IS<インフィニット・ストラトス> 願いの果てに真理在れ   作:月光花

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前回言ったとおり、どうにか少しだけISを出せました。それと、ヒロインの1人もようやくです。

今回、ちょっと話が急ペース気味で進みます。

とりあえず、今さらだけどISの原作って、突っ込みどころ満載ですよね。まあ、それでも大好きですけど。

では、どうぞ。



第3話 ルームメイト

  Side アドルフ

 

「うぅ~……意味が分からん。何でこんなややこしいんだ……? よく覚えられたな、アドルフ」

 

「参考書を捨てたお前の自業自得だろう。好きなだけ貸してやるから、少しでも早く内容を理解して覚えることだ」

 

オレの目の前には、頭から煙を噴き出しながら机に突っ伏している織斑一夏がいる。

 

セシリアとの対決が決定し、授業を真面目に聞こうと決意したらしいが、参考書を捨てたせいもあって当然の如く苦戦していた。

 

「ああ、織斑くん、クロスフォードくん、まだ教室にいたんですね」

 

呼ばれた声に振り返ると、そこには書類の束を片手に持った山田先生がいた。

 

「えっとですね、2人の寮の部屋が決定したので、伝えに来たんです」

 

「あれ? 俺って入学から1週間は自宅から通う話じゃ……」

 

「その予定だったんですけど、部屋割りを無理やり変更したらしいんです……2人共、そのあたりのことって政府から何か聞いてます?」

 

山田先生の言葉に対し、織斑は無言で首を振った。

 

ちなみに、オレもこれに関しては何も聞いていない。というか、黒スーツの男達相手に暴れ回ったせいでそれどころではなかった。

 

「じゃあ、荷物とかは……」

 

「私が用意してやった。ありがたく思え」

 

言いかけた山田先生の言葉を引き継いだのは、教室の中に入ってきた織斑先生だった。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「と言っても、生活必需品だけだがな。着替えと携帯の充電器が有れば充分だろう」

 

なるほど、素晴らしいまでに最低限だ。本当に生活に必要な物だけしか無いようで、随分と大雑把だ。

 

まあ、身内だからと言って娯楽品を混ぜ込む人だとは思えないしな。

 

「オレの荷物はどうなったんでしょうか」

 

「すでに部屋の中に運んである。しかし……旅をしていると聞いていたが、意外に少ないのだな」

 

「所持品は他にも色々あるんですが……状況が状況なんで外国の友人にまとめて預かってもらってるんです。休み時間に幾つか送ってほしい物をメールしました」

 

各国の知り合い、友人達の元にある荷物は他にもそれなりに多いが、しばらくは預かって貰っておくとしよう。

 

まあ、ストレス発散の為に送ってもらう物も少しあるが。

 

「……各部屋にシャワーはありますけど、生徒用の大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど、織斑くん達は今のところ使えません」

 

「えっ、なんでですか?」

 

「織斑、お前は女子が使用中の浴場に入り込むつもりか?」

 

「……やっぱりいいです、はい」

 

オレの言葉に織斑が頬を引き攣らせ、すぐに首を振った。

 

世界中を旅したオレには風呂の習慣は無いが、日本人はやっぱ違うのかね?

 

「ええっ!? 女の子に興味がないんですか!? そ、それはそれで問題のような……」

 

何故山田先生の思考がそういう極論に至ったのか今1つ理解出来ないが、まさか本当じゃないよな?

 

「それはそれで……アリね……」

 

「素晴らしいわ……イケメンが材料だと次々とアイディアが浮かぶ!」

 

「今日は徹夜ね! すぐに取り掛かるわよ!」

 

何やら廊下から元気に腐っていく声が聞こえるが、無視することにしよう。

 

ただ、織斑から少しだけ距離を開き、一言だけ伝えておこう。

 

「織斑……日本では同性愛が認められていないことを忘れるなよ」

 

「距離を開けながら言われなくても知ってるよ!? 心配しなくても俺はノーマルだよ!」

 

「と、とにかく……私たちはこれから会議があるので失礼しますけど、2人共真っ直ぐ寮に帰るんですよ。何処か寄り道したらダメですからね」

 

そう言った山田先生は教室を出て行き、オレもくたびれた様子の織斑一夏と一緒に寮を目指すことにした。

 

