黒い舞台は神なる地   作:カタリア

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これはクールほむらがまどか以外を失った後に、姿を隠していた魔法少女と手を組んでワルプルギスの夜と戦ったことから始まる物語だ。


第1話 ガサツ女の新ルート

 全ての始まりは、とある世界線で暁美ほむらと一緒に戦ってワルプルギスの夜に殺されたことだ。

『攻撃対象を自由に変更させる』固有魔法でどんなに攻撃をそらしても、あいつはその魔法を無視するように広範囲攻撃でめちゃくちゃに攻撃してきた。

 

 それにあたし、『猫宮宵(ねこみやよい)』は潰されてしまった。

 潰されてからしばらくは意識があったからほむらの戦いを見ていたけど、今回もダメだと判断した彼女は固有魔法で何かをしようとした。

 それを見てとっさにヨイはその魔法の使用対象を彼女自身と自分に変えた。

 

 結果、ヨイはその記憶を持ってワルプルギス戦の1ヶ月以上前に戻ってきた。

 戻る時にほむらはヨイの手を取ったりしてなかったのに居るのを見て驚いた。

 そして、慌ててヨイの手を取ろうとしたが間に合わずにヨイだけがほむらより前の時間に飛ばれてしまった。

 そんな事故はあの暁美ほむらでも初めて体験だっただろう。

 

「あのほむらの間抜けな顔! 何度思い出してもウケるヨナ!」

 

 ヨイは自分のベッドの上であぐらをかいて最低な笑みを浮かべた。その笑い方はアリナ・グレイによく似ている。

 

「さて、過去に一旦お別れして先に進むカナ。ほむらが時間魔法を使ってるのは分かってたカラ、予想の範囲内でよかったヨネ。これなら今度こそアイツを倒せるネ」

 

 そう言いながらヨイはベッドの近くに落ちている自分のスマホを拾った。

 それからすぐに計画を立てるためにスマホのカレンダーアプリを開いた。そこにはヨイを驚かせることが表示された。

 

「ウソだろ!? あの日から1ヶ月半も戻ってるじゃん! これは余裕がありすぎだナ。困ったネ」

 

 感情の起伏が激しいヨイは普段からテンションがおかしい。

 なのに見滝原の裏で8年も死なずに魔法少女をやってきた。

 その実力は本気のマミと互角に殺し合えるほどに強いが、心は意外と脆くて壊れかけたことがある。

 

 今はこうしてほむらと共にワルプルギスの夜と戦えるほどに強いが、数年前に手を組んでいた奴らを守れずに死なせた。

 3人が魔女化して5人がソウルジェムを砕かれて死んだ。

 それを目の前で見ていたヨイはその仲間の死が訪れるたびにキュゥべえを呪わずにいられなかった。

 

 そんなヨイはカレンダーと睨めっこしてから立ち上がった。

 

「待ってたっていいことは無いヨネ。とりあえず、グリーフシードの数を確認しないと」

 

 ベッドの上から飛び降りると一人暮らしの廊下を歩いて金庫のあるリビングに向かった。

 両親がずっと昔に死んでいるからこの家はヨイが好き放題している。

 立派な一軒家なのにヨイの性格がずぼらなせいで家中が散らかってゴミ屋敷のようになっている。

 この家の主はこの方が落ち着くからと片付けないが、グリーフシードだけは厳重に保管して丁寧に並べている。

 

「あっ?」

 

 その金庫にたどり着いて開けると、中にはグリーフシードが2つしか残っていなかった。

 ヨイはすぐにワルプルギス戦の1ヶ月半前に何があったか思い出そうとした。

 

「あ、佐倉杏子に見つかって戦ったのはこの辺だったカ。かなり使ったからネ」

 

 ヨイが言ったのはワルプルギス戦の1ヶ月と3週間前の出来事だ。

 ボサボサなショーヘアを少しだけ整えて行く学校の帰りに、機嫌最悪なアイツに出くわしてしまったのだ。

 学校では美国織莉子にムカついて、その帰りには機嫌最悪で色々と鋭い佐倉杏子に会ってしまった。

 ヨイもストレスが溜まっていたのでその日は速攻で変身して戦って引き分けになった。

 

「そのせいで無いなら取りに行くしかないネ。戻った時間が夜だからちょうどいいネ」

 

