Fate/stay night[Limited Zero Over] 作:メカ好き
見慣れた光景は、地獄と化していた。燃え盛る炎とそれに焼かれる町並み。そして既に燃え尽きた真っ黒な人であったもの。
オレは絶望した。
家族、友人、知人全てを失ったが故に。
「ああ・・・」
オレは嫌悪した。
力を持っていたにも関わらず、何も出来なかった自分自身を。
「ああ・・・」
オレは憤怒した。
このような災厄を振り撒いた存在その物に。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!」
憤怒に任せ元凶たる空に浮かぶ孔を睨み付けた。覚えていたのはそこまでだった。
その後、オレ、『■■士郎』は決意する。正義の味方になることを。
全ての人を救うだなんて言わない・・・
ただ・・・
少しでも多くの人々が心から笑える様に・・・
少しでも救われない人々が救われる様に・・・
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
久方ぶりに見たあの夢。
全てを失った、あの大火災。
あの後、オレは衛宮切嗣という男の養子となり衛宮士郎となった。
あれから10年。なぜ、あの夢を見たのか。何かの予兆なのか。あれの時期まで長い年月が有るため違うと思うが・・・
「・・・ん」
隣の温もりからくぐもった声がする。顔を向ければ愛おしい少女の寝顔がそこにはあった。
間桐桜。
着替えのジャージを手に向かうは脱衣場。そこで顔を洗い、水気を拭き取ってから鏡を見る。そこに写るのは赤髪に童顔の、見た目は至って普通の少年の顔────ただ一点、左の額から目元にかけて浮かぶ炎の様な痣を除いて・・・
中庭に出たオレは、何時もの様に木刀を正眼に構える。己に許された数少ない魔術の内の一つを応用して行うシャドートレーニング。思い浮かべるは青い軽鎧を身に纏う血のように赤い槍を手に持つ槍兵。それが像を結んだ瞬間、オレと虚像は動き出した。
先手を取ったのは槍兵。神速の突きを放ってくる。それをオレは刀を持って受け流しながら間合いを詰めて反撃。しかし、槍の柄で受け止められカウンターに蹴りを放ってきた。それを左腕で捌きつつ後退、間合いが切れる。
見合うこと一瞬、再び間合いを詰めて撃ち合う。今度は長い応酬となった。間合いは槍兵の方が長い。しかし、オレにはその動き全てとその先が見えている。故に、オレは常に先を取り続ける。
徐々にオレが押し始めた状況を嫌ったのか、槍兵は強打をもって間合いを再び切る。どうやら宝具を使うつもりらしい。
だが、それは悪手だ。
槍兵が下がりきるその瞬間、オレは槍兵の無意識に潜り込み袈裟斬り一閃。それで勝敗は決した。
構えを解き、一息吐く。気が付けば空は明るくなっており、屋敷から微かに味噌汁の良い臭いが漂ってきていた。ちょうど良い時間だと鍛練を切り上げ屋敷に戻る。先ずはシャワーを浴びなければ。
シャワーを浴び、身支度を済ませた士郎は台所へと向かう。そこでは桜が朝食の準備をしていた。
「おはよう、桜」
「あ、おはようございます。士郎さん」
満面の笑顔で挨拶を返してくれる彼女に近づく。どうやら後は食卓に並べるだけのようだ。
「運ぶよ」
「ありがとうございます」
食卓に桜の作った朝食を運んで行く。最初の頃は拙かった彼女の料理の腕は、今ではオレと同等かそれ以上だ。正直、ちょっと自分の事を情けないと思ってしまっている。こうやって、男は女性に頭が上がらなくなっていくのかもしれない。
「二人とも、おっはよーーー!!」
元気一杯の声と共に食卓に飛び込んで来たのは藤村大河。オレは藤ねえと呼んでいる、オレと桜の姉貴分の様な存在だ。
「おはよう、藤ねえ」
「おはようございます、大河さん」
「うんうん、二人とも元気そうで何より。じゃ、朝ごはん食べちゃお!」
「朝食を作ってくれたのは桜で、一応この家の家主はオレなんだけどな・・・」
何時もの平穏な日常。それが脅かされんとしているだなんて、オレは知るよしもなかった。