IS<インフィニット・ストラトス> 願いの果てに真理在れ   作:月光花

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すっごいお久しぶりです。

今回はアドルフサイドになります。

では、どうぞ。



第13話 不幸は単独では来ない

  Side Out

 

 IS学園に存在するアリーナのピットの1つ。

 

現在は正体不明のISが奇襲を仕掛けてきたことで警備システムが作動し、ピット内は警報ベルの赤い光に照らされている。

 

その一角にて、更識簪は自身の専用機である打鉄の前に立ち、凄まじい速度でキーボードに指を走らせている。

 

この場所に来た目的はもちろん目の前にある専用機の回収なのだが、モノがモノなので見付けたからすぐに運ぼう、というわけにはいかない。

 

所有者本人であろうと、色々とクリアしなければならない手続きが存在する。しかも、現在はこの非常事態のせいで自動的に警備が強化されているのでより面倒をことになっている。

 

現在簪は、手持ちの携帯端末を利用してその警備システムを1つ1つ解除している。

 

その速度は一流のハッカーを思わせる程に迷い無く、一瞬たりとも指を止めない。1つ、また1つと最先端の警備システムを突破していく。

 

心の中では焦りと不安が渦巻いて今にも叫びたい気分だったが、そんなことをしても意味は無い。そんなことをするより一秒でも急げと作業を進める。

 

「出来た……!」

 

小さな電子音に続いて空気圧が抜けるような音が鳴り、打鉄を固定していたロックが解除される。

 

すぐさま手を伸ばし、おいで、と呟くと打鉄は量子変換の光と共に待機状態となって簪の手の中に納まる。

 

大切な宝物を取り戻したような安堵の息を吐きながら、簪は待機状態のISをゆっくりと胸元で抱きしめる。

 

だが、すぐに幼馴染の本音とルームメイトのアドルフの2人を襲撃されたアリーナで放ったらかしにしてしまったことを思い出す。

 

あの時は此処に置いてある専用機のことで頭が一杯になっていたが、落ち着いて考えれば無茶苦茶心配を掛けてしまっているはずだ。

 

「早く……戻らなきゃ……」

 

慌てて踵を返し、簪は出口へと走る。

 

しかし、自動ドアが開こうとした瞬間、ピットの壁が凄まじい轟音を鳴らして崩れ出した。

 

だが簪には崩れるというより、まるで爆発で吹き飛んだような音に聞こえた。そして、その轟音に続いて室内に拡散した衝撃波が簪の体を反対側の壁へと叩き付けた。

 

「きゃっ……!」

 

それほど強くぶつかったわけではなかったが、突然の衝撃でマトモな受け身も取れずに視界が酷くぐらついた。

 

そして、ユラユラと揺れる視界に映ったのは、赤色のセンサーアイを不気味に輝かせた巨大な黒い影だった。

 

徐々に視界が回復し、その影の姿がハッキリと見えるようになる。

 

「IS……!」

 

驚愕と共に呟きながら、簪はそのISの姿に目を走らせる。

 

その機体は全体的なデザインこそ試合に乱入したヤツに似ていたが、細かなシルエットや身に着けている武装は別物だった。

 

通常のISと同じ長さの手足は白いラインを走らせた黒色の装甲に覆われ、肩には丸い盾のような形状の装甲。

 

その左腕全体には全身を覆い隠すほど巨大で、かなりの分厚さを持った物理シールドが装着されている。恐らく、アレでピットの壁をぶち破ったのだろう。

 

だが、簪の目を最も引き寄せたのは、その反対の右腕に固定するように装備された武装。

 

3本の長い筒を三角形を描くように固定し、高速回転する機構を備えた巨大な銃身と右腰の横にぶら下げているドラム型マガジン。

 

一目で分かる程に巨大なガトリングガンである。

 

アリーナに乱入してきたヤツよりも分かりやすい武装をしているせいか、簪の全身が凄まじい緊張に襲われて硬直する。

 

逃げなければ、動かなければいけないと分かっているのに、体は小刻みに震えるだけで思うように動いてくれない。

 

更識簪は決して無力でか弱い少女ではない。その身には今までの人生で培った戦う力が確かにある。

 

だが、実戦……命の危険に対する経験の無さがそれを無力に陥れているのだ。

 

