このすばMemorial   作:バニルの弟子:ショーヘイ

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【告知】エリス様に突撃インタビュー!

私達、メガミマガジンは遂にやりました!
エリス様の知られざる裏話を独占取材!

皆様が気になっている、あの人のその後も収録⁉

ここでしか読めないエリス様の思い出話を見逃すな‼


【特別編】 苦労の末に待つのは…… (エリス)

 こんにちは、女神エリスです。

 当初は私が参加する予定はなかったのですが、『やっぱり、最後は女神が絞めるべきだ』と書き手さんが唐突に思い至ったらしく、急遽駆り出されまして……。

 と、とにかく、皆さんのご期待に応えられるようなお話をできればと思います。

 

 さて、一体何の話をすればいいのでしょうか。

 皆さんが興味があるのは、やっぱりカズマさん達に関わる出来事ですよね。

 では最初に、カズマさんが初めて天界にいらした日のお話をしましょうか。

 

 

 あれは、雪の降る寒い日の事でした。

 冬は冒険者の人はあまり外に出掛けないので、一年の中で一番暇を持て余す季節。

 なので、私は自室でのんびりと読書に耽っていました。

 そんな時です。

「エリス様、お寛ぎの所申し訳ございません、死者の方がお越しです。お名前は佐藤和真さんです。ご対応の程をよろしくお願いします」

 私の傍付き天使ココさんが、死者の情報が記られた書類を手に連絡をくれたんです。

 佐藤和真さん、この名前を私はよく覚えていました。

 なにせ、ダクネスをパーティーに入れてくれた恩人ですから。

 それに、私の……その…………パ、パンツを……。

 こっちの世界に来たばかりの人ですし、不慣れな環境で不安なんじゃないかと思っての提案だったのに、まさかあんな所業を見舞われるだなんて……。

 ま、まあ、あれは事故みたいなものですし、もう忘れましょう!

 とにかく、折角平和な日本からこちらの世界に転生してくれたのに命を落としてしまったんです。

 せめて誠心誠意、日本で何不自由なく暮らせるように転生してあげようと思いました。

 のですが……。

「で、できれば、魅力と知力と体力のパラメータが平均以上で、美少女の幼馴染もいる人生だと尚嬉しいです!」

「え、えーっと、そこまでは……」

 予想以上の食い付きでした。

 死人でこんなにもグイグイ来る人も珍しい……あっ、日本人の方は大体そうでしたね。

 何かにつけてナンパとかをしてくる人が多かったと記憶しています。

 それからのカズマさんは、パーティーの皆さんの愚痴を言い始める始末。

 私自身ダクネスにはよく振り回された身なので、気持ちも分かるんですけどね。

 でも、皆さんの悪口を話しているカズマさんの姿はどこか楽し気で。

 突然、涙が彼の頬を濡らしたんです。

 彼の哀し気な姿を前に、私も胸が苦しくなりました。

 やっぱり、心の底ではこの世界の事を、憎からず思ってくれていたんでしょう。

 そんな勇敢で若い彼に、今度こそは末永く楽しい人生を歩んでもらいたくて。

 微力ながらも良き出会いがある事を願っ……。

 

≪さあ帰ってきなさいカズマ!≫

 

 きゃっ⁉

 す、すいません、頭の中に先輩の声が響いてきた気がしたもので。

 当時も急に声が響いて来て、それがアクア先輩だと分かって本当にビックリしました。

 最近は遊びに来ないなと思ってましたけど、まさか下界にいたなんて。

 しかもアクア先輩ったら、理不尽にもカズマさんにある事ない事吹き込んで私を脅……説得してくるし。

 と言うかカズマさんも、『パッドでも構いませんよ』じゃないですよ!

