IS<インフィニット・ストラトス> 願いの果てに真理在れ   作:月光花

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今回はアドルフサイドになります。

では、どうぞ。



第17話 意思の無き殺意

  Side アドルフ

 

 互いの咆哮が重なり、オレは迷うことなく右手の 電磁加速銃(レールガン)を構え、機獣はその両足で地面を蹴り抜いて真っ直ぐ迫る。

 

オレと機獣の距離はおよそ700メートル。音速に届く速度で突撃してくる機獣でも、距離を詰めるまでは0.2秒程の時間が掛かる。

 

それだけあれば、狙いを定めるには充分だ。

 

強烈な威圧感を纏いながら迫り来る巨体に照準を定め、即座に発砲。

 

一瞬の輝きと共に雷鳴のような発砲音が鳴り響き、紫電を纏う弾丸が音速の数倍の速度で放たれる。

 

銃口から5メートルも無い超至近距離。

 

例え未来を予知することが出来たとしても、人間の反応速度ではこの距離で放たれる 電磁加速銃(レールガン)を避けることは決して出来ない。

 

そう。()()()()()()()()()()

 

その考えを、目の前の機獣は鼻で笑うように覆して見せた。

 

電磁加速銃(レールガン)のトリガーが引かれる寸前に機獣の右足が地面を一段と強く蹴り抜く。すると、前方への加速をそのままにして機獣はその巨体を捻って超高速のターンを決めた。

 

「なっ……!」

 

驚愕の声が漏れる中、オレの放った弾丸はバスケット選手がバックロールターンでディフェンスを避けるような動きを見せた機獣の背中を通過し、直線状にあったアリーナの外壁に着弾した。

 

ありえない。

 

必然的にその考えが頭を横切るが、事態を冷静に分析する時間などこの怪物が与えてくれるはずがなかった。

 

「AAAA■■■■■AA!!!!!!!!!!」

 

機獣が右手に持つ巨大な武装を振り上げる。

 

一目見ただけで凄まじい重量だと理解出来る外見から殴殺の気配を感じるが、オレの予想はまたも裏切られる。

 

機獣の振り上げた武装の先端部に取り付けられた無数の小ぶりの刃が緑色の淡い光を放ち、一瞬の内に目で追えない速度で回転を始める。

 

 

ギイイイィィィィィィン!!!!!!

 

 

耳障りな音を周囲に鳴り響かせ、巨大な凶器が振り下ろされる。

 

「ぐっ……!」

 

距離とリーチから考えて避けることは出来ない。

 

脳天から両断するように迫る刃に対し、オレは左腕の大型シールドを割り込ませる。

 

直後、先程よりも大きく耳障りな音が鳴り響き、左腕を通してオレの全身に凄まじい衝撃と重圧が襲い掛かる。

 

上から押し潰すように振り下ろすチェーンソーの刃を受け止めているせいだろう。そして、それをシールドで受け止めている左腕からは骨が砕けるのではないかと思うような衝撃を感じる。

 

ISのシールドエネルギーと殲機のシールド、さらに『エクリプス』の馬鹿力が働いているというのにこの衝撃。

 

やはりこの機獣、どこまでも尋常ではない。

 

「こ、の……っ!」

 

負けてなるものかと歯を食いしばり、足元の大地が亀裂と陥没を起こすほどに両足と左腕に力を込めて踏ん張りを効かせる。

 

上方から振り下ろされる機獣の腕を僅かに押し返し、オレは体を捻りながらシールドを斜めに倒してチェーンソーの刃を受け流した。

 

受け流した刃はそのまま足元の地面を斬り裂き、有り余る衝撃が爆発にも似た破壊と風圧を周囲に炸裂させた。

 

右横に立つオレも少なからずその余波を受けるが、気にも留めず 電磁加速銃(レールガン)を握り締めて右腕を腰溜めに引き絞る。

 

(貫く……!)