そして、目の前の黒いISは簪の様子を気にせず近付いてくる。ゆっくりと距離を詰めることで心理的な恐怖が増大し、簪はついにその場でへたり込んでしまう。

 

(私……また何も……出来ない……)

 

己の中に生まれる無力感が簪の頭の中にある記憶を映し出す。

 

幼少の頃に刻まれた、自分の存在全てを否定されたトラウマとも言える記憶。

 

『あなたは……無能のままでいなさいな』

 

その言葉が簪の心を締め付ける。

 

歯を食いしばり、悔しさで閉ざされた瞼から一筋の涙が流れる。

 

お前は此処で終わる。何も変われず、あの言葉の通りに無能で終わる。

 

そう誰かに告げられたように絶望的な現実が迫り、それを代行するように黒いISの手が簪の身に近付いてくる。

 

だが、冷たい鋼の手が簪の命を奪おうとした時に……室内に小さな風が吹いた。

 

次の瞬間……

 

 

 

「ソイツに……触れるなぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」」

 

 

 

……叫び声に続き、黒いISが轟音を鳴らして吹っ飛ばされた。

 

黒いISは錐揉み回転しながら空中を滑空し、ピットの壁に激突。その音を聞いて、簪の閉ざされた瞼がゆっくりと開かれた。

 

後頭部で一纏めにされた色素が抜け切ったような少し長めの白髪。

 

淡く光るような、天然の宝石を思わせる空色の瞳。

 

その身を包んでいるのは、つい先日自分も一緒に調整を行った銀色の専用機。

 

簪がこの学園に来て最初に知り合った人であり、ルームメイト。

 

「すまない、更識……なるべく急いだが、怖がらせたようだ」

 

表情は一見冷静だが、黒いIS見る目の中に確かな敵意を宿しながら、アドルフ・クロスフォードがそこに立っていた。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

  Side アドルフ

 

 更識が向かったアリーナを目指して通路を走り抜ける。

 

ただ全力疾走するだけでは曲がり道の際に強引に減速して余計に体力を消耗してしまう。故に、走る速度の減速を最小限にするように肉体の緩急を最大限に生かして走る。

 

その途中で、エクリプスが小さな電子音を放って空中にモニターを映し出した。どうやら、通信チャンネルを部分展開で表示したようだ。

 

走る速度を出来るだけ落とさずに視線を向けると、そこには織斑先生と山田先生の姿が見える。状況とタイミングから察するに、布仏が上手くやってくれたのだろう。

 

『クロスフォード、今何処にいる。いや、何処に向かっている』

 

「襲撃されたアリーナの隣に向かっています。引き返せ、とでも言うのでしたら先にお断りします」

 

『人の話は最後まで聞け、そして内容をよく理解してから会話を進めろ』

 

その言葉に思わず、アンタがソレを言うか、と返したくなるが、今はそんなことをしている場合ではない。

 

とりあえず無言を返し、視線を僅かに通信モニターへと傾けて続きを求める。

 

『ついさっき、襲撃されたアリーナとは別に上空でもう1つ所属不明機の反応があった。何処に降下するかはまだ特定出来ないが、アリーナとその付近の施設が狙われる可能性は充分に高い』

 

その報告に思わず舌打ちしそうになるが、少しでも呼吸を乱さない為にこれまた堪えて走り続ける。

 

今の報告だけでこの通信で何を伝えたいのかは殆ど理解出来たが、こちらも訊くことがあるのでまだ通信を切るわけにはいかない。

 

『お前はそのまま更識簪の所へ向かえ。合流した後、速やかにその場から退避しろ。距離が離れていて、ISの運用に関与しない場所ならば何処でも構わん』

 

「……もし、所属不明機と遭遇した場合は?」

 

『通信を一度コールして切るなり、何でも良いから敵がいたと知らせるようにこちらへ連絡を飛ばせ。直ぐに増援を向かわせる。それまでは、すまないがお前に敵の足止めをしてもらうことになるだろう』

 

「分かりました。それでは、通信終わります」

 

スクリーンを閉じて、即座に走る速度を上げる。

 

報告を聞いてから心中に湧き上がる不安が増していくのが分かる。今までにもこういう感覚はあった。しかも、その時は必ず良くないことがある。

 

最後の曲がり道を曲がる……正確には、方向転換しながらブレーキを掛けてすぐに壁を蹴り飛ばし、その反動で強引に体の向きを変える。

 