 ……でも、少しだけありがとうございます。

 本当はいけないのですが、私も人間の方々には死んでもらいたくありませんから、悪い気はしなかったんですけどね。

 

 

 これがカズマさんとの初対面です。

 この時の私は、カズマさんがここにいらっしゃる日はもう来ないと信じて疑いませんでした。

 だというのに……。

 

「――エリス様、次はこの方です。名前は……あれ? 佐藤和真さん? この方って一度こちらにいらっしゃいませんでしたっけ?」

「ええっ、カズマさん⁉ またいらしたんですか⁉」

 ココさんが渡してくれた資料に目を通すと、間違いなく彼の情報でした。

 しかも今回の死因は、木から落ちての頚髄損傷。

 はあ、まったく。前回お亡くなりになってからまだそんなに日数も経ってないのに。

 それにしても、あの時カズマさんは随分と落ち着かれてましたね。

 彼は慣れたからだと仰いますが、そう言うものなのでしょうか。

 その後は特に話すことも無かったので、手持無沙汰なカズマさんと暫く見つめ合い。

 流石に気まずかったのでしょう。

「こんな何もない部屋にずっといて、退屈したりはしないんですか?」

 先輩の準備が整うまでは時間がありましたし、私も雑談に乗っかる事にしました。

 二度もこの場に来られる方など前代未聞なので、ちょっと新鮮だったな。

 すると何故か、カズマさんは頬を紅くなされたんです。

 しかも、もっと私と話したいだなんて。

 ……今思い出しても、なんだか照れちゃいますね。

 カズマさんがあの世界に帰りたくないと駄々を捏ね始めてたのも、この時からでした。

 それも、綺麗な義理の姉と、可愛い義理の妹がいる家庭に生まれたいだなんて我侭を。

 女神としてはカズマさんの意志を尊重してあげたいですし、規定上も助かるのですが。

 アクア先輩に脅は……お願いされた身としては、応じる訳にもいきません。

 この時はめぐみんさんの妙案のお陰で助かりました。

 ふふっ、先刻まであんなに嫌がってたのに、めぐみんさんにちょっと誘われたぐらいで慌てて帰ろうとするなんて。

 やっぱり、カズマさんはあの世界での暮らしを、結構気に入ってくれてるんですよね。

 

 

 こうして二回目の面会も無事に終了しました。

 この時も、もうここに来ない事を切に願いはしたのですが……。

 実はちょっとだけ、また来てくれないかなって思っちゃったりもしていて。

 ……ああっ! いけませんね、すいません!

 女神である私が、人が亡くなる事を望むだなんてダメですよね、今のは忘れてください!

 と、とにかく、この時はもう流石に来ないだろうと思っていたんです。

 それなのにあの人は。

 数日後には骨だけの状態で戻って来るし。

 次の時は塵状態になって戻って……うぷっ!

 ……すいません、峠は越したのでもう大丈夫です。

 魔王軍の幹部も随分と減った事ですし、しばらくは来ないのかなと思っていた時も。

「……どうも。お久しぶりですエリス様」

 どうもじゃないですよ、お久しぶりじゃないですよ。

 なんでコボルトを相手に袋叩きに合うんですか。

 神器集めのお願いもしたかったので、好都合と言えば好都合だったのですが、やっぱり溜息の一つも出てしまいます。

 それにしても、この頃のカズマさんはいよいよ今の暮らしに慣れて来たのか、セクハラに歯止めが効いてませんでしたね。

 女神としてでないと、面倒臭がって私のお願いも聞き入れてくれませんでしたし。

 私も何度酷い目に合わされた事か。

 他にはクーロンズヒュドラの時にもいらっしゃいましたね。

「エリス様、また佐藤さんがいらっしゃいましたよ。あっ、これが死者蘇生時の申請書です。後で埋めといてくださいね」

 ココさんもすっかり手慣れた様子です。

 かくいう私もそうですが。

 となると、少しぐらい凝った演出をしたくなるという物で。

 私の夢が一つ叶っちゃいました。

 本当ならお小言の一つでもいうべきなんでしょうが、あれは完全にダクネスの我侭に付き合っただけでしたからね。

 それでも、ちゃんとダクネスを許してあげるカズマさんは、やっぱり心が広いですよね。

 そういう所は、素直にいい人だなって思ってしまいます。

 でもカズマさん、まだ私の地上で活動してる姿に気付いてなかったんですよね。

 あれはちょっとだけ寂しかったな。

 もう一緒に王城を駆け回る仲だったのに。

 と言うか、あの時カズマさんが挙げた私候補には悪意を感じました。

 ……べ、別に、胸の事なんか気にしてませんから!

 

 

 こ、コホン。

 さて、これぐらいでしょうか。

 最近はカズマさんもこちらにいらっしゃらなくなったので、もう話す事がありませんし……あれ、今差し込みが…………ええええっ⁉

 い、いや、『皆さんも気になってるはずだから』と言われましても、私にも守秘義務という物が……。

 わ、分かりました‼ 話します、話しますから、その指の動きは止めて下さい!

