IS<インフィニット・ストラトス> 願いの果てに真理在れ   作:月光花

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※始める前に1つだけ

原作を読み返していたら一夏達が訓練をしていたのはシャルル達の転校から5日後のことだと判明したので、ソレに合わせて1話前と今回の話の内容をほんの一部だけですが修正しました。

理解不足で手違いが発生してしまい、申し訳ありません。


水笛様、ヴァイロン様から感想をいただきました。ありがとうございます。

相も変わらずの亀更新でお久しぶりです。

今回は引き続き一夏サイドになります。

では、どうぞ。



第29話 這い寄る過去

  Side Out

 

 突然の乱入者の登場によって、第3アリーナの雰囲気は一変していた。

 

先程までの空気の緩さは消え去り、まるで銃を構えて睨み合うような緊張感が満ちている。

 

たった今仮想標的を粉砕した『シュヴァルツェア・レーゲン』はリボルバーカノンの照準を雪片を構えた『白式』に向けており、見るからに一触即発の状況だ。

 

隣に立つシャルルは片手にアサルトライフルを持っているが、下手に相手を刺激すれば戦闘開始の引き金になると考えて構えてはいない。

 

離れた位置にいる鈴とセシリアも同じ考えらしく、武器を握るだけで構えてはいない。

 

しかし、もし戦闘が始まればソレ等全てが即座に敵を襲うことになるだろう。

 

「……訊くのは二度目になるけど、何の真似だ」

 

「貴様も専用機持ちだろう。

 私と戦え、織斑一夏」

 

構えを崩さずに尋ねた一夏の言葉に対してラウラは一方的に自分の用件を告げる。

 

他人の都合を一切気にしないその態度は初対面の時から変わっておらず、銃口を突き付けている現状では脅迫と何ら変わり無い。

 

「……断る。

 オレには今お前と戦う理由は無い」

 

「貴様に無くとも、私には有る。

 あの人の……教官の輝かしい偉業を奪い去った貴様の存在を、私は認めない」

 

その言葉に、雪片を構える一夏と離れた位置に立つ鈴の体が一瞬だけピクリと反応する。

 

同時に、ラウラの言葉を切っ掛けとして一夏の中で様々な情報のピースが組み合わさる。

 

「あぁ、なるほどな……お前がオレに敵意を向けるのは、そういう理由か」

 

1人で納得するように呟くと、一夏は息を吐きながら構えを解いて雪片を鞘に収めた。

 

銃口を向けられている本人が誰よりも早く武器を納めるという事態に他の者達は驚愕するが、いち早く復帰したラウラは発砲はせずに表情を歪める。

 

「……どういうつもりだ」

 

「人の言うこと碌に聞かないくせに質問か?

 さっきも言った通り、今お前と戦う理由は無い」

 

「っ……ふざけるな!」

 

不愉快だと言わんばかりにラウラは声を荒げるが、一夏の態度は変わらない。

 

今にも引き金を引きそうなほどに怒りを露にしているラウラに対して指1つ動かさず、睨むように視線を交差させている。

 

だが、それを離れた位置で見ていた鈴と箒は付き合いの長さから今の一夏の雰囲気に何処か違和感のようなものを感じた。

 

(一夏のやつ……不機嫌っていうか、イラついてるわね)

 

(ボーデヴィッヒと同じ……いや、下手をしたらそれ以上に怒っているような……)

 

2人の目に映る一夏の姿は一見冷静だが内心何かにイラついているような、今にも吐き出したい怒りを必死に隠してるように見えた。

 

そんな変化を付き合いが浅いどころか今にも砲弾を放ちそうなほど怒っているラウラが気付いているわけもなく、場の緊張感は限界に達していた。

 

均衡が崩壊する気配を直感的に察知したシャルルとセシリアが銃を構え、怒りに目を見開いたラウラがリボルバーカノンのトリガーを引こうと……

 

 

『そこの生徒! 何をやっている! 所属の学年とクラスを言え!』

 

 

……した瞬間、アリーナに設置されたスピーカーから怒鳴り声が鳴り響いた。

 

