戦姫絶唱シンフォギア 祝福を告げる異端者   作:レイノート

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色々な方が感想を書いてくれたり、見てくれて非常に嬉しいです。
さていよいよ、ウンメイノー第1話。
今回はウォズのチュートリアルがメインになりますのでご了承ください。
是非とも読んで見てください!


第1話「ビギニング・スタート 2041」

私こと『魚津拓文(うおづひろふみ)』の目覚めは、非常に喜ばしいものであった。

眠気眼に太陽とも思しき光から徐々に覚醒していき、ゆっくりと目を開いていく。朧気だった光景が鮮明になっていくと。

 

 

 

「ここは…」

 

 

 

最初に目に入ってきたのは、人が一生の半分以上は見るであろう雲一つない綺麗な青空が見える。

どうやら仰向けの状態で転生させられたらしい。まるで某賭博漫画の主人公が地下から外出した時のような状態で、ご丁寧に頭部には枕替わりの雑誌が置かれている。

しかし木製のベンチで眠っていたせいが、背中が少し痛かった。やはり固いところで寝るのは、身体には良くないことを改めて自覚する。

 

 

 

「すぅ·····はぁ·····」

 

 

 

軽くストレッチを行い、固まった筋肉を解していく。深呼吸し、凝り固まっていた血液がドクンドクンと全身に流れていくのを感じる。

その後に軽い瞑想も行い、コンディションを整えるとベンチから身体を起こして立ち上がる。

 

 

 

「どうやら·····ここがシンフォギアの世界というのは本当らしい」

 

 

 

ここが公園の一角だと言うのは明確に理解出来た。

しかし、真にここがシンフォギアの世界という確信をさせたのは公園の外に見えるドーム型の巨大な建築物が見える。

そう、シンフォギアファンならば必ずわかると言っても過言ではない。

装者達の運命が大きく動き始めるツヴァイウイングのライブ会場だ。

あの場所は原作において、天羽奏を含めた多くの命が失われた悲劇の場所であり、立花響の装者として運命づけられたターニングポイントでもある。

嬉しさもあれば同時に深い悲しみを感じる。そのため私は非常に複雑な気分であった。

 

しかし、それでも私のやるべき事は決まっている。

 

 

 

装者達の物語の大筋を壊すことなく、悲劇を止める事

 

 

装者達をひたすらに祝う事

 

 

 

何れも簡単に成し得る事ではない。

だが一度を決めた事を絶対にやめない。やめる訳には行かない。

私は戦う。一人のオタクとして·····そして装者達を祝うウォズとして!!

 

 

 

 


 

 

 

「(思っていた以上に広すぎる·····)」

 

 

 

今現在、私はドーム周辺の地理を探索している。観光しているように見えるかもしれないが、実際には避難経路の確保と下準備。

ライブ事件の死者、行方不明者の半分以上は人によるモノだ。逃走中の将棋倒しによる圧死や避難路の確保を争った末の暴行による傷害致死により、ノイズによる災害以上の死傷者出すという最悪な結果であった。

とは言え自身の命を守るために、必死に逃げ惑う人々を攻めることなどできない。転生前の自分が同じ立場になったら同じことをするだろう。

 

だからこそ救いたい。

画面越しにしか見ることが出来なかった光景を、私も守りたい。

 

 

 

『グゥゥ~』

 

 

 

可愛らしい音が私の腹から鳴り響く。そういえば、朝から何も食べていない。

下調べに集中しすぎて、食事をとる事を忘れていた。

 

 

 

「(何処かで軽く食事をするとしよう)」

 

 

 

辺りを見回して、飲食店が無いか探していると

 

 

 

「お兄さん!そこのイケメンなお兄さん!」

 

 

 

不意に声を掛けられた。

前世ではイケメンなんて呼ばれる容姿ではなかったため、自分に向けられた声ではないと思ったが現在自分の容姿がウォズである事を再認識した。

私は声のした方向へと振り向く。

 

ピンクの塗装を施された移動販売車から、一人の女性なのか分からないが店員と思わしき人物が此方へと手招きをしていた。

Hungryと英語で書かれた看板を一見すると、何処かの魔法使いの話で出てきそうなお店だなと頭に浮かぶ。

自身がこの世界に来たことで何かしらの影響が及んでいるのか。それとも神の悪戯なのか。

どちらにせよ答えは出ないので、思考を一旦頭の片隅に置き、店の方へと向かって歩く。

 

 

 

「どう、お兄さん。新作食べていかない?