本当のことを言えば学園にあるIS関連の施設を見て回りたい気持ちもあったのだが、流石に今日は休むことにしよう。いい加減、女子の視線から解放されたい。

 

「さてと、部屋行くか…………あれ?」

 

「どうした?」

 

「いや、俺とアドルフの部屋の鍵……番号違くないか?」

 

織斑一夏の言葉に一瞬体が固まり、おそるおそる山田先生に渡された鍵を見てみる。

 

続いて織斑の手の中にある鍵を見ると、確かに番号が違っていた。

 

コレはアレか? オレと織斑一夏に同年代の女子と同じ部屋で過ごせと? 正気かこの学園は。今の女尊男卑の社会で女と問題を起こせば社会的に抹殺されるのはほぼ確実だというのに。

 

「個室なのか……それとも、誰かと同室なのか……」

 

「織斑、とりあえず考えるのやめよう……これ以上、この学園の非常識っぷりに悩んでたら頭がおかしくなる」

 

「お、おう……」

 

顔に手を当てながら深い溜め息を吐いたオレの様子に、少々引き気味になりながら織斑一夏が頷いた。

 

本当、初日からこれって……オレ、この先大丈夫なのか?

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

 「そういえば言うの遅れたけどさ……セシリアとの勝負、絶対に勝とうぜ!」

 

「オレはそもそもやりたくないんだがな……それに、そういう言葉は実力差をハッキリと見極めてから言え。クラスの女子も言っていただろう」

 

爽やかな笑顔でそう言ってきた織斑一夏に即答すると、ジト目を返された。どうやら、オレのドライ気味な返答がお気に召さなかったらしい。

 

「なんだよ、やる前から諦めてるのか? ……あんだけバカにされて、悔しくないのかよ?」

 

「確かにオルコットの発言と態度には色々と問題が有ったが、オレから見れば売り言葉に買い言葉となった時点でお前も同レベルだよ」

 

イギリスだって、日本と同じでちゃんと良い所あるんだぞ? と付け足し、オレは歩を進める。

 

喧嘩を売られたからといって、必ずしもそれを買わねばいけないことはないのだ。

 

まあ、今更言っても仕方ないし、コイツ個人の心情に深入りする気は無いからもうやめておくか。見た感じ、オレの言葉で少なからずダメージ受けてるみたいだし。

 

「まあ、勝ち負けはともかく、やれるだけのことはやるさ。ちっぽけなプライドだが、最初から自分で勝負を投げるのは好きじゃない」

 

そこまで言って、この話題は強制的に終了。

 

オレと織斑一夏はしばらく無言のまま寮の通路を歩いた。

 

「あっ……1025……ここか……」

 

寮の部屋番号を見ながら通路を歩いていると、織斑の部屋の方が先に見付かった。

 

織斑はそのままドアノブに手を伸ばすが、触れる寸前で手が止まった。

 

「やっぱり……誰かいるのかな?」

 

「いないに越したことはないが……もう覚悟を決めるしかないだろう」

 

「そ、そうだな……よし、行ってくる!」

 

ドアノブ捻って部屋に入るだけでこんな勇気が必要なのもシュールな光景だが、織斑一夏は覚悟を決めた顔で部屋の中に入っていった。

 

何となくそのまま数秒待ってみたが、特に大きな物音も聞こえない。

 

「オレも行くか……」

 

バンッ!!

 

そう言って踵を返した瞬間、数秒前に部屋に入った織斑一夏が飛び出してきてすぐに扉を閉めた。その顔にはびっしりと汗が流れている。

 

何やってんだ、と問い掛けようとしたが、その瞬間にドアの先から凄まじい嫌な予感を感じた。旅の中で何度も感じたことがあるこの威圧感は、殺気。

 

「ちっ……!」

 

無意識に舌打ちしながら手を伸ばして織斑一夏の襟首を掴み、反対方向へと引き寄せる。

 

すると、数瞬前に織斑一夏の体が有った空間を1本の木刀が鋭く貫き、直線状にあったオレの右脇腹を僅かに掠めた。驚いたことに、木刀はドアを見事に貫通している。

 

「っ……!」

 

木刀が掠った右脇腹がジリジリと鈍い痛みを訴えてくるが、それどころではなさそうだ。ドア越しに感じる殺気がまだ消えていない。

 

