IS<インフィニット・ストラトス> 願いの果てに真理在れ   作:月光花

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今回からクラス代表編に入ります。

では、どうぞ。



第2話 様々な“代表”

  Side アドルフ

 

 改めて思うが、このIS学園の設備のテクノロジーは少し異常だ。

 

黒板は電子モニターになっていて、オレが座っている机さえ空間モニターとキーボード装備という下手なPCを遥かに上回るスペックを備えている。

 

校舎も同じく、色々な国を旅してきたオレでも今まで見たこと無い程に近未来的なデザインだ。道案内の看板ですら立体スクリーンを使うなんて、次元が違う。

 

聞いた話では、IS学園と外部の技術力は20~30年ほど開きがあるとも言われているらしい。ここは一体何処の学園都市だ?

 

まあ、それも当たり前と言えば当たり前だ。

 

この学園が目を向けているのは、超能力でも魔術でもなくISだ。

 

ISは理論上それまでの全ての兵器を凌駕する性能を誇る。その研究開発が行われた事で、様々な面での技術が飛躍的に発達した。

 

もちろん、まだ一般に出回っているわけではないが、このIS学園という場に置いては別の話だ。最先端のテクノロジーが日常部分にさえも注ぎ込まれている。

 

ISは宇宙進出の可能性だけでなく、大規模な技術革命を人類にもたらしたのだ。

 

まあ、良い面があると同時に悪い面があるのも確かなんだがな。

 

それは、ISが女性しか動かせない事によって生まれている女尊男卑の社会。ISに乗れる=偉いという考えが広まり、男が見下される社会になって来ているのだ。

 

正直、何だってそんな理解不能な世論が広まり、かつそれに納得して洗脳されるキチガイがいるのか今でも疑問だ。

 

 

「……わたくしを知らないっ!? このセシリア・オルコットを……代表候補生にして、入試主席のこのわたくしをっ!?」

 

 

そう思ったところで、教室の中に驚きの声が上がった。

 

声のする方向に目を向けてみると、鮮やかな長い金髪に少しロールを入れた女性が織斑一夏に食ってかかっていた。肌は白人のそれで、瞳もそれ特有の青色だ。

 

多国籍などに関係無く生徒を受け入れなくてはならないIS学園では外国人など珍しくもないが、あの女には何処か普通とは違う“お嬢様”という感じのオーラがあった。

 

しかし、ISの国家代表候補で入試主席か……優秀なのは確かなようだが、他者を見下すような雰囲気を纏っているせいかどうにも良い印象を持てんな。

 

「あ、ちょっと待った。質問いいか?」

 

「ふふ、下々の者の疑問に答えるのも貴族としての努め。よろしくてよ」

 

「……代表候補生って、なに?」

 

その瞬間、教室の中に残ってた生徒と金髪の女は綺麗にズッコケた。

 

オレもズッコケはしていないが、驚きと呆れを感じているのは事実だ。

 

だが、織斑一夏はそんな反応を示した周りこそがおかしいと言うように、平然とした顔で首を傾げている。

 

状況に流されているだけかと思ったが、アイツって実はとんでもない自己中野郎なんじゃないだろうか。

 

「あれ、みんなどうしたんだ?」

 

「し、信じられませんわ! 知識が乏しいにもほどがあります! これは常識ですわよっ! 常識! マニュアルなどなくても分かるレベルですわ!」

 

残念ながらその通り、これはISに関する知識どうこうではなく、一般常識に当てはまる情報なのだ。というか、単語から大体想像出来るだろう。

 

国家代表とはISの世界大会、モンド・グロッソにおいて文字通り国の代表として出場する人間であり、代表候補生はその候補者を示している。

 

いくらなんでも、コレを知らないのは無知を通り越して疑問だぞ。

 

「嘆かわしいですわね……本来ならわたくしのような選ばれた人間とクラスを同じくすることだけでも奇跡……幸運なのですわ!その現実をもう少し理解していただける?」

 

いや、そこまでではないだろう。代表候補生になれた実力は分かるが、クラスの編成に関してはどう見ても無関係だって。

 

「大体、何も知らないくせによくこの学園に入れましたわね。ISを動かせる男と聞いてもう少し知的な人物だと思っていましたが、期待外れですわね」

 

