る。

鳳翔との飲み会、当初は提督と鳳翔以外にも何人か参加しそうな雰囲気だったのだが、空気を読んだのか提督が信用され始めたのか、結局は二人きりでの開催となった。

鳳翔からもツマミはこちらで用意すると言われていたので、約束の時間に合わせて提督が自室のテーブルを軽く拭いてグラスや食器を用意していると、タイミングよくドアのノック音がした。

 

『提督、いらっしゃいますか? 鳳翔です』

 

「はーい、今開けるよー」

 

何となく扉の向こうにいる鳳翔が酒とツマミを両手で抱えているせいでドアを開けにくいのではないかと察した提督は、彼女の声に直ぐに反応してノブを回して扉を開けた。

果たしてその先には彼の予想通り……よりやや多めの物資を抱えた鳳翔が笑顔で佇んでいた。

 

(ここに来る前の執務室のドアはどうやって開いたんだろう)

 

そんな小さな疑問を抱いた提督だが、両手一杯の荷物をいつまでも彼女に抱えさせたくもなかったので、一先ず浮かんだ疑問は頭の隅に追いやって取り敢えず一番重そうな荷物の一升瓶を彼女から受け取った。

 

「あ、すみません」

 

「いやいや、まさかこんなに持ってきてくれるなんて。あ、後は全部オツマミ?」

 

「はい、今日は全てお皿に広げるだけで済むものを持ってきました」

 

「了解。じゃ、お皿はもうそこのテーブルに並べてあるから、適当に使って。余った分は空いている椅子に置くとかして」

 

「畏まりました」

 

こうして何となくリアルの世界の友人との飲み会を思い出すような雰囲気の飲み会が始まった。

提督自身女性と二人だけで酒を飲んだ事がないわけではなかったが、その回数を明確に覚えてるくらいには少なかったので、内心どういう酒の席になるのか不安だったのだが、嬉しいことに序盤は和やかな雰囲気でお互いの話も弾み酒も進んだ。

問題は中盤からであった。

提督が鳳翔お手製のきゅうりの塩漬けのよく加減された味付けに舌鼓を打っていると、ふと彼女が「実はちょっと悩みがありまして……」と彼に相談を持ちかけてきたのだ。

鳳翔は提督が自分の話に反応する前にまるで何かの合図のようにグラスに注がれた酒を一口で全て飲み干すと、急激に体内に広がるアルコールに抗うように一度大きく熱い息を吐き出す。

 

(えっ)

 

提督はその鳳翔の行動に思わず心のなかで驚きの声をあげた。

二人がその時飲んでいた酒は、焼酎ではあるが提督が味がウイスキーに何となく似ていると思うくらいにはアルコール度が高いものであった。

しかし味自体は大変美味しかった為、二人は敢えて割ったり氷も入れずにストレートでその酒を楽しんでいたのだが、当然アルコール度数は高かったので、二人ともちびちびと加減して酒を楽しんでいた。

そんな最中にまさかのなみなみとグラスに注がれた酒の一気飲みである。

提督はその光景を見た瞬間から何となく嫌な展開になる予感がしたのだった。

 

そして話は冒頭に戻る。

相談というのは艦これというコンテンツに携わった者なら大抵の人が知ってそうなネタ、鳳翔の母親イメージの事であった。

この事に対して創作物の中の彼女は大体嬉しく思っているか、もしくは嬉しくも女として少しコンプレックスに思っているかの2つの反応を見せていた。

今回は運が悪いことに後者であり、つまるところ提督は鳳翔の絡み酒に遭いそうになっていたのだ。

 

(うーん……まだ所属艦は少ないからそんなに親代わりみたいな扱いは受けてないかなと思っていたんだけど、俺が来る前の状態がアレな感じだったから結局皆からは頼りにされていたんだろうなぁ)

 

提督は甘かった自分の認識を修正しつつ、何とか鳳翔の酒が悪くならないように彼女の話を真面目な顔して聞くという、後輩の愚痴に付き合う一回り年上の先輩モードに態度を切り替えた。

 