 

腰の捻りを加え、 電磁加速銃(レールガン)に取り付けられた大型ブレードを機獣の腹部へと突き出す。

 

黒いISの装甲を斬り裂いたブレードの切れ味に『エクリプス』の馬鹿力が加われば、刻鋼を用いた装甲であろうと決して無事では済まないはずだ。

 

機獣がこの攻撃を避けるには、最低でもあの武装を手放さなければならない。

 

これならば、仕留めることは出来ないかもしれないが武装を減らすことは出来る。

 

だが……

 

「AAAAAA■■■■■!!!!!!!!!!」

 

機獣は、胸部に迫る大型ブレードを意にも返さず真っ直ぐ突撃し、突き出した左手でオレの頭を掴もうと迫って来た。

 

「なっ……!?」

 

突き出した大型ブレードが機獣の腹部を深く斬り裂くが、猛禽類のようなフォルムをした巨大な左手は怯むことなくオレの頭を掴み、背中から地面に叩き付けられる。

 

「がはっ……!」

 

「GAAA■■■■■AA!!!!!!!!!!」

 

背中から襲う衝撃に呼吸が止まりそうになるが、機獣は間を置かず頭を掴んだまま片手でオレの体を軽々と振り回し、その身の力と遠心力を加えて近くのアリーナの外壁へと投げ飛ばした。

 

そして、機獣は滑空するように飛んでいくオレに向けて右手の武装の先端を水平に持ち上げ、上部に取り付けられた大口径キャノン砲を放つ。

 

「なめ、るな……!」

 

吹き飛びながら呟き、左手のシールドで防御を行いながら右手の 電磁加速銃(レールガン)を構えて即座に発砲する。

 

安定しない視界の中だが、今のオレはこのくらいで射線を外すことはしない。

 

 

ボオオォォォォォン!!!

 

 

「ぐぅ……!」

 

直後、オレの視界が一時的に爆発の炎と光に覆われ、シールドから響いた衝撃が滑空する体をさらに加速させ、オレは背中からアリーナの外壁に激突する。

 

しかし、キャノン砲を撃った直後の機獣も今度は回避することが出来ず、 電磁加速銃(レールガン)の弾丸が右腕の肘関節を直撃し、殺し切れない衝撃がその巨体を後方へ吹き飛ばした。

 

「あぁ、くそ……! 何で今日は何回も壁にめり込むんだよ……!」

 

外壁にめり込んだ体を引っこ抜き、首を左右に揺らして音を鳴らす。

 

悪態を付きながら機獣が吹き飛んだ方向を見ると、立ち上がろうとしている姿は見えるが地面を派手に転がったのか土煙に覆われている。

 

ガシャン! と駆動音を鳴らす 電磁加速銃(レールガン)を構える。

 

生憎と容赦してやるつもりも理由も無い。ただでさえ、あの機獣の強さは厄介極まりない化け物のソレなのだから。

 

しかし、晴れた土煙の奥に見えた機獣の姿を見て、引き金に掛けた指が止まる。

 

(右腕が……無い……?)

 

先程放ったオレの 電磁加速銃(レールガン)が直撃した右腕の肘関節。その下から先が、丸ごと無くなっていた。

 

一応言っておくと、別に機獣の腕を吹き飛ばしたことにショックを受けているわけではない。単純に腕が無くなっているのがおかしいと思えたのだ。

 

幾ら 電磁加速銃(レールガン)が直撃したとしても、あの程度の威力ではISの絶対防御を貫通して肉体に衝撃を与えるのが精々で腕を吹き飛ばすことなど出来ないはずだ。

 

それなのに、機獣の右腕はあっさりと吹き飛んだ。

 

(装甲が極端に薄かった……? いや、だとしてもあり得ない。まるで、絶対防御が機能していないような……いや、待てよ……)

 

頭の中で、何かが引っ掛かった。

 

そもそも、この機獣は()()()()()()()()

 

思えば、最初の 電磁加速銃(レールガン)を避けたあの反応速度も、アレは明らかに人間の限界を超えていた。

 

加えて、片腕が吹き飛んだというのにあの機獣は悲鳴の1つも上げず、欠損した部分からは血が一滴も流れていない。

 

つまり、アイツは……

 

(無人機……つまりは、誰かの指示で現れた可能性が高い……だったら……)

 

「動けなくなるまでぶち壊してじっくり調べてやる……」

 

その先に、オレの全てを奪った存在がいる。

 

殺意を込めて機獣を睨み、 電磁加速銃(レールガン)を強く握り直して発砲する。

 

しかし、機獣はオレがトリガーを引くのとほぼ同時にその場から跳躍し、放たれた弾丸は土煙を吹き飛ばすだけだった。

 

その光景をもはや不思議とは思うまい。

 

あれだけの至近距離で避けて見せたのだ。距離が離れているなら、後出しで避けることは容易だろう。

 

恐らく命中させるには、先程のように攻撃を行った直後、または零距離で弾丸を叩き込むしかないだろう。

 

ならばと……左腕を振るい、シールドの内部から飛び出したガトリングガンを発砲。秒速1800発に届く弾幕の壁が機獣に降り注ぐ。

 

