「ようこそ。ベルベットルームへ」
そこは青く薄暗いカラオケルームの一室。静かに響くピアノの演奏。それに合わせて流れる女性の歌声。不思議な空間だった。
まどかを迎えた人物は、前かがみに椅子に座っていた。
嘴のようにすら見える長い鼻と禿げあがった頭。ぎろぎろと見開かれた大きな目は、目玉が落ちてしまいそうだ。そして黒い背広に白い手袋といういで立ち。
その横には銀色のショート。青いエレベータガールのような恰好の美貌の女性が静かに控える。
「私の名はイゴール。円環神まどか様。ようこそ、お出でいただきました。実は、お願いがあったのです」
「お願いですか?」
首を傾げるまどかに、イゴールは大きく頷く。
「ここの客人に力を貸してもらいたいのです」
「私は概念なので、そういうことはできないと思いますよ?」
「ああ。いえいえ。そういったことではございません」
少し寂し気なまどかに、イゴールは気遣う視線を向ける。
「貴女様のイメージを使わせてもらいたいのです」
「イメージ?」
「ええ。ここの客人は精神を様々な力のイメージに変容させ、闘う術とするのです」
「?」
まどかの頭上に特大のハテナが浮かぶ。さっぱり理解できない。でも。
「よくわからないけど、いいですよ。イゴールさん、そのお客さんのためになればってやってるんですよね」
「感謝の極みです」
イゴールは静かに頭を下げた。
「さて、折角お越しいただいたのです。なにかお望みはありますか?エリザベス」
「はい。主の命を受け、不肖エリザベス。まどか様歓迎の為、全力を尽くす所存でございます」
青いエレベーターガール、エリザベスがまどかの前に進み恭しく一礼した。
「ん?んー」
人差し指を頬にあて、まどかは首を傾げる。
「あっ!」
ぽん!思い当たる節に、まどかは手を打った。
「実はジャックフロストさんに、憧れてたんです……」
頬を染めたまどかが、もじもじと切り出す。
「はい。承りました。ジャックフロスト!カモン!」
エリザベスが掲げた右手でパチリ!と指を鳴らし、呼び掛けた。すると、ビュウと冷気が渦を巻き、雪の妖精が現れる。愛らしい雪だるまのような容貌。ジャックフロストだ。
「ヒーホー!マドカとやら!お前、センスいいぜ!」
「すごいっ!本物だっ!」
まどかは興奮に頬を染め、つばを飲む。
「まどか様。それは?」
ごそごそと物色し、赤い液体の入った瓶を取り出すまどかに、エリザベスは目を見開いた。
「イチゴシロップです」
「まさか、まさかの想定外。可愛い顔してぶっとんでらっしゃるんですね。私、そういう方は大好きでございます」
「帽子はさすがに食べれないかな」
「ヒホッ!?」
目を輝かせ、ペコちゃん然にぺろりしたまどかが、じりじりとジャックフロストに近寄る……。
宴が始まった!
*****
「はー!さすがに頭がキンキンだよ!」
「まさに醍醐味でございますね!」
満足げに微笑むまどかとエリザベス。
「他にはなにかございますか?」
「じつはジャックランタンさんにも憧れてて……」
「ジャックランタン、はいりまーす!カモン!」
「ヒーホー!」
エリザベスの掛け声に、カボチャ頭の妖精が現れた!
「まどか様。それは?」
「とろけるチーズです。アツアツのカボチャには絶対合いますよ!」
「流石!でございます!」
「ヒホッ!」
二人の宴はまだまだ終わらない!
*****
ペルソナ合成のためにベルベットルームに立ち寄ったワイルド。
その組み合わせ結果の中に見たことのないものを見つけた。
桃色のツインテールに、桃色のドレス。魔法少女のようないで立ちのペルソナの名は『魔神。暴食マドカ』。
「???」
眉をよせ首を傾げるワイルドの視線に、イゴールは露骨に顔を背ける。
「個人的に、超オススメでございますよ!」
エリザベスがこっそり囁いた。
「全ての人の魂の詩」は、ほんと!癒されますよね!
イゴール初期想定の『女神。円環マドカ』は、回復+ハマ+矢。中盤で、お世話になりそうなスペックですかね。