艦これの進め方   作:sognathus

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あ、そういえばまだここまでに実働できる艦娘6隻いなかったのに第二艦隊で遠征行ってましたね……。
まぁいいか。

*第二艦隊の解放条件は6隻編成


8:二回目の建造

「提督、駆逐艦を新しく建造するって本当?」

 

何処で噂を聞きつけたのか皐月が提督達の所にやって来た。

提督はその時はまだ投入する資材等について悩んでいた所で、彼女はちょうど自分の仲間を余裕を持って迎えるタイミングに恵まれたと言って良かった。

 

「ああ、そうだよ。今日はもう交替で警戒任務にあたるまでは待機でいいって言っていたはずだけど、わざわざ建造(これ)を見に来たの?」

 

「うん! もしかしたら自分の姉妹に会えるかもしれないしね!」

 

「なるほどね」

 

提督は皐月の言葉に納得すると口元に手をやって熟考を再開した。

 

(やっぱりレア駆逐レシピ回すか? ……いや、それで出なかったら今の資材的にキツイ。ここはオール30のエコレシピが良いか)

 

「決まりましたか?」

 

提督の考えがまとまった気配を察した大淀がタイミングよく確認してきた。

提督は「そうだな」と短く答えると投入する数値を2隻分入力して実行ボタンを押した。

今回は2隻同時建造なので以前起動音が聞こえなかったドックの扉のランプにも『建造中』の文字が灯った。

建造機の画面に表示された時間は1時間、そして22分だった。

時間表示もなく建造が完了するという事もなかったので、今回は既存艦の強化ではなく運良く全て新造艦のようだ。

 

「一つは軽巡かな」

 

「これより長い時間が羽黒さんでしたからね。その予想は当たっている可能性が高いと思います」

 

「ん……」

 

「もう一人建造するの?」

 

再び操作パネルに指を伸ばした提督に皐月が嬉しそうに訊いた。

 

「オール30だからね。あと1回くらいならまぁ……。やっぱり今回2人駆逐を迎えたいんだ」

 

「提督は幼児性愛の趣味でも……」

 

「無い無い」

 

冗談とも本気とも取れない大淀の言葉に一気に気力が削がれた提督は大きな溜息を一つ吐くと、建造機の実行ボタンを押した。

画面に表示された時間は22分だった。

 

「よし、やった」

 

まさか駆逐艦の建造確実で再び喜ぶ時が来るとは思ってもみなかった提督のこの時の心境は、実は割と複雑だったりしたのだが現状では良い結果なのは間違いなかった。

 

「ん? あれ? そういえばうちの建造ドックは元々2つしか本部から開放許可が下りてなかったと思うんですけど? え? 更にもう一つも開放されてる?」

 

「そんなの全部俺が開放したに決まってるでしょ……。人によっては金の無駄と言う人もいるけどこの僅かな効率化が気持ち程度だけどストレスを緩和してくれるんだよ」

 

「一体何時の間に……」

 

「さっき本部に電話した時に申請書後回しの特例許可もついで貰ったんだよ。かなり渋られたけど、一年間の俺の給与の減俸とこの鎮守府の内情を訴えてさ。正直途中で電話切られるかと思ったけど諦めずに粘って良かった……」

 

そういう提督の瞳には何故提督をしている時までリアルの仕事と同じような事をしないといけないんだという悲しみの感情が宿っていたのだが、当然そんな提督の心境などその場にいた者は知る由もなかった。

 

「ごほん」

 

提督は気持ちを持ち直すために咳払いをすると残りの建造時間を確認して言った。

 

「1時間はともかく20分くらいならここで待っていても良さそうだな」

 

「それまで何をなされます?」

 

「そうだなぁ……」

 

本当は一人スマホのアプリでも弄りながら直ぐに時間が過ぎるのを待っていた方が気が楽だったのだが、既にその場に自分以外の存在が2人もいるとなるとそうもいかない。

大淀と皐月2人で適当に会話して時間を潰すようにと指示することもできたが、それはそれで指揮官の指示として微妙な気がしたので提督はちょうど良い機会ということで前任者の事をもう少し訊いてみることにした。

 

 

「え? 前の司令官? ……司令官よりとても苦手な人だったよ……」

 

暗い表情でそういう皐月に申し訳ないと思いながらも提督は、そんな愚か者でも何か一つでも自分にとって有利になるような功績を残していないかもう少し探りを入れる。

 

「皐月、悪いけどその人についてもう少し訊いていい? 知っていたらでいいんだけど。そうだなぁ……隠れて資材とか貯め込んだりしてなかった?」

 

「ごめんなさい。ちょっと僕は分からないかな」

 

「そっかぁ……」

 

「提督、いろいろ縋りたくなるお気持ちも解りますが、前任者の事についてはあまり触れないで頂けると助かります」

 

「それは全員?」

 

「まぁ……そうですね」

 

そう言って自分を抱くような仕草をする大淀、そしてそんな大淀を見て何を思い出したのか不意に半歩ほど下がって一瞬恐怖に震えていたように見えた皐月。

提督にとってはそれだけで前の環境がかなり引いてしまいそうな程酷いものであった事をなんとなく察した。

 

「ごめん」

 

謝罪する提督に無意識に後ずさった皐月は直ぐに近寄って頭をぶんぶん振った。

 

「気にしないで! 僕は新しい司令官は少なくとも嫌いじゃないよ!」

 

「私も嫌いではないですね」

 

「うん、2人とも取り敢えず『嫌い』よりマシでありがとう」

 

提督が顔をひくつかせながら2人にお礼を言った時だった。

建造機の完了音が鳴り、望んでいた2人の駆逐艦の完成を告げた。

 

「朝潮型一番艦、朝潮です!」

 

「このクズ! 霞よ」

 

「…………」

 

識ってはいたが何となくゲームよりキツく感じた霞の口の悪さに提督は思わず閉口した。

その印象は後ろの2人も同じだったらしい。

大淀は艦隊指揮官へのとんでもない第一声に今聞いた暴言は果たして現実のものか確かめるように無表情で眼鏡のブリッジを上げ直し、その横で皐月は常識外れの挨拶に完全に虚を突かれ、驚きに目を見開いて固まっていた。




朝潮を引いた提督は運が良かったと思います。

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