円環物語   作:ぶんた

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その21

「ティロ・フィナーレ!」

 

 掛け声と共に少女は大きな拳銃を構え即座に発射!その弾丸を胸に受け、魔女は声なき声を上げつつ倒れた!

 

「ふう」

 

 少女が大技の魔力の残滓で創り出したティーカップに湯気立つオレンジペコで一息入れようとした、その時。

 

「やれやれ。酷い目にあった」

 

 ふいの男のつぶやきに少女は目を瞬かせ、視線を向けた。

 そこには黒い山高帽に黒い背広、端正な顔立ちに気だる気な表情をうかべた青年が、闇から浮かび上がるように佇んでいたのだった。

 

「あなたは……」

「僕は探偵さ。君は……」

「私は魔法少女よ」

「魔法……少女?」

 

 男はいぶかし気な視線を向ける。その先。魔法少女と名乗る娘は、金色の髪を左右に短く縦ロールに編み、優しげな顔立ちの美少女。茶色のベレー帽に、白いシャツと茶色の短ズボンという狩人のような出で立ちだった。

 

「まあ、にわかには信じられないかもですけどね」

 

 男からの視線に溜息をつきながら、少女は答えた。

 その男の視線は、少女というには不釣り合いに大きく成長した胸や腰回りに向いていたのだが。

 

「それであなたは……」

「ああ。行方不明者の捜索でね。足取りを追って裏路地に入って、さっきの結界に取り込まれてしまったのさ」

「それは災難でしたね。でもよく無事でしたね」

「隠れるのは得意なのさ。まあ結界が解かれるまではと潜んでいたのだけれど、なかなかしんどかったよ。煙草が吸えなかったからね」

「魔女の結界の中で隠れていた……といっているのかな?そんな事が可能だとはとても思えないけれど……」

 

 リスを思わせる白い小動物が少女の肩にするりと乗り、目を瞬かせる。小動物と感心する少女の視線を受けつつ、男は懐から煙草を取り出し口に咥え火をつける。

 

「そういってるのさ。や、すまない。流石にあの中で吸うわけにも、ね」

「そうですか」

 

 すまなそうな表情で煙を吐く男に、少女は苦笑した。

 

「とにかく助かったよ。お礼がしたい。食事でもどうだい?」

「ケーキの美味しい処なら気になりますけど……」

 

 少女は首を傾げた。

 

「でも明日学校があるので、またの機会にお願いします」

「そうかい。じゃあ今度の機会にご馳走しよう」

 

 男の返事に少女は小さく頷く。

 

「では、ごきげんよう」

「ああ」

 

 挨拶を交わした後。ビルの間を跳んで去る少女の背を男は見送った。

 

 

*****

 

 

 そこは緑溢れる公園の真ん中。

 白いテーブルの前の椅子に、少女はゆったりと座っていた。

 ふと違和感を感じ視線を向けると、黒ずくめの男が立っていた。たしか、たンてイさん……だ。

 

「ヤあ」

「あら?いらっしゃい」

 

 久しぶりのお客様だ。少女は満面の笑みを浮かべ、テーブルへの座席を勧める。

 

「や、あまりジカンがなくててね……」

 

 男は困ったように、これみよがしに肩を竦める。

 

「そう、それは残念ね……」

 

 男の返答に、少女は溜息をつく。

 

「そのカわり、みヤゲをモってきているから、タノシンでくれ」

「それは、ありがとう」

 

 少女は男に、にっこりと微笑んだ。

 

「ふふっ。慌てちゃだめよ?」

 

 少女は男からの美味しそうな贈り物に押し寄せる使用人たちに声を掛けつつ、ぺろりと唇を舐めた。

 

 

*****

 

 

 ソレは、ふと顔を上げた。

 

「やあ」

 

 黒ずくめの男にソレの視線が刺さる。

 

『アら、いらっ……ゃイ』

 

 ソレは男を歓迎し、自分の前の席を勧めているようだった。

 そこは一面、じゅくじゅくと蠢くよくわからない肉塊に覆われていた。その真ん中、地面からテーブルのように盛り上がった肉塊のそばに、ソレはいた。ソレは男を誘うように震える。

 

「や。あまり時間がなくてね……」

 

 男は心底すまなそうな、困った表情できりだす。

 

『そウ。そ……はザン……ね……』

 

 返ってくるソレからの沈んだ波動に、男は目を細めた。

 

「その代わり、みやげを持ってきてるから楽しんでくれ」

『それ…、アり…ト……』

 

 男の言葉に、ソレは微笑んだようだった。

 

「それじゃあ、また」

 

 男は自分の残した()()()に視線を向ける。

 その視線の先には、縄に縛られた男。

 いくつもの凶悪犯罪に手を染めつつも、巧に警察から逃れていた男だった。

 黒い男の立ち去る後ろで、恐怖に激しく暴れる男にソレとその眷属がゆるゆると群がる……。

 

 

*****

 

 

 ソレの結界からぬけた路地裏で、男は煙草を咥えた。

 

「……」

 

 魔法少女と名乗った少女は、人知れずバケモノを倒しているようだったが。数週間後、男は同じようなバケモノに変わり果てた彼女と遭遇することとなった。

 男は異能の力により、少女の人間だったころの記憶に干渉し、こうしてわずかながらの意思疎通を成立させることができたのだった。

 こうなってしまった彼女はやはり人を糧とする存在のようなのだが、男に彼女を元に戻す手段は勿論、斃す手段もなく。せめて無差別に人を襲うことが無いようにと悪人を差しだしていたのだ。

 まあ世の中に悪人は多いので、そんな処分所はむしろ、男のような職業ではいろいろと便利ではあったのだけれど。

 そうして……。

 人を救おうとその身を捧げた彼女が人にあだなすことにならないように。助けてもらった時の約束を果たすためにと、探偵は悪人を手土産にそこに通うのだった。




 『夢幻紳士』とのクロスとなります
 そんなんしらん-って方にもわかるようにと、ぐだぐだ書き直しておりました。
 さて、どうでしょう?お楽しみいただけたら、よいのですが。

 夢幻真実也氏は強いのだけど、強すぎないのがキモなので、魔女に干渉することはできても、倒すことは出来ない感じ?にしてみました
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