IS<インフィニット・ストラトス> 願いの果てに真理在れ   作:月光花

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光の奴隷様、水笛様から感想をいただきました。ありがとうございます。

今回はアドルフのパートになります。

※ 今回、キャラの会話の部分だけ文章の形を変えてみました。

試験石みたいなものですが、お付き合いください。

この方が見やすい、前の方が良い等と思った方は可能であれば後で貼っておく活動報告や感想の方にお言葉をお願いします。


では、どうぞ。


第27話 見えぬ陰謀

  Side アドルフ

 

 広大なIS学園の土地にある綺麗に整備された校庭。

 

そこには何本もの大きな木々が絶妙に計算された間隔と位置取りに基づいて立っており、快晴の下でも程良い日影が出来る。

 

その影の中で、オレは自分の体を隠すように木の幹に背中を預けながら懐から電話を取り出す。

 

ただし、ソレは普通のスマートフォンなどではない。

 

サイズはあまり大きくないが、太長いアンテナが取り付けられた黒塗りの衛星電話である。

 

記憶の中にある番号を慣れた手つきで入力し、数回のコール音の後に通話が繋がる。

 

「……久しぶり、でもないか」

 

『2ヶ月と少ししか経っていないが、日々の体験が常人よりも濃くなったキミにはそう感じられるのだろうよ。

 直接見たわけではないが、随分と刺激的な学園生活を送っているようじゃないか』

 

スピーカーから鈴の音を思わせるような美声が聞こえてくるが、その口調からはオレの現状を心底愉快そうに楽しんでいる様子が伺える。

 

「他所じゃ出来ないを経験させてもらってるよ。おかげで何度か死にかけた……」

 

軽口を返しながら普段と変わらない『友人』の少々歪んだ性格に苦笑する。

 

2ヶ月前……クラス代表決定戦の時に国家機密に類するオルコットのISの情報を教えてもらってからは連絡を取っていなかったが、どうやら独自の情報網でこの前の騒動も知っているようだ。

 

『朝のニュースでキミの顔を見た時は何の冗談かと腹を抱えて笑ったものだが、取り敢えずは今も生きているようで何よりだよ。

 それで、今日は何用かな? また何か欲しい情報が有るのかい』

 

「半分はそうだが、もう半分はお節介覚悟の忠告だ。

 もう知ってるだろうが、フランスが妙な動きを見せ始めた。

 正確な狙いは知らんが、デュノア社が絡んでいるなら()()()()()()で何かの儲け話が動いてるのかもしれない」

 

『……なるほど、忠告は有り難く受け取ろう。

 例の“3人目”については未だ世界中が血眼になって情報の真偽を探っているようだが、確定した情報は掴めていないらしい。

 せめて()()なのかどうかだけでもハッキリさせたい、というのが本音だろうがね』

 

「それはまた……他人事ながら随分と無駄な時間を使わされてるな」

 

どうやら各国の様子はオレとオルコットの予想した通りになっているらしい。

 

しかし、朝のホームルームから昼休みまでデュノアを観察していた今に至っては慌てふためく国々に同情すら湧いてくる

 

そんな心境を込めたオレの発言が気になったのか、電話越しでも分る程の疑問を孕んだ声が飛んできた。

 

『?……それはどういう意味かな?

 結果がどうであれ、真実を明らかにしておかなければ各国も動きようが…………いや、()()()()()()()?』

 

「この国には“百聞は一見に如かず”ということわざが有るが、まさにその通りだな。本人を見ればすぐに分かる。

 アレは……“女”だよ」

 

普段と何ら変わりない口調と声量……故に絶対の自信を含んだオレの言葉にスピーカーの先で相手が戸惑っているのが分かった。

 

まあ、あらゆる国の諜報機関が掴めていない情報がこんな簡単に明らかになったら誰でも疑うものだろう。

 

だが、生憎とこれが真実だ。

 

「ISスーツ越しに軽く観察してみたが、明らかに骨格と体型が男性のソレじゃない。

 鼻の角度、あばら骨、骨盤の広さ、足幅、全身のくびれ、歩き方……上げれば幾らでも出てくるが、中性顔の美少年で誤魔化せる範疇を超えてる」

 