「わぁひってほんなひとひ上に見えまふかねぇ……」

 

ついにテーブルに突っ伏してぐずりだす鳳翔。

提督はそれを宥めるように「いやいやそういう事ではないよ」と分かった風な口ぶりで言うのだった。

 

「皆に頼りにされるから年上に見えている、というのはちょっと違うと思うよ」

 

「……ほーてすかねぇ……」

 

「そりゃ最終的に皆の頼みの綱みたいな扱いは傍から見たら子供に頼りにされている親に見えるかもしれないし、思ってしまうかもしれない。けど鳳翔の見た目は少なくとも子持ちの親の雰囲気まで伴っていないと俺は、というか普通に考えたら誰だって思うと思うよ」

 

「……」

 

「鳳翔は若いよ」

 

「……それって、私が人の年齢の見た目に反する歳になったら言えないですよね?」

 

「……急に重い話にしないでよ」

 

まだ運営にはこの時は確認してなかったが、鳳翔の発言から察するにどうやらこの世界の艦娘は見た目からは歳を取らない仕様のようだった。

断言はしなかったが少なくとも鳳翔自身はある程度自分の寿命については自覚があるようで、提督はそれを貴重な情報として取り敢えず忘れないようにしっかり記憶してから、鳳翔のメンタルケアの続行をした。

 

「まぁその件については俺にも、まだ確かめる前なんだけど、考え……というか予想みたいなものがあるから。取り敢えずその件は、ね?」

 

「それって提督が私とずっと一緒にいてくれるって事ですか?」

 

「え」

 

悪い酒が入ったのは演技だったのか、彼の言葉の思わぬ効果によって希望を持ち、酔が霧散したのか。

鳳翔は真剣ながらも縋るような想いが混ざった表情をして席を立ち、提督に近付いて彼の袖を掴んでそんな事を言った。

確かに深く考えずに発言したが、まさかの反応に提督は流石に大きく動揺した。

 

「提督答えてください。それってそういう事ですか?」

 

「先ず……先ず聞いて。いいね?」

 

「はい」

 

「今の段階でそのアテっていうやつは確かではないし、実は個人的にできれば当たっていて欲しくないと思ってる。まぁだからと言って鳳翔達を蔑ろにしても良いとは決して思ってないからね。寧ろそのアテが外れてもまだ全然可能性はあると思ってるから」

 

(あの運営だし……)

 

「……」

 

鳳翔は提督の真意が掴めず、彼を見る瞳は不安に揺れていた。

提督はそんな彼女を心から安心させてやれないことを素直に申し訳なく思いながらも、何とか彼女を落ち着かせるために自然に彼女の手を握った。

不意に握られた手に最初はビクリとするも、提督の雰囲気から直ぐに落ち着いて緊張を抑え、再び提督を見つめる鳳翔。

 

「提督?」

 

「申し訳ない。今はこれで大丈夫、安心して、という事で了見して」

 

「……」

 

「ほんと申し訳ない」

 

何とも端切れが悪くて不明確な回答だったが、これがこの時の提督の、その場で出来る精一杯の自分の誠実さを伝える方法だった。

その想いが鳳翔に確かに伝わったかどうかは不明だったが、手を握られ提督にそんな言葉を貰った鳳翔は、目を閉じて小さく頷くと、彼の隣の席に座って握られた手を自分の膝に置き更に上から自分の手を重ねて言った。

 

「解りました。いろいろ不躾に申し訳ございません」

 

「うん」

 

「では、飲み直しましょうか」

 

「あ、うん。え? 鳳翔席に戻らないの?」

 

「はい、貴方にお酌もしたいので」

 

笑顔でそう言う鳳翔に提督は取り敢えずは難所を乗り越えることができたと安心するのだった。




リアルの悩み事で一度上がったモチベがまた落ち気味と結構調子乱れてます
ただある意味一つの決着にもなりそうなので後悔しないように頑張ってます
まぁ一番の悩みは安定した睡眠ができないというものなんですけどね
夜に飲んだ睡眠改善薬の影響が翌日の昼に出てくるというのは流石に参った……orz
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