「ねえ、まどか!」
「なあに?さやかちゃん」
いつものように、さやかがまどかにまとわりついていた。
「あんた、この宇宙全ての可能性が見えるんでしょ?」
「ん?うん」
「じゃあさ!魔法少女として、大活躍してる私の話をしてよ!」
「えっ?!」
さやかの提案に、まどかは目を泳がせた。
「ふふっ、マミさんみたくベテランになって、後輩指導なんかしちゃってたりー?」
「えーっと」
ご機嫌なさやかに反比例するように、まどかの視線がますます下がる。その微妙な反応に、わかっちゃう女さやかが反応する。
「……」
「んーんー」
「な、なにその微妙な態度。実際のとこ、どうなのさ?」
さやかは眉をよせ、目を細めてまどかをねめつけた。
「さやかちゃんは魔法少女になると、大体一週間以内にお迎えに行ってるし……」
「なっ!」
「毎回、仁美ちゃんに上条君取られちゃって、特大スランプでやられちゃうんだよ」
「知ってる。それ知ってる」
思い当たる節のありまくるさやかは、顔をしかめた。
「最短は一時間かな」
「なぬっ?!な、なにがあった!私!」
「魔法少女になった帰り路。魔獣の群れを見つけて得意絶頂に突撃かましたんだよ」
「……」
「電話でマミさんが止めたのに、リトルルーキーさやかちゃんがやっちゃいますよー!って」
「…………」
さやかの苦虫をダースで噛みつぶしたような顔に、まどかも掛ける言葉が見つからない。
「もう!そんなしょっぱい情報はいいの!逆だよ逆!カッコイイ私の話が聞きたいの!もっとよく探しておくれよ!私の嫁でしょ!」
「わ、わ!さやかちゃん、おちついて!んーんー」
まどかはガクガクとさやかに揺さぶられつつ、視線を空にさ迷わせはじめた。その瞳が虹色の光を帯び、多くの世界を見通す。
「ベテランになった私は髪なんかも伸ばして、そりゃーもう無双状態?」
熱心に探し出したまどかの横で、さやかは機嫌を直した。
「髪伸ばしちゃうんだ?短いほうがさやかちゃんぽいけどな」
「ちっちっち!わかってないなーまどかは」
視線をさ迷わせているまどかの言葉に、さやかは小さく何度も首を横に振りながら長く息を吐く。わかってない。まどかはこれぽーっちもわかってない。
「闘う女の子にとって、長い髪の毛ってどうだと思う?」
「んー邪魔かなって」
「そそ!つまり!その邪魔な長い髪の毛というハンデがあっても敵を圧倒するという証!長い髪は、闘う女の子の強さと美しさの象徴ってわけ!」
「そうなんだ……」
さやかの力説する謎理論に驚いて、まどかの瞳の虹色の輝きが消えてしまう。
「あんただって、アルティメットバージョンだと髪の毛伸びるじゃない?」
「いわれてみれば!」
ガッテン!納得のまどかは、ぽんと手を打った。
「そっかそっかぁ!だからほむらちゃんは、あんなに髪の毛が長いのかぁ!」
「……あんたって娘は、なにかってゆうとほむらほむらだねぇ」
目を閉じ両手で頬を挟んだまどかがクネクネしだすのを、さやかはじとりと眺める。
「あ!ってことは、今のさやかちゃんは……」
「まーどーかぁー!ゆるさん!」
ちらりと向けられたまどかの視線。そのいいたいことの意味をわかっちゃったさやかは、まどかに踊りかかる!
「悪い嫁には、お仕置きなのだ!」
「ひゃあ!く、くすぐるのわぁーやめてぇ!」
まどかの悲鳴が響き渡った!
*****
「はぁはぁ、あん……ひどい」
「まどかが可愛すぎてつい、やりすぎた」
肩で息をして座り込むまどかの横で、さやかはてへぺろり。
「とにかく!格好いい私を見つけてよ。今度こそ!」
「う、うん」
まどかの瞳が虹色に輝く。
「大体さ。近接戦闘が強くて回復もできちゃうなんて、弱いわけないじゃん?武器だって花形の剣なんだし?そりゃウチらのメンツじゃ、圧倒的にみそっこだけどさ。他の三人はベテランだし、まどかはチートだし、比べるのがおかしいっての!」
「んーそうだねぇ」
「序盤を乗り越えれば、きっと大成してマミさんみたくなるに違いない!」
「んー……」
多くの世界で脱落し続けるさやかを見続けながら、まどかは思う。
さやかちゃん、本当に魔法少女に向いてないんだなぁ。歴代魔法少女のなかでも、群を抜いてお迎えが早いもんね。ほむらちゃんのいったとおりだ……。それに比べて、いつだってベテランさんになっちゃうほむらちゃん!やっぱりすごいなって!あ!またさやかちゃんを助けてる!うふっ!かわい、かっこよすぎるよ!
「うぇひひっ!」
頬を染め嬉しそうに微笑むまどかに、さやかの視線の温度はだだりと下がる。
「さてはー!またほむらだな!」
「ひぅ!」
「お仕置きだぁ!」
「いやぁーあー!」
再び、まどかの悲鳴が響き渡った!
*****
下校時間、校門近く。
「さやか!」
「あれ、恭介。今帰り?」
上条の声にさやかが振り返る。腰まで伸びた青い髪が揺れた。