ウォズがif世界で巻き起こる事件を解決するストーリーです。
本編ストーリーとは関連する部分は多少ありますのでご了承ください。
虚淵さんほどではありませんが、ちょっとした鬱要素はあります。
「地獄の始まり」
『2041 ?/?』
今日の天気は生憎の雨。灰色におおわれた空が何よりもの証拠。
しかも季節外れの大雨ということもあり、傘をさして出歩く人間も少ない。
そんな土砂降りの雨の中を一人の少女が走る。
「はぁ…はぁ…」
雨に濡れたアスファルトの上にできた水溜まりに靴を突っ込む事など気にせず息を切らしながら、何かから必死に逃げている様子だった。時々後ろを振り返りながら様子を伺う。
「はぁ…はぁ…」
少女の名は『立花響』
まだ中学生になって間もない幼い顔立ちが特徴な少女だ。
元気が取り柄であるはずの彼女の顔には、笑顔はなく今にでも死にかけそうな表情を浮かべている。この降り注ぐ雨に濡れたせいでもなく、彼女が病気を患っているという訳でもない。本当の意味で死にかけているのだ。
「あっ…」
響は水溜まりに脚をとられて転んでしまう。
気力を振り絞り、うつ伏せに倒れた身体に力を入れて立ち上がろうとするも力が入らない。
それもそのはず。身体は既に限界を迎えているからだ。
育ち盛りとはいえ、彼女はずっと全力疾走で走り続けていた。そのため全身が疲労困憊な状態にある。
「逃げなきゃ……」
ボロボロな身体に喝を入れ、何とか立ち上がる。
それでももう走る事は出来ない。
壁に手を付きながら脚を引きずりながら歩く。
「(どうして…こんな事になっちゃったんだろう…)」
それはつい先日の事である。
ツヴァイウイングのライブ会場で起きたノイズによる災害。その時に現場に居合わせた響は、胸に重症の傷を負う。匿名の無免許医師の懸命な手術により、無事に助かった。
事故後も響はリハビリを重ねて、元の健康体へと戻った。これだけ見れば、不幸な事故に見舞われた少女が一生懸命に頑張った素晴らしい話に聞こえるが、世間はそう甘くはなかった。
『人殺し』
響が久しぶりに学校に登校した際にクラスメイトの一人から唐突に言われた言葉。
最初は何かの間違いだと思った。もしかしたら自分を驚かすためのドッキリかもしれない。
しかし、それを甘い考えであった。
先程の言葉を皮切りに他のクラスメイトからも次々罵声や野次を飛ばしてくる。
『なんでお前が生きてる』『消えろ』 『犯罪者』
『同じ人間として恥ずかしい』 『罪人がここに来るな』
幼い少女の精神では耐えきれない程の人々の悪意が込められた発言。
意味が分からなかった。なぜ自身が責められているのか全く理解できない。
響は耳を塞いでその場でうずくまる。何も聞こえなければ楽になると思ったが、だが先程の言葉がずっと耳の奥から聞こえてくる。永遠に続く呪歌を聞かされる感覚に囚われた響は、やめて…やめて…とつぶやくことしか出来なかった。
大衆の心理とは実に恐ろしいものだ。周りがやっていたから自分達も同調しても良い。そこにはなんの思いもなく、ただ形だけを取り繕ったハリボテの正義感だけで物事を語っている。
実際に体験した訳でもなければ、現場に居合わせてもいない人間にその気持ちなど理解できるわけがない。
響がどれだけ反論しようとも無意味だった。
頼れる親友は既に自身の前にはおらず、孤立無援の状態である。
多勢に無勢。
響の味方などは誰一人いなかった。
この場にいては駄目だ。辛うじて残っていた逃走本能に従い、響は教室を出る。