『……なるほど。僅か数時間見ただけでそこまで分かるのなら先程言った無駄というのも納得がいく。ちなみに、仕草や口調などはどうだね?』

 

「そっちはどうにか誤魔化せてるみたいだな。

 だが、明らかに訓練の時間も練度も足りてない。女子生徒は本来同性だから問題無いようだが、オレや織斑のような男性には殆ど耐性が無いように見えた」

 

織斑に手を握られた時やオレ達が服を脱ぎ始めた時は明らかに動揺していた。

 

恐らくだが仕草や口調でボロが出ないことを優先したせいで異性に近い距離間で触れる、または触れられる経験が殆ど無いのだろう。

 

『明らかに間に合わせの処置だが、男性操縦者の存在が明らかになってから未だ2ヶ月。

 完璧な役者を1から仕上げるには時間が足りないか。

 だが、そうなると残された疑問は……』

 

「何の目的でデュノアをこのタイミングで、それも男としてIS学園に入学させる必要が有ったのか、だな。

 ISのデータ収集だけが目的なら()()()()入試を受ければ良かったはずだ」

 

『編入試験の際には間違い無く身体検査を受けている筈だ。

 それをパスしてIS学園に入るなど、デュノア社の権力だけで出来ることではない。

 下手をすればフランスそのものがグルという可能性も有る』

 

様々な情報を纏めながら『友人』と答え合わせをしていくが、次第に大きく、しかも最悪の方向に傾いていく予想に頭が痛くなってくる。

 

本人が詳細を知っているかは不明だが、デュノアは高い確率で国家がらみの陰謀に加担しているスパイだ。しかも切り捨てられることが前提の。

 

成功すれば御の字、もし失敗して正体がバレた場合は経歴及び公文書偽造の罪などを全てフランス政府に押し付けられてブタ箱行きという筋書きだろう。

 

代表候補生という肩書きはその国家に帰属する立派な役職の1つだ。未成年の少女だろうとその国の意向次第で好き勝手に裁かれる。

 

これが全てオレの妄想によるモノならそれで構わない。その時はオレが笑い者になるだけでこの話は終わりだ。

 

だが、考えれば考える程その予想は現実味を帯びていく。

 

『私が探りを入れてみようか?

フランス政府には幾つかパイプが有る。シャルル・デュノアの真実を教えてくれたお礼に料金はいらないよ』

 

『友人』にそう言われ、オレはすぐに返事を返さず思考を働かせる。

 

そして、30秒程考えた後にオレの出した答えを口にする。

 

「…………いや、やめておこう。

目的が分かっていない現状で下手に探りを入れてフランスに目を付けられたくない」

 

『ふむ……まあ、キミがそう言うならそのようにしよう。

 では、他に何かご要望の情報は有るかな? 先程も言ったが、お礼に料金は取らないよ』

 

「……なら、ラウラ・ボーデヴィッヒの情報を頼む。

 プロフィール全部を調べろとまでは言わない。せめてIS学園に編入してきた理由だけでも知っておきたい」

 

デュノアが相当な地雷を抱えていると分かって忘れそうになるが、現状ではボーデヴィッヒも決して無視できる存在ではない。

 

むしろ、代表候補生に加えてドイツの正規軍人でもあることを考えれば情報のガードはデュノアよりも硬い可能性さえ有る。

 

『ふむ……その程度で良いなら任せたまえ。

 ドイツのお偉方には上客が多いからね。2、3日で調べ上げてキミのPCにメールで送っておこう』

 

「頼む。

 今日は転校生が注目の的になったから人目を避けて連絡出来たが、明日からは女子生徒達も普段通りに戻るだろうから話す機会は減ると思う」

 

『そっちの環境は理解しているから気にすることはないさ。

 それに、私の上げた衛星電話など使わなくとも近い内に直接会えるだろうしね』

 

「…………なに?」

 

重要な情報を軽いノリで言われたので危うくスルーしてしまうところだったが、ギリギリで反応することが出来た。

 

同時に今耳にした言葉の内容を頭の中で整理してその意味を考えた結果、1つの答えが思い浮かんできた。

 