すると、思った通り刺突が続けざまに放たれ、次々とドアに穴を開ける。

 

「おいおい……」

 

バックステップでドアから距離を取ったので被害は無いが、破壊されていく目の前のドアを見て溜め息が漏れる。

 

「ったく……」

 

オレは呆れながら引き戻されそうになった木刀を右手で軽く掴み、刀身の部分を左膝で蹴り上げる。その衝撃はドアに挟まれている状態の木刀に響き、上下に激しく震動する。

 

するとどうなるか……衝撃が持ち手部分にも伝わり、強く握った分だけ手に痛みが走る。痛みの感じで言うなら、鉄パイプでレンガの壁を叩いた時に近い。

 

案の定、ドア越しに感じていた木刀の抵抗が無くなり、引っ張った木刀は糸も簡単にドアから引き抜けた。

 

「織斑、無事か? というか……何があった?」

 

「いや、箒の奴が怒って……そ、それより! お前は大丈夫なのかよ!? 木刀掠ってなかったか!?」

 

「少し痛むが、それだけだ。その口ぶりだと中にいる奴は知り合いのようだが、大丈夫なのか? どうにも精神面に異常を抱えていそうだが」

 

「どういう意味だっ!!」

 

中から不満そうな大声が聞こえ、ドアが開いた。

 

すると、そこには道場着姿のポニーテールの女がいた。見覚えがあったので記憶を探ってみると、休み時間に織斑一夏と話していた女と顔が一致した。

 

「言った通りだ。何があったかは知らんが、普通の人間は怒りに任せて木刀で人を襲ったりはしない。他人に迷惑を掛けている自覚すら無いのかお前は」

 

そう言って穴だらけのドアを指差すと、その女は何も言えなくなった。

 

「……まぁいいだろう。一夏、入れ」

 

ついさっき人を殺しかけた自覚も無いのか、その女は平然とそう言った。

 

織斑一夏は少し戸惑いながらも頷いて立ち上がるが、思い出したように慌ててポニーテールの女に詰め寄った。

 

「そ、それより箒! お前何やってんだよ!? 俺が悪いのは分かるけど、もう少しでアドルフが大怪我を……」

 

「やめておけ、織斑。今のソイツに言っても恐らく無駄だ」

 

正直、蹴りの1発でもぶち込んでやりたいところだが、今は我慢だ。というか、食って掛かるのも無駄な気がする。

 

織斑一夏の肩を掴みながらそう言って、オレはドアから引き抜いた木刀を手渡す。

 

「あの女の頭が冷えるまでは絶対に渡すな。それと、少し釘を差しておけ、あのままでは周囲の人間が誰も寄り付かなくなるぞ」

 

「わ、わかった……本当、色々ごめん。それと、ありがとうな」

 

申し訳無さそうにそう言った織斑一夏におう、と軽く返答し、今度こそその場を後にする。

 

それと、今の騒動で周りの女子生徒が集まっていたが、木刀が掠った脇腹の痛みを耐えているオレはそれどころではなかった。

 

クソが、ISを動かせることが分かってから色々有り過ぎて勘が鈍ったか?

 

「ここか……」

 

鍵に書かれたのと同じ番号の部屋を見つけ、一度深呼吸した後に扉をノックする。

 

部屋の中からすぐに返事が聞こえ、目の前のドアが控えめに開いた。

 

「誰……?」

 

部屋の中から出てきたのは、所々にはねがある綺麗な青髪の少女だった。

 

四角型の眼鏡を掛けた赤色の瞳は細めで虚ろな感じに見えて、何処か気弱そうな雰囲気を放っている。そんな子だ。

 

「今日から君のルームメイトになった者なんだが……」

 

「貴方が……? わかった……入って」

 

オレの言葉に少し驚いたようだが、少女は部屋に入れてくれた。

 

部屋の内装を見て最初に思ったのは、まるで高級ホテルみたいだということ。今まで色んな宿やホテルに泊まったことがあるが、ここまで高そうな部屋は見たことないな。

 

部屋の中を見回している中でオレが愛用しているボストンバッグを見つけ、中を確認する。だが、ふとルームメイトの少女の視線を感じて顔を上げる。

 

