「みつけた!ロングさやかちゃん!」
「おおっ!」
奇跡の大発見に、二人は大はしゃぎ!
「ロングも似合ってるよ!かわいいっ」
「むぅ」
目を輝かせるまどかの横で、さやかはちょっと口をとがらせる。まさかほんとにロングにしてるとは……。自分のことながら、よっぽどはしゃいじゃってるに間違いない。
*****
「今日は音楽室が使えないらしくてね。ちょっと時間が空いちゃったんだ」
青く長い髪を揺らすさやかを、上条は眩しそうに見つめた。
「だから、一緒にどっか寄れればって。どうかな?」
「えっ!あ、うーん……」
上条のはにみかみながらの提案に、さやかは心底困ったように眉をよせる。
「嬉しいおさそいなんだけどさ。これからちょっと、ね」
「あ!パトロールなんだね」
「う、うん。ごめんね」
歯切れの悪いさやかの態度に、事情を知っている上条は察したようだった。
「僕のほうこそごめん!さやかは正義の魔法少女だから、僕が独り占めにはできないよ」
「もう!私は恭介だけのものだって!」
「さやか……」
校門近くでイチャつきだす二人を遠巻きに下校する生徒達。この二人の関係は全生徒公認のものだ。
「恭介のほうが、私より忙しいじゃん!折角のチャンスだったのに残念だな……」
『今日の見回り、私一人でするわ』
『ほむら?』
肩を落とすさやかに、ほむらからテレパシーが発せられた。
視線をめぐらせると校門横の木に、ほむらが腕を組み寄りかかっていた。首を傾げ、さやかを見つめている。
『折角なのでしょう?いってらっしゃい』
『ほむら!さんきゅ!貸しにしといて!』
『あなたに貸し?……ヘンゼルとグレーテルね』
『?』
んんん?さやかは眉をよせる。
『そのココロは!【かし】たくさんで家が建つ!ということさ!』
割り込んできたキュゥべえが得意げに言い放つ!
『イエーイ!』
さやかの視線の先。木の横でほむらとキュゥべえがハイタッチしていた。
『あ、あんたら……。ほんと仲いいよね』
『は?そんなわけないでしょ?』
『まったくだよ。さやか。君は目か頭が悪いと思う。致命的にね』
『残念だけど、両方よ』
『さやか。強く生きておくれよ?』
――こ、こいつら……っ!
息ぴったりにこけおろしてくる二人に、さやかは握るコブシを震わせる。
「さやか?」
そんなさやかを上条は不思議そうに眺め、声を掛けた。静かに立ち去る二人を睨みつつ、さやかは問い掛けた上条に向き直った。
「ちょっと大丈夫になったよ。いこっか」
気恥ずかし気にさやかは上条に、にっこり微笑みかけた。
*****
「ふんふん、それでそれで?」
「お茶目なほむらちゃん、かわいいなって!」
「ほむらじゃなくて!大事なのは、そこから先じゃん?」
「…………」
「で!続きは?」
真っ赤な顔して視線を下げるまどかを、さやかは急き立てる。
「か、上条君と……。人気のないとこで、いちゃいちゃしてるよ」
「そ、そっか!」
「か、上条君の手がさやかちゃんの体を撫でるようにすべりおちて、スカートの……」
「いやいい!見なくていい!ってゆーか、見ちゃだめ!!」
「…………」
「…………」
気まずい沈黙が場を支配した……。
*****
夜。街はずれ。
「うぉおおおん……!」
多くの魔獣がわさわさと蠢く。
「どうにもまずいことになったね」
「そうね。これだけの数に囲まれて距離を詰められると、弓で捌くのはちょっと厳しいわね」
その魔獣達の包囲する中心。物陰に身を潜めたほむらとキュゥべえは状況を測っていた。
「しかもその足。動かないんじゃないのかい?」
「私の治癒能力だと、これが限界ね」
襲われる一般人を、慌てて助けたのがけちのつきはじめだった。そこでほむらは右足を大きく損傷。街に被害が及ばないようにと、その群れを街はずれに誘導し今に至る。
