横浜から始まる異変
二十四時間体制を実現する為の自動化が推し進められた港湾諸施設は西暦二〇九五年十月現在、ほとんどが無人で運営されている。通関は日中にまとめて行われ、夜間は船舶の入港、荷揚げ、積み込み、出港の作業が完全自動化され、監視の為にわずかな人員が置かれているのみだ。
人手を減らした分、密入国者対策として保税地域と市街地の遮断がより厳重に行われるよう各港湾の全地域的再開発が行われ、船舶の乗組員の上陸も保税地域については禁止されている。
逆に港湾施設が自動化される深夜については保税地域以外の接岸が禁止され、乗組員の上陸を必要とする船舶は有人運営が再開される朝まで沖合いで待機しなければならない。
真夜中ともなれば、貨物用の埠頭は完全に人通りが少なくなる―はずだった。
だがこの夜、そろそろ日付も変わろうかという時刻、横浜山下埠頭には息を殺した大勢の気配があった。
『五号物揚場に接岸した小型貨物船より不法入国者が上陸しました。総員、五号物揚場へ急行してください』
無線の声に反応した私服警察官の2人は顔を見合わせる間も無く同時に走り出した。
「やはり、あそこか。」
「ぼやいている場合ではありませんよ、警部!」
「しかしね、稲垣君」
「つべこべいわずに走る」
「俺は君の上司なんだが」
「歳は自分の方が上です。」
「やれやれ」
2人の刑事、千葉警部と稲垣警部補は軽口を買わしながら、700mあった距離を30秒で現場に到着した。
普通は2分は最低でもかかるのだが、2人は魔法師だった。
「警部、船を押さえましょう」
「え?俺が!?」
「つべこべいわない」
どうやらこのコンビは部下の方が苦労人らしい
「わかったから、稲垣君。君が船を止めてくれ。」
「自分では船を沈めてしまうかも知れませんが?」
「…問題ない、責任は課長が取るだろう。」
「…自分で取るとはいわないんですね?」
稲垣はリボルバーにケースレス弾を装填して、グリップ底部のスイッチを左手で押すと、バレル上部に取り付けつけられた照準補助機構の作動ランプが点った。
続けて武装一体型CAD、リボルバー拳銃型武装デバイスのグリップに組み込んだ特化型CADの本体が起動式を展開する。引き金を引くと同時に移動・加重系複合魔法が放たれ、離岸する小型船舶の船尾を二度、三度ほど貫いた。
「お見事」
千葉刑事は自身の持っていた木刀の留め金をはずした。
木刀は実は仕込み杖だったのだ。
飛び上がり、船に着艇と同時に刀を振り下ろす。
刃がその船を真っ二つに切り裂いた。
千葉警部の使う、千葉家の秘術『斬鉄』によって、切り裂いたのだ。
そのまま中に入ると、既にもぬけの殻だった。
「お疲れさまです、警部。」
「全く、骨折り損とはこのことだ。」
「水中へ逃げ出した賊の行方はまだ掴めていないようですね。」
「奴らの行き先なんて分かりきっているんだがね。」
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そんな2人の刑事達が見つめる先、横浜中華街のとある一角
1人の青年が目の前の不釣り合いな井戸の前に立っていた
何かに気づいたのか、その青年は頬を緩めた
すると、井戸が
破壊された井戸からは10人以上のウエットスーツを着た人達が横浜に上陸した
全員が地上に上がり、全員がウエットスーツから顔を出すと、青年が話し始めた
「皆様、お疲れ様です。…着替えておくつろぎを、朝食をご用意しております。」
その言葉に、その集団のリーダーと思われる男が前に出て、それに答えた
「
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九校戦で、初の新人戦・総合優勝を果たした第四高校は祝勝ムードの中二学期を迎えた
二学期の始業式では、九校戦優勝を校内全員で祝い、全校生徒が300人程と他校に比べると生徒数が少ないこともあり、学校の敷地内を使って大々的に祝勝パーティーを行った
優勝の立役者である達也達一行はもちろん、参加していない生徒達も全員が初の優勝を祝った
その翌日には生徒会選挙運動が始まり、今年は2名の生徒が立候補した
それから1週間後に選挙が行われ、その結果当選した生徒が生徒会長となり役員の入れ替えが起こった
達也達に関してだが、真紅郎が生徒会副会長になり、将輝とレオは九校戦の活躍もあり部活連に正式加入となった。
また達也は次期風紀委員長として今期の風紀委員長の補佐に、穂波は将輝が部活連に所属したことで生徒会から風紀委員に加入した
そんなある日、達也と穂波の元に一通の連絡があった