「……まさか此処に、IS学園に来るつもりか……? 学年別トーナメントの見物客として」

 

『その通り。学生の行事とはいえ最新鋭のISが戦うところを見られるんだぞ? 私の仕事を考えれば、行かないという選択肢は無いだろう』

 

その返答が何かの引き金となったようにスピーカー越しに聞く声の質が変わった。

 

『私の本業は情報屋でもなければお悩み相談のカウンセラーでもない。

 私は……()()()()なのだから』

 

愉快そうな声の中に凄まじい威圧感を宿して『友人』は電話を切った。

 

本人が目の前にいるわけでもないのにただの声だけで相手にプレッシャーを浴びせる。

 

そんな漫画のような芸当を笑いながらやってのける辺り、改めてアイツが一般人ではないのだと再認識させられる。

 

(まあ、そんな奴と友達やってるオレも大分アレなんだろうが……)

 

自分の歪過ぎる交友関係に溜め息を吐きながら木に預けていた体を起こして歩き出す。

 

気が付けば少し長く話し込んでいたようで、左手の腕時計を見てみると昼休みの終わりまではあと20分程。

 

授業前にISスーツ着替える必要が有るのでオレや織斑は少々早めにアリーナの更衣室に向かわなければいけない。

 

余裕を持って行動するならそろそろ移動するべきかと考え、アリーナへと向かう。

 

ほぼ間違い無く織斑と一緒にデュノアもいるだろうが、特に何かが変わるわけではない。

 

むしろ変に意識して少しでも関心を持たれたらかえって面倒なことになる。

 

(何も考えず、午前と同じ態度で接すれば良い)

 

緊張しているわけではないが、自分に言い聞かせるように心中で呟く。

 

そんなことをしながらも足を止めずにアリーナへ向かう途中、進行方向の廊下の真ん中におよそ6人の女子生徒の集団が見えた。

 

学年ごとに異なるリボンの色を見てみると、どうやら全員オレと同じ1年生のようだ。

 

このまま歩くとオレの体格ではぶつかる危険があるので、少しだけ歩く速度を速めつつ廊下の端に寄っておく。

 

迷惑な話だが、今の女尊男卑の世の中では女性が些細なことで癇癪を起こして騒ぎを何倍にも大きくするというケースが多い。

 

なので、極力女性との面倒事は避けるのがベストだ。

 

 

「ちょっとアンタ、待ちなさい」

 

 

……ベストなのだが、時には面倒事の方から近付いてくることも有る。今がまさにソレだ。

 

女子生徒の集団とすれ違ってすぐ、後ろから聞こえてきた声に足が止まる。

 

溜め息を堪えて後ろを振り向くと、20センチ近い身長差など微塵も気にせずにオレを見上げる6人の視線が刺さる。

 

その全てから伝わる感情は露骨なまでの蔑みと憎悪。

 

この学園に来てから久しく目にしていなかった懐かしくも予想通りの悪意がそこに有った。

 

「そのデカい図体に爺臭い白髪……アンタ、アドルフ・クロスフォードよね?」

 

「……その通りだが、オレに何か用か?」

 

開幕早々に失礼な発言が飛んでくるが、この程度で口を挟んでいたらキリが無いと考えて罵倒を無視して用件を窺う。

 

しかし、そんな反応が気に食わなかったのか数人が舌打ちしてオレを睨んできた。どうやら、想像以上に幼稚なプライドをお持ちらしい。

 

「良い気になんないでよ。

 突然湧いて出たバグみたいな存在のくせに」

 

この調子だと予想以上に話が進まないと察し、どうしたものか頭を捻ると1人の女子生徒が前へと進み出てきた。

 

他の5人よりも確かな存在感を放つその女性をバレないよう頭頂部から観察する。

 

まず天然とは違う色彩……恐らく染めたと思えるブロンドヘアーは背中に届く長髪で頭頂部から青いメッシュが入っている。

 

顔立ちは東洋系……恐らく日本人だと思うが……切れ長の目付きは常に他人を見下すような威圧感を感じさせ、鋭いを通り越して睨み付けているようにさえ見える。

 