「そういえば、自己紹介がまだだったな。改めて、アドルフ・クロスフォードだ。男が相部屋ということに不満はあるだろうが、よろしく頼む」

 

更識(さらしき)(かんざし)……別に、不満は無い。よろしく」

 

自己紹介なら握手でもするべきなのだろうが、皮手袋を装着したままでやるのは流石に気が引けるのでやめておこう。

 

「更識、早速だが色々と決まりごとを作りたい。お互い、シャワーの使用中に鉢合わせしたり、着替えを見られたりするのは遠慮したいだろう。更識からは何かあるか?」

 

「……じゃあ、1つだけ……どうして、両手に手袋を付けているの?」

 

……正直、少し意外だった。

 

見た目から人の性格を決めるのは良いことではないが、更識はそういう疑問を進んで口にしないと思っていた。

 

とはいえ、オレから質問を問い掛けたのだ。訊かれたからにはちゃんと答えよう。

 

「分かった。教えよう……だけど、少し覚悟して聞いてくれ」

 

オレの言葉に数秒呆然となるが、更識は瞳の中に決意を固めて頷いた。

 

「と言っても、大した理由ではないんだ。ただ、堂々と見せるのも気が引けてな……」

 

「どういう、こと……?」

 

「6年も前の事故でな。オレはその時のショックで記憶を失くしたんだが、体のあちこちに大怪我を負ったんだ。医者が言うには、顔に怪我が無かったのと、身体機能に1つも不全が出なかったのは奇跡だそうだ」

 

事故の詳細は、街の外れに建つ家が突然爆発するように燃え出し、そこで暮らしていた家族はオレ1人を残して全員死亡。どういうわけか、遺体は骨すら残っていない。

 

生き残ったオレも両腕と体を炎で焼かれ、体にも大小無数の傷を負った。

 

ガキの頃に面倒を見てくれた医者の話では、発見された時のオレは相当に酷い状態だったらしい。助けるのを諦めそうになったとか言ってたが、医者の発言としては洒落にならんぞ。

 

ちなみに、病院に運び込まれた時の写真があるらしいが、しばらく飯が喉を通らない気がしたので、断固拒否した。

 

「親が残してくれた金で長期治療を受けられてかなりマシになったんだが、まだ治ってない怪我や消せない傷跡もあってな。この手袋は両手の火傷と切り傷の跡を隠してるんだ」

 

見せるなんて真似はもちろんしないが、オレの両腕にはまだ薄い赤色の火傷と幾つかの切り傷の跡が残っている。

 

他にも体に傷跡があるのだが、こっちは極力肌を見せないようにしているので問題は無い。まあ、これがオレの制服をカスタマイズした理由というわけだ。

 

「……ごめんなさい」

 

すると、突然更識が申し訳無さそうにペコリと頭を下げた。

 

多分、傷と火傷のことを訊いたことに謝罪しているのだろう。

 

「気にしなくていい。傷のことはとっくに割り切ってるし、 手袋(これ)を付ける生活にもいい加減慣れたもんだからな」

 

オレの声の調子から本当に気にしていないと分かってくれたようで、更識はすぐに顔を上げてくれた。

 

これから少しの間でもルームメイトになるんだ。気まずくなるような空気なんて勘弁してほしい。

 

その後はシャワーの詳しい使用時間などを決めて、今日の話は終了となった。

 

もう少し話をしたかったが、初日から色々有り過ぎたせいで疲れた。

 

そんな理由で、オレは寝る前に更識に“しばらくよろしくな”と言ってすぐに眠りに付いた。

 

こんな形で、オレのIS学園での最初の1日は幕を閉じた。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

 翌日、朝を迎えると共に昨日までの記憶が夢ではないと教えられた。理不尽に最悪の朝だ。

 

そういえば更識は夜遅くまで何かの作業をしているようだったが、何だったのだろうか。オレは大抵の光や音なら問題無く眠れるので特に気にしなかったが。

 

せっかくルームメイトになったんだ。出来ることがあるなら力になろう。

 

更識は少し用事があるらしいので、オレは1人で学食に向かった。

 

学食に入った途端に周りの女子が一斉に道を空けてくれたが、オレはモーゼじゃないっての。まあ、しばらくはコレも続くんだろうが。

 

そんなこんなで中に入ると、織斑と遭遇した。隣には木刀を振り回していたあの女がいたが、何やら不機嫌そうで普段よりも近寄り難い雰囲気を放っている。

 

織斑が言うには、この女の名前は篠ノ之箒というらしい。何とも舌を噛みそうな苗字だが、何処かで聞いたことがあるのは気のせいか?