そして、そこに見えた光景が、一瞬だけ思考を凍り付かせた。

 

開かれた自動ドアの先に見えたのは、地面にへたり込んで固く目を閉ざした更識と、その体に手を伸ばす白いラインが走った黒色のIS。

 

そして、更識の目から流れる涙を見て……その情報を認識した瞬間、オレの意識は硬直の状態から焼き切れる寸前まで跳ね上がり、クリアになる。

 

……OK。もう充分だ。情状酌量の余地はとうに消し飛んだ。

 

お前は何をしている? 一体何の権利があって、一体誰の許可を得て、ソイツを泣かせていやがる。

 

「ッ……!」

 

足を強く踏み出すと同時に量子変換の輝きがオレの全身を包み込む。チョーカーに手を添える必要など、もはや無い。

 

数分前とは比べ物にならない速さで『エクリプス』の装甲が展開され、思考制御で即座にPICとパワーアシストの出力を『OFF』から『MAX』へと変更。

 

通路の広さから見て飛ぶのは無理だ。だから膝を屈み、両脚に一瞬の力の溜めを置いて床を蹴る。

 

すると次の瞬間、まるでカタパルトで射出されたような加速力が発揮され、全身を凄まじい重圧が襲って視界が点滅するように真っ黒に染まる。

 

「ぐぅ……!」

 

突然の重圧に驚くが、歯を食いしばって強引に意識を引き戻して敵を見る。

 

全く衰えない加速の中で右足を後ろへ引き絞り、蹴りを放つと同時に体を回転。黒いISがオレの接近に反応を示すが、既に遅い。

 

「ソイツに……触れるなぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」」

 

叫ぶと同時に遠心力も加えた蹴りを搭乗者の顔面、赤く光るセンサーアイに叩き込み、右足がめり込んだ状態から足首を捻る。

 

そして、すかさず反動を付けて右足を蹴り抜き、敵を壁際まで吹っ飛ばす。

 

黒いISはその巨体を錐揉み回転させ、細かな機材や装置を巻き込んで壁に激突した。モヤモヤと煙が立ち込めるが、ハイパーセンサ―はまだその奥で動く熱源を捉えている。

 

オレはそちらに目を向けたまま織斑先生に通信を繋ぎ、ワンコール鳴らしただけで通信を切る。アッチが提案した方法だし、これで意味は通じるだろう。

 

というか、敵を目の前にした状況でバカ正直に増援を呼ぶのは危険過ぎる。下手に敵を刺激して遠慮無しに暴れ回られたら笑い話にもならない。

 

「すまない、更識……なるべく急いだが、怖がらせたようだ」

 

ハイパーセンサ―の全方位視界を利用して更識の様子を見ると、まだ体が少し震えているが夢から覚めたような目でオレを見上げている。

 

「重ねてすまないが、動けるか? 増援が来るまでアイツをこのアリーナに閉じ込めたい。手を貸してくれ」

 

「え?……で、でも……どうやって?」

 

そっと差し出したオレのISの手を掴んで立ち上がった簪はまだ少し不安そうにしているが、どうやら動くことは出来るようだ。

 

先程まで怖がっていた女性に頼み事をするのは申し訳ないとは思うが、ここは手を貸してもらわないと苦しい。

 

「お前はこのアリーナの管制室に向かってバリアを展開してくれ。その間、オレが敵をアリーナの中に足止めする。バリアが展開されれば、アイツはこの場に閉じ込められる」

 

そう言うと、オレは一歩先に進み出て身構える。

 

後ろの更識もその視線の方向を見てみると、煙の中からゆっくりと起き上がる黒い影と赤いセンサーアイの光が見えた。

 

「悪いが時間が無い。頼む」

 

「う、うん……その……気を、付けて……」

 

その言葉に小さく頷きを返すと、更識は何度か振り返りながらもオレが入って来た通路の奥へと走り出していく。

 

だが、黒いISはそれを黙って見過ごすようなことはせず、すぐさま右腕に固定されたガトリングを構えようとする。

 

しかし、オレもそんな行動を見過ごすさず、ガトリングの銃身が更識を捉えるよりも速く床を蹴り、黒いISへと距離を詰める。

 

PICを働かせているというのに、加速の瞬間に再び凄まじい重圧が襲い掛かる。

 

(さっきもだが……何だこのデタラメな馬力は……!)

