艦これの進め方   作:sognathus

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前回よりもう少し胸糞


52:悪魔の囁き

自分が生身の人間である以上、戦闘という己の命が懸かった職務をもし遂行しなかったらと仮定した場合、大体自分は艦娘より先に寿命か病気で死ぬだろう。

この世界で深海棲艦との戦いがどれほど続いているかは知らないが、もし自分が艦娘たちを従えることができる『提督』という貴重な存在である事を理由に、老いさらばえても現役をやらされたら長く付き合った部下に看取られてこの世を去るなんて最期を迎える可能性も否定できない。

しかしそうなると気になるのはその後。

否、提督とてまだ自分の一生が此処で完結するとまではまだ思っていないが、それでもあまり迎えたくない結末が現実になった場合、その時の部下たちは家族と言っても過言ではない存在になっている気がした。

その時きっと自分はお爺さん、そして周りの艦娘たちは精神こそ熟練の老兵並みの粋に達しているかもしれないが、見た目は昔のまま。

提督は自分だけがそんな最期を迎えるかもしれない可能性に妙な不公平性を感じると共に残された艦娘たちの事も気になるのであった。

故に提督は前回艦娘の寿命を尋ねた時のように再度運営に連絡を取った。

自分の中で最後に一つだけ気になっていた事を確かめる為に。

 

 

「どうもお疲れ様です。いや、すみません。ついさっきお電話したばかりなのにまた直ぐにかけてしまって」

 

『いえいえー、私も○○さんの昨日のご様子からまだ気になることがありそうだなぁと思っていましたから。ただ、昨日はどうもお疲れのようでしたからね』

 

「はは、お気遣い頂きありがとうございます。あ、それで早速なんですが、実はあと一つだけ気になっていることがありまして」

 

『はい何でしょうか?』

 

「昨日のお話をお伺いした限り、少なくとも寿命の観点では人間の私は先に死にますよね?」

 

『まぁそうですね』

 

「うん、そこで私がお尋ねしたいのは、運営様はその点も踏まえて私を此処に連れてこられたのかなぁ、というですね?」

 

『ああ、なるほど』

 

運営は提督の質問の意図を直ぐに察したらしく、軽く咳払いをすると今までの明るく軽い調子とはやや異なる真面目さも混じった声調で言葉を続けた。

 

『○○さんの懸念は解ります。異世界に理不尽に連れてこられてそのままそこで最期を迎えるかもしれないなんて当然嫌ですよね』

 

「はい」

 

『ましてやこちらの条件を満たした時に連れてこられた当時より大分年老いてしまっているかもしれないなんて普通に困りますよね』

 

「それはもう」

 

『ご安心ください。勿論その点に関して対処する術をご案内できます』

 

「うん」

 

ここまで希望を打ち砕くような受け答えはせずに安心させるような言葉をかけてくれる運営であったが、提督はそれに対して喜色を含んだ反応や言葉を返すことはなく、どちらかという淡白で短い相槌を打つのに終始していた。

というのも提督の頭の中には運営が案内するであろうその対処法に対する予想が既に立っていたからだ。

ただ彼個人としてはその予想が外れていることを切実に願っていたのだが……。

 

『○○さんも一定の年齢に達した社会人の方なので率直に申しますが、その方法は艦娘と交わることです』

 

「……うん」

 

提督の反応は暗かった。

でも多分そうじゃないかなと何となく予想はしていた。

確信的な根拠があったわけではなかったが、自分が人間の域から外れるとしたら穏便な方法はこれくらいではないかと、今まで観てきたSF映画の影響などもあってそんなインスピレーションが実は早い段階から浮かんでいたのだった。

一方運営は少なくとも多少はこの方法を教えたことによって提督が狼狽えるか動揺すると思っていたらしく、そんな予想に反して彼が落ち着いた反応を見せたことに少なからず驚いているようだった。

 

『おや、あまり驚かれないんですね。もしかしてまさか、予想をされていたとか?』

 

「まぁ他には薬か何かで軽く寿命を延ばすとかも考えていましたけどね。できればそっちの方が良かったのですが……。ええ、はい。それも予想していました。交わるというのはつまり性交渉的なことですよね?」

 

『ご明察です。より的確に申しますと体液交流ですかね。まぁ愛がないとなかなか抵抗を感じる行いなので私も○○さんの表現が適切だと思います』

 

「……それは一回行えば良いんですか?」

 

『いえ、定期的に行って頂き、艦娘の因子を常に一定量体内に保持して頂く必要があります』

 

「もしかして純粋なこの世界の提督は皆実は高齢だったり?」

 

『いえ、大体が殉職か定年……もしくはそれ以外の理由で若い世代に代わってますね。ご案内した方法で提督ができている方はほんの一握りです』

 

「……凄いですねその人達」

 

『私は○○さんにもその才能はかなりあると思っていますよ?』

 

「一般人に艦娘のメンタルケアと並行して寿命を延ばすためについでに一定の愛を育む行為にも精を出すとかちょっとハードル高く思いますね私は。成層圏くらいの高さくらいいってますよ」

 

『あはは、それはもうハードルじゃないですよ』

 

それなりに皮肉と批判を込めて言ったつもりだったが却って運営にはウケたようだった。

提督はもうこの時点で大分精神的に疲労していた。

とにかくできれば当たっていてほしくなかったが、最後に確認したかった事への回答も得ることができたので、提督は早々に運営との通話を切り上げることにした。

 

(もう支援関係で連絡を取る事以外では話したくない)

 

提督はそんな本音がうっかり感情となって自分の声に乗らないように努めて気を付けてその日の運営との対話を終えた。

 

「ぐぇ……」

 

力なくぐったりと机に突っ伏した提督は猛烈に疼いてきた頭の痛みに身悶えした。

恐らくその痛み自体はストレスから来る一時的なもので、安静にしていればじきに引く類のものだっただろう。

しかし精神的疲労はそうもいかない。

提督は前回より重い疲労感にすっかりやられてしまっていた。

今度は喫煙くらいではそう気も紛れそうもなかったし、こんな時に艦娘の顔なんてできれば見たくはなかった。

 

「はぁ……」

 

提督はポケットからデジタルオーディオプレイヤーを取り出すと、彼が昔から聴いているお気に入りのフリーゲームのBGMを再生した。

青い空と草原の光景が曲の調べに沿って提督の頭に広がる。

提督はそんな爽やかな光景に現実逃避しながら、できれば陳腐で芸がない異世界に連れてこられたほうがまだマシだったかもと机に突っ伏しつつ沁沁と思うのだった。




章管理やしおり関係で再びご意見を承りました。
何とか良い落とし所を見つけたいところ。
この際、章はとっぱらって単純に話数を入れて管理した方が分かり易いか……?
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