二人の“誓い”は運命を変える   作:坂本パン

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[第十話]カード回収の始まり

「貴方達にある複雑な事情は聞いてしまった以上、注意するのも大人げない気もしますが…流石にそれは兄妹としては行き過ぎなのでは?シェロ」

 

「あははは……」

 

 次の日の朝、俺と美遊、そしてルヴィアの三人で朝食をとっているとそうルヴィアに言われた。原因は、俺の膝の上で朝食を頬張っている美遊。

 

 元々、俺と本当の兄妹になりたいと願ったあの夜以降の美遊は割と甘えん坊だった。

 

 そこに聖杯としてエインズワースに囚われ孤独だった時間と、俺が美遊を取り戻す為に奮闘した事を昨日ルヴィアと一緒に聞いた事が合わさり、美遊は本当に俺にべったりになってしまった。

 

 兄としては妹が慕ってくれるのは嬉しい事だし、それに血縁の家族とは死に別れ、まだまだ甘えたい盛りの年頃なのだ。俺にはそんな美遊を諌める気は起きなかった。

 

「今はまだ、勘弁してくれ。美遊も大人になれば、そのうち兄離れするさ」

 

「お兄ちゃんから、離れる気はない」

 

「はぁ。本当に、兄弟愛なのかしら。心配になるわね」

 

「まぁまぁ…」

 

 今日の夜には、カードの回収が控えている。そんな風には思えない程に、穏やかな朝だった。

 

 

 

 

 

「限定次元反射路形成。鏡界回廊一部反転。接界(ジャンプ)します!!」

 

 クラスカード回収。それだけを聞けば簡単に聞こえるが、カードを回収する為には、実体化しているその英霊を倒さなければいけないらしい。

 俺はルヴィアが持っていたアーチャーのカードを調べた。それは間違いなく、俺が使っていたエミヤのカードだった。

 また、回収されているもう一枚のカードはクラスがランサー。そして宝具がゲイ・ボルクである事から、クー・フーリンと推測されている。

 

 ここまで聞いた俺は、このカード達が間違いなく俺達の世界から来たものであり、そこに契約されている英雄も変わらない事を確信した。

 

 相手が分かっているのならば、あらかじめ対策を立てるのも可能だ。

 

「かすった!今かすったよ!」

 

「接近戦は危険です!まずは距離を取ってください!」

 

 鏡面界に降り立つと既に、先に戦闘を初めている者がいた。だが、どうみてもその少女は美遊とそう変わらない年齢の子供のように見える。

 

「ルヴィア。あれは?」

 

「ただの商売敵ですわ。やってしまいなさい。シェロ、美遊」

 

 それで良いのか?サファイアに似たステッキを持っているから、明らかに関係者だとおもうのだが…。

 

「…取り敢えず早くかたを付けようか。対象はライダー。予定通りいくぞ、美遊」

 

「うん。お兄ちゃん!」

 

 アーチャーのカードを夢幻召喚(インストール)。もはや、自分自身と言っても過言ではないエミヤの力と繋がる。

 

「本当に、英霊そのものになる事がそのカードの本来の力なんですわね…」

 

 そう小さく呟くルヴィア。

 

投影開始(トレース・オン)

 

 自身の使い慣れた武具、干将・莫耶を投影する。

 

 ライダー、その真名をメドゥーサ。

 

 この英霊を相手取る時、厄介なのは石化の魔眼(キュベレイ)だろう。だが、普段はその魔眼は眼帯によって封じられている。

 

 それが真名に気が付かれるのを防ぐ為のものなのか、それとも無差別に被害をもたらすのを抑制する為のものなのかは分からない。

 だが、こちらが一方的に真名を把握している状況ならば、視覚を封じているのは好都合だ。

 

「最大出力…散弾(シュロート)!!」

 

 美遊が、小さな魔力砲の塊をショットガンのように撒き散らす。

 

 威力は低くても構わない。ただ、ライダーの聴覚と魔力探査を誤魔化せればそれでいい。

 

 魔力弾に乗じて、干将・莫耶を幾つも投擲する。

 

「引き合えっ!」

 

 夫婦剣の引き合う性質を利用した攻撃。ライダーは寸での所で気が付いたが、遅い。

 

 なぜなら、それもブラフだからだ。

 

「うぉおおおお!!」

 

 俺自身も、魔力弾に紛れてライダーへと接近していたのだ。

 

 防御は、間に合わない!!

 

 そうして突き出した莫耶は、ライダーの霊核を貫いた。

 

 

 

 

 

 実体から、カードへと戻ったライダーを回収する。

 

「ふぅ…初戦は計画通り、か。美遊もよくやったな」

 

「ん…」

 

 こちらに駆け寄ってきた、美遊の頭を撫でる。

 

「お……お兄ちゃん!?なんでここに??」

 

「衛宮君…?あなた…」

 

 後に知ることだが、このカード回収に来たもう一人の魔術師、遠坂凛。そしてカレイドステッキ、ルビーのマスターであるというイリヤスフィールは両名とも、この世界の衛宮士郎を知っている人物だった。

 

 しかも、イリヤスフィールに関してはなんと、この世界の俺の妹らしい。

 

 イリヤスフィールはあわあわと目を回し、ルヴィアと遠坂凛は口論している。

 

「ややこしい事になったな、こりゃ…」

 

 場を占める混沌とした空間に、俺は思わずため息をついてしまった。

 




補足1:美遊は士郎に対しては、非常に甘えん坊な性格に。しかも士郎に向けての感情は家族愛というよりかは、異性愛寄り(本人には自覚無し)。あれだけの経験をすれば仕方ないとも言えるかもしれませんが…。

補足2:ライダー戦はあっさりと。漫画からして、ライダー戦はすぐ終わるので引き伸ばしようも無かったです。最初にライダーを見た時に思った、「この人どうやって周りを見てるんだろう?」という作者の疑問を戦闘描写に使いました。

補足3:ルヴィアの士郎に対しての呼び方なのですが、原作でも美遊兄の事をシェロと呼んでいるので、そうしています。どっちの士郎なのか分かりにくくなりそうで、ちょっと怖いですが。

補足4:展開上、最初にルヴィアが持っているクラスカードをアーチャーにしています。おそらくですが、原作ではバゼットの回収した二枚のカードを公平に一枚ずつ所持する事に凛とルヴィアは決めたのでしょうが、ルヴィアがランサーを選んだ理由とかは特には無さそうなので改変しています。
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