「そう言われても……俺に何かを期待されても正直困るんだが」

 

織斑の言うことも尤もなのだが、金髪の女、オルコットは知ったことではないと言うように鼻を鳴らし、腕を組みながら黒板の方へ歩いていく。

 

「ふん。まぁでも? 私は優秀ですから、あなたのような人間にも優しくしてあげますわよ? わからないことがあれば……まあ、泣いて頼まれたら教えて差し上げても良くってよ。なにせ私、入試で唯1人、教官を倒したエリート中のエリートなのですから」

 

「入試?ああ、それなら俺も倒したぞ」

 

その言葉に、クラスの中にいる全員とオルコットが驚きながら織斑一夏を見た。同時に、オレは盛大に嫌な予感を感じていた。

 

「わ、わたくしだけだと聞きましたが……」

 

「それって、女子ではってオチじゃないのか?」

 

ピシッ! と、驚きを隠せない様子のオルコットに織斑の発言がトドメを差した音が聞こえた。

 

すると、オルコットが肩を震わせながら織斑一夏の机を強く叩いて詰め寄った。

 

「あなたも……教官を倒しましたのっ!? わたくしと同じように……まさか、もう1人の男も……」

 

嫌な予感が的中した。

 

少々俯き気味だった視線を持ち上げてみると、クラス内の全員がオレを見ていた。掛けられる言葉は無いが、視線だけでどうなの? と尋ねている。

 

オルコットに至っては盛大に目が血走っており、鼻息も荒い。怖えよ、こっち見んな。

 

だがこれは……下手な嘘を言えば後々厄介なことになりそうだ。

 

「……オレも倒した。と言っても、かなりギリギリのまぐれ勝ちに近いがな」

 

後半部分の情報を忘れずに真実を伝える。

 

そう。オレも入試の試験で教官と1対1で戦い、勝利したのだ。

 

とはいえ、空をマトモに飛べないオレをなぶり殺しにしていた教官が調子に乗って地上に降りて接近戦を仕掛けて来たので、それをチャンスに得意の蹴り技でボコボコにしたという内容なのだが。

 

正直、オレもあそこまでやられて勝てるとは思わなかった。接近戦弱すぎるのに調子に乗ってくれた教官のおかげである。

 

「そんな……バカな……納得いきませんわ!」

 

オレの発言に更なる驚きを感じたオルコットは今にもブチギレそうになるが、その怒りが開放される前に、3時間目の授業開始を知らせるチャイムが鳴った。

 

不完全燃焼とすら言えない状態でオルコットは肩を震わせ、ビシッ! と織斑を指差した。

 

「また後で来るので逃げないように! 良いですわね!?」

 

そんな捨て台詞を残してオルコットは戻っていくが、オレは内心で来んなと叫びたい気分だった。恐らく織斑一夏も似たようなものだろう。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

 「それではこの時間は実戦で使用する各種装備について説明する」

 

始まった3時間目の授業。今回教壇に立っているのは、織斑先生である。

 

かなり重要な内容なのか、脇に立つ山田先生もノートを取っている。

 

「……ああ、その前にこれより再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める。クラス代表は対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……簡単にいえばクラス長だな。ちなみにクラス対抗戦では、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差は無いが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」

 

早い話が色々な面でクラスの代表を請け負う人間を決めるということだろう。

 

だが、少し引っ掛かる部分もある。今の時点でクラスの実力に大差は無いと言ったが、代表候補生がいるクラスはどうなるんだ? 経験も知識もレベルが違うと思うんだが。

 

「クラス代表には自薦他薦を問わない。誰かいないか?」

 

まあ、その辺を理解していない女子達は恐らく……

 

「はいっ。織斑君を推薦します!」

 

……こんな風に、面白そうだと期待して男子生徒を推薦するわけだ。

 

「お、俺!? ちょっと待て、俺はそんなのやらない……」

 

「自薦他薦を問わないと言った推薦された者に拒否権は無い。名前を出された以上は覚悟を決めろ」

 

声を上げて反論しようとする織斑一夏を織斑先生が黙らせる。

 

人権侵害も良い所の発言なのだが、口にすれば恐らく出席簿が飛んでくるのだろう。

 

「納得がいきませんわ!そのような選出は認められません!」

 