 もう、セクハラ紛いの事を働くなんて。

 女神はもう少し崇める物ですよ。

 さて、では最後にこのお話をしましょう。

 これは、私が先輩に押し付けられた仕事の中で一番苦労した話です――

 

 

「――もう、先輩ってば本当に強引なんですから。私の管轄する世界に降臨していたのも驚きですが、同じ人を二度も生き返らせるんだなんて……。それも、後始末を全部私に押し付けて……」

 大きな溜息を吐きながらも、私が規定を破った事後処理をしていると。

「エリス様、次の死者が来られました。ご対応をお願いします」

「ああっ、はい! すぐに向かいます」

 途中まで書き上げた書類をトントンとひとまとめにする。

 それを引出にしまった私は、ココさんが渡してくれた書類を斜め読みしながら、死者が待つ部屋へと急いだ。

「ええっと、お名前はキールさん。職業は……リッチー。…………へーリッチー、リッチーですか。生年月日を確認するに、随分とまあ長期間無様にも現世にしがみ付いていたようですね。やっと滅んだんですか」

 これはお説教が必要ですね。

 地獄行を見送るかどうかはその後に……。

「あれ、ここに何か挟まってますね。これは……メモ? ……全く、勝手にこんなことをされては困りますよカーラ先輩」

 天寿を全うした人を導く女神であるカーラ先輩からのメッセージに、私は頭を抱えてしまう。

 本当に、私の周りの先輩方は自分勝手と言うか自由奔放と言うか……。

「っと、備考欄にも何か書かれていますね。この記述は……っ!⁉?⁉! えっ⁉ ちょっ、アクア先輩! これどういう事ですか⁉」

 備考欄に記載された、メモ書き以上に驚嘆すべき内容に、私は思わず足を止め目を白黒させた。

 

 

「キールさん……。ようこそ死後の世界へ。私は、あなたに新たな道を案内する女神、エリス。この世界でのあなたの人生は終わったのです」

 目の前で顔を伏せて座るのは、目深にローブを被る、干乾びた皮が張り付いた骸骨。

 人間を超越した者の成れの果てである。

 と、私が来た事に気が付いたらしい。

 ゆっくりと顔を上げ私に焦点を当てた彼は、すっとその場に片膝をつき、

「おおっ、貴方がエリス教のご神体で在らせられる、女神エリス様ですか。伝承に合った通りのお姿だ、なんとお美しい。お会い出来て光栄です」

 私に向けて、深々と頭を下げて来た。

「そこまで畏まらなくても構いませんよ、キールさん。どうぞお掛け下さい」

 彼の殊勝な態度に感心しつつ、私は彼が席に座るのを待った。

「あなたはご自身がここに来た経緯を覚えておいでの様なので、早速ではありますが、今後の方針についてご説明します。あなたは現世に置いて神の理を捨て、自らリッチーとなりました。現世にて大罪を犯した者はその罪を清算する為、地獄での長期間労働を経た後に魂を浄化、現世に生まれ変わるのが慣例です」