相手は四葉真夜だった。
達也「お久しぶりです、母上。」
穂波「お久しぶりです、御当主様。」
真夜『そんな他人行儀な言い方はやめてって言っているでしょう?穂波さん。』
穂波「いえ、私はあくまでも達也様のガーディアンですので。」
真夜『貴女は次期当主の婚約者よ。主従関係なんて無いに等しいのに。貴女がガーディアンを名乗ってるのは家の人員不足で達也に付ける人材がいないからなのよ。本当なら次期当主夫人としての扱いをしたいのに。』
達也「そうですね。いつも言ってますが、俺は穂波をガーディアンとしては見ていませんから。」
真夜『そうそう。だから早く穂波さんも早く慣れなさいね。』
穂波「…善処します…。」
真夜はその様子を見ると、微笑みを消して、四葉家当主としての表情となった
真夜『さて、世間話はその辺にして。達也さんは横浜で起きた密入国事件について知っているかしら?』
達也「いえ。今初めて聞きました。横浜ということは七草家の管轄でしょうけど、弘一さんからもそういう話は聞いていません。」
真夜『そうでしょうね。何せその事件の対応は警察省が行なっていますし、この事件に関しては特に厳重に隠しているようです。』
達也「そうだったんですか。それで、それがどうだというんですか?」
真夜『大亜連合が関与している可能性があります。』
大亜連合――正式名称
中華人民共和国がビルマ北部、ベトナム北部、朝鮮半島を征服したことで生まれた国
しかし、大漢と呼ばれる地域で大亜連合内の現代魔法の権威である崑崙方院が半独立状態になったために、大漢と物量で拮抗する程の国となった
第三次世界大戦中に内部崩壊した大漢を併合したことで今の大亜連合となった。
が、大漢の内部崩壊の際に現代魔法の研究データが全滅していたため、大漢の併合でも魔法技術が伸びることはなく、他国へのスパイ行為や優秀な魔法師の拉致監禁を行なっている
そして、そんな大亜連合は四葉家が徹底的に敵対している国であり、いずれ四葉と大亜連合間での戦争が起こるのではとも噂されている
今回、密入国事件に関しては基本日本の国内事情に関与しない四葉家としても大亜連合が関与しているとあれば、動くことになる
達也「大陸か。相変わらず懲りない奴だな。最近無頭龍を潰して〈ソーサリー・ブースター〉の供給源を消してやったというのに。」
真夜『大陸というのは数しか取り柄がありませんからね。少し叩いたぐらいじゃ治りません。それこそ徹底的に叩き潰さないとね。』
達也「なら戦争を仕掛けましょうか。」
真夜『そこまではしないわよ。…っと、話が逸れたわね。今回大陸側がどういう経緯で密入国してきたのかは知らないし、場所は浜松じゃなくて横浜だから関係ない気もするけど、一応警戒しておきなさい。』
達也「襲ってきたら消してもよろしいですか?」
真夜『許可します。四葉に手を出したことを後悔させなさい。』
達也「かしこまりました。」
真夜『話は以上です。たまには帰って来なさいね。じゃあ、またね。』
そう言って真夜との通信は切れた
達也「横浜で密入国か。時期的に考えて論文コンペか?確か今年の開催地は…」
穂波「横浜ですよ。真紅郎君がサブで選ばれてるんですから覚えててくださいよ。それに、今年の警備主任は達也君じゃないですか。」
達也「それは十文字克人に代わってもらった。だから今年は俺じゃ無いよ。1年生に支持されるよりかは九校内で有名な十文字さんの方がいいだろ。」
穂波「横浜でしたよね。真由美さん達は大丈夫でしょうか?」
達也「心配はいらないよ。ただの密入国者なら七草家でも潰せるし、警察がすでに動いている。(だが、何か引っかかる。何もなければいいのだが…)」
だが、無情にも達也は無意識に関わっていくことになる
というわけで、横浜騒乱編です。
横浜の密入国はもはやテンプレなので詳しくいう必要はないでしょう。
四高は九校戦の優勝をしたことがない学校ですので、初優勝、それも新人戦だけではなく総合優勝も果たしているので、これは学校あげてのパーティーだということでその話も少し。詳しいシーンを番外編としてまとめてもいいかもしれませんね。
あとは、将輝が風紀委員から部活連に、真紅郎が副会長に、達也が次期風紀委員長、穂波が生徒会から風紀委員と4人の役職が変化しました
後半は真夜との通話。
世間話をしつつ、密入国事件に触れており、降りかかる火の粉は払う的な感じの話をして終わりました。
そして、後付けみたいな形ですが、今年の警備主任は原作通り十文字克人です
次回は例のブツが出ます。
では、また次回