他薦や自薦がまったく途絶え、このまま決定しそうなところでバンッと机を叩く音が聞こえた。

 

クラスの視線が向く方向にいたのは、セシリア・オルコット。その表情には、明らかな不満の色が有った。

 

「男がクラス代表なんて恥晒しもいいところですわ!この私に、セシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるの!?」

 

席から立ち上がり、オルコットは左手を胸に当てながらそのままスピーチを続ける。

 

「実力から行けば私がクラス代表になるのは当然! それを、物珍しいという理由で極東の猿にされては困ります! 私はこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスを見に来ているのではありません!」

 

お~い、その辺でやめておいた方が良いぞ~。お前の発言、世間的に見てもデッドボールギリギリのラインを走ってるから。

 

「あの、アドルフさん。当然だと言うなら、何故自分で立候補しなかったのでしょうか?」

 

そう考えた時、隣に座っている女子生徒がおそるおそるといった感じで話しかけてきた。確か、四十院さんだったか? てか、いきなり名前呼びかい。別に嫌ではないが度胸あるな。

 

話しかけられたのは少し意外だったが、オレはすぐに答えを返す。

 

「多分だが、推薦されたかったんじゃないか? 実際、オルコットの実力はこのクラスで最も高いはずだし、人気はともかくとして勝率は高いだろうな」

 

「ぐっ!……す、少し余計な発言が混じっていましたが、そちらの男子生徒は分かっているようですね。そう、クラス代表はエリートたる私こそがふさわしいのですわ」

 

オレの推測は図星だったらしく、オルコットは少々ダメージを受けながら言葉を続ける。

 

「大体!文化としても後進的な島国で暮らさなくてはいけないこと自体、私にとっては耐え難い苦痛なんです! それを……」

 

「イギリスだって大したお国自慢無いだろ。世界一まずい料理で何年制覇だよ」

 

オルコットがデッドボール云々を通り越してガソリンタンクに火を投げ込む同然の発言をしたのだが、周りの注目はそれに割り込んだ織斑に向けられた。

 

しかし、随分と元気良く話してるが、オルコットは自分の発言内容を理解してんのか?それとも本当に大した度胸を持っているのか。

 

極東の猿と言うが、このクラスの担任と副担任はその国の出身であり、クラスの半分は日本人だ。おまけに罵倒を飛ばした織斑一夏は“元世界最強”の弟。

 

そっと視線を動かしてみると、山田先生は額の微かな青筋を笑顔で隠している。わぁ~綺麗。織斑先生は青筋などは浮かべていないがその目の中には薄くだが殺意に似た冷たさが宿っている。わぁ~怖い。

 

続いて隣の四十院さんに目を向けてみると、全身から怒気を滲ませながら射殺さんばかりの眼光をセシリアに向けていた。そっとしておこう。

 

しかし文化としても後進的とは恐れ入る。この学園が作られることになった元々の原因を作ったのが何処の誰で、どの国の出身なのか知らないわけではないだろうに。

 

これ、世間に公表したら冗談でもなくとんでもないことになるよね? 日本とイギリスの関係とか、オルコット自身の立場とか、イギリスに対して国交断絶状態も夢じゃないぞ。

 

「あ、あなたっ! 私の祖国を侮辱しますの!?」

 

先程の自分の発言を棚に上げているのか、オルコットは顔を真っ赤にして声を上げる。

 

あんだけとんでもない爆弾発言連発しといて沸点低いとは、最悪の組み合わせじゃねぇか。

 

というか織斑一夏、オルコットの発言にも問題あるが、イギリスだって良い国だぞ? 旅で何度も行っているが、料理だってかなり美味いもんだ。自慢出来ることなんてたくさん出てくる。

 

「決闘ですわ!」

 

「ああ、いいぜ。四の五の言うよりずっと分かりやすい」

 

だが、オルコットはその良さを伝えるつもりはないらしく、机を叩いて宣言する。織斑一夏も乗り気のようだ。信じられるか? コレ、クラスの学級委員を決める話し合いなんだぜ?