 説明を受けたキールさんは、一瞬息を呑み込んだ。

 しかし、彼は肩を落としながらも自嘲気味に、

「……そうですか。まあ元より、それを覚悟で儀式を執り行ったのです。甘んじてその処罰を受け入れましょう。ですが……一つだけ、お伺いしても?」

「どうぞ」

 キールさんは少しだけ不安そうな、心配そうな表情を浮かべて。

「私の妻は、新しい生を謳歌出来ているのでしょうか?」

 …………。

 本当に、この人は何処まで愛情が深いのだろうか。

 ご自分の心配よりも、愛する奥様の心配をなさるとは。

「ええ、彼女は今も元気に暮らしています。なので、心配いりませんよ」

「っ! そうですか。その一言を聞けただけで、思い残す事はなくなりました」

 それを聞いて、キールさんは心の底から安堵できたようだ。

 その顔には、清々しい笑顔が浮かんでいた。

 …………。

 これは、認めざるを得ませんね。

「キールさん、先ほどの話ですが、あれにはまだ続きがあるんです。罪人が地獄に落ちるという処遇は、あくまで慣例ではという事です」

「……それはどういう?」

 私の言葉に、キールさんは訝し気な表情を浮かべる。

 そんな彼に、私はふっと微笑みかけた。

「先刻あなたを浄化したプリーストは言いました、『あなたの罪を許します』と。その時点で、あなたは蝕んでいた柵から解放されているのです」

「私はもう……許されている? しかし、許して下さったのはあくまで人間の……っ⁉」

 どうやら彼はその答えに行き着いたらしい。

 でも、私はあえてそれには触れないでおくことにした。

「従って、あなたの進むべき道は次の二つです。天国へと赴くか、生まれ変わって赤子から人生をやり直すか。お好きな方を選んでください」

 伝えるべきことを伝え終わった私は、そっと彼を促した。

 とは言え、彼がどちらを選ぶかはある程度予想は付いていますが。

「私は、転生を希望させて頂きます」

「……転生、でよろしいんですね?」

 念のため確認をとるも、キールさんはこくりと頷く。

「ですがエリス様。どうか一つ、私の願いを聞いては貰えないでしょうか?」

 と、キールさんはいたく真剣な表情でそう尋ねた。

「お願いですか? 私にできる事であれば構いませんよ。仰ってみてください」

「ありがとうございます。無茶な願いだと自覚はしています。神の理を捨てた私に、その権利がない事も重々承知しております。ですがどうか、どうか! どのような形でも構いません、愛する妻の下に送って頂く事は叶わないでしょうか?」

 キールさんはそう言って、深々と頭を下げて来た。

 そんな彼を、私は黙って見詰める。

 原則として、死んだ方々の転生先を指定する事は禁止されている。

 それを許可し始めたら、世の調和を乱す事に他ならないので当然の対応だ。

 普段の私なら、例え相手が聖人君主だろうと無理ですと答えていただろう。

 でも……。

「頭を上げて下さい、キールさん」

 その言葉に、キールさんは見上げる形でこちらに視線を向けた。

「本来ならば相手がどなたであれ、転生先を指定することは出来ません。そう言う決まりなのですが……」

 私の意図を汲み取ろうと、キールさんはじっと私を見詰めてくる。

 私は困り顔を浮かべながら頬をポリポリと掻き。

「女神の中には極稀に、天界の規定なんか無視して独断で無茶をやらかす人がいるんです。そんな人に、無理やりとは言えあなたの事を頼まれては仕方がありませんよね。それに……彼女もそれを望んでいる様ですし」

「えっ?」

 キールさんが動揺している傍ら、部屋の中に光柱が落ちてきた。

 光の中には人影らしきものが一つ。

 それを視認したキールさんは、信じられない物を見たかのように目を大きく見開き。

 何時の間にか頬には、温かい涙が流れ出していた。

「愛する人の為に命を賭した勇気ある大魔術師キールさん、あなたの願いを受諾しました。この事は、内緒ですよ!」

 片目を瞑った私は人差し指を口に当て、悪戯っぽく微笑みかけた。

 すると彼は片膝をつき手を胸の前で合わせた。

「慈悲深きお心遣い、心より感謝します、エリス様。私を浄化して下さったあのお方にも、御礼申し上げます」

 そう言って、キールさんはとても穏やかな笑みを浮かべた――

 

 このような事があったんですよ。

 勿論、こんな事が上層部に伝わったら怒られちゃうので、ここだけの話にして置いて下さいね。

 彼等がその後どうなったかですが……ふふっ、秘密です!

 でも、元気に暮らしている事だけはお伝えしておきます。

 

 

 さて、名残惜しいですがそろそろお時間ですね。

 では最後に、私からここまで読んで下さった皆さんに少しだけご挨拶を。

 

 ここまで『このすばMemorial』を読んで下さり、ありがとうございます。

 話し手達の知られざる裏話をまとめた今作ですが、皆さんの知りたかったお話をご提供できたでしょうか。

 これを機に、私達にもっと関心を持って頂けたら幸いです。

 もしよろしければ、アニメ勢の方も『この素晴らしい世界に祝福を!』シリーズの購入を検討してみてくださいね。

 それでは、再び忙しい日常へと戻られていく皆さんに、幸運の女神である私から細やかな贈り物を。

 辛い事も多いあなた方の世界で、少しでも皆さんの笑顔が増えますように――

 

 『祝福を!』




次回作のアンケートにご協力ください。
その他、感想・批評(ついでに評価も笑)もお待ちしております。

この素晴らしい読者様に祝福を!
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