ラフにカスタマイズされた制服は大きく着崩され、リボンはせずにYシャツを第2ボタンまで外している。

 

一見して『ギャル』のような恰好。

 

だが、思春期の子供が背伸びをしたようなモノとは違って目の前の女性が持つ支配者……具体的に言うと『女帝』のような雰囲気がその姿をまるで自然体のように思わせる。

 

「ちょっと、何か言ったらどうなの?」

 

今度は何の反応も返さないオレに目の前の女性は苛立つような声で問う。

 

「別に言いたいことも無いからな。

 今の社会から見ればオレ達の存在は確かにバグに近いものだろう」

 

「ふぅん、自分がどんな存在なのかを自覚するくらいの知性は有るのね。

まあ、度胸の方はからっきしの腰抜けみたいだけど」

 

そう言って目の前の女性が鼻で笑いながらやれやれと言うように肩をすくめると他の女子生徒も続いてクスクスと嘲笑を浮かべる。

 

肯定的な返事をしたはずなのに今度は別方向からの罵倒。

 

恐らくオレが何を言おうとこの連中の口から出てくるのは否定の一筋だけだろう。

 

何かにつけて難癖を付けて否定し優越感に浸る。

 

多人数で追い詰める所も含めて、今の世の中によくいる女性の代表例のようだ。

 

「用事は終わりか? ならもう行くぞ」

 

「終わってないわよ」

 

踵を返して立ち去ろうとした直後、何かがオレの真横を凄まじい速度で通り抜けた。

 

視線を向けると、そこに見えたのは真紅の装甲を纏った多関節のアーム。

 

廊下の中空で制止したアームの先端から根本へと辿っていくと、その発生源は先頭に立つ女性の右の腰元。そこに装着されたスカートアーマーから伸びている。

 

「……部分展開」

 

「アンタには馴染みの無い芸当でしょう? 適正Cランクの劣等生」

 

目の前の女性は心底こちらを見下すような笑みを浮かべながら展開を解除する。

 

ほんの数秒の時間、しかも右腰の部分のみを展開してみせたその技量に少なからず驚く。

 

どうやら口先だけではなく確かな実力も有るようだ。

 

「ちゃんとした用が有るんだから最後まで聞きなさいよ。こっちだってアンタにちょっかい出す為だけに来る程暇じゃないんだから」

 

「ならソレを最初に言え。用件を尋ねただろう」

 

「うるさいわね。黙って聞きなさいよ」

 

自分の非を認めるつもりは無いらしく、面倒くさそうに答えた女性は懐から一枚の書類を取り出してオレに突き付けた。

 

その内容に目を走らせると『アリーナの使用及び模擬戦の許可申請』と書かれている。

 

「……これはどういうことだ?」

 

「頭の悪いアンタにも分かるように命じてあげる。

 私と……この 天城(あまぎ) 澪奈(れいな)と戦いなさい、アドルフ・クロスフォード」

 

そう言いながら嗜虐心を剥き出しにした笑みを浮かべ、目の前の女性は書類を突き付けながらオレに宣戦布告した。

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

最初は学園に来た目的を調べて今後どうするか考えるつもりだったのに、状況整理したらとんでもない地雷の影を捉えたオリ主でした。

多分出したらキリが無いけど、原作読んでて思ったツッコミポイントを1つだけ。

何でシャルルの性別学園側にバレとらんのよ、転校する場所が場所なんだから学園に入る前にフランス以外の国とか組織の身元確認とか身体検査くらいするでしょうよ。

他にもまあツッコミ所は色々有るんですが、ひとまず上記の疑問から本編ではフランス政府も一枚噛んでる流れにしました。

オリ主は“うわ、やばい気配しかしない。近付かんとこ”のスタイルなのので、命運は一夏次第です。

まあ、オリ主もオリ主で面倒事の中心にいるんですがね!

今回の終盤に登場したオリキャラとオリ主の話は書こうかどうか悩んだんですが、今後の展開の為に出すことにしました。

亀更新に加えて原作の話から少々脱線してしまいますが、どうかお付き合いください。

では、また次回。
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