円環世界。
それはまどかを中心に、呪いに飲まれる前に救われた魔法少女達の意識の集合体だった。
時間は勿論あらゆる束縛から解き放たれた魂達は、そこで穏やかに過ごす。
まどかに望めば、現実世界を見せてもらうことや、人間として生まれ変わる事もできた。
もっとも、そうして去っていく魔法少女は僅かであったが。
*****
「あ!おーい、杏子~!」
「あん?さやかか」
杏子が掛けられた声に視線を向けると、さやかが手を振りながら近寄ってきていた。
再会した後。感極まって、まさに飽きるまで語り合い現状の平常運転に至る。
「今話してた娘、外人さん?」
「ああ。フランス人らしいぜ」
さやかは遠目に、杏子と長い金髪の魔法少女が親し気に話すのを、見かけていたのだった。
「あんたって、意外と誰とでもすぐ仲良くなっちゃうよね」
「そうかな?まあ、人見知りはしないけどさ。なんにしろ言葉が通じるのは便利だよな」
呑気に答える杏子を、さやかが不機嫌そうに睨む。
「こんなにフランクでかわいいさやかちゃんが、なんだか避けられちゃってるってのにさー!」
ムキー!さやかが怒りにコブシを振り回す。
「あーそれか」
「な、なによ……」
意味ありげに、にまりとする杏子にさやかが怯む。
「さやかはまどかに遠慮なさすぎるからね。皆、一目置いちゃってるのさ」
「なぬ?」
「ワタシらは、まどかが人だった時の友達だって話を聞いちゃって、すっかり遠慮なくしちゃってるけど、他の魔法少女からすると、円環の女神様だからね。別格さ。それはわかるだろ?」
「……」
杏子の言葉に、さやかは眉をよせる。
「さっきのフランス人、ジャンヌなんかたいへんだよ?あの娘、信心深いからまどかみたらお祈りはじめちゃうんだぜ?」
「…………」
「まどかとしては普通に接してもらいたいっぽいけど、こればっかりはな」
「……だからだよ」
雰囲気の変わったさやかに、杏子が首を傾げた。
「ん?」
「私、あの娘が人の頃は、親友だったんだって。ずいぶん迷惑かけたっぽいんだよね。詳しくいいたがらないとこ、無理矢理聞きだしたんだけどさ」
――む、無理矢理?
杏子が思わず身構える。
「なのに、忘れちゃって……」
「世界から居なくなったんだろ?仕方ないだろ?」
肩を落とすさやかを杏子が慰めるのだが。
「ほむらは……ほむらだけは、憶えてたじゃん」
さやかは唇を震わせて、苦い思いを吐き出す。
「ああ。あれは仕方ないだろ?それに、1人憶えてるのも辛いだけじゃないか?」
「世界中から忘れられちゃうほうが、辛いに決まってるよ!それに私は、私は憶えていたかったよ」
「……」
本当に大変な時に力になれなかった。友人として不甲斐ない自分に苛立つのは杏子も同じだ。
「まどかのやつ、皆に囲まれて微笑んでいるけど、特別扱いされちゃって、寂しがってるの……わかっちゃうんだよね。だから、せめてもの罪滅ぼしなのかな。人として、友達として接しようって」
「相変わらずヘンにするどいなぁ」
思わず聞けたさやかの真意に、杏子は呆れたように微笑む。
「ほっとけ!とにかく!私も他の魔法少女と仲良くしたいし、紹介してよね?」
「ああ、わかったよ」
「あ!まどか発見!こら、嫁!!どこほっつきあるっとったー!」
多くの魔法少女に囲まれながら移動するまどかを見つけたさやかが、大声を上げる!
「あっ?!さやかちゃん!なんでいきなり、はしゃいじゃってるの?」
「そんな嫁には、お仕置きじゃい!」
目を丸くするまどかに、さやかは縮地で接近し抱きしめ、くすぐり倒す!
「え、え?いやぁー!」
「…………」
いともたやすく行われるえげつない行為に、周りの魔法少女はドン引き。
――人として友達として、いろいろ間違ってんぞ?さやか
杏子はため息をついた……。