全員が聞き覚えの無い声だったが、恐らく騒ぎを聞きつけた教員の1人だろう。

 

思いも寄らぬ形で入った制止によって殺し合い寸前のような緊張感は薄れ、臨戦態勢だった全員の体から無意識に力が抜ける。

 

それはラウラも例外ではなく、一夏の態度と教員の横槍によって完全に興が削がれたのか舌打ちと共にISを収納してピットへと身を翻す。

 

だがその途中、首だけを動かして怒りに染まった瞳で再び一夏を睨み付ける。

 

「今回は邪魔が入った。

 だが、忘れるな。

 貴様はいずれ私が必ず叩き潰す」

 

「……ああ、望むところだ。

 その時が来たら、オレも逃げやしない」

 

一夏の言葉にひとまず納得したのか、歩き出したラウラは振り返ることなくアリーナを出た。

 

ソレを確認した全員が完全に肩の力を抜き、浮遊しながら一夏の元に集まる。

 

「聞きしに勝る傍若無人っぷりね。

 授業の時にアイツと同じ班だった人達には同情するわ」

 

「ですが、恐らくアレは絶対的な自信から来るモノでしょう。

 決して褒められた態度ではありませんが、間違い無く相当な実力者です」

 

立ち去ったラウラの背中を視線で追いながら鈴とセシリアはそれぞれの評価を口にする。

 

同じ代表候補生という立場の人間。

 

現時点で親しくなりたいとは欠片も思わないが、その実力は無視出来ない。

 

「一夏……その、大丈夫か?」

 

「……ああ、平気だ。問題無ぇよ」

 

気遣うように声を掛けた箒に対し、一夏は視線を僅かに沈めたまま平坦な声で最低限の言葉を返した。

 

明らかに普段とは違う雰囲気なのだが、隠し切れていない不機嫌そうなオーラのせいで幼馴染である箒も言及出来ない。

 

そんな気まずい空気を察してか、普段通りの人懐っこい表情に戻ったシャルルが一夏の正面に移動して顔を覗き込む

 

「今日はもう上がろうか。

 もうちょっとでアリーナの閉館時間だし」

 

「ああ、もうそんな時間か。

おっと、そういえば……」

 

シャルルの言葉に反応した一夏は軽い跳躍と共に浮遊し、ラウラが奇襲した時に放り投げたライフルを拾い上げる。

 

マガジン内の弾は全て射ち尽くした筈だが、安全のために教わった通りマガジンを外してスライドを引き、チャンバー内に弾が残っていないかを確認する

 

弾が入っていないことを確認し、一夏は拾い上げたライフルをシャルルに手渡す。

 

「貸してくれてありがとうな。

 反射的にやっちまったけど、放り投げたりして悪かったよ」

 

「気にしないで、同じ状況になったら僕も同じようにしてたから。

 それに、ISの武器はこの程度じゃ壊れないよ」

 

一夏の謝罪に対してシャルルは微笑みを返しながらライフルを量子変換で収納する。

 

その様子から本当に気にしていないことを感じ取った一夏は改めて礼を述べ、ゆったりとした加速でピットへと戻っていった。

 

その背中を見えなくなるまで見送り、アリーナに残った4人は事前に打ち合わせをしたわけでもなく自然と顔を合わせた。

 

「……本人は平気とおっしゃいましたが、かなり動揺していますわね」

 

「いや、動揺というよりは……不機嫌という方が近いかもしれん。

 あそこまで酷いのは初めて見たが……」

 

セシリアの言葉に幼馴染という付き合いの長さから一夏の様子を分析した箒が捕捉を加える。

 

同じく付き合いの長い鈴も同じ意見なのか、口を挟まずシャルルに顔を向けた。

 

「何にしても、アイツがブチ切れて戦闘開始、なんてことにならなくてラッキーね。

 あの様子じゃ一度始めたらとことんまでやってたわよ」

 

「僕も同感かな。

 さっきも教師の人が止めなかったら、本当に引き金を引いてたと思う」

 

そこから先の展開は坂を下るように最悪な形にしかならない。

 