今日はツヴァイウィングのライブを記念して、ウィングドーナツよ♡」

 

 

 

自信満々といった顔で新作のドーナツを此方へと勧めてくる。天使の翼を思わせる程綺麗な形をしたホワイトチョコをコーティングしたドーナツ。

今現在空腹な私の食欲を唆るには丁度いい一品と言えよう。

 

 

 

「そうですね·····では·····」

 

 

 

そう、私は分かっている。この展開でやるべき事はただ一つ。

 

 

 

「プレーンシュガー」

 

 

 

私はプレーンシュガーと書かれた札に指を指す。

やらなければならない事、それはかの魔法使いのようにプレーンシュガーのドーナツを選ぶ事。

意外な返答に店員も思わず、盛大にズッコケる。

 

 

 

「嘘ですよ、ウィングドーナツとプレーンシュガーをお願いします」

 

 

 

「あぁ·····驚いた·····。でもイケメンだから許します♡

ウィングドーナツとプレーンシュガー合わせて380円になります♡」

 

 

 

会計を済ませようとした時、あることに気づく。そう、うっかりしていたのだ

 

財布を持っていない。

 

よく良く考えれば、私は別の世界から来た人間だ。持ち物も、特典を除けば何も持ち合わせていない。RPGゲームのように初期状態からお金を持っているなどという都合の良い現実はない。

 

私は焦りに焦る。

何か入っていないか、服のポケットを探る。

 

 

 

「(ん?これは·····)」

 

 

 

その時不思議な事が起こった。

ありとあらゆる場所をさがしていると胸ポケットの中の何かに手が触れる。感触は恐らくメモ紙のような大きさであり、それを胸ポケットから取り出す。

その紙切れに目をやると、一つの文がこう書かれている。

 

 

 

『汝の生活に必要な物は本の中に纏めておいた。後は汝の自由に使え』

 

 

 

「(神様、ありがとうございます!)」

 

 

 

心の中で、神に最大限の感謝を告げる。

メモ書きの言う通り、戦姫降臨暦が出てくること強く念じる。

すると虚空から私の左手に戦姫降臨暦と書かれた本が出現する。適当にページを捲っていくと現金の項目を発見し、内容確認すると…

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

驚きの余り、声にもならない声をあげる。店員も心配そうにこちらを見てくるので、なんでもないと諭す。

しかし、生まれて初めて…いや既に一度死んでいるか。前世に置いても国家予算を軽く上回る金額が見たことなどあるはずもなく、今こうして本に記載されているという事実を受け止められずにいる。

某征服王が十機ばかり購入したがってたステルス戦闘機を買っても余裕があるほどだ。

 

しかも本の中から簡単に取り出せるため、ATMのように暗証番号等の手順を踏まずに引き落とせるのだ。

 

うん。お金は魔物と言うし、無駄使いは危険だ。

私は財布に一万円札を2枚だけ入れて本を閉じる。

 

 

 

「お待たせして申し訳ない。万札ですが、大丈夫ですか?」

 

 

 

「大丈夫ですぅ♥。

こちら、お品物とお釣りになります♥」

 

 

 

慣れた手つきで素早くお釣りを出し、ドーナツと共に受け取る。

 

 

 

「またのご来店をお待ちしています♥」

 

 

 

満面な笑みで挨拶をする店員に軽く頭を下げ、私はその場を後にする。

 

 

 

 

 


 

 

 