家に帰れば何とかなるはずだ。そう信じて響は家族の待つ家へと全力で走る。
「嘘……なにこれ……」
学校から戻ってきた響が目にしたのは、変わり果てた自分の家だった。
本当に自分の家かと疑った。今朝までは綺麗な一軒家があったその場所の面影はなく、窓ガラスは石などが投げ込まれ所々割れており、外壁にはスプレーやペンキ等で誹謗中傷の言葉が書かれている。
この惨状を見て、家族の心配になった響は急いで家の中に入った。
「お母さん!!大丈夫!!」
響はリビングの扉を勢いよく開ける。
「あれ…響…学校はどうしたの?」
床に割れているガラスを掃除している母親がいる。無事な姿を見て安堵した。
「ごめんお母さん……学校なんだけど…」
「そう……大変だったのね……」
普段明るい我が子の顔が曇っていることに気づいた母は、学校で何があったのかを察したらしい。
響をギュッと抱きしめる。
「今日はもう部屋で休みなさい…後はお母さんがやるから…」
響は私も手伝うと言ったが、母にあなたの方が辛い思いをしてるんだから心の整理が必要だろうと頑なに断った。
この時ばかりは響も素直に従い、自分の部屋へと戻る。
「………」
響は疲れきった様子で、ベッドへと身体をうつ伏せにして飛び込む。
心の整理と言ったが、実際にどうすればいいのか分からない。自身に被がある訳でもないのに、何に対して整理をつければいいんだろう。
響の頭の中は、あらゆる負の感情で頭がいっぱいだった。考えたところでマトモな回答は得られないことは響自身わかっている。
「…………」
思考するのは一旦やめて、気晴らしにスマホを取り出す。たまたま目に止まったbokuジャーナルというニュースサイト等を開いた時であった。響にとって驚きの内容が書かれていたことに戦慄する。
『ツヴァイウイングのライブ事件の生存者に対する相次ぐ迫害』
と言うタイトルが書かれていた。
ライブ事件の生存者に対する世間一般の人間達の迫害について書かれていた。
ある人は誹謗中傷に耐えかね自殺を図ったり、ある人は家を燃やされたという。それに加えて、生存者の家族にまで危害を加えるという、最早人間のやることじゃないと言わんばかりの所業。
幸いこのbokuジャーナルは、寧ろ生存者達を擁護する内容で書かれていた。これには響も少し嬉しかったのだが、他のサイトに移った瞬間にまた絶望へと落とされる。
bokuジャーナルとは別の大手の報道関係の会社らは、生存者達を責め立てるような記事を上げていた。
そんな内容に響は唖然とした。
何故同じ人間同士がこんな事をするのか。ましてや被害を受けた人間に対してやるべきことでは無い。
普段から人助けが趣味な彼女にとって到底理解出来ることではなかった。まだ社会の闇を知らない絵が描かれる前のキャンバスのように響の心は純粋無垢で真っ白なのだから。
頭の中が色んな感情でこんがらっていたその時であった。
『パリン!』
「きゃあ!」
突然、自室の窓ガラスが割れた。
響は咄嗟に腕で目を覆う。
「な、何が起きたの…」
現状を確認するために恐る恐る目を開く。
粉々に砕け散ったガラスの破片。そして投げ込まれたであろう大人の拳くらいはある石ころがあった。
これには響は恐怖した。
あれだけでかい大きさの石ころが万が一にも自分に当たったらと思う気が気でなかった。当たり所が頭等ならば死ぬかもしれない。この石ころは明確な殺意を持って投げ込まれた。
怖い。
怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!