放たれた砲弾が無抵抗状態の一夏を襲い、他の全員は一夏がリンチにされるのを黙って見ていることなど出来る筈も無く、ラウラと戦わざるを得なくなる。

 

そうなれば、ラウラは躊躇うことなく輝装を使用して一夏諸共自分の邪魔をする存在を排除しようとしただろう。

 

一夏と箒を除いたとしても、輝装に到達したIS4機の激突。

 

シャルルとラウラの輝装の詳細は不明だが、アリーナに甚大な被害が出たのは確実だろう。

 

幸いなことに今回はそうならなかったが、ラウラのあの様子では間違い無く近い内に再び仕掛けてくるだろう。

 

「シャルル、悪いんだけどしばらく一夏のこと気に掛けてくれる?

 個人的な事情が絡んでるらしいけど、流石に無視は出来ないわ」

 

「勿論だよ。

 でも……何で一夏はいきなり武器を納めたんだろう

 様子がおかしくなったのもその時からだよね」

 

鈴の頼みにシャルルは快く頷くが、同時に先程の一夏の行動が不審に思えて疑問を口にする。

 

箒とセシリアも口には出さなかったが同じ疑問を抱いてらしく、顔を俯かせて理由を考えてみるがハッキリとした答えは出てこない。

 

しかしただ1人、鈴だけは何か心当たりが有るのか苦々しい顔をしていた。

 

「ラウラの言ってたことから考えて見当は付くわ。

 でも、悪いけど私の口からは言えない。

 他人が勝手に喋って良いことじゃないからね」

 

そう説明する鈴の表情は、先程までとは一転して暗いモノとなっていた。

 

忌々しい何かを思い浮かべてしまったような、そんな表情だった。

 

ソレを見て詳しく聞き出そうと思う者はおらず、箒達は無言で頷く。

 

それから程無くしてアリーナの閉館時間となり、全員は急ぎ足でピットへと戻っていった。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

  Side 一夏

 

 「……はぁ」

 

各アリーナに設けられた更衣室でISスーツを脱いで制服に着替え、ロッカーの間に置かれた長いベンチに腰掛けたオレは深い溜め息と共に呟く。

 

先程までとは一変して気分は最悪、出来ることなら大きな叫び声でも上げたい程だ。

 

その原因は、初対面でいきなり俺の横っ面を引っ叩いてくれたドイツの転校生、ラウラ・ボーデヴィッヒの先程の発言だろう。

 

『あの人の……教官の輝かしい偉業を奪い去った貴様の存在を、私は認めない』

 

「っ! ……どうして、今になって……」

 

ラウラの言葉を思い出し、額に手を当てながら再び溜め息が漏れる。

 

同時に、頭の中に浮かび上がるのは俺の今までの人生で最悪の経験。

 

自分を取り囲む数人の黒服。

 

暗闇に包まれる視界と声を上げるする口元を塞ぐ大きな手。

 

誰も寄り付かないような廃工場。

 

手足を縛られて何も出来ない俺を見下し嬲るような悪意に染まった複数の目。

 

そして……暗闇の中に差した光と共に現れた……■■■。

 

「うっ……!」

 

複数の写真を切り抜いたように記憶が暗転し、途中で吐き気がこみ上げてきた。

 

だが、ここで吐くのはマズイと頭の中に残った理性が勝り、喉元に力を入れてこみ上げてきた吐き気を強引に押し戻す。

 

「はぁ……はぁ……」

 

深呼吸を繰り返して乱れた意識を整え、膝に力を入れて少々強引に立ち上がる。

 

気持ちを落ち着けるにしても、此処にいたらシャルルと顔を合わせてそれも難しくなる。

 

そう思って外に出ようとすると、出口の扉からノックを知らせる電子音が鳴り響いた。

 

『織斑君、デュノア君、いますか?』

 

扉の奥から聞こえてきた声は山田先生のモノだった。

 

もう一度だけ深呼吸し、自分の意識が落ち着いたことを確認してから答える。

 

「ふぅ……はい、いますよ先生。

 今開けます」

 

扉を開けると、そこには何枚かの書類を抱えて安堵の表情を浮かべた山田先生がいた。

 

俺と目が合っても何も言わないことから、どうやら顔色は問題無いようだ。

 

「あら、デュノア君は不在ですか?