 

織斑とは幼馴染で6年ぶりの再会なんだそうだが、ずいぶんと癖のある友人がいるんだな。しかも、篠ノ之の方は織斑に惚れてるように見える。

 

何で分かるかって? 態度があからさま過ぎるだろう。隠す気あんのか? と質問したくなるくらいだ。

 

そして、それに気付かない織斑はもっと分からん。呆れるほど鈍感なのか、それとも本当にホモなのか。出来れば前者であってくれ。頼むから。

 

あと、織斑が昨日の件で篠ノ之に謝罪するよう言ったらしいが、断固拒否しているそうだ。その辺は最初から期待していなかったが、どうやら思ったとおりの奴らしい。

 

これじゃあ、惚れられている織斑も大変だろうに。主に肉体へのダメージ的な意味で。一応、死なないことを祈っておこう。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

 「織斑、お前の専用機だが、到着まで時間が掛かるそうだ」

 

授業を開始する前に、織斑先生が織斑にそんなことを伝えた。

 

専用機というのは、字の通り、その搭乗者の為だけに用意されたISのこと。主に国家代表や代表候補生、後は企業の専属パイロットなどに用意される。

 

だが、現在世界に存在するISコアの総数は467。つまり、現在でISは467機しか存在しないわけだ。

 

その467機の中で専用機を与えられるのは、本来ならかなりの実力を持つエリートだけ。しかも、聞いた話では数年前の“事件”を境に競争率がさらに厳しくなったそうだ。

 

だが、織斑の場合は本人の実力よりもデータ収集を優先し、政府から決定が下ったそうだ。

 

早い話がモルモットなのだが、その辺を軽く見ている織斑はお気楽そうにへぇ、と感心の声を上げている。

 

それと、何やらオレの専用機も用意されるらしい。と言っても、余っているISコアが無いので予定止まりの状態らしいが。

 

その情報を聞いてオレは安堵の息を吐いた。当然返答は……

 

 

「いりません。開発予定も打ち切ってもらって結構です」

 

 

……断固拒否。お断りである。

 

専用機の取得については、得る“権利”はあっても、受け取らねばならない“義務”は無いはずだ。故に、オレがいらないと言えばそれまでだ。

 

教室にいた全員がありえない、と言うような顔をしていたが、オレからすればお前等こそ分かってない。

 

政府が用意したISを専用機として利用するなど、ISを貰う代わりに自分の身柄を政府に渡すようなものだ。しかも、どんなISを寄越されるのかも分からないのだ。

 

強力な後ろ盾を持つ織斑ならともかく、オレがそんな話を受ければ、手の掛かる面倒な手続きを済ませるだけで人体実験し放題だ。

 

専用機は確かに魅力的かもしれないが、量産機との性能差が極端に開いていることなどないだろう。当たり前の状態だと割り切れば、特に思うことは無い。

 

そんな形で話は纏まり、放課後を迎えると共に織斑が声を掛けてきた。何でも、剣道場で特訓をするそうだ。

 

ISの操縦と竹刀振り回すことに何か関係があるんだろうか。一瞬接近戦を鍛える為かとも思ったが、織斑の専用機が射撃特化型だったらどうするつもりだ? まあ、言うと面倒なことになるだろうから何も言わないが。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

 「それじゃあ、始めましょうか。クロスフォードくん」

 

「分かりました」

 

そういうオレは、山田先生に放課後に訓練をお願いしている。

 

オルコットとの勝負の事情もあって、訓練機とアリーナの使用が優遇されるらしい。ありがたいことだ。

 

ちなみに、ISを操縦する際に着るISスーツなのだが、当初予定されていた織斑と同じデザインでは傷跡が丸見えになってしまうので、オレのは違うデザインにしてもらった。

 

まあ、傷跡の問題が無くても アレ(半袖に短パン+へそ出し)は勘弁だが。

 

上半身は手首に至るまで白いラインを走らせた全身青色スーツとなっており、手首から先は自分の皮手袋を付けて隠している。

 