人間の底知れぬ正義という名の悪意に触れた響は、恐怖という感情に染められた。今すぐにでも発狂してもおかしくない精神状態である。
母を心配させないと発狂することを何とかこらえる。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
深呼吸をし、一旦気持ちを落ち着かせる。
「諦めちゃダメだ…諦めちゃダメだ…諦めちゃダメだ…」
諦めるなと連呼し、自分に言い聞かせる響。
ライブ会場で言われた天羽奏のあの言葉を思い返す。
『生きるのを諦めるな!』
死にかけていた響はあの言葉以外思い出せないが、あの言葉あったからリハビリも頑張れたし、苦しいとも感じなかった。
でも…本当に自身が生きて良かったのだろうか。自分が生きていなければ、家もこんな滅茶苦茶になること無かった。いつも元気な母があんな苦労をする必要もなかった。
もう…へいき、へっちゃら…なんて言う気にもなれない。
「そうだよ…私はここに居ちゃいけないんだ」
この時、自分がいらない存在なのではないかという考えが浮かぶ。
この身は呪われている。きっとそうに違いない。
響はゆらゆらと立ち上がると部屋の隅にあるクローゼットへと歩く。中からリュックサックと何枚か衣類を取り出す。丁寧にリュックの中へと詰めていき、衣類以外にも緊急時用の乾パンなどの缶詰、お年玉等の貯金を入れ、荷物を纏める。
そして1枚の写真が入ったケースも忘れずに入れた。
「ごめんね…お母さん…」
リュックを背負い込むと響は勉強机の上に、一通の封筒を置き、母親に見つからないように家を出た。
「うぅ……」
嫌な夢を見た。
頭がクラクラする。内側にあるナニカを吐きそうになるのをこらえる。
響はここ一週間で起きた事の夢を見ていた。思い出すのも嫌な事を夢で見てしまい、少しに憂鬱な気分になる。
「いつの間にか…寝ちゃったんだ…」
雨の中を必死に逃げていた響が辿り着いていたのは、数年前に閉鎖されたであろう壁や天井が錆で塗れたボロボロな廃工場だった。逃げることばかりに集中していたので場所をよく把握せずに入ったため、改めて自分のいる場所を確認している。
体が疲れきっていたこともあって、いつの間にか寝てしまっていたようだ。
響がうつ伏せの状態から立ち上がった時。
『ウゥゥゥゥゥゥゥ!ウゥゥゥゥゥゥゥ!』
突如としてけたたましい音が鳴り響く。脳が完全に覚醒していなかった響は驚く。
そう、この音は非常サイレンの音。地震などよりもタチの悪い厄災がくる合図。
「は、早く逃げないと!」
響は自身のリュックを背負い、工場を飛び出そうとした時だった。
突如として空間が歪み、それは現れた。
「………」
響の逃げ道を塞ぐ異型のナニカ。
カラフルな色合いをしたその不気味なフォルムは、響の恐怖心をより一層高めた。
『ノイズ』
人類共通の脅威とされ、人類を脅かす認定特異災害。触れた人間を有無を言わさず、灰にする正体不明のナニカ。
分かることは、人類の技術を持ってしても太刀打ちできないことだ。
過去、出現されたノイズを殲滅するために化学兵器を用いても、ノイズを倒せるどころかなんの効果もないことが証明され、全人類に絶望を与える程。
それ故に、ノイズが現れた際は避難用シェルターに逃げるか、ノイズが自然消滅するまで待つしかない。
しかし、響にはそのどちらも選ぶことは出来ない。
自身を中心に既にノイズに囲まれていた。逃げ場もなく、最早絶望の状態でしかなく、もう無理だと言わんばかりにその場にへたりこんだ。
「(あぁ…やっぱり…私は呪われているんだ……)」
自身が灰になって散る姿が走馬灯のように過ぎる。
最早、響には希望を抱くことすらも出来ない。
「(さよなら…お母さん…未来…)」
死を覚悟した響が目を閉じた時だった。
「お前らか?
俺を笑ってる奴らは…」
工場内に誰かの声が木霊する。恐らく声からして男性の声だろう。
響は閉じていた目をゆっくりと開け、声がした方を見る。
そこに立っていたのは一人の男。
右袖がないボロボロのコートを羽織り、まるで浮浪者の様な格好だった。
目には光を宿してはおらず、まるでこの世の地獄を見てきたような顔をしているように見える。そんな男の場を支配する雰囲気に響は声を出すことができなかった。
「ノイズ…お前らはいいよな…気ままに人を殺せるもんな…!!
