二人の“誓い”は運命を変える   作:坂本パン

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 さっき書き終わった。眠いです。


[第十七話]クロの少女

 突然現れた少女は、上機嫌に部屋をうろつき周りながらこちらの様子を伺っている。

 

「君は、一体何者なんだ?もうひとりのお兄ちゃん(衛宮士郎)って、どうしてそれを…」

 

 少女は唇に手を当てながら、妙に蠱惑的な仕草で話す。

 

「知っているわ、当然ね。だって、わたしはイリヤ(・・・)なんだから」

 

 自分が平行世界の衛宮士郎である事を知っている人物は、遠坂・ルヴィア、イリヤに美遊(あと人ではないけれど二本のカレイドステッキ)しかいないはずだ。

 

 オーギュストをはじめとする、この屋敷のメイド達も感づいてはいるのかもしれないが、それを漏らすような人間をルヴィアが雇うとも考えにくい。

 

 となると、この女の子は本当に…。

 

「今日のところは顔合わせで帰るわ。わたしにはわたしの目的があるしね」

 

 こちらが色々と考え込んでいる内に、少女はサッと立ち去ってしまった。

 

「何だったんだ…」

 

 疑問が絶えない、邂逅だった。

 

 

 

 

 

「というわけで…対策会議よ!」

 

 あの謎の少女の出現は、先日の龍穴の拡張時に起きた事故に起因する。落盤で潰れるのを防ぐ為、咄嗟にイリヤがアーチャーのカードを夢幻召喚(インストール)した時、気が付いたらそこにいたらしい。

 

 そして今日、イリヤはその黒イリヤに命を狙われ戦闘。その時は撃退したが、恐らく再び現れるであろう事が予想されている。

 

「黒イリヤの目的はどうやらイリヤの命…でも、そんな危機的状況なのに当のイリヤは――何故か弱体化してる…と」

 

「それに、懸念点は他にもある。あれ以来、行方の分からないアーチャーのカード。それに、襲われたイリヤと美遊が見た黒いイリヤ、ああもうややこしいからクロでいいわ。クロの戦い方は…」

 

「うん…おに、…士郎さんと同じだった」

 

「投影魔術に、弓兵の力…間違いないと思う…」

 

 実際に戦ったという、イリヤと美遊はそう言う。

 

「以前に見た英霊の現象の一部?でも、思考力があって会話も可能だった…」

 

 分からない事だらけだ。だが、俺が見た少女は、そう、なんというか。

 寂しそうだと、感じたんだ。

 

「とにかく情報が少なすぎる。こうなった以上、やることはひとつ…黒イリヤこと、クロを捕獲する!」

 

 

 

 

 

「行動が的確すぎます!あの黒いイリヤさんてばなんか異常ですよ!」

 

 アーチャーのクラスカードが無い俺は、後ろに下がっているように言われて俺は傍観していた。だがクロはまるで、こちらの手を読んでいるかのような対応力で美遊、遠坂とルヴィアを無力化した。

 

 俺はこの少女と話す必要があると思った。

 

 それにカードが無くても、俺は力を使える。

 

「ちょ…、士郎!?」

 

「ここは、俺に任せてくれ」

 

「ふーん?真打ち登場ってとこかしら」

 

 他の皆を一端下がらせ、俺が前に出る。

 

投影開始(トレース・オン)

 

 彼女が持っているのは、間違いなく干将・莫耶。俺と同じ、エミヤの力だ。

 

「ふっ!!」

 

 双剣で打ち合う。一合、二合。三合目で彼女の莫耶が折れる。

 

 再び投影し、そしてまた打ち合う。だが、新たに投影した莫耶は先程よりもより真に近い。

 

「不思議ね…、あなたを見ているとこの英霊(ちから)の使い方が解るわ。頭の中澄み渡るみたいにね」

 

 最初はこちらの方が優勢だった。だが、打ち合う事に彼女の動きは鋭くなり、投影の質も上がっている。

 

 まるで、今までこの力の使い方が分かっていなかったかのように。俺の経験を吸い取るかのように。

 

「ねぇ、ひとつゲームをしない?」

 

 突然、彼女がそう言い出した。

 

「わたしが勝ったら、お兄ちゃんはわたしのものになるの。多分、わたしの事を一番理解してくれそうなのは、あなただから」

 

「…俺が勝ったら?」

 

「その時は、お兄ちゃんの好きにして?どーんな事でも、受け入れてあ・げ・る」

 

 これは、俺にとって有利な賭けではない。

 

 だがせっかく彼女の方から交渉の席についたのだ。対話の為には、受け入れるほかない。

 

「良いだろう、ゲームを受ける」

 

「オーケー。それならわたしもちょっと、本気で行くわ!」

 

 彼女の気配が、背後へと現れる。

 

 これは、一度見たことがある。転移だ。

 

 身を捻り、回避する。

 

「あらら…、躱されちゃった」

 

 さして焦ってもいない態度で彼女は言う。

 

「……」

 

 今は辛うじて躱せているが、彼女の技量が同等になれば俺は負ける。

 

 英霊エミヤの力には、転移なんてものは無いからだ。

 

 同じ武技で争っていては勝てない。

 

 ならば僅かながらにも、技量で勝っている内に決着をつけなければならない。

 

 こちらから距離を詰め、剣を振るう。

 

 俺の狙いを悟らせてはいけない。狙うのは、一点のみで良い。

 

「焦っちゃダメよっ、お兄ちゃんッ!!」

 

 こちらの体勢が崩れた所で、彼女が再び転移する。

 

 エミヤの剣技では勝てない。ならば別のモノを使うしかない。

 

 背後に現れたクロ。剣では間に合わない、絶妙なタイミング。

 

 俺は、干将・莫耶を手放した。

 

「!?」

 

 クロに背中を見せているこの体勢。それは、八極拳・貼山靠。またの名を、鉄山靠(てつざんこう)にはもってこいの姿勢だった。

 

 これを、狙っていた!

 

「はぁああ!!」

 

 身体の強化と合わせて放った打撃は、クロを吹き飛ばした。

 

 吹き飛ばされたクロは、やがて立ち上がったがフラフラとしている。

 

「ゲホッゲホッ、いったぁー…。なんなの?…今のはこの英霊の技じゃないわ」

 

 俺がかつて、言峰との鍛錬の時に幾度となく見た八極拳。

 

 正式に習ったわけではないが、俺は目が良かったから覚えてしまったものだ。

 

「どうだ?俺の勝ちで、良いか?」

 

「そうね、…降参よ。これ以上は、ただの殺し合いだし。それはわたしも望んでないわ」

 

 ふぅー、と息を吐きながら安堵する。

 

 謎に満ちた少女との戦闘は、とりあえずは俺の勝ちと相成った。

 

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