軽い腹ごしらえを済ませた後、私は再び会場周りの探索を始める。あのドーナツは本当に美味く、腹持ちもなかなかに良かった。あの指輪の魔法使いが毎日のように通うのにも納得できる。

それによく分からないが先程よりも力が漲ってくる。

また機会があれば、立ち寄ってみるとしよう。

 

 

 

「しかし、どうやって入ったものか」

 

 

 

会場を一周して分かったが、東西南北にそれぞれ入退出のゲートが存在する。警備員も各ゲートに3人から4人程配置されており、場内に入るにはなかなかに厳しい状況だ。

あのツヴァイウィングが前日リハーサルをやっているとなれば、当然ながら不審者が入らないように警備が厳重になるのも仕方が無い。

それでなくとも、あの()()()()()を守る為の二重の意味での警備でもあるが。

 

完全聖遺物の存在も知らない警備員達からすれば、ただの警備に過ぎないが、あの二課の面々の警備も含めればまさに隙の生じぬ二段構え。

それ故に、あの終わりの名を持つ巫女の偶然すら利用して、完全聖遺物を回収した手腕には感服せざるおえない。

 

 

 

「(となると…警備員に化ける他ないか)」

 

 

 

強引な侵入等で騒ぎを起こすのだけは不味い。

明日に完全聖遺物の起動実験を控えている二課からすれば、多少の騒ぎがあっても実験を中止にすることはないだろうが、世間体はそうはいかない。

イベント前日に不審者騒ぎ等を記者等が嗅ぎつけて、その騒ぎが新聞やネット情報に拡散などすれば、不安がる人達が少なからず出たりする。

 

例えば爆弾が仕掛けられてる等というガセ情報が流れるとしよう。ガセだと分かっていても、人間の中には信じてしまう人もいる。そうなればライブを中止にしろと言う声も当然上がることは避けられない。

 

簡単に侵入などという浅はかな考えを持ってはいけない。私のようなちっぽけな存在が世界を大きく変える等と自惚れてはいない。

しかし、たった一つの間違った行動が、世界の出来事を大きく変える可能性がない訳では無い。だがらこそ慎重に行動をする他ない。

 

流石に色々と考えすぎか。

頭の中が色んな思考でパンクする前に、一旦考えるのはやめよう。

今は会場に潜入することだけを考える。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「うん。警備員の対応が甘すぎて怖い…」

 

 

このクォーツァーのコートに付与されている認識阻害の効果を使って自分の姿を警備員に見せ、無事にゲートを突破することは出来た。だが余りにも簡単に入れた事に、一種の恐怖を感じる。

杜撰とまでは行かないが、本当に警備員かどうか確認しなくて大丈夫なのか。

まあ、世界を旅する住所不明な青年がバイトできるぐらいなのだから大丈夫なんだろうと私は思考を放棄した。

 

さて、構造もある程度把握出来た。緊急用の防火シャッターや避難経路の場所をメモし、本へとしまう。

念には念だ。更に探索を開始しようとすると

 

 

 

「アンタ、こんなとこで何をしてんだ?」

 

 

 

後方から誰かから声を掛けられ、油断していた私は思わずビクッと体の動きを止める。声からして女性だろう。

私は恐る恐る後ろを振り向くとそこに居たのは…

 

 

 

「もしかして迷ったのか?」

 

 

 

私に声を掛けてきたその人物の顔を知っている。

否。正確には見てきたというほうが正しい。

 

 

 

天羽奏

 

 

 

大人気ユニット「ツヴァイウイング」のメンバーにして、第3号聖遺物「ガングニール」の扱うシンフォギア装者。というか本当にバーローって言いそうな声だな。

ダボダボなジャージ姿ということは…休憩と言ったところか。先程まで聞こえていた大音量の曲も止まっているということを考えれば、概ね正解といったところだろう。

しかし、何故こんな所に彼女が。

 

 

「ええ。警備の巡回をしていたのですが、まだ地理を覚えきれておらず、お恥ずかしながら迷ってしまった次第です」

 