それに対し、機獣は左手に持ち替えた機構鉄槌の武装を一振りすると共にチェーンソーが唸り声を上げ、自分に迫る弾丸を全て断割する。

 

「AAAAAA■■■■■AAAA!!!!!!!!!!」

 

そのまま咆哮を轟かせ、チェーンソーの刃を盾のように前方へ構えながら真っ直ぐ突撃してくる。

 

こちらの弾幕放火はもはや機獣の足を鈍らせるくらいした効果がない。

 

だが、オレはガトリングガンの連射を止めず、機獣に向かって弾丸を浴びせ続ける。

 

そのまま10メートル……5メートルと距離が近付き、ついに機獣の巨体がオレをチェーンソーの攻撃範囲に捉えた。

 

「GAAAAAA!!!!!!!!!!」

 

仕留めたぞ、と言うような咆哮を上げ、機獣がチェーンソーを振り降ろす。

 

その瞬間、右手に握る 電磁加速銃(レールガン)を即座に腰溜めの姿勢で構え、発砲する。

 

オレと機獣の間で 電磁加速銃(レールガン)の輝きが放たれ、一瞬で音速の壁を突き破った弾丸がチェーンソーを振るった機獣の腹部に迫る。

 

最初の時よりもさらに近く、攻撃を放つ直後のタイミング。回避も防御も間に合わない必殺必中の距離と攻撃。

 

だが、機獣はまたしても常識をねじ伏せた。

 

機獣はチェーンソーを振り下ろす腕をそのままに左足だけで地面を凄まじい強さで蹴り抜き、右足を軸にして強引に体を動かしたのだ。

 

まるで上半身と下半身を同時に別々で動かしたような回避運動。こんな真似が出来るのは、無人機だからこそだろう。

 

またしても 電磁加速銃(レールガン)の弾丸は標的を捉えられず、機獣はオレの視界の左側へと回り込んだ。

 

そして、一度標的を見失ったチェーンソーの刃が再び頭上から迫る。

 

右手の 電磁加速銃(レールガン)は次弾を撃つのにあと2秒は掛かるし照準も間に合わない。左手のシールドは動かせるが、機獣との距離と速度からして防御は出来ない。

 

ほんの数瞬で立場が逆転し、今度はオレがピンチとなった。

 

その中でオレは……

 

(ここだ……!)

 

……地を()()()()()()()両足で地面を蹴り、機獣目掛けて全力で踏み込む。

 

同時に、背中のウイングバインダーがスラスターから放ったエネルギーを取り込んで圧縮・放出。 瞬時加速(イグニッション・ブースト)によって爆発的な加速力を発揮する。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)は加速の際に伴う空気抵抗や圧力によって軌道が変えられず、動きが直線的になってしまう欠点がある。

 

だが、使用するエネルギーの量次第では一瞬でトップスピードに乗ることも出来る。

 

結果……

 

 

ドガアァァァァァン!!!!!!!!

 

 

オレはシールドを前方に構えた態勢で機獣に激突し、凄まじい衝突音を響かせながらその突進力を一瞬だけだが上回ることに成功した。

 

零距離でのトップスピードの加速力、『エクリプス』の重量と馬力を加えた突進を受けて流石の機獣も攻撃が止まって態勢を崩し、衝突面の腹部装甲が派手に砕け散る。

 

今なら 電磁加速銃(レールガン)も当てられるかもしれないが……

 

(やはり、近過ぎるか……)

 

今の機獣との距離はほぼゼロ。

 

電磁加速銃(レールガン)を使おうにも、此処まで近いと大型ブレードのせいもあって取り回しが効かない。

 

「■■■■■!!!!!!!!!!」

 

それを、目の前の機獣も分かっているのだろう。

 

再び左手に握るチェーンソーが耳障りな音を鳴らし、振り下ろされる。

 

それを目にしたオレは……

 

「使える武器は無い、と思ったか?」

 

……未だ見せていない手札を切ることを決めた。

 

機獣に叩き付けた左手のシールドを水平に倒し、オレの脳から発せられた命令がISとのリンクが経由してシールドに伝わり、稼働する。

 

縦長いシールドの先端部の左右に窪みが開き、そこに隠されていた『武装』が姿を現す。

 

圧縮された空気が解き放たれるような音と共に左右の窪みから飛び出してきたのは、長さ1メートルに届く鋭い白銀の刃だった。

 

そして、左右の窪みから飛び出した刃の先端同士が合わさり、シールドの先端に白銀の両刃剣が完成する。

 

