演習から帰ってきた艦娘の成長ぶりによっては次に行けるかもしれないと提督は考えていた。
お昼時です。
「演習お疲れ様ー」
「提督、演習結果です」
「ん」
提督は大淀からやっぱり手書きでまとめられた演習の報告書を受け取る。
彼の前に並んでいる艦娘達は、演習だったので当然服とかは破れたりしていないが、それでも練習用の砲弾によるものか黒い煤でかなり汚れていた。
「あ、皆風呂でも入っておいで」
「えっ、でもまだ個々の戦況の推移とか……」
驚く川内を尻目に提督はあっさり言った。
「いいよそんなの。結果だけ判って君たちが強くなってくれたら。ほら早く行った行った」
手をひらひら振って退出して入浴を勧める提督に艦娘達は唖然とした顔で戸惑いつつもそれぞれの部屋へ入浴しに行った。
「提督、あまり軍人らしからぬ軽率な指示や考えは披露されない方がよろしいかと思いますが?」
「あいつらが俺を軽く見るようになるかもって事?」
「それもあります」
「……別にそうはならないよ」
今までの流れならまた適当な物言いをして話を逸らすものだと考えていた大淀は、提督のこの意外な言葉に目を丸くする。
「え? どういう事ですか?」
「いや、これから此処はどんどんマシになっていくからだよ。装備も人数も制圧海域も。全部」
「何を根拠にそんな……」
「実際まだ俺は致命的な失態は犯していないでしょ?」
「……」
「まぁそれまではいろいろ飲み込んで俺を助けてよ」
「……承知しました。それで、次は……あ、お昼ですね。お食事はどうされます?」
「流石に食堂はあるよね? というかその場合誰が食事を作ってるのかな?」
「鳳翔さんですけど」
「鳳翔いるの?!」
衝撃の事実に提督は思わず大きな声を出して椅子から立ち上がった。
だがそれも一瞬のことで何か思い至った提督は「あ、そうか」と直ぐに座り直した。
「彼女も人員に余裕ができるまでは艦隊に所属してくれない、か?」
「ですね」
「ん、分かった。じゃ、食事だけど悪いけど此処まで持ってきてくれる? メニューが幾つかあるのならどれでも選んでいいよ」
「承知しました。少々お待ち下さい」
大淀が部屋から出ていくのを見届けると提督は改めて椅子に座り直し考え事を始めた。
彼の頭の中には鳳翔の料理をリアルで食べられる事への期待と喜び、というものは全く無かった。
(一緒に食堂で食事を摂って親しみのある提督というのも円滑な鎮守府の運営方法としては有り、だとは思うけど。それはそれでなぁ……)
その時、提督の頭の中には今まで読んできた艦これの二次創作の漫画や小説の内容が川のように流れていた。
(リアルで俺のような歳の男に好意を持たれるとは思えないしそういう事を考えている俺自身がちょっと痛々しくて凹んでしまうけど、
「お、そういや報告書、報告書」
不意に考え事を打ち切って手元の演習の報告書をまだちゃんと確認していなかった事を思い出した提督は机の上の紙に目を向けた。
「うん……うん……」
前任者は演習もまともにやっていなかったらしい。
恐らくたった一回だけボロ敗けしてから、それでやる気が無くなってしまったのだろう。
紙面には「川内の練度が2→5になった」とか思わず涙が出そうな微笑ましい成長ぶりが報告として書かれていた。
因みにこの時提督が流した涙は残念ながら嬉し涙ではなかった。
(その一回で敗けただけでやる気をなくした演習が低レベルの艦隊同士だったんだろうなぁ……ぐぇぇ)
「あっ」
だが喜ばしい事に報告書はそれだけではなかった。
演習の報告書は一度の演習毎に一枚というふうに作られていたのだ。
つまりまだその下に4枚演習の報告書があったのである。
提督はそれに気付いて全ての報告書に目を通した。
(うん……これはなかなか良い感じだ)
提督はその顔に嬉しそうな笑みを浮かべる。
演習の結果は全てC~Dの敗北であったが、それでも艦隊の平均レベルは9にまで上がっていた。
(これなら……うん。戦力的には1-2【南西諸島沖】くらいはクリアできるだろう。えーとボスルート固定は……あっ)
スマホを弄っていた提督の手が止まった。
「……ルート固定するのに駆逐艦があと二人足りない……」
思わず独り言の愚痴が漏れてしまった。
建造のようなランダム要素を許容するしかない仕組みなら仕方がないが、なるべく資材等を無駄にしたくない事には変わりはない提督は、羅針盤にお祈りする事になる展開は可能な限り避けたかったのだ。
(駆逐艦あと二人建造するか……)
提督の次の予定がこの時決まった。
新イベントが近い……。
筆者の艦隊は資源が心許ないのです。
頭痛い。