 今日は一緒に自主練していると聞いたんですが」

 

「シャルルなら今ピットから戻ってる途中だと思います。

 大事な話なら、呼んできますか?」

 

「いえいえ、後で織斑君の方から伝えてくれれば充分です。

 実は、以前話した大浴場が男子でも使えるように決まったんです」

 

山田先生に言われて記憶を遡ると、確かに入学してすぐの頃にそんな話をしていた。

 

それほど長い月日が経っているわけではないが、あれから色々な出来事が有り過ぎたせいで記憶に残っていなかった。

 

今ではシャワーだけの日々が日課になっていたので、風呂に入るのは随分久しぶりになる。

 

「そういえばそんな話をしてましたね。

 でも、どういう形で決まったんですか?

 たしか時間帯別にすると女子生徒達から苦情が入って問題になるって話じゃ……」

 

「はい。実を言うと、そこの解決に一番時間が掛かりまして。

 方々と話し合った結果、週に2回の使用日を設けることになったんです」

 

成程、下手に時間を分けるのではなく、最初から使う日を決めておくことにしたわけか。

 

これなら女子生徒と何らかのトラブルが起こる可能性も殆ど無くなる。

 

だが、有難いと思うのと同じ位に申し訳無いという気持ちも湧いてくる。

 

「なんだか……すいません。

 俺達3人の為にわざわざっ……!」

 

そこまで口にした所で、山田先生が人差し指を俺の鼻先に突き出して言葉を止めた。

 

突然の事態に驚きで体が固まり頭が混乱するが、人差し指をどけた山田先生は俺と目を合わせてニコリと優しく微笑んだ。

 

「謝る必要なんてありません。

 貴方達は生徒で、私達は先生なんですから」

 

「……えっと……ありがとう、ございます」

 

悪意を一切含まない声でそう言われ、俺は混乱が抜け切っていないまま短く礼を言った。

 

よろしい、と頷いた山田先生は脇に抱えていた書類を手渡してきた。

 

「ひとまず今月下旬と来月分の大浴場の使用スケジュールを纏めました。

 明日になったら女子生徒達にも配りますけど、織斑君達には先に渡しておきますね。

 デュノア君にも渡しておいてくれますか?」

 

「分かりました。

 後でオレも目を通しておきます」

 

「あれ、一夏?」

 

後ろから聞こえた声に振り返ると、不思議そうな目でこちらを見るシャルルがいた。

 

恐らく、まだ俺が更衣室にいるとは思っていないかったのだろう。

 

俺に気を遣って遅れて来てくれたのに申し訳無いが、今は丁度良かった。

 

「山田先生が書類を持ってきてくれたんだ。

 今月下旬から大浴場が使えるからそのスケジュールとかをな」

 

「そうなんだ。

 日本のお風呂ってすごく快適だって聞いたから、ちょっと楽しみかな」

 

そう言って微笑みを浮かべるシャルルにタオルと一緒に書類を渡す。

 

後は俺も部屋に戻って休もうと考え、シャルルに先に戻ってると伝えて出口へ向かう。

 

だがその途中、一緒に更衣室を出ようとしていた山田先生から呼び止められる。

 

「すいません、織斑君にはもう1つ用事が有るんです。

 『白式』の正式登録について書いてほしい書類が有るので、職員室に来てもらえますか?