隠していた武装を出現させた左腕に力を籠め、シールドと共に横薙ぎに振るわれた両刃剣が機獣の左腕を捉えた。

 

だが、幾ら『エクリプス』の馬鹿力を以てしてもこの距離では踏み込みが足りておらず、機獣の装甲を斬り裂くことは出来ない。

 

そう、こちらの力だけでは、出来ない。

 

ならば……

 

「そっちの力を利用してやる」

 

呟くと共に、左腕の両刃剣が武器を振り降ろす機獣の左手首を捉えた。

 

手首は人間が何かを持ち上げたり振り降ろしたりする時に腕全体から伝わる力を維持して調整する重要な部分だ。

 

そして、目の前の機獣は人間のように力の匙加減や疲労による減衰などが無い。常に全力で暴れ続けているようなものだ。もちろん今も。

 

つまり、両刃剣が捉えた機獣の左手首には今、オレの力とは反対方向に機獣の腕力も加わっている。

 

結果、両刃剣は機獣の装甲を易々と斬り裂き、左手首から先を綺麗に斬り飛ばした。

 

振り降ろそうとしたチェーンソーは機獣の左手と共に宙を舞って地面に突き刺さり、その力の行き先を完全に失った機獣は大きく前のめりになる。

 

「ふんっ!」

 

その隙を逃さず、先程の突進で砕いた腹部装甲の部分に右膝蹴りを叩き込み、前方へ押し出すように力を籠めて機獣の巨体を後退させる。

 

それにより僅かに距離が開くが、 電磁加速銃(レールガン)を構えて放つにはまだ近過ぎる。

 

だから、膝蹴りを叩き込んだ右足で地面を踏み締めてそのまま前へと踏み込み、背中のウイングバインダーを急展開と共に前方へ加速。

 

腰の捻りを加えて右手の 電磁加速銃(レールガン)の大型ブレードを突き出した。

 

両腕を失い、所々の装甲に亀裂を走らせた機獣の腹部に大型ブレードの刀身が突き刺さり、ついに腹部の装甲が限界を迎えて砕け散る。

 

「AAA……A、AA■■AA■■■AAAA!!!!!!!!!!」

 

体の奥に大型ブレードの刀身が突き刺さりながらもどうにかソレを引き抜こうと機獣は咆哮を上げて身をよじるが、もう遅い。

 

既に、 必中の間合い(零距離)だ。

 

「くたばれ……!」

 

右手に握る 電磁加速銃(レールガン)をさらに奥へと押し込み、引き金を引く。

 

次の瞬間、撃鉄と共に機獣の体内に突き刺さる 電磁加速銃(レールガン)の銃口から銃弾が放たれ、発砲の際の衝撃と光が周囲に拡散する。

 

腕を前方へ伸ばし切った状態から発砲した為、オレは右腕全体を襲った反動を殺し切れず後ろへと大きくよろける。

 

だが、零距離どころか体内から 電磁加速銃(レールガン)の直撃を受けた機獣は着弾の衝撃を一切逃がすことも出来ず、貫通した弾丸によって背中に大穴を空けて後方へ吹き飛んだ。

 

地面を数回バウンドし、頭からアリーナの外壁に突っ込んだ機獣の姿は既に死に体も同然だった。

 

両腕を失い、全身の赤錆色の装甲は各所に亀裂が刻まれて腹部には背中まで貫通した大穴が空いている。

 

頭部の義眼は片方が潰れて光を失い、背中のスラスターは折れ曲がって欠損。

 

僅かに光を灯す片方の義眼とどうにか体を起こそうと動く両足を見るにまだ稼働はしているようだが、もはや満足には動けないだろう。

 

(頭を吹き飛ばせば止まるか……?)

 

本音を言うならありったけの火砲を撃ち込んで粉々にしてやりたい所だが、アレは黒幕を見付ける手掛かりになる。

 

故に、今は動けなくするだけに留めなくてはいけない。

 

 

 

 

そう。

 

この時のオレは、そんなことを考えてしまったのだ。

 

後に、この選択がどれだけ愚かで馬鹿げたモノであったかを思い知るとも知らずに。

 

 

 

 

自分の心に上手く言い聞かせ、オレは深呼吸で心の中の怒りを抑え付けて 電磁加速銃(レールガン)を構える。

 

照準を機獣の頭部に定め、確実な狙いを以って引き金に指を掛ける。

 

 

PiPi!!

