IS<インフィニット・ストラトス> 願いの果てに真理在れ   作:月光花

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今回もアドルフの回になります。

輝装の性能を黒いISという的でいざ実験。

では、どうぞ。


第15話 撃ち抜け、その決意を持って

  Side Out

 

 アドルフが輝装の覚醒に至った事実を、黒いISは黙したまま受け入れた。

 

そして、認識するに続いて黒いISは真っ直ぐに持ち上げたままの左腕のグレネードランチャーの銃口をアドルフに向ける。

 

アドルフの両腕に顕現した武装構成が射撃によるものだというのは一目で理解出来る。故に、その性能と特徴を調べる意味も含めた牽制だ。

 

 

ボオオォォォォォン!!!

 

 

発砲音が響き、紅蓮を纏った砲撃が放たれる。

 

次の瞬間、砲弾は無数に分離・拡散し、着弾点の周囲を丸ごと爆炎に飲み込もうと迫る。

 

アドルフだけなら避けられるかもしれないが、そうすると後ろにいる簪は無事では済まないだろう。

 

そもそもとして、アドルフに避けるつもりは毛頭無い。否、必要が無い。

 

アドルフも同じように左腕に装備されたシールドを水平に構える。すると、シールドの中央付近にある窪みが開き、銃身が飛び出した。

 

4本の砲身を1つに束ねた長銃身のソレは、見るも明らかなガトリングガンだった。

 

 

ダダダダダダダダダダダ!!!!

 

 

黒いISが装備していたガトリングガンを上回る銃声が鳴り響き、高速回転と共に無数の弾丸が吐き出された。

 

発射された弾丸を黒いISのハイパーセンサーが捕捉し、性能を解析する。

 

弾速は精々標準より少し上が良い所。だが、弾丸の連射力は……“秒間1800発”という現代兵器の標準性能を大きく逸脱した数値を示していた。

 

その圧倒的な連射速度によって作り出されたのは弾幕というより弾丸で形勢された壁。拡散したグレネードランチャーは全て撃ち落とされ、爆散する。

 

当然撃ち出された弾丸は黒いISにも迫るが、右腕の回転ブレードが唸りを上げて暴風を引き起こし、全ての弾道が狂わされる。

 

幾ら連射性能が優れていても、速度と貫通力が無くてはこの真空領域は突破出来ない。

 

お互いに同じ輝装の段階に到達した者同士。輝鋼の強度はもちろん、具現した兵装や特殊機能にも大きな差は生じない。

 

だが、アドルフの持つ武装はもう1つ残っている。

 

ガトリングガンを内臓していたシールドとは違い、最初から“銃”という形をとっていた右手の大口径拳銃。

 

左腕と入れ替わるように突き出された銃身が黒いISに向けられる。

 

ハイパーセンサ―によって強化された黒いISの視界が紫色の光を映した瞬間……黒いISの体は凄まじい衝撃によって大きく吹き飛ばされた。

 

そして、黒いISが吹き飛ぶ中で周囲の空間に雷鳴を思わせるような銃声が聞こえた。つまりは、()()()()()()()()()()()()()()

 

その事実によって分かるのは、放たれた射撃の 弾速(ベロシティ)が音速の領域を軽く十倍近く凌駕していたということだ。

 

黒いISのハイパーセンサーが捉えた紫色の光は、プラズマに成りながら虚空を疾駆する弾丸の輝きだったのだ。

 

ただの大剣を取り付けた拳銃? とんでもない。

 

アドルフ・クロスフォードの決意(エゴ)が鋼を纏って形を成したものが、そんなつまらないものであるものか。

 

この武器を最も近い名称で呼ぶならこうだろう……電磁加速銃(レールガン)と。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 紫電を纏った弾丸が黒いISの生み出す真空領域を紙屑同然に貫いて胴体のど真ん中に直撃し、その巨体がゴムボールのように吹き飛んだ。

 

黒いISはそのまま地面を数回バウンドし、右腕の回転ブレードを地面に突き刺して減速することでようやく止まった。

 