 昔の事は水に流せるヨイだから制服に着替えてだらしない髪を少しだけ整えて出かける準備をした。

 グリーフシードの残りを何かあったときのために魔改造で付けたポケットに入れて、ソウルジェムを肌身離さないようにして玄関に向かった。

 その玄関で靴を履くと、玄関にも置かれてる両親の写真に笑いかけて言った。

 

「行ってきます」

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 出かけたヨイはなるべくマミと杏子に見つかりたく無いので、かなり人通りの少ない場所へと探索に向かった。

 

「魔女の反応がないナ。なんだか減ってる気がするゾ? あの頃ってこんなんだったカナ?」

 

 家から出て2時間歩いても1匹も魔女と遭遇しない。本来の見滝原ならこんな事はあり得ない。

 ヨイが知る世界線でも普通にお菓子の魔女や委員長の魔女はそこら中にいた。それなのに、1匹も姿を見せないのはおかしい。

 

 そう思っていると、かなり近いところから強力な魔女の反応がした。

 突然の魔女の反応に驚いたヨイは目を見開いてその方角を見た。

 それからすぐにギザ歯が見えるようにニヤリと笑った。

 

「居ないと思ったらいきなり現れるなんてネ。少ないなら他も狙うだろうからすぐに倒しに行こうカナ」

 

 そう言ってヨイは急いでその反応を目指して走り出した。

 人通りの少ない道を通って魔女を目指して行くと、途中でマミらしき人物を見かけて立ち止まった。

 しかし、先にグリーフシードは取っておきたいと思ったので気をつけて先を急いだ。

 

 

 

 しばらく走ると住宅地に近い空き地に到着した。

 そこには魔女の結界があるが、ヨイはそれの入り口を見て前回の世界で戦ったお菓子の魔女と同じであることに気付いた。

 それに気づいてしまったヨイは驚きでよろめいてしまった。

 

「どうしてこんなところにこいつが! ありえない! あの時間通り戻ったのなら、病院でこいつが現れるはず!」

 

 そうやって混乱していると、魔女の方が先に動いてヨイを閉じ込めた。

 

 

 放り込まれてしまったヨイは『今は先に魔女を倒そう』と決めて変身した。

 所々に破れがあるかっこいい姿に変わったヨイは武器である二本の刀を持って奥を睨みつけた。

 

 現れたのが空き地なので前の時間と比べてあまり物がない結界に困惑しつつヨイは突き進む。

 二本の刀で使い魔を切り裂きながら何も考えずにただひたすら突き進む。

 

 進み続けると奥へと通じる扉の前に着いた。

 ヨイはこの件を後で考えることにして、これから戦う相手に集中しようと深呼吸をする。

 

「前と比べて簡素な結界だった。だとすると、魔女はいきなり襲ってくるかもしれないネ。おそらくだけどお菓子の時間がまだだろうからネ」

 

 そんな独り言を言い終えると扉を開けて中に飛び込んだ。

 すると、すでに中身の大きな魔女の方が飛び回っていた。

 焦ったヨイは防御体制をとりながら扉から離れて魔女に近づいていった。

 

 飛び回っている魔女は自分の結界内で動き回るヨイを見つけるといきなり食おうと襲いかかって行った。

 その魔女の動きに気づいたヨイはすぐに固有魔法を発動しようとした。

 しかし、発動せずにお菓子の魔女を近づけてしまった。

 

 焦りつつもヨイはすぐに立て直そうとして剣術による攻撃に転じた。

 すると真っ直ぐに突っ込んでくるお菓子の魔女は斬られた。しかし、急げという感じで脱皮をすることでダメージを回避した。

 

「魔法の件も今は捨て置く! 今度は全部切る気で行くから逃げたきゃ逃げろ!」

 

 そう言った途端にヨイは本気の殺気を魔女に向けて放った。

 それを感じ取った魔女は本当に逃げようとして高く飛び上がった。

 それを逃すまいと構えながらジャンプの姿勢に入って刀を力強く握った。

 

 それからすぐに跳ね上がると一気に両方の刀で切り裂いて魔女を倒した。

 倒した直後に魔女がバラバラと床に落ちて行く。ヨイも落ちて行くが、グリーフシードが高いテーブルの上に着地してるのが見えたのですぐに刀をそっちに伸ばしてブレーキに使った。