 

 

しかしその瞬間、機獣から聞こえてきた短い電子音に反応し、つい指が止まる。

 

それは、黒いISが突然に変貌した時の音に似ていたからか、ただ反射的に反応してしまっただけなのか。

 

それによって生まれた数瞬の時間を置いて、次の変化が訪れた。

 

『見事ダ。アア、月並ミデ陳腐ナ言葉ダガ、今ノキミヲ評価スルノニ耳障リガ良イダケノ言葉ナド却ッテ無粋ダ』

 

声が、聞こえた。

 

合成音に加えて所々にノイズが走っているので性別すら全く見当も付かない。

 

だが、これだけは分かる。その声の中に宿る強い“喜び”の感情……この声の主は、心の底から歓喜を感じている。

 

『後始末ダケノツモリガツイ興ガ乗ッテシマッタ。ヤレヤレ、コレデハ彼女ノコトヲトヤカク言エナイナ』

 

苦笑を浮かべたような口調で声の主は語るが、無人機が壁に倒れ伏したままのせいでかえって不気味に感じてしまう。

 

『取リ敢エズ、無事輝装二至ルコトガ出来タヨウデ何ヨリダ。今ノ戦イヲ見ルニ、振リ回サレテイル様子モナイ』

 

今度の口調はまるでこちらを値踏みするような……いや、コレはそんな生易しいものではない。

 

そう、まるでガラス越しに実験動物を見ているような。

 

見下すわけでも、見上げるわけでも、対等としても見るわけでもない……第3者としての視点を突き詰めたような口調だ。

 

『通常時ノ出力ハ知ルコトハ出来タ。デハ、次ハ現状ノ限界ヲ見テミヨウ』

 

まるで次の筋力トレーニングのメニューを発表するように聞こえたその言葉が何を意味するかは、すぐに理解出来た。

 

本来ならオレはその瞬間にでも引き金を引くべきだったのだろう。

 

「その様でか? 少し無理があると思うが」

 

なのにオレは、 電磁加速銃(レールガン)の照準と構えをそのままにして言葉を発していた。

 

そしてこの時点で、もう時間切れだった。

 

『心配ハ無用ダ。ソラ、起キルゾ』

 

その言葉を合図に、機獣の義眼に強い光が宿った。

 

先程までの弱々しい光の点滅ではない。むしろ、戦っていた時よりもさらに強い威圧感を感じる。

 

そして、機獣は突然手首の先から無くなった左腕を振り回し、アリーナの外壁を轟音と共に破砕した。

 

その行動の意味が分からず、一体何をと思考を巡らせるが、その答えは目に見える変化となってすぐに現れた。

 

破損した機獣の各所の装甲から光が放たれ、それが崩れ落ちていく瓦礫を照らした瞬間に瓦礫は凄まじい速度で分解され、素粒子の輝きとなって機獣の体へと吸収されていく。

 

すると、瞬く間に破損した装甲が修復され、機獣の体から放たれる光はさらに範囲を広げて周囲を分解して取り込んでいく。

 

「自己修復……? だが、これは吸収というより……」

 

『然リ。己ノエネルギートナリ得ル鉄ヤ機械ヲ無差別二取リ込ム……言ワバ“捕食”ダ』

 

捕食復元能力(メタルイーター)……!」

 

ほんの数秒で新品同然の姿となった機獣はゆっくりと歩みを進め、地に突き刺さっていた武装を回収する。

 

そして、振り向いた視線がオレを捉え、義眼の光が不気味に強まる。

 

『総合的ナ出力ハ約40%。区切リハ良クナイガ、比較シテ見レバ先程ノ倍ダ』

 

「なっ……!」

 

告げられた言葉の内容に、思わず目を見開く。

 

先程の倍……それはつまり、今まで戦っていた機獣の強さは本来の 能力(スペック)の2割程度でしかなかったということだ。

 

そして、今の機獣はあれだけ苦戦させられた力のさらに倍の強さを発揮出来る。

 

『デハ、始メルトシヨウ。存分二見セテクレ、キミノ可能性ヲ。キミナラバ()()()()、乗リ越エラレルハズダ』

 

「■■■■■■■■■■!!!!!!!!!!」

 

そこまで言ったところで、一部の枷を外された機獣が圧倒的な暴威を纏って突撃してくる。

 

オレは、心中から湧き上がる絶望を強引にねじ伏せながら、 電磁加速銃(レールガン)の引き金を引いた。

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

本当の絶望は、これからだ(白目)!

どうにか勝ったと思いきや、機獣の強さはまだほんの2割です。

次回はフルボッコ回(自分)になります。

では、また次回。
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