「思ったより飛んだな」

 

そんな黒いISの姿を見ながら呟いたアドルフは構えていた右手の銃を下ろし、背後で倒れている簪に歩み寄る。

 

ハイパーセンサーを通して視た限りバイタルは安定しているが、まだ意識がハッキリしていないのかぼんやりとした表情でアドルフを見上げている。

 

「此処は危ない。少し離れるぞ」

 

シールドを装備した左腕で簪の『打鉄』を抱え、アドルフの『エクリプス』はPICとパワーアシストによって軽々と宙を跳ぶ。

 

その跳躍は先程までとは違い、機体に振り回されているような様子ではない。

 

それもその筈。今の『エクリプス』はアドルフが輝装に到達したことで本当の意味での専用機として作り替えられ、最適化されている。

 

言うなれば今のこの機体は、アドルフの為だけにあるもの。その為に最適化された今のこの機体は機体の反応速度、出力のふり幅の調整などが完璧に整えられている。

 

数回の跳躍でアリーナ内部の別のピットに到着し、黒いISの攻撃が届かない場所に簪を下ろして寝かせる。

 

「此処なら攻撃は飛んでこない。少し休んでいろ」

 

立ち上がったアドルフは踵を返してウイングバインダーを広げるが、飛び立つ寸前で思い出したように振り向いて簪に視線を向けた。

 

「さっきは助かった。お前の援護が無かったら、多分あそこでやられていた。ありがとう、更識」

 

そう言ってアドルフは今度こそ空へと飛び上がり、黒いISの元へと戻った。

 

その場に残された簪は、空を駆けるアドルフの背中を見続けていた。その姿が見えなくなると、今度は黙って天井を見上げる。

 

何故だか、今の簪の胸の中には命の危機を脱したことへの安堵ではなく、モヤモヤとしたよく分からない気持ちが広がっていた。

 

いや、本当は簪も分かっている。何故ならこの気持ちは数日前、一夏とセシリアの試合を見た時に感じたのと同じなのだから。

 

これは……嫉妬だ。

 

簪は、輝装に到達した一夏とアドルフに……自分が未だ努力しても辿り着けない領域に至った2人がどうしようもなく羨ましいのだ。

 

そして同時に、今の自分に嫌気が差して仕方なかった。完成した『エクリプス』の姿を見てみたいなどと口にしたくせに、今心の中にある感情は感動や喜びとは無縁の醜いものだ。

 

分かってはいるのだ。あの2人が輝装に至ったのは、理屈ではない。

 

自身の心の中にある“決意”を自覚したからこそ、2人はあの力を得た。それはズルでも何でもない、確かな努力の先にある実力なのだ。

 

だが、それでも……分かっていても胸の中のモヤモヤは消えてくれない。

 

心の中でアドルフ達への嫉妬とそんな自分自身に対する嫌悪感が消えない悪循環を起こし、簪の体を見えない鎖が縛り上げていく。

 

(このまま……眠っちゃおうかな……)

 

ふと、そんな考えが頭を横切る。

 

自分に出来ることなど何も無い。自分が何もしなくてもきっとアドルフがあの黒いISを倒してくれる。

 

少々無愛想なところもあるが根は優しい彼のことだ。恐らく簪を責めはしないだろう。何だかんだ気を遣い、慰めてくれるだろう。

 

そう考えていると、突然自分の目の前にモニターが展開された。

 

そこには、今アリーナの中で戦っているアドルフの『エクリプス』と黒いISの姿が映し出されていた。

 

簪はこんな操作をした覚えはない。理解が追い付かない中で、簪の視線は自然と自分の『打鉄』に向けられた。

 

返ってくる音(声)は当然無い。だが、言葉が聞こえたような気がした。

 

逃げるな、目を背けるな、他人の優しさに甘えるな。例え妬みの感情であっても、それが本物ならば最後まで見届けろと。

 

そんな言葉を投げられたような気がして、閉じかけられていた簪の瞳に熱と光が戻り、意識と視線が空中のモニターをしっかりと見詰める。

 