「まあ、仕方ないわ」
「相変わらず、死を前にしても冷静だね」
「ええ。まどかに会えるんだもの。結果的にはどうでもいいわ」
「あーまどかね」
忍び寄る死を前に静かに微笑みすら浮かべるほむらに、キュゥべえは首を傾げた。
「友達の少ない君の脳内フレンドへの思い込みっぷりといったら、感情のない僕ですら哀れみを理解するよ」
「ねえ、白饅頭。貴様のその曲解について、徹頭徹尾話し合う必要があると思うの」
「断固お断りするよ。これ以上の精神汚染で色相を曇らせたくないしね」
そうして睨み合う二人に、静かに歩み寄る人影。
「あ、ほむらみっけ!元気そうでよかった!」
「さ、さやか?!」
にっこり話しかけてくるさやかに、ほむらは驚愕する。
キュゥべえからの緊急信号を受けて、駆けつけたさやかの登場だった。
「あ、貴女どうやって?」
百を超える魔獣に囲まれていたはずだ。それも雑魚ではない。それなりの強さの持つものばかりの群れだった。
「どうって。脇を通ってきただけだよ」
あたりまえの質問に、あたりまえの答えをいうように平然とさやかは答える。
「怪我してたんだね。ちょっと見せて」
「ちょっと!そんなことしてる場合じゃ……」
ほむらの右足を調べだすさやかに、ほむらが慌てた。包囲され、一斉攻撃を今か今かと警戒していたほむらにとって、そんな悠長な事をしてる場合ではない。
「ごめんね。ほむら」
「えっ?!」
さやかの傷の治癒をしつつ呟いた言葉に、ほむらは目を見開いた。
「ぬおおぉーん……」
周囲の魔獣が一斉に滅びだす。
「なっ!何事?」
「ああ、心配いらないよ。通りすがりに、全部斬り捨てたから。でもコアの回収がたいへんかも」
「達人に斬られると、斬られたことに気づかないってアレかい?アレなのかい!」
とんでもないことを、なんでもないようにいうさやかに、ほむらは目を見開き、キュウべぇは目を瞬かせた。
「もう動けるでしょ?さ、コア拾って!キュゥべえも早く!また撒き散らして!なんて、マミさんに怒られちゃうからさぁ」
「もぅ……どれだけ出鱈目なのよ」
眉をよせるさやかを、ほむらは微笑みまじりの呆れた視線で眺めた。
*****
「これが、私?!ヒュー!」
「さやかちゃん、格好いいなって!」
ハイパーさやかのあまりのハイパーさに、二人は目を丸くする。
「えーっと……」
「うん?」
「どれくらいの私の中で、こうなるの?」
「ん!んー、一億と二千ぶんの一?」
「あ、あくえりおーん!」
さやかの絶叫が響き渡った!
「………」
頭を抱え絶叫するさやかの横で、まどかは口元に手を当てて観測する。
罠を張り、騙くらかしてまでの強引な手口でさやかに告白させてみたり。赤い天狗のお面を被った謎の剣の達人を引き合わせたり。あの風変わりなキュゥべえの仕業だ。
さやかにだけではない。マミにも杏子にも。他の魔法少女達にも暗躍しつつ様々なサポートを行っているようだった。
まどかのことでふさぎがちなほむらに、ああしてまとわりついているのもその一環だろう。
今まで観測できなかった不思議なキュゥべえ。まどかは首を傾げる。でも……。
ほむらちゃんをよろしくね?まどかのつぶやきに、そのキュゥべえはピクリと反応し周りを見回した。視線があった?そんなことはありえない。でも……。
とりあえず。まどかは観測を止め、さやかを慰めることにした。
ふと気づいたらキュゥべえになっていた。
まどかのいない見滝原。とりあえず、まどかの「お迎え」を全力で阻止することにした……。
『ハイパーさやかちゃん物語』のはずが、
『キュゥべえに生まれ変わったからには魔法少女は救ってみせる』になってました。なぜ?
これのせいで、タグがふえまみた……。