それと、本来の役目である電気信号をの伝導を補助する為に、肩と肘の部分には白色の機械が取り付けられている。

 

下半身には特に傷は無いのだが、せっかくだから短パンを遠慮してスーツの丈を膝まで伸ばしてもらった。こちらにも、膝の部分に白色の機械がある。

 

日本製の量産機である打鉄と、フランス製の量産機であるラファール・リヴァイブの両方を試しに乗らせてもらったが、山田先生が見た限り、オレの動きは機動性に優れたラファールに向いてるそうだ。

 

そういえば、入試の試験でもこの機体に乗ったっけな。

 

それから軽く地上での移動と飛行をやってみたが、意外と苦労するものだ。体はひとまず思った通りに動くのだが、たまにISの運動性能に振り回されそうになる。

 

アリーナの使用時間ギリギリまで頑張ったおかげで、ISの運動性能には慣れることが出来た。1日使って小さな前進だが、とりあえずはこれでいい。

 

PICでホバリングのように浮遊しながらアリーナを数週したり、決められた距離範囲から外れないようステップの連続移動をしてみたが、山田先生はにっこりとした笑顔で合格をくれた。

 

「お疲れ様です、クロスフォードくん。改めてISに乗ってみて、どうでしたか? 何か違和感とか、感じました?」

 

「いえ、違和感などは特に。でも、悪くないと思います。地上や空を自在に飛び回れるのは、生身じゃ絶対に出来ませんから」

 

「そうですか……それじゃあ、何かの“声”は聞こえませんでしたか? 自分の内側から響いて、語りかけてくるような……」

 

「……いえ、少なくとも今回は聞こえませんでした」

 

「……分かりました。では、また明日も頑張りましょうね。オルコットさんとの勝負が終わるまでは私も放課後は空いていますから」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

優しく微笑む山田先生に一礼し、オレは身を翻して跳躍。落下が始まる寸前で飛行を行い、スムーズにピットに着地。背中に山田先生の拍手を聞きながら。ISから降りてアリーナを出た。

 

(自分の内側から響き、語り掛けるような“声”か……)

 

そういえば制服に着替えながら思ったが、ISを展開している時と生身の状態との違和感が驚くほど少ない。いや、そういう違和感すらISが自動で調整してるのか。

 

(確か、心拍数や発汗量……他にも脳内エンドルフィンも安定した状態に保たれるんだったな。だが、有事の際にはISコアが独自で判断して興奮状態を維持するらしいが)

 

参考書と授業の内容を鮮明に思い出しながら、オレはロッカールームを後して部屋へと戻った。

 

(……ん?)

 

だが、ISを収納する格納庫の中を歩いた時、妙な気配を感じて足が止まった。

 

感覚を頼りにその方向を見ると、そこにはシャッター式の扉がある。何故か無性に気になって扉を開けようとしたが、モニターには『LOCK』と表示されていて開かない。

 

しかも気のせいだろうか。この扉に近付いた途端に、フラッシュバックの時とは明らかに違った頭痛と吐き気が襲ってきた。心なしか眩暈もする。

 

まるで、近付くな、と言うようにこの一帯の空間が侵入を拒んでいるようだ。

 

無理矢理こじ開けてみるか、と一瞬考えるが、どうかしてるぞ、と自分に言い聞かせて踵を返した。慣れない体験をしたせいで、疲れたのか?

 

それから真っ直ぐ部屋へと戻り、更識と決めた使用時間内にシャワーを浴びてベッドに座り込んだ。更識に不思議そうな顔をされたが、少し疲れただけと言って誤魔化した。

 

別に疲れてなどいない。だが、格納庫で感じた感覚が微かに残っているような気がして落ち着かなかった。

 

幸い、一晩眠ればその感覚は完全に消え失せたのだが、なんだったんだ?

 

感覚が消えてからも、オレは少しの間、頭を悩まされるのだった。

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

オリ主は基本、原作ヒロイン達の問題行動や暴力行為には遠慮なく文句を言います。自分のやりたいことや好きなことを邪魔をされたりした場合は拳骨くらい普通に飛んできます。

次回は多分セシリア戦、オリ主が最後に感じた変な感覚と扉の中身などについては、その後になると思います。

では、また次回。
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