(見届けよう……出来ることが無くても、せめてそれだけはしなきゃ……)

 

その視線の先に映るモニターの中で、戦況は大きく動き出そうとしていた。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  * 

 

 

 

 

 戻って来た『エクリプス』の姿を目にして、黒いISは睨み付けるように赤色のセンサーアイの輝きを強く放つ。

 

そして、黒いISは右腕のブレードを回転させながらアドルフ目掛けて突撃し、左腕のグレネードランチャーを連射する。

 

発砲音に続いて弾倉が回転し、再び砲撃が放たれる。だが、その全ては『エクリプス』の左腕に装備されたガトリングガンに撃ち落とされ、空中で爆散する。

 

大量のグレネードが爆発したことで『エクリプス』と黒いISの間では凄まじい爆風と衝撃波が吹き荒れるが、両者は意にも返していない。

 

そして、4発目のグレネードを全て撃ち落としたところで黒いISの砲撃が停止する。ガトリングガンでは黒いISの真空領域を突破出来ないことからアドルフも射撃を停止する。

 

だが、その瞬間を狙うようなタイミングで空中に漂う広大な黒煙の中を黒いISが突っ切り、跳躍と共にグレネードランチャーを放って『エクリプス』に接近する。

 

迎撃しようと再び『エクリプス』のガトリングガンが銃弾を吐き出し、空中に大量の爆炎の光が放たれる。

 

その際に発生した黒煙がアドルフの視界を遮る形となるが、空中を無秩序に漂っていたその煙は次の瞬間に凄まじい勢いで霧散した。

 

煙が晴れた先に見えたのは、『エクリプス』を粉々にしようと暴風を撒き散らしながら迫る黒いISの回転ブレード。

 

幾ら輝装に到達した『エクリプス』の装甲とはいえ、直撃を受ければ大ダメージを受けるのは変わりないことだ。

 

「ッ……!」

 

故に、咄嗟の判断でアドルフは右手に持つ電磁加速銃を構え、抜き打ちのような速さで発射する。

 

照準の時間は数瞬だが、今のアドルフにとっては充分な時間だ。

 

雷鳴のような発砲音を響かせて放たれた紫電を纏う弾丸は回転する8本のブレードの内の1つを正確に捉え、回転ブレード全体を襲った衝撃が黒いISの右腕を大きく横に逸らす。

 

それによって回転ブレードの軌道は直撃コースから外れ、体を後ろに捻って回避した『エクリプス』は通り過ぎ様に黒いISの腹部を左膝で蹴り抜き、くの字に折れ曲がった背中に回し蹴りを叩き込んで地上に叩き落とす。

 

出力調整を終えて加減が効くようになったとはいえ馬鹿力は失われていない。『エクリプス』の蹴りが命中した背中の装甲は衝撃によって歪み、破砕音と共に罅割れる。

 

黒いISは体を捻って上空の『エクリプス』を狙ってグレネードランチャーを構えるが、発砲の寸前で大型の弾倉が大爆発を起こし、左腕から広がる爆炎が黒いISを襲う。

 

再び上空を見上げると、落下する黒いISに向けて右手の電磁加速銃を構える『エクリプス』の姿が見えた。

 

つまり、今の爆発は『エクリプス』の電磁加速銃が黒いISのグレネードランチャーの銃口を寸分違わず撃ち抜いたことで引き起こされたものだったのだ。

 

左腕の爆発も加わり、黒いISはマトモな着地も出来ずに地面に落ちた。

 

その近くに『エクリプス』が着地し、黒いISは必死に体を起こしながら右腕のブレードを回転させて攻撃を仕掛けようとする。

 

だが、それよりも早く『エクリプス』が動いた。

 

体を前のめりに倒すと同時に背中のウイングバインダーが勢い良く展開し、エネルギーを放出する。しかし、そのエネルギーは再びウイングバインダーに取り込まれる。

 

そして、次の瞬間に取り込んだエネルギーが凄まじい勢いで放出され、爆発的な加速力を得た『エクリプス』が一拍手で黒いISの懐に入り込む。

 

