彼女が死ぬぐらいなら、私が死んだ方が良かったのに。
時は廻り、廻り、軍内部が忙しくなった頃、彼は月へいく計画を知った。
長年この計画は実行される予定だったらしく、彼女を採用した理由は、それらしい。
彼は軍の一員として、その計画実行に携わった。
そして、彼は殿になった。
彼は彼女を守るためには命さえ捨てるだろう。
(最低でもそのときはそう思っていた。)
しかし、彼は、これは体のいい利用だということも知っていた。彼の兄は、彼の事を疎んでいたことを知っていたからだ。
どうせ、死ぬならば、、
ここから始まるのは、戦場である。そして、私が思うには今からでは、神代と呼ばれる時代よりも苛烈な戦いだと。
何せ近代戦でありながら、神代の力を存分に振る舞っていた戦いなのだから。
数多の軍人は、
その一人一人に
彼の話に戻ろう。
彼は、この都市の最終防衛ラインにて、軍の最高司令官として戦っていた。
尚、彼がその任を受けるに当たっては、綿月上官が、死ぬことを避けるということも名目に有ったのだか、今から考えれば、それすらも正しかったのかは、知らぬ。
彼は軍人としての責任として民の避難を優先していた。
軍人は、月では要らないだろう。今尚戦っている穢れがいなくなるのだから。
(最低でも彼はそう信じていた。)
前線が崩壊してからも彼は最終防衛ラインにて、任務を全うしていた。
このラインが崩れることは即ち、彼らの敗けを指すのだ。
この一瞬一瞬が愛おしく苦々しい。彼の軍人としての人生の最高潮であった。
そこで伝令が来る。
『伝令です。防衛ラインが、突破されました。速く避難を』
多分そういっていたのだろうか。その言葉が最後までいわれることはなかった。
目の前で、死んだのだから。
彼は、一瞬理解できなかった。伝令が死んだことに。
しかし、すぐに理解をし、銃を構え撃った。その一瞬の油断がなければ、あんな悲劇もなかったのだろうか。
今ではそんな事を私は思う。
彼はその一瞬で穢れを撃ち抜いたが片腕を失った。
『衛生兵、衛生兵。少将が倒れた。早く救援を』
そんな声がした頃には私は気絶していた。
そして幾時か流れた。そこは脱出用の最終便がある場所だった。
目の前には、彼女がいた。彼女は、最初の方の便に乗っていたと思ったのだが。
『何でこんなところに?』
彼は驚きそして悲しそうに言った。
『貴女が心配だったから』
彼女は、そう言った。そして
『この薬を飲んで、多分この薬を飲めば貴方は楽になるから。』
そんなことのためにいたのか、彼女は。私は嬉しくも悲しかった。
彼女を守るために、私はこの
私は、内心悲しみながら、幸せそうな顔で薬を飲んだ。
もしも、この薬がなければ、彼はこれからの人生を生きていなかっただろうが、こんな業を背負うこともなかっただろうが。
そう防衛ラインが終わっているのにそんな瞬間が、一瞬でもあったのがおかしかったのだ。
彼女の死に様は酷いものだった。顔が半分になっていたのだから。しかも目の前で見てしまった。
彼女の最後の言葉はおそらく
『最後まで生きてください』
あぁ、なんて言葉なのだろう。
これは告白であり呪いだ。
私が穢れの存在に気づいていれば、こんなことも起こらなかっただろうに。
彼は慟哭を発しながら、
彼の
彼は、残りの兵に告げた。
『お前らは早く逃げろ、私はあれを押しにいく』
『ですが、少将はどうするのですか。それでは死ににいくものです。』
『これは復讐だ。』
彼は、片腕を失くしたまま、あれを押しにいき、押した。
そして、都市は炎に包まれ都市は消えたのであった。
彼が救った民は月に消えた。
彼は月では死んだことになっている。
その月が今どうなっているのか、結末は言わないことにする。
ひとつ言うならばムーンセルが、月にあるのは彼女のおかげで、彼女がいなくなった月の民に何が残るのか。
それだけである。
次回
『彼の復活』