 少し枚数が多いので時間が掛かりますけど……」

 

「分かりました、大丈夫です。

 シャルル、そういうわけだから今日は先にシャワーを使ってくれ」

 

「わかった」

 

転校から5日が経過し、今では俺とシャルルはルームメイトになっている。

 

箒が部屋を移動したことでスペースは空いてたし、同じ男性だということから俺も一切異論は無かった。

 

しかし、同じ男性でも礼儀には厳しいのか、シャルルには生活態度でよく注意をくらう。

 

この前もシャワーを終えてズボンを穿いた半裸状態でも注意された。

 

荷物を運び終えた際にも、何故かシャワーを使う順番に強く拘ってきて普段は俺が最初でシャルルが後という形になるのを譲らなかった。

 

中学までよく遊んでいた同性の友人からは特に何か言われたことは無かったけど、もしかして外国人からはすごくだらしないように見えるのだろうか。

 

「それじゃあ行きましょうか、織斑君」

 

山田先生に呼ばれた声から思考を中断し、短い返事と共に急ぎ足で後に続く。

 

そうして更衣室を出た俺の背後で、誰にも聞こえない小さな溜め息が零れていた。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

  Side Out

 

 「……ハァ~」

 

一夏と麻耶が更衣室を出て数秒後、1人残されたシャルルは深い溜め息を吐き出した。

 

渡されたタオルを頭に被せたままロッカーに背中を預け、そのままズルズルと力が抜けたように床に座り込んで天井を見上げる。

 

タオルと前髪に隔たれたアメジストの瞳がぼんやりと照明を見詰めるが、その中には今までとは一転して暗い影のような淀みが有った。

 

肉体的か精神的なモノかは分からないが、全身から漂う疲労の気配は下手をすれば先程までの一夏よりも酷く見える。

 

「これで良いんだ……こうするしか、無いんだ……」

 

光が薄れた瞳で天井を見詰めながら、シャルルはうわごとのように呟く。

 

その様子は、まるで何かに追い詰められているような、あるいは考えたくもない何かから必死に目を逸らしているようにも見えた。

 

そのままシャルルは床に座り込んで天井を見上げていたが、数分程経った頃に溜め息を吐きながら視線を沈めると共に体を起こす。

 

まだ普段の様子とは程遠いが、何時までも此処にいるわけにはいないと気分的に重くなった体を動かして着替えを済ませる。

 

(考えが纏まらない……少し休んだらシャワーでも浴びて気分転換しよう……)

 

このままでは落ち込みに拍車が掛かるばかりだと考え、シャルルは足早に部屋へと戻った。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

  Side 一夏

 

 「ふぅ~……思ったよりも早く終わったな」

 

山田先生の言った通り書類の枚数は多かったが、殆どは指示された場所に名前を書くだけのモノだったのでそれほど時間は掛からなかった。

 

今回の手続きを終えて、俺は正式に『白式』の登録者となった。

 

しかし、山田先生が言うのはこの手続きを終えても特に大きな変化は無く、公式の大会などで参加登録する際の手間が省ける程度らしい。

 

それでも、専用機という大きな力を所持している以上、その行動に伴う責任が有るのだということを忘れてはいけない。

 

(まだまだ未熟者だけど………少しずつ進んで行くさ)

 

手首に装着された待機状態の『白式』を見詰めながら心の中で決意し、顔を上げると共に寮の自室へと行き先を決める。

 

今日はISの訓練に加えてラウラに絡まれたりと色々有ったし、早めに休もう。

 

そう考えながら少しだけ速度を上げて足早に廊下を歩き出した。

 

のだが……

 

 

「ねぇ、聞いた?

 織斑君とは別の男子生徒、クロスフォード君の話」

 

「知ってる知ってる。

 日本の代表候補生と勝負するって話でしょ?

 しかも、負けた方は勝った方の要求を何でも訊くって」

 

 

……偶然聞こえてきたその会話にすぐさま足を止めることになった。

 

どうやら、部屋に戻るのはもう少し後になりそうだ。

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

名も知らぬモブ教師の言葉で興が冷めたおかげで戦闘は起こりませんでしたが、もし戦闘開始したらアリーナはほぼ確実に閉鎖レベルで破壊されてました。

今作の一夏は原作よりも過去の体験をトラウマとして引きずっています。

というか、普通あんな体験したら重度のトラウマ抱えても不思議じゃないと思うんですが……

シャルルもシャルルで大分追い詰められており、次回辺りでその辺の事情に触れていくことになります。

次回はオリ主も加わってくることになります。

では、また次回。

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