円環物語   作:ぶんた

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その6。下

「みつけた!ロングさやかちゃん!」

「おおっ!」

 

 奇跡の大発見に、二人は大はしゃぎ!

 

「ロングも似合ってるよ!かわいいっ」

「むぅ」

 

 目を輝かせるまどかの横で、さやかはちょっと口をとがらせる。まさかほんとにロングにしてるとは……。自分のことながら、よっぽどはしゃいじゃってるに間違いない。

 

 

*****

 

 

「今日は音楽室が使えないらしくてね。ちょっと時間が空いちゃったんだ」

 

 青く長い髪を揺らすさやかを、上条は眩しそうに見つめた。

 

「だから、一緒にどっか寄れればって。どうかな?」

「えっ!あ、うーん……」

 

 上条のはにみかみながらの提案に、さやかは心底困ったように眉をよせる。

 

「嬉しいおさそいなんだけどさ。これからちょっと、ね」

「あ!パトロールなんだね」

「う、うん。ごめんね」

 

 歯切れの悪いさやかの態度に、事情を知っている上条は察したようだった。

 

「僕のほうこそごめん!さやかは正義の魔法少女だから、僕が独り占めにはできないよ」

「もう!私は恭介だけのものだって!」

「さやか……」

 

 校門近くでイチャつきだす二人を遠巻きに下校する生徒達。この二人の関係は全生徒公認のものだ。

 

「恭介のほうが、私より忙しいじゃん!折角のチャンスだったのに残念だな……」

 

『今日の見回り、私一人でするわ』

『ほむら?』

 

 肩を落とすさやかに、ほむらからテレパシーが発せられた。

 視線をめぐらせると校門横の木に、ほむらが腕を組み寄りかかっていた。首を傾げ、さやかを見つめている。

 

『折角なのでしょう?いってらっしゃい』

『ほむら!さんきゅ!貸しにしといて!』

『あなたに貸し?……ヘンゼルとグレーテルね』

『?』

 

 んんん?さやかは眉をよせる。

 

『そのココロは!【かし】たくさんで家が建つ!ということさ!』

 

 割り込んできたキュゥべえが得意げに言い放つ!

 

『イエーイ!』

 

 さやかの視線の先。木の横でほむらとキュゥべえがハイタッチしていた。

 

『あ、あんたら……。ほんと仲いいよね』

『は?そんなわけないでしょ?』

『まったくだよ。さやか。君は目か頭が悪いと思う。致命的にね』

『残念だけど、両方よ』

『さやか。強く生きておくれよ?』

 

 ――こ、こいつら……っ!

 息ぴったりにこけおろしてくる二人に、さやかは握るコブシを震わせる。

 

「さやか?」

 

 そんなさやかを上条は不思議そうに眺め、声を掛けた。静かに立ち去る二人を睨みつつ、さやかは問い掛けた上条に向き直った。

 

「ちょっと大丈夫になったよ。いこっか」

 

 気恥ずかし気にさやかは上条に、にっこり微笑みかけた。

 

 

*****

 

 

「ふんふん、それでそれで?」

「お茶目なほむらちゃん、かわいいなって!」

「ほむらじゃなくて!大事なのは、そこから先じゃん?」

「…………」

「で!続きは?」

 

 真っ赤な顔して視線を下げるまどかを、さやかは急き立てる。

 

「か、上条君と……。人気のないとこで、いちゃいちゃしてるよ」

「そ、そっか!」

「か、上条君の手がさやかちゃんの体を撫でるようにすべりおちて、スカートの……」

「いやいい!見なくていい!ってゆーか、見ちゃだめ!!」

「…………」

「…………」

 

 気まずい沈黙が場を支配した……。

 

 

*****

 

 

 夜。街はずれ。

 

「うぉおおおん……!」

 

 多くの魔獣がわさわさと蠢く。

 

「どうにもまずいことになったね」

「そうね。これだけの数に囲まれて距離を詰められると、弓で捌くのはちょっと厳しいわね」

 

 その魔獣達の包囲する中心。物陰に身を潜めたほむらとキュゥべえは状況を測っていた。

 

「しかもその足。動かないんじゃないのかい?」

「私の治癒能力だと、これが限界ね」

 

 襲われる一般人を、慌てて助けたのがけちのつきはじめだった。そこでほむらは右足を大きく損傷。街に被害が及ばないようにと、その群れを街はずれに誘導し今に至る。

 

