人形使いと魔女の夢   作:ゆず菜

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書き溜めていたので投稿します。




第1章 人形使いと文学少女①

路地裏から出てきた少女は今日何度目か分からないため息を漏らす。

何故なら見知らぬ場所で見知らぬ少女にぬいぐるみの補修をされているからである。

普段表情を表に出さない少女であったが、この見知らぬ少女に話しかけられてからは気だるげな顔、心底嫌そうな顔ばかり出てしまう。

ここまで行くと一種の才能ではないかと疑ってしまうほどだ。

 

「ねぇ!貴女名前はなんて言うの?」

 

見知らぬ少女は器用にぬいぐるみの足を縫い合わせながら質問をしてきた。

少女の顔を一切見ないながらも元気よくまるで拡声器でも持っているかの如く大きな声だった。

 

「お前うるさい。黙れ」

 

心底嫌そうな顔の少女はいつもより声のトーンを落として話しているのだが、肝心の見知らぬ少女には全くと言っていいほど効いていなかった。

 

「お前じゃないわ!私にはロロット・シュヴァンテと言うとっても素晴らしい名前があるのよ!」

 

自分で素晴らしい名前と言い放つロロット・シュヴァンテは両手を腰に当てフフンと満足気な顔で鼻を鳴らした。

それを見た少女は心底嫌そうな顔からもっと心底嫌そうな顔にレベルを上げもはや生ゴミ以下の存在を見るような目である。

 

「そ、その目……もっとその蔑んだ目で私を……って違う!!貴女の名前を教えて頂戴!」

 

少女の感情は無を通り越してしまった。

好きの反対は無関心という言葉がどれほど正しいか知ら示された瞬間でもある。

だが、少女は知っている。

この手の生き物は無視をすればするほどに突っかかって来ることを。

 

「無い」

 

無視をせず尚且つ端的に会話を終わらせることが出来る無敵の言葉を言い放った。

過去に何度か名前を聞かれたことがあるがこれを言った瞬間に会話は終了し、話しかけてくる奴らはいなくなった。が、ロロット・シュヴァンテは一味違った。もちろん少女にとって悪い意味である。

 

「何それ!!かっこいいわね!!あんたに名乗る名前は無いぜ……的なやつかしら!?」

 

もう少女はやけくそだった。

コイツと話していると自分までアホになっていく。そんな気がしたのですぐにでも会話を終了させたかった。

だがしかし、本当に少女に名前など無い。

考えるのも面倒だったのでロロット・シュヴァンテの話に乗ることにしたのだ。

 

「そう。だから無い」

 

「そうなのね!なら貴女は今日からジーバ・シュヴァンテよ!」

 

本当になんなのだコイツは。

自ら話題を振ってきたくせにそれに乗らずあまつさえ新しい名前まで作り出すとは。

無関心という感情から逆に恐怖という感情に変わる。

今まで対峙してきたどんな凶暴な奴らよりも段違いに恐怖心に晒される。

そしてさりげなくファーストネームを同じにして来るあたりコイツはもう取り返しのつかないところまで来ているのだろう。

だが少女にそれを拒否することはしなかった。

正確にはしたくないのである。

これ以上話を続けると少女の命に関わるからだ。

もちろん比喩であるが、それほどまでに少女は疲弊しきっていた。

 

「もう、それでいい……」

 

「それじゃあジーバ!これからもよろしくね!!」

 

これからもよろしく、そうロロット・シュヴァンテは間違えなく言った。

まさかとは思うが着いてくるわけではなかろうか?

いや、そんなはずがない。

出会って数分の他人と一緒に来るなど常人がすることでは無い。

だがロロット・シュヴァンテは常人では無い。

その事を身を持って経験したジーバは考える事も放棄した。

 

「私の夢は世界中の人達に私が書いた本を読んでもらって笑顔になってもらうことなの!だから色々なことをリアルに体験したかったのよね!」

 

すると補修も終わり、そっとジーバの元へぬいぐるみを返すロロット・シュヴァンテ。

その顔は満面の笑みだった。

 

「おうガキンチョ!直してくれてありがとな!」

 

直してもらったぬいぐるみは上機嫌にロロット・シュヴァンテにお礼をする。

そしてジーバはこのぬいぐるみが格好の餌になることを悟った。

 

「ぬいぐるみが喋っているわ!?凄い、凄いわジーバ!!貴女は魔法使いなのね!!」

 

「そうだな」

 

「ならこの子にも名前をつけましょう!!」

 

「そうだな」

 

「そうね……。ベア・シュヴァンテなんでどうかしら!?」

 

「そうだな」

 

「よろしくね!ベア!!」

 

「おうよ!直してもらった恩は返すぜガキンチョ!」

 

「そうだな」

 

思考を停止したジーバと上機嫌のベア、テンションが高いロロット・シュヴァンテ。

人はみなこの状況を見たらどう答えるのか?

否、まず見ないふりをするだろう。

それほどまでにジーバ達の空間は歪んでいたのだった。




文学少女との出会いを描きました。
ここで初めて名前が出ますが、執筆当初は名前を出す気はなく文学少女のままで行こうと思っていました。ですが筆者本人の感情移入がしにくくあえなく名前をつけることにしました。
名前の由来は特にありません。
僕の考えたかっこいい名前()です。
今回の文は短めですが、②に続きますので悪しからず。

のろのろ更新で行きますがよろしくお願いします。
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