 

ラファールに乗った時とは比べ物にならない負担が肉体に襲い掛かる。大雑把に見積もっても、軽く4~5倍の出力差がある。

 

ISコアだけでなく、原子空母のリアクターでも動力源に取り付けているのではないかと疑いたくなる。

 

更識と行った出力調整にミスは無かったはずだが、この機体を作った技術者達はどんなモンスターマシンを作るつもりだったんだ。

 

それと、先程からオレ自身の動きと機体の反応が思うように噛み合わない。

 

反応が良過ぎる、悪過ぎるとかそういう問題ではない。この機体の出力の振り幅が大き過ぎるのだ。

 

もしラファールと同じ要領で動こうとすれば、暴走列車の如く何度も壁に激突しているだろう。

 

だが、それならすぐにではなくとも対処は可能だ。もう少しで()()()()()

 

懐に入り込みながら左手の裏拳をガトリングの銃身に打ち込んで狙いを逸らし、右手で操縦者の首を掴んで黒いISをピットの壁に空いた大穴の外に押し出す。

 

だが、黒いISはすぐに暴れ出し、左腕の物理シールドを叩き付けるように振り回してきた。咄嗟に両腕を盾にするが、衝撃で真横に吹っ飛ばされる。

 

「くっ……!」

 

即座にウイングバインダーを展開して空中でブレーキを働かせ、そのまま真っ直ぐ降下して地上に着地する。

 

慌てて黒いISの方に視線を向けると、押し出された状態から態勢を整えたヤツはアリーナの地面に着地してすぐにガトリングを構えている。

 

「やばっ……!」

 

ババババババババ!!!!!

 

距離が離れているというのに、鼓膜を叩くような轟音が聞こえる。

 

即座に真横へ跳ぶと、一瞬前にオレが立っていた場所が大量の土煙を巻き上げながら吹き飛んだ。いや、音からして無数の銃弾が着弾しただけなのだが、銃弾の大きさと連射速度が異常だった。

 

着弾点から逸れた場所に空いた穴の大きさから、弾の大きさは人間相手に使う物ではない。戦車などに搭載されている対人機銃でもここまではならないだろう。

 

何発かの銃弾が装甲を叩き、小刻みな衝撃と共にシールドエネルギーが減少する。

 

だが、足を止めては蜂の巣にされるだけだ。そのまま横へと跳躍を続け、黒いISを中心に置いて円を描くように逃げ回る。

 

あれ程巨大なガトリングならば、撃ち続けている間は取り回しが自由に効かないだろう。下手に色んな方向へ逃げ回るよりも、この方が有効だ。

 

最も、こんな単純なやり方数分持てば良い方なのだが。

 

黒いISの両足が宙に浮き、ガトリングの火砲が速度を増してオレに迫る。空中で姿勢を安定させたことで、取り回しが格段に楽になったのだ。

 

即座に両足で地面を蹴り、黒いISの頭上を飛び越えるように跳躍する。それによって一時的にガトリングの火砲を振り切り、黒いISの背後を取る。

 

黒いISが振り向くよりも先に腰を捻り、左の後ろ回し蹴りを打ち込む。

 

だが、背中を狙って放ったオレの蹴りは体を捻った黒いISの巨大な物理シールドに阻まれた。

 

『エクリプス』の馬力を加えた回し蹴りは衝撃と共に轟音を鳴らして黒いISのシールド

を叩くが、数メートル後退しただけで目立った損傷は無い。

 

「ちっ……!」

 

舌打ちしながら、ガトリングの銃口がオレを捉えるよりも先に黒いISの左側面へと飛び退く。

 

一泊遅れて銃弾の嵐が地面を砕き、再び火砲との追いかけっこが始まる。

 

だが、今度は先程とは違い、黒いISは左腕のシールドを前に出してタックルのような姿勢で真っ直ぐ突っ込んできた。

 

マトモに受ければこっちの装甲が砕かれると判断し、ギリギリまで近くに引き付けてから足に力を溜めて黒いISを飛び越えるように跳躍する。

 

それを狙っていた黒いISは即座に振り向き、ガトリングをぶっ放してくる。

 

オレはウイングバインダーを展開してその場から飛翔するが、その際に地上の時を上回る加速Gが全身に襲い掛かる。

 

(予想はしてたが……流石に、キツイ……!)

