「ここから先は、通さないわよ」
視界を埋める魔獣の群れに、マミは一人で立ち塞がった。
*****
「マミさーん!」
肩で息をして、マスケット銃に体を預けるマミに声が掛かる。
「遅くなってごめんなさい!代わりますから休んでください!」
「よかった……。流石に危なかったの」
一面に転がる魔石を確認して、魔法少女は息をのむ。
「これだけの魔獣を一人で?」
「貴女達も疲れているでしょう?無理はしないでね?でも、ごめんなさい。ちょっとだけ、甘えさせてもらうわね……」
大規模な魔獣の進撃。被害を抑えるためには戦力を分散するしかなかった。マミが主流を引きつけ、他が各個撃破後、合流という、マミ頼りの無茶な作戦だった。
*****
「こいつで最後っ!」
新人の魔法少女が魔獣を叩き切る!
「ふう。なんとかなっちゃたね!流石マミさん!」
「ほんとだよ!あんだけの魔獣が出たのに、街に被害無しとか、わけわからんよ!」
口々に喜び、ハイタッチする魔法少女達。
「ま、マミさんはどこ?!」
そんな和んだところに、ほむらが飛び込んできた。
「マミさんならちょっと休むってそこに……。あれ?」
そこにマミの姿はなく。
「くっ!」
ほむらの表情が歪む。
「……まどか。マミさんを、よろしくね」
*****
「よかった……。街も皆も無事だったのね」
「マミさんが囮になったから……」
街の様子を眺めつつ、マミは微笑む。その隣の桃色の魔法少女が小さく頷く。
「私、死んじゃったの?」
「はい……」
「そぅ。でも、あの大群を食い止めたのだもの。仕方ないわね」
「すごかったです!やっぱりマミさんは私の自慢の先輩です!」
「もう、見世物じゃないのよ?」
興奮してグイグイくる桃色の魔法少女に、マミは困り顔。さすがに照れる。
「えぇと貴女は……、私の後輩なの?」
「はい!私、鹿目まどかっていいます!」
「?」
――はて。多くの後輩はいたが、まったく覚えがない。明らかに慕ってくれている相手にそういうのは、まったくもって可哀想だ。むむむ。まどか、まどか……。あっ!
「貴女もしや……。カヌゥーメ=マルドゥーシカ様?!」
「ふぇ?!」
目を爛々と輝かせるマミに、まどかは怯む。
「呪われた魔法少女の運命を、1人で背負ってくれた始原の魔法皇女!聖アトランティス帝国、カヌゥーメ=マルドゥーシカ!」
「え?え!」
「その親友であり恋人の転生者が、暁美さんなのよね?!」
「!」
テンションマックスのマミに、まどかはただただ目を瞬く。
「暁美さんたら、佐倉さんにだけ打ち明けたらしくって!私が聞いても、はぐらかすばっかりでちっとも教えてくれないのだもの!佐倉さんを食べ物攻めにして、聞き出しちゃったけど!魔法少女の呪われた運命を救うため、神々の怒りを買い、円環の導き手にされてしまうマルドゥーシカ!そして引き裂かれた恋人、ホムーリィの転生者が待ち続ける……!アトランティスの世からはじまった一万二千年続く、禁断の恋のストーリィ!まさかその本人から聞くことができるなんて!」
「ほげー」
マミの凄まじい勢いに、まどかはすっかり取り残されていた。
「よくわかんないけど、そんなんじゃないです。……人間の頃は平凡な娘で、ほむらちゃんやみんなと一緒に、マミさんの後輩だったんです」
「私の……後輩?」
「はい。マミさんは綺麗で格好良くて、とっても大人で。誰に見られていなくても、人の為にっていつもがんばっていて……。わたしの憧れなんです」
「なんだか照れちゃうわね。それに、そんなに格好いいものじゃないもの……」
まどかの言葉に、ほろ苦い思いで俯くマミに、まどかは唇を震わせる。
「そんなことないです!マミさんが1人でいろいろ悩んでたって事、今だとわかります!それでも、街の人たちや後輩のためにがんばってるマミさんを、私尊敬します!私だけじゃない!さやかちゃんだって、杏子ちゃんだって、ほむらちゃんだって!新人魔法少女の皆だって!マミさんは、皆の憧れなんです!」
涙ながらに力説するまどかに、マミは目を瞬かせ、ゆっくりと微笑む。
「ありがとう。鹿目さん。でも、こんなに慕ってくれてる後輩を憶えてないなんて……」
マミは記憶を漁ろうと、頬に手を当て視線を下げる。
「あ!無理です!導き手になることで、あの世界から存在が消えちゃったんで!思い出せないんです!」
思考しようとするマミに、まどかは慌てて声を掛けた。
「鹿目さん……」
「と、とにかくいきましょう!マミさん歓迎パーティの準備してあるんですよ?」
「まぁ!」
「とびきり大きくて、美味しいケーキも……あるんです」
――わたしにとっては、約束の魔法少女タッグ結成パーティでもあるのかなって
まどかは、あの時のやりとりを思い目を閉じる。沸き上がる感情を、震えながら必死に抑える。
「……鹿目さん?」
「えっ!」
そんなまどかを、マミは優しく抱きしめる。
「あなたが人間で、わたしの後輩だったときのお話をして頂戴ね。こんなに可愛い後輩を憶えていないなんて、寂しいもの。だから……、だからそんな顔しないで。あなたはもう、1人じゃないわ」
さらにぎゅうと抱きしめ、マミはまどかの耳元で囁く。
「マミさんっ!うわーん」
「ふふっ、泣き虫な神様ね。さ、いきましょう?」
「はい!」
マミの言葉に、まどかは満面の笑みで答えたのだった。
マミさん最強!