 

「織斑先生、候補者が複数の場合はどうすればいいんですか?」

 

1人の女子生徒がそう尋ねると、織斑先生の口元に微かだが笑みが見えた。

 

穏やかに見え、同時に今の状況を楽しそうに見るような笑みだ。

 

「なに、簡単なことだ。候補の中から一番実力の有る者を選べばいい」

 

そう言った織斑先生は笑みを浮かべながら一瞬だけオレを見た。それに気付いた瞬間、オレは先程の休み時間を上回る嫌な予感を感じた。

 

他に視線を移すと、セシリア・オルコットは自分が選ばれて当然だと思い込んでいるようで、上機嫌そうな笑顔だ。

 

「織斑、オルコット、さらにアドルフ・クロスフォードを加えた3人でISの勝負を行い、総合戦績で一番優秀だった者をクラス代表とする」

 

その言葉を聞き、オレは疲れたように重い溜め息を吐き、織斑一夏は呆然とし、オルコットは笑顔のまま一瞬石化し、再び怒りの表情に変わる。

 

「な、何故ですか!? 勝負などせずとも、実力的に私が一番優れているではありませんか! 例え2人同時に相手したところで負けはしません!」

 

「ならばそれを試合で私に証明してみせろ。代表候補生だろうが特別扱いされるなど思うな。織斑、クロスフォードもそれでいいな?」

 

「俺は構いませんけど・・・・・」

 

「何故自薦も他薦もされていないオレが加わっているんでしょうか」

 

セシリア・オルコットは簡単に抑え込まれたが、オレは生憎とハイそうですか、とは頷けない。てか、声に出すならふざけんなと言いたいくらいだ。

 

「まだまだ未熟とはいえ、お前は入試で教官を倒した実績がある。クラス代表を務めるには充分と判断した私からの推薦だ。それとも、この決定が不服か?」

 

「正直に言って、オレはどこぞのブリュンヒルデの弟のように客寄せパンダになりたくはありません。賭けの対象や見世物として出されるなんて死んでもごめんです」

 

徐々に苛立ちを含むような口調になっていったが、本心である。

 

オレの言葉に教室の空気が一瞬凍りつき、織斑先生が目を細めてこちらを見ている。余計なことを言うな、という目だが、オレの知ったことではない。

 

「だがお前は確かに推薦を受けた身だ。決まったからには覚悟を決めろ」

 

いや、その推薦しやがったのはアンタだよね? 教師の立場で1人の生徒に推薦したよね? 覚悟も何も無いだろうが。

 

もはや反論を口にする気力さえ失せる暴君理論にオレは溜め息を吐いた後で舌打ちする。

 

「さて、話は纏まったな。それでは勝負は一週間後の月曜日、第3アリーナで行う。織斑、オルコット、クロスフォードの3人はそれぞれ“準備”をしておくように。では授業を再開する」

 

ぱんっと織斑先生が手を叩き、話を強制的にそこで締める。

 

そこから授業が再開したのだが、オレの心の中は苛立ちが渦巻いて仕方が無かった。

 

(こうなればもう変更は出来んだろうし……なんとかしなくてはな)

 

旅を続けている上で“荒事”には慣れているのだが、これは流石に勘弁願いたかった。

 

(へいへい……決まったことに駄々こねても仕方ないぞと。頑張りますよ~)

 

内心でうんざりしながらも、オレの頭はすでに戦略を練り始めているのだった。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

 授業が終了し、オレは終わりの礼の後にすぐ教室を出た。

 

そのまま廊下を早歩きで通過し、階段を登って屋上に出る。さらに屋上の隅に移動し、入り口を見張る。ここまで来るのにすれ違った人間は1人としていないが、人の目を避ける為の保険だ。

 

そして懐から携帯電話を取り出し、素早く番号をコールする。呼び出すのは、今までの生涯で知り合ったオレの“親友”だ。

 

「Good evening……ああ、オレだ。久しぶりだな。知ってると思うが、今日本にいる。時差からしてそっちは今は夜だよな? 時間あるか? ……感謝するよ親友。突然で悪いが……」

 

そこまで言い掛けて、オレは柵に背中を預けながら空を見上げる。

 

「ちょっとIS使って“決闘”することになってな……力を貸してくれ」

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

オリ主の立ち位置が未だに微妙な上に、ISもゼロ二ティも出せていない。

次回からISを出して、セシリア戦でゼロ二ティを出していきます。

では、また次回。
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