はぁ…どうせ俺なんか……」
男は溜息をつくとZECTと書かれたベルトのバックルを開ける。
それを合図にするかのように、何処からか跳躍音共に近づき、男の左手に収まった。
正体はバッタであった。しかし、ただのバッタではない。
名を『ホッパーゼクター』
全身を機械仕掛けが施されており、ただの代物ではないと理解出来る。
「変身」
その掛け声と共に、男はホッパーゼクターを正面から
『HENSHIN!』
変身とトーンの高い音がなると男の身体を六角形上のパネルようなものが全身を包んでいく。
顔を俯かせたまま、徐々に鎧のようなものが形成され終わるのを待っていた。
『CHANGE KICK HOPPER!!』
そこに居たのはノイズとはまた別な異型。ショウリョウバッタを彷彿とさせる造形に加え、特徴的なのは左脚についているジャッキのような機構。
この異型は、本来であればこの世界にいるはずのない存在。
仮面ライダー『キックホッパー』
そんな事など露知らず、響はキックホッパーの姿をただ眺めていることしか出来なかった。
そんな中、一体のノイズがキックホッパーに飛びかかる。
危ない。このままではあの人も灰にされてしまう。
響が危ないと叫ぼうとするが、ノイズは既にあの異形のすぐ側まで迫っている。
もうダメだ。そう思った時であった。
「ハァ!」
一瞬の出来事であった。
先程までキックホッパーの目前まで迫っていたのノイズが消えたのだ。自然消滅したのか。
否。キックホッパーがノイズを蹴り飛ばしたのだ。
その証拠にノイズであったものであろう灰が地面に積もっている。
「す、凄い…」
そこからは圧倒的な展開であった。
「ライダージャンプ!」
キックホッパーはベルトに装着されているホッパーゼクターの後脚を上げる。
『Rider jump!』
キックホッパーは天高く飛ぶ。
そして再び後脚を元に位置へと戻す。
「ライダーキック!!」
『Rider kick!』
脚に光の粒子を纏ったキックホッパーはそのままノイズに向かって最大の一撃を叩き込んだ。
その一撃を喰らったノイズは爆散する。
「うっ!?」
あまりの衝撃に目を瞑っていた響は、ゆっくりと目を開ける。
先程までノイズがいたであろ場所は、隕石が降ってきたのでは無いかと錯覚する程の大きなクレーターが出来ていた。キックホッパーの力が如何にして強力なものか、響にも理解出来た。
「はぁ…」
全てのノイズを全滅させたキックホッパーは、溜息をつきながら変身を解く。そしてホッパーゼクターは何処かへと跳躍していった。
そして男は響に近づいて来る。
「お前…いい目をしている。」
「え?」
一瞬こんな状況でナンパするのかと驚いたが、男の表情を見て直ぐにそんな答えが頭から消え去った。
まるで同情するかのような、だからといって軽蔑してるという目ではなかった。
「お前の目は、本当に地獄を見てきた奴の目だ。理不尽に晒されて、あまつさえ誰も助けてくれなかった…そんなところか?」
まるで見てきたかのように、響の心の内を暴く男。
そんな男を響もまた同じだと直感した。
「(あぁ…この人も同じなんだ…)」
似た者同士のシンパシーという奴だろうか。響はこの男に魅力されていった。
「あれ?」
私の右手にナニカが収まっていた。
先程あの男が変身に使っていたホッパーゼクターだ。
「そいつはお前の事を認めた。おまえにノイズに復讐するだけの力をくれる。」
ホッパーゼクターは男の発言に呼応するかのように跳ねる。
可愛らしい見た目で好きかもと響は内心思う。
「ください…私に復讐する力を…」
「ふっ…さっきよりいい面になったな。」
男は響に歩み寄る。
「俺は
「響…立花響!」
矢車は響を胸元へと抱き寄せ、こう告げる。
「響…俺と一緒に地獄へ堕ちよう。歩いていこう…ゴールのない…暗闇の中を…」
「兄貴となら…何処までも!」
これは本来ならばありえないifの世界の物語。
地獄兄妹の誕生の物語である。
次回の戦姫絶唱シンフォギアは、
「お前らはいいよな…華やかな舞台で歌って楽しそうで…」
「兄貴…あんなやつら…潰しちゃおうよ…」
「正に…地獄の使者…」
次回「地獄の兄妹」
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