円環物語   作:ぶんた

2 / 27
その2

「ここから先は、通さないわよ」

 

 視界を埋める魔獣の群れに、マミは一人で立ち塞がった。

 

 

*****

 

 

「マミさーん!」

 

 肩で息をして、マスケット銃に体を預けるマミに声が掛かる。

 

「遅くなってごめんなさい!代わりますから休んでください!」

「よかった……。流石に危なかったの」

 

 一面に転がる魔石を確認して、魔法少女は息をのむ。

 

「これだけの魔獣を一人で?」

「貴女達も疲れているでしょう?無理はしないでね?でも、ごめんなさい。ちょっとだけ、甘えさせてもらうわね……」

 

 大規模な魔獣の進撃。被害を抑えるためには戦力を分散するしかなかった。マミが主流を引きつけ、他が各個撃破後、合流という、マミ頼りの無茶な作戦だった。

 

 

*****

 

 

「こいつで最後っ!」

 

 新人の魔法少女が魔獣を叩き切る!

 

「ふう。なんとかなっちゃたね!流石マミさん!」

「ほんとだよ!あんだけの魔獣が出たのに、街に被害無しとか、わけわからんよ!」

 

 口々に喜び、ハイタッチする魔法少女達。

 

「ま、マミさんはどこ?!」

 

 そんな和んだところに、ほむらが飛び込んできた。

 

「マミさんならちょっと休むってそこに……。あれ?」

 

 そこにマミの姿はなく。

 

「くっ!」

 

 ほむらの表情が歪む。

 

「……まどか。マミさんを、よろしくね」

 

 

*****

 

 

「よかった……。街も皆も無事だったのね」

「マミさんが囮になったから……」

 

 街の様子を眺めつつ、マミは微笑む。その隣の桃色の魔法少女が小さく頷く。

 

「私、死んじゃったの?」

「はい……」

「そぅ。でも、あの大群を食い止めたのだもの。仕方ないわね」

「すごかったです!やっぱりマミさんは私の自慢の先輩です!」

「もう、見世物じゃないのよ?」

 

 興奮してグイグイくる桃色の魔法少女に、マミは困り顔。さすがに照れる。

 

「えぇと貴女は……、私の後輩なの?」

「はい!私、鹿目まどかっていいます!」

「?」

 

 ――はて。多くの後輩はいたが、まったく覚えがない。明らかに慕ってくれている相手にそういうのは、まったくもって可哀想だ。むむむ。まどか、まどか……。あっ!

 

「貴女もしや……。カヌゥーメ=マルドゥーシカ様?!」

「ふぇ?!」

 

 目を爛々と輝かせるマミに、まどかは怯む。

 

「呪われた魔法少女の運命を、1人で背負ってくれた始原の魔法皇女!聖アトランティス帝国、カヌゥーメ=マルドゥーシカ!」

「え?え!」

「その親友であり恋人の転生者が、暁美さんなのよね?!」

「!」

 

 テンションマックスのマミに、まどかはただただ目を瞬く。

 

「暁美さんたら、佐倉さんにだけ打ち明けたらしくって!私が聞いても、はぐらかすばっかりでちっとも教えてくれないのだもの!佐倉さんを食べ物攻めにして、聞き出しちゃったけど!魔法少女の呪われた運命を救うため、神々の怒りを買い、円環の導き手にされてしまうマルドゥーシカ!そして引き裂かれた恋人、ホムーリィの転生者が待ち続ける……!アトランティスの世からはじまった一万二千年続く、禁断の恋のストーリィ!まさかその本人から聞くことができるなんて!」

「ほげー」

 

 マミの凄まじい勢いに、まどかはすっかり取り残されていた。

 

「よくわかんないけど、そんなんじゃないです。……人間の頃は平凡な娘で、ほむらちゃんやみんなと一緒に、マミさんの後輩だったんです」

「私の……後輩?」

「はい。マミさんは綺麗で格好良くて、とっても大人で。誰に見られていなくても、人の為にっていつもがんばっていて……。わたしの憧れなんです」

「なんだか照れちゃうわね。それに、そんなに格好いいものじゃないもの……」

 

 まどかの言葉に、ほろ苦い思いで俯くマミに、まどかは唇を震わせる。

 

「そんなことないです!マミさんが1人でいろいろ悩んでたって事、今だとわかります!それでも、街の人たちや後輩のためにがんばってるマミさんを、私尊敬します!私だけじゃない!さやかちゃんだって、杏子ちゃんだって、ほむらちゃんだって!新人魔法少女の皆だって!マミさんは、皆の憧れなんです!」

 

 涙ながらに力説するまどかに、マミは目を瞬かせ、ゆっくりと微笑む。

 

「ありがとう。鹿目さん。でも、こんなに慕ってくれてる後輩を憶えてないなんて……」

 

 マミは記憶を漁ろうと、頬に手を当て視線を下げる。 

 

「あ!無理です!導き手になることで、あの世界から存在が消えちゃったんで!思い出せないんです!」

 

 思考しようとするマミに、まどかは慌てて声を掛けた。

 

「鹿目さん……」

「と、とにかくいきましょう!マミさん歓迎パーティの準備してあるんですよ?」

「まぁ!」

「とびきり大きくて、美味しいケーキも……あるんです」

 

 ――わたしにとっては、約束の魔法少女タッグ結成パーティでもあるのかなって

 

 まどかは、あの時のやりとりを思い目を閉じる。沸き上がる感情を、震えながら必死に抑える。

 

「……鹿目さん?」

「えっ!」

 

 そんなまどかを、マミは優しく抱きしめる。

 

「あなたが人間で、わたしの後輩だったときのお話をして頂戴ね。こんなに可愛い後輩を憶えていないなんて、寂しいもの。だから……、だからそんな顔しないで。あなたはもう、1人じゃないわ」

 

 さらにぎゅうと抱きしめ、マミはまどかの耳元で囁く。

 

「マミさんっ!うわーん」

「ふふっ、泣き虫な神様ね。さ、いきましょう?」

「はい!」

 

 マミの言葉に、まどかは満面の笑みで答えたのだった。




マミさん最強!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。