 

少しは慣れてきたが、回避運動をする度にこれでは長くは持たない。

 

気力で堪えようとしても、このままでは脳が揺らされ続けて意識が強制的にブラックアウトしかねない。

 

負担を最小限に抑える動きで回避を行いながらどうしようかと考えていると、ハイパーセンサ―がアリーナの周囲に展開されたバリアの反応を伝えてくる。

 

「やってくれたか……」

 

呟きながら心の中で更識に礼を述べ、頭の中で組み上げる戦術を『時間稼ぎ』から『足止め』に切り替える。

 

急降下で地面に着地し、黒いISの射線の死角……左側に回り込みながら徐々に距離を詰めていく。

 

向こうはあんな立派な飛び道具を持っているのにこっちは丸腰。距離を取っていては嬲り殺しにされるだけだ。

 

ならば、逆に銃がマトモに使えない距離まで近づいて蹴りをブチ込んだ方がやりやすい。

 

「ふっ……!」

 

短く息を吐いて放つ右のハイキックがシールドの右側を叩き、黒いISの体がオレから見て左側に押される。

 

その瞬間、右脚を素早く引き戻して左のハイキックを放ち、今蹴りを打ち込んだのとは反対のシールドの左側を叩く。

 

すると、右側からの衝撃に耐えていた黒いISの体は正反対の方向から打ち込まれた衝撃に対して踏ん張りが効かず、シールドに引っ張られるように体勢を崩す。

 

すかさず右の回し蹴りで操縦者の顎に打ち上げ、そのまま振り上げた右足を相手の首の後ろに引っ掛けて引き寄せる共に地面に叩き付ける。

 

凄まじい重量の鉄塊が地面に叩き付けられたことで地面から破砕音が鳴り響き、小規模のクレーターを作り上げた。

 

生身の人間に当てれば一生病院のベッドの上で生活する羽目になりそうな攻撃だが、ISの絶対防御があるならそこまで酷くはならないだろう。

 

だが、操縦している人間の脳は盛大に揺らされて方向感覚が滅茶苦茶になっているはずだ。これでしばらくはマトモに動けない。

 

何があってもすぐに動けるように警戒し、クレーターの中心に倒れ伏す黒いISにゆっくりと近付く。

 

そして、あと一歩踏み出せば敵の目の前に辿り着くという瞬間に、異変が起きた。

 

短いエラー音が鳴り、倒れ伏した搭乗者の赤色のセンサーアイがゆっくりと強くなる光を放ちながらオレをじっと見つめた。

 

『…… 命令(オーダー)――確認』

 

突如として鳴る 機械音声(マシンボイス)が。

 

再構成(リフォーメーション)―― 全行程完了(コンプリート)

 

根拠の無い不吉さを感じさせる言葉を吐き出し。

 

『システム、 戯兵采配(ドールハウス・プレイヤー)…… 発動(ロード)

 

ゆらりと幽鬼のように立ち上がりながら。

 

再起動(リ・ジェネレイト)

 

……オレに絶望を突き付けるに等しい赤い素粒子の輝きを炸裂させた。

 

直後、気が付けばオレの体は凄まじい衝撃と共にアリーナの外壁に叩き付けられていた。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

  Side Out

 

 「なに……?」

 

管制室のシステムを操作してバリアの展開を終えた簪は、スクリーンに映されたアリーナの内部から発せられる強い赤色の光に声を漏らした。

 

続いて強い振動が響き、映像が乱れると共に両足から僅かな揺れを感じる。

 

乱れた映像は数秒で回復し、すぐにアリーナ内部の映像が表示される。

 

そして、そこに見えたのは……

 

「うそ……」

 

……両腕と胸部の装甲が抉られたように破壊され、アリーナの外壁に背中を預けるようにして倒れ込む『エクリプス』の姿だった。

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

エクリプスは凄まじい機動性と馬力を持つ機体ですが、現状では殆どじゃじゃ馬のような機体です。

『フルメタル・パニック!』のレーヴァテインとか、『ブレイクブレイド』のデルフィングとかをさらにピーキーにした感じです。

次回も多分アドルフサイドの話になります。

では、また次回。
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