「まあ、仕方ないわ」

「相変わらず、死を前にしても冷静だね」

「ええ。まどかに会えるんだもの。結果的にはどうでもいいわ」

「あーまどかね」

 

 忍び寄る死を前に静かに微笑みすら浮かべるほむらに、キュゥべえは首を傾げた。

 

「友達の少ない君の脳内フレンドへの思い込みっぷりといったら、感情のない僕ですら哀れみを理解するよ」

「ねえ、白饅頭。貴様のその曲解について、徹頭徹尾話し合う必要があると思うの」

「断固お断りするよ。これ以上の精神汚染で色相を曇らせたくないしね」

 

 そうして睨み合う二人に、静かに歩み寄る人影。

 

「あ、ほむらみっけ!元気そうでよかった!」

「さ、さやか?!」

 

 にっこり話しかけてくるさやかに、ほむらは驚愕する。

 キュゥべえからの緊急信号を受けて、駆けつけたさやかの登場だった。

 

「あ、貴女どうやって?」

 

 百を超える魔獣に囲まれていたはずだ。それも雑魚ではない。それなりの強さの持つものばかりの群れだった。

 

「どうって。脇を通ってきただけだよ」

 

 あたりまえの質問に、あたりまえの答えをいうように平然とさやかは答える。

 

「怪我してたんだね。ちょっと見せて」

「ちょっと!そんなことしてる場合じゃ……」

 

 ほむらの右足を調べだすさやかに、ほむらが慌てた。包囲され、一斉攻撃を今か今かと警戒していたほむらにとって、そんな悠長な事をしてる場合ではない。

 

「ごめんね。ほむら」

「えっ?!」

 

 さやかの傷の治癒をしつつ呟いた言葉に、ほむらは目を見開いた。

 

「ぬおおぉーん……」

 

 周囲の魔獣が一斉に滅びだす。

 

「なっ!何事?」

「ああ、心配いらないよ。通りすがりに、全部斬り捨てたから。でもコアの回収がたいへんかも」

「達人に斬られると、斬られたことに気づかないってアレかい?アレなのかい!」

 

 とんでもないことを、なんでもないようにいうさやかに、ほむらは目を見開き、キュウべぇは目を瞬かせた。

 

「もう動けるでしょ?さ、コア拾って!キュゥべえも早く!また撒き散らして!なんて、マミさんに怒られちゃうからさぁ」

「もぅ……どれだけ出鱈目なのよ」

 

 眉をよせるさやかを、ほむらは微笑みまじりの呆れた視線で眺めた。

 

 

*****

 

 

「これが、私?!ヒュー!」

「さやかちゃん、格好いいなって!」

 

 ハイパーさやかのあまりのハイパーさに、二人は目を丸くする。

 

「えーっと……」

「うん?」

「どれくらいの私の中で、こうなるの?」

「ん!んー、一億と二千ぶんの一?」

「あ、あくえりおーん!」

 

 さやかの絶叫が響き渡った!

 

「………」

 

 頭を抱え絶叫するさやかの横で、まどかは口元に手を当てて観測する。

 罠を張り、騙くらかしてまでの強引な手口でさやかに告白させてみたり。赤い天狗のお面を被った謎の剣の達人を引き合わせたり。あの風変わりなキュゥべえの仕業だ。

 さやかにだけではない。マミにも杏子にも。他の魔法少女達にも暗躍しつつ様々なサポートを行っているようだった。

 まどかのことでふさぎがちなほむらに、ああしてまとわりついているのもその一環だろう。

 今まで観測できなかった不思議なキュゥべえ。まどかは首を傾げる。でも……。

 ほむらちゃんをよろしくね?まどかのつぶやきに、そのキュゥべえはピクリと反応し周りを見回した。視線があった?そんなことはありえない。でも……。

 

 とりあえず。まどかは観測を止め、さやかを慰めることにした。




 ふと気づいたらキュゥべえになっていた。
 まどかのいない見滝原。とりあえず、まどかの「お迎え」を全力で阻止することにした……。

『ハイパーさやかちゃん物語』のはずが、
『キュゥべえに生まれ変わったからには魔法少女は救ってみせる』になってました。なぜ?

 これのせいで、タグがふえまみた……。
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