艦これの進め方   作:sognathus

53 / 60
活動報告での前言を撤回。
イベント直後ということもあって浮かんだ話。


53:もしかしたら3

「こんのぉ……糞がぁっ!」

 

とある人物の怒声が鎮守府全体を揺るがした。

声の主は艦隊最強の武蔵であった。

その時彼女は、直近のイベントの最終海域で新規実装されたドロップ艦を迎えることができずにイベントを終えることになってしまった事に非常に憤っていた。

 

「情けなし! まさか最後まで迎えることができないとはな!」

 

「まーまー、武蔵。気持ちはワタシも解るワ。でも少し抑えるヨ? アナタ一人が暴れるだけでこの基地が崩壊しかねないんダカラ」

 

「……それは解ってる。だから腹いせに叫んでいるに留めていたのだろうが」

 

「ホントに~? あのまま放置してたら何かに八つ当たりしそうな感じがワタシはしたけどネ?」

 

「……」

 

金剛のこの指摘を直ぐに否定しない辺り、武蔵も思うところがあったのだろう。

彼女はそれに対してはただ何も言わず、その場に胡座をかくと不貞腐れた顔で頬杖をついてそっぽを向いた。

 

「最初の時にもっと出撃できていたら良かったわネー」

 

「……お前もやっぱりそう思うか?」

 

「そりゃネ」

 

自分の隣に座った金剛に武蔵は言った。

彼女たちは提督が不在でもイベントで最低限の成果を出そうと奮闘したのだが、今回のイベントでは残念ながら気持ち的に不完全燃焼となっていた。

原因は前述にあった通り全ての新規実装艦獲得に失敗してしまったこと。

元々保有する資源の量に不安があったのと、早くイベントを走り抜きたいという提督の方針に則って、今回は特に早く終わらせるべく最初から最も易しい難易度を選択したにも拘らずこの結果だったので、武蔵に限らず他の艦娘の失望や憤りはそれなりのものがあった。

因みに彼女たちは、運営からのアップデートの影響でゲームが強制終了しても作業が終わる度に勝手に自分たちでゲームを起動していたので、やっていることは傍から見たらコンピュータウイルスが怪奇現象紛いのバグを起こしているのと同じだった。

 

「ワタシもあれだけ出撃したんだから最後には出るかもーと思ってたんだけどネェ」

 

「総試行回数では今回はダメだったな」

 

「最初の掘り作業以降は燃料が足りなくて一日に5回くらいしか出れなかったからネ……。そりゃ当たりを引くのも難しいワ」

 

「ポーラとかザラとか……そういえば最終的にイタリア艦がやたら出たよな」

 

「アー……うん。ポーラとザラが5人ずつと、グレカーレが3人だったかしラ。それ以前にドイツやイギリスの駆逐艦もそれくらい来たわネ」

 

「そうだ。そのおかげで定員数にも常に悩まされることになったな」

 

「あの子達は別に解体してくれても良いよって言ってくれてたんだけどネー」

 

「相棒の奴は恐らく悩んだ末に放置するだろうしな」

 

「うーん……」

 

艦これというゲームは未だに通常の建造では迎えることができない艦娘が多くいた。

そんな建造できない艦娘の中でも海外艦は圧倒的に多く、ゲームの仕様上希少な存在である彼女たちの突然の来訪は、多くのユーザーを悩ますことがよくあった。

 

「ある程度育てておけばイベントで貴重な特効として活躍するかもしれないしな」

 

「重巡の内一人は改二になるシ、駆逐艦はイギリスも……ドイツはちょっと育てないといけどいケド、対潜能力値も高いからネー」

 

「……」

 

「……」

 

「「ハァ~……」」

 

愚痴と開き直りを暫く繰り返した二人は、揃って口を噤むと大きなため息を吐いてその場に大の字になって寝転がった。

二人が横になっているのは外、前回と同じで飛び降りればそこは海である波止場だった。

 

「……」

 

「……」

 

一度も雨など降ったことがない青い空と大きな雲が二人の荒んだ心を慰めるかのように何処からかカモメまで呼び寄せて、その鳴き声で彼女達の耳も癒やしてくれた。

 

「遠征、燃料が増え易くするように変えなきゃな」

 

「もうそれは変更済みよ。ついでに言うと、演習でも今までは育成したい子をなるべく入れるような編成にしてたケド、簡単に完勝できそうならその遠征組を出すようにもしたワ」

 

「流石だな」

 

「艦隊最高レベルだからネ」

 

「戦闘力最強は私だがな」

 

「けど提督最愛は私よ!」

 

せっかく良い気分でまるで喧嘩の後の語り合いのような事をして気を紛らわせていたのに、そこに不躾に割り込む声がした。

声の主は体を起こさなくても判っていた。

武蔵は顎を上げて自分達の後ろに立つ者の姿を認めると、気の抜けた声で言った。

 

「おー、なんかちょっと前まで鳳翔にセクハラしてたワンコが来たぞ。黒いショーツだ」

 

「アー? あ、本当ネ。アナタ、鳳翔とイイことしてたんじゃないノ?」

 

「途中で正気になって直ぐに謝ってきたわよ! あとワンコって言うな! 下着関係ないでしょ!」

 

「ほーう? では泣きべそ狼でとでも……」

 

「武蔵」

 

「む……」

 

更に煽ろうとした武蔵を金剛が嗜める。

多少やさぐれていたとはいえ、確かに必要以上に仲間を煽るのは見苦しいと言えた。

金剛の注意に武蔵は途中で言葉を切ると、身体を起こして今度は正面から足柄の方を向いて言った。

 

「で、どうしたんだ? お前、さっきと比べたら明らかに良い顔をしているぞ」

 

「ふふん、私もいつまでも情けない姿見せるわけいかないからね。鳳翔に一発気合いれてもらったワケよ」

 

そう言って足柄は顔を横に向けて頬に浮かんだ赤い手の形の跡を見せた。

 

「うわ、いーたそう。アナタ、態々鳳翔に打ってもらったノ?」

 

武蔵と同じく身体を起こした金剛が呆れた様子で、しかし苦笑しながら聞いた。

足柄は何を思い出したのか、一瞬身震いをすると何処となく震えているように聴こえる声で答えた。

 

「実は、あの時はちょっと後悔したの。だって鳳翔、真剣な声で『本当に良いんですか?』って真顔をして言ってきたのよ。正直……かなり怖かったわ」

 

「でも効いたんだろ?」

 

「う、うん……。酔い覚めには効果ばつぐんだけど、それ以上に予め気合い入れておかないとちょっとショックで放心しちゃいそうだから。頻繁には勘弁だけどね」

 

「ふっ、まぁ良い。で、相棒の最愛の人、お前もここで私達とだらけに来たのか?」

 

武蔵は金剛と一緒に立ち直った足柄と暫くここで駄弁るの事にすっかり乗り気となっていたが、足柄はそれに対して満更でもなさそうな表情を浮かべると「その前に」と一歩二人に近寄って言った。

 

「私も鳳翔に聞いたんだけど、行方不明の提督の話、聞かせてくれる?」

 

その目には決意に燃える炎が灯っていた。




イベント疲れた……精神的に。
でも職場の環境はマシになったし、ちょっと余裕ができそうな気がします。

感想の返信は後ほど
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。