円環物語   作:ぶんた

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その8

「ようこそ。ベルベットルームへ」

 

 そこは青く薄暗いカラオケルームの一室。静かに響くピアノの演奏。それに合わせて流れる女性の歌声。不思議な空間だった。

 まどかを迎えた人物は、前かがみに椅子に座っていた。

 嘴のようにすら見える長い鼻と禿げあがった頭。ぎろぎろと見開かれた大きな目は、目玉が落ちてしまいそうだ。そして黒い背広に白い手袋といういで立ち。

 その横には銀色のショート。青いエレベータガールのような恰好の美貌の女性が静かに控える。

 

「私の名はイゴール。円環神まどか様。ようこそ、お出でいただきました。実は、お願いがあったのです」

「お願いですか?」

 

 首を傾げるまどかに、イゴールは大きく頷く。

 

「ここの客人に力を貸してもらいたいのです」

「私は概念なので、そういうことはできないと思いますよ?」

「ああ。いえいえ。そういったことではございません」

 

 少し寂し気なまどかに、イゴールは気遣う視線を向ける。

 

「貴女様のイメージを使わせてもらいたいのです」

「イメージ?」

「ええ。ここの客人は精神を様々な力のイメージに変容させ、闘う術とするのです」

「?」

 

 まどかの頭上に特大のハテナが浮かぶ。さっぱり理解できない。でも。

 

「よくわからないけど、いいですよ。イゴールさん、そのお客さんのためになればってやってるんですよね」

「感謝の極みです」

 

 イゴールは静かに頭を下げた。

 

「さて、折角お越しいただいたのです。なにかお望みはありますか?エリザベス」

「はい。主の命を受け、不肖エリザベス。まどか様歓迎の為、全力を尽くす所存でございます」

 

 青いエレベーターガール、エリザベスがまどかの前に進み恭しく一礼した。

 

「ん?んー」

 

 人差し指を頬にあて、まどかは首を傾げる。

 

「あっ!」

 

 ぽん!思い当たる節に、まどかは手を打った。

 

「実はジャックフロストさんに、憧れてたんです……」

 

 頬を染めたまどかが、もじもじと切り出す。

 

「はい。承りました。ジャックフロスト!カモン!」

 

 エリザベスが掲げた右手でパチリ!と指を鳴らし、呼び掛けた。すると、ビュウと冷気が渦を巻き、雪の妖精が現れる。愛らしい雪だるまのような容貌。ジャックフロストだ。

 

「ヒーホー!マドカとやら!お前、センスいいぜ!」

「すごいっ!本物だっ!」

 

 まどかは興奮に頬を染め、つばを飲む。

 

「まどか様。それは?」

 

 ごそごそと物色し、赤い液体の入った瓶を取り出すまどかに、エリザベスは目を見開いた。

 

「イチゴシロップです」

「まさか、まさかの想定外。可愛い顔してぶっとんでらっしゃるんですね。私、そういう方は大好きでございます」

「帽子はさすがに食べれないかな」

「ヒホッ!?」

 

 目を輝かせ、ペコちゃん然にぺろりしたまどかが、じりじりとジャックフロストに近寄る……。

 宴が始まった!

 

 

*****

 

 

「はー!さすがに頭がキンキンだよ!」

「まさに醍醐味でございますね!」

 

 満足げに微笑むまどかとエリザベス。

 

「他にはなにかございますか?」

「じつはジャックランタンさんにも憧れてて……」

「ジャックランタン、はいりまーす!カモン!」

「ヒーホー!」

 

 エリザベスの掛け声に、カボチャ頭の妖精が現れた!

 

「まどか様。それは?」

「とろけるチーズです。アツアツのカボチャには絶対合いますよ!」

「流石!でございます!」

「ヒホッ!」

 

 二人の宴はまだまだ終わらない!

 

 

*****

 

 

 ペルソナ合成のためにベルベットルームに立ち寄ったワイルド。

 その組み合わせ結果の中に見たことのないものを見つけた。

 桃色のツインテールに、桃色のドレス。魔法少女のようないで立ちのペルソナの名は『魔神。暴食マドカ』。

 

「???」

 

 眉をよせ首を傾げるワイルドの視線に、イゴールは露骨に顔を背ける。

 

「個人的に、超オススメでございますよ!」

 

 エリザベスがこっそり囁いた。




「全ての人の魂の詩」は、ほんと!癒されますよね!

 イゴール初期想定の『女神。円環マドカ』は、回復+ハマ+矢。中盤で、お世話になりそうなスペックですかね。
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