 落ちる速度を刀で殺したヨイは安全に床に着くと、すぐにテーブルを切り倒して落ちてきたグリーフシードを回収した。

 その直後に結界が消えて元の空き地に戻った。

 

「さて、グリーフシードも手に入ったことだし今夜はもう帰ろうカナ」

 

 これ以上の戦闘や探索は危険だと判断した。

 グリーフシードをポケットにしまうとすぐにそこを立ち去ればこれ以上の消耗はないだろう。

 そう思っていると急に周りの音や風が止まった。

 

「何が起こってるのカナ?」

 

 異変に気づいたヨイは変身を解かずに身構えた。

 しばらくすると突然目の前に見たこともない少女が現れた。

 これ以上のおかしなことには対応しきれない自信があるヨイは顔をしかめて少女を見つめた。

 そんなヨイをあんまり見ていないような視線を向けながら少女が変なことを言う。

 

「…来て」

 

「あん?」

 

「運命を変えたいなら神浜市に来て。この町で魔法少女は救われるから」

 

「何言って…」

 

 それだけ言うと少女は姿を消して、それと同時に周りの様子が元に戻った。

 処理が追いつかないほどの事態に驚いてぽかんと開いた口がふさがらない。

 

 ほんの数秒のラグを経てヨイは本気で顔をしかめた。

 それからボソッと呟く。

 

「これが本当に逆行で至った世界なら、一体どうなってるんだヨ…」

 

 困惑した様子で一旦家に帰ることにした。

 この世界線がすでに違っているなら早めに整理した方がいいだろう。手遅れに居なる前に。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

「ただいまー」

 

 疲れた様子で帰宅したヨイはグリーフシードを一つだけ少し使用すると、他の二つと一緒に金庫の中にしまった。

 

 それから飯を作って食べて、風呂に入って着替えて歯磨きして、寝る準備をして自室のベッドの上に戻ってきた。

 ベッドに座るとすぐにメモ帳を取り出してさっき起きたことをまとめた。

 

「こうやって見るとかなりの異変が見滝原に起きてるネ。魔女が減ったら別のタイミングで見覚えのある魔女が現れたし、マミがいつも以上に警戒してるようだった。さらに謎の少女と魔法が使えないときた。これじゃあ魔法少女も商売あがったりダネ」

 

 そう言うとボフンと寝転がった。そこでため息もついた。

 

 そうしてしばらくお手上げ状態でいると、突然一つの考えが頭に浮かんだ。

 それを確かめるために起き上がった。

 

「あれなら魔法の説明がつくかも知れない! あたしは『面白い敵が欲しい』と願って魔法少女になったんだヨネ! それと固有魔法の繋がりが元々無いように思えていた。もしも、あの時点を基準に魔法が本物と偽物のどっちでいくか決まるんだとしたら、今のあたしは本来の魔法に目覚めたのかも知れない! キュゥべえもレアケースは存在するって言ったもんネ!」

 

 それに気づいたヨイは早速変身して新の固有魔法を探った。

 すると、マミのリボンのように自由に操れる鎖が出現した。

 それは本物と同程度の耐久性を持ってるようなので戦闘だと佐倉杏子の真似事も出来るかもしれない。

 

「これが新しい固有魔法か。なんて言うか、結構普通だネ」

 

 ありきたりな魔法にヨイはさっきまでのやる気と元気を無くして鼻で笑った。

 しかし、直後に自分の刀を大量に呼び出す力と合わせれば認識操作よりも高い戦闘能力になるかもしれないことに気付いた。

 

「あっ、これに刀をねじ込んだりすれば今まで出来なかった中距離戦も出来るようになるネ。そう考えると物は使いようだヨネ。それを実験するために明日、調査も兼ねて神浜市に行ってみようカナ。ワルプルギスの夜と遊びきるためのヒントもあるかもそれないし」

 

 そう言うと楽しみだという感じでにっこりと笑った。

 それからすぐに明かりを消してベッドに入った。

 当然変身は解いているが、寝ようとして目をつぶったヨイの周囲を一瞬赤い鎖が現れて消えた。

 

 この現象はヨイの固有魔法が真の姿を見せていないことの表れだが、それを本人が知るのはもっと後のことになる。




情緒不安定で戦闘狂なヨイがこれから神浜でマギレコの世界線を体験する。
そんなヨイの目の前に希望なんて無い。
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