ISの後部スラスターからエネルギーを放出、それを内部に一度取り込み、圧縮して放出、爆発的に加速するという放課後に麻耶から習っていたISの操縦技能の1つ、『 瞬時加速(イグニッション・ブースト)』である。

 

懐に入り込んだ『エクリプス』は右手の電磁加速銃を下から上へと振り上げ、取り付けられた大型ブレードで回転ブレードの装甲に覆われていない場所……右腕の根本部分を脇下から斬り裂く。

 

その衝撃により、黒いISは突き出そうとしていた右腕を後ろに大きく弾かれる。だが、それだけで『エクリプス』の攻撃は終わっていなかった。

 

銃剣を振り上げた右腕をピタリと止め、そのまま振り降ろした右腕の肘で黒いISの右側頭部を殴り付ける。

 

右腕を弾かれたところにさらなる衝撃が襲い掛かり、黒いISは完全に態勢を崩す。

 

そこへ体を沈めて両足に力を溜めた『エクリプス』が体を回転させながら放った蹴り……後ろ上段回し蹴りが黒いISの左の首筋を直撃。

 

絶対防御が無ければ首がもげてもおかしくない威力の衝撃が黒いISの頭部を襲い、『エクリプス』は回し蹴りを放ってそのまま体を一回転。

 

向き直ると共に右手の電磁加速銃の銃口を黒いISの胸元に至近距離で突き付ける。

 

「砕け散れ」

 

呟きに続いて引き金が引かれ、ほぼ零距離で放たれた紫電を纏う銃弾が1発目と同じ場所に直撃し、両者の間で発生した着弾音が強烈な衝撃波となって吹き荒れる。

 

そして、黒いISの装甲が盛大な破砕音を立てて遂に砕け散り、その巨体が後方へ吹き飛んでアリーナの外壁に背中から激突した。

 

まだ立ち上がろうとするが、黒いISの体は小刻みに震えるだけで動き出すことなく全身から煙を立ち上らせて崩れ落ちた。

 

シールドエネルギー減少値が許容限界を突破したことによる機能停止。

 

それはつまり、この戦闘での勝者が決定したということ。

 

それを確認しても『エクリプス』は警戒を緩めず、両手の武装を握り締めて黒いISの近くへと飛行して接近する。

 

近くで見た黒いISは左腕と胸部、背中の装甲が粉々に砕け、全身から溢れ出ていた赤い素粒子の輝きは見る影も無く弱々しくなっている。

 

バイザー越しにその様子を確認してホールドアップの為に電磁加速銃を構え、アドルフは投降を勧告しようとする。

 

だがその時、短い電子音に続いて空中にモニターが展開された。視線を向けると、明らかに慌てた様子の千冬と麻耶の姿が見える。

 

『クロスフォード、すぐに更識を回収してその場を離れろ! お前の武装でアリーナのバリアを破壊しても構わん!』

 

『反応急接近! ダメです、退避間に合いません!』

 

次の瞬間、今までの戦闘の中でも耳にしたことのない特大の爆鳴が鳴り響き、アドルフの視界をほぼ強制的に音源のアリーナ上空へと向けさせた。

 

視線を向けると同時に、アリーナの上空に張り巡らされていたバリアが外側からぶち抜き、その穴から飛び出した“何か”がアリーナの大地に着地する。

 

そして、アドルフの目が見たのは……

 

 

「GAAA■■■AAAA■■■■■AA!!!!!!!!!!」

 

 

……圧倒的なまでの殺意、または強烈な破壊衝動を1つの現象として具現化したような、怪物だった。

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

とりあえず、オリ主の第一ラウンドはノーダメージで勝利出来ました。所々危なげな部分が有りますが、同じ輝装なんでその辺は仕方がないんです。

一応今回でオリ主の輝装がどんな武器なのかは大体書けましたが、ぶっちゃけるとこれで全部じゃありません。まだちょっと未公開の部分が有ります。

次回は第2ラウンドになります。

では、また次回。
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