 

 

苦笑いを浮かべつつ、怪しまれないようにありもしない訳を話して誤魔化す。

彼女が出会ってしまった事には驚いたが、一旦冷静になってみると心做しか自分が興奮しているのが分かった。

虚像(フィクション)じゃない、現実(リアル)

私の目の前に天羽奏が生きて動いている事に、一種の感動を覚える。創作物としてしか見て来れなかったモノを、この場にいる当事者として心の底から喜ぶ。

 

今すぐにでも祝福を告げたいところだが、こうして潜入している以上迂闊なことは出来ない。まあ、最初に祝うのは響と決めているが。

出来れば、もっと内部を調査したいが、これ以上は流石に怪しまれる。

 

 

 

「アンタ、迷ってるならアタシが案内してやろうか?どーせ飲み物を買いに来たついでだしな」

 

 

 

と言いつつ、買ったばかりであろうペットボトル飲料をこちらに見せてくる。

これは僥倖。特に怪しまれずに会場から出れる。

 

 

 

「すみません、お願いします」

 

 

 

 


 

 

 

 

歩いた時間は10分にも満たない。

奏の案内もあってか、無事にスタッフ用出入口まで来れた。

 

 

 

「すみません。お忙しい中、道案内までさせてしまい」

 

 

 

「気にすんなって、困った時はお互い様だろう」

 

 

 

満面な笑みを浮かべ、特に気にしている様子はなかった。

とても綺麗な笑顔だった。

 

 

 

「(……………)」

 

 

 

しかし、この笑顔を見られるのは今日までだ。

明日のライブで奏は……。

 

結末を知っている身としてはとても心苦しいものだ。本音を言うなら彼女にはもっと生きて欲しい。

しかし、それはこの世界の歴史を歪めるということ。彼女の生き様が響の成長への起爆剤になり、また翼にも大きな影響与えることにも繋がる。

私だってあんな悲劇を見たくはないが…どうすればいいんだ…。

 

 

 

「…………」

 

 

 

矛盾した願いを抱えたまま、ドアノブに手をかけたときであった。

 

 

 

「ちょっと待ってくれないか!最後に聞いて欲しいことがあるんだ。」

 

 

 

聞いて欲しい事とは。

何が何だか分からないが、私は奏の方へと振り返る。

 

 

 

「初対面のアンタには本当に話していいのか分かんないけど、アンタなら話せそうな気がしてさ。まあ…愚痴みたいな感じになるけど、聞いて欲しいんだ。

 

あたしってさ、ずっと歌うことが辛くて苦しいものだと思ってたんだ。詳しくは話せないけど、大切なものを失ったばかりのアタシは凄く荒れててさ、正直いつ死んでもいいと思ってた

 

けど、そんな生活の中である人が言ってくれたんだ。君の歌は誰かを勇気づけられるって……

 

何だか柄にもなくこんなこと話してたら、恥ずかしくなってきちまった

じゃあな、もう迷うなよ」

 

 

 

別れの挨拶をし、元来た道を戻る奏。

徐々に小さくなる背中を見て、自身の悩んでいた事がとてもちっぽけで馬鹿馬鹿しく感じていた。

なら…自分にとって後悔のない選択を選べばいい。

 

 

 

「あぁ…もう迷わないさ…

 

 

必ず助ける」

 

 

 

最早迷いなど無い。

自分のすべきことを再認識した私は会場を後にした。

 




次回の戦姫絶唱シンフォギアは、


「生きるのを諦めるな!!」


「君の運命は·····私が変える。だからこそ君も生きるのを諦めるな!」


「私は許さない!必ずやこの手で·····貴様をムッコロス!!」



次回『Dead or Survive 2041』

進めて欲しい番外編は?

  • 地獄兄妹編
  • 鏡の中の片翼編
  • 漆黒の吸血鬼編
  • 俺たちの戦場編
  • 本編見たい
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