二人の“誓い”は運命を変える   作:坂本パン

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今後の展開に悩んでいるため、お茶濁し回を何話か挟みます。


[第二十一話]イリヤと過ごした一日

 ~イリヤside~

 

「ねぇ、ルビー」

 

「どうしたんです?イリヤさん」

 

 わたしは、ルヴィアさん達がバゼットという人に襲われた時の事を思い出していた。

 

 カード回収の前任者だったというあの人は、本当に人間なのかと疑うほどに強かった。

 

 あの時クロがいなかったら、わたしはもっとあっさり負けていたと思う。

 

「わたしって、あんまり強くないよね…」

 

 それがわたしの素直な感想だった。

 

 ふよふよと浮かびながら話を聞いていたルビーは、何を強さと定義するかにもよると思いますがねー、と言う。

 

「確かに美遊さんの冷静かつ大胆な判断力は見事ですし、クロさんと士郎さんは英霊そのものと言ってもいい戦闘力ですし。凛さんとルヴィアさんも、あんなでも一流の魔術師ですからねー」

 

 うん、そう考えるとみんな人間離れしてるかも。

 

「それに加えて、イリヤさんはクロさんが分離した影響で出力が大幅に下がってますからね」

 

「ズバズバと言うね、ルビー」

 

「まぁ事実ですしー」

 

 軽く精神的ダメージを受けたが、確かにそれが事実なので特に反論はしなかった。

 

 八枚目のカード回収は、カードが地中深くにあるため準備に時間がかかるらしい。

 

 その間は、好きに過ごして構わないと凛さんは言っていた。

 

「子供が子供らしく生活するのをやめさせる程、腐ってないわよ。魔術師って言ってもね」と語る凛さんは、とても大人っぽく見えた。

 

「うん、特訓しよう」

 

 でも何もしないのも不安なので、わたしは士郎さんに特訓をつけてもらおうと思いたった。

 

 

 

 

 

「実戦形式で良いんだな?イリヤ」

 

「うん、お願いします。士郎さん」

 

 休日、人のいない郊外までやってきたわたしと士郎さん。

 

 特訓をしたいと相談した時は、士郎さんは意外そうな反応をしていたけど、その話を又聞きしていた凛さんとルヴィアさんも訓練する事に賛成してくれた。

 

「これくらいが手頃かな。転身するなら、間違っても怪我はしないだろう」

 

 士郎さんが投影魔術で作ったのは、いつもの双剣とは違った物だった。

 

「あれって…」

 

「黒鍵ですね。聖堂教会の代行者の正式武装、ですが本来は投擲して使う物ですからね。ルビーちゃんの物理保護で完璧に防げますので、安心してください」

 

 補足して説明してくれるルビー。よく分からないけど、一応怪我はしないように配慮してくれてるらしい。

 

「じゃあ、始めようか」

 

 そう言って、黒鍵を二本構えた士郎さんがこちらを見据える。

 

 あの時のバゼットさんを前にしたような、士郎さんの威圧感に思わず半歩下がってしまう。

 

 その隙を見逃さずに、士郎さんは一気に間合いを詰めてくる。このまま接近戦になってしまえば、こちらが不利だ。

 

「…ッ!、斬撃(シュナイデン)!!」

 

 近づかれないように、広範囲を横一文字になぎ払う。

 けれど、効果はあまり無かった。

 

「防がれてるっ!」

 

「攻撃を弾く瞬間に、強化魔術を施してるみたいですね」

 

 それに、さっきのは広範囲に広げすぎて威力が落ちてたんだ。

 

 結果、士郎さんは間合いを詰めきり、わたしは躱せずに一太刀もらってしまった(もちろん、怪我はしていないけど)。

 

「イリヤ。怪我しないからって、油断はするなよ。アサシンの時みたいに、かすり傷が致命傷に繋がる事だってあるんだ」

 

「うん…、もう一回お願いします!」

 

 それから時間を忘れるようにわたし達は訓練を続けた。

 

 そして、そろそろわたしの体力が限界だと判断した士郎さんは、仕上げにと黒鍵を幾本も投影しこちらに投擲した。

 

「!?、これって…」

 

 一度、クロが使ってるのを見た事がある攻撃。

 

 鶴翼三連と呼ばれる、投擲と斬撃を合わせた必中不可避の絶技。

 

 それを黒鍵で模倣しているのだ。

 

 どうする?

 全方位防御?それじゃダメだ、反撃に回せる魔力が無い。

 もっと的確に、正確に…。

 

「ここだっ…!」

 

 星形の物理保護壁が、投擲された黒鍵の全てを空中で固定する。

 

収束砲射(フォイア)!!!」

 

 そして、残った魔力を前方へと吐き出した。

 

「驚いた…模倣とはいえ、土壇場で鶴翼三連を破るなんて」

 

 魔力砲は士郎さんに当たったかに見えたが、士郎さんは投影した干将・莫耶でちゃんと防いでいた。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「お見事でしたよ!イリヤさん!物理保護壁による拘束…任意座標への展開をあそこまで精密に、しかも複数同時に行うなんて」

 

 ルビーは興奮気味に、称賛してくれた。

 

「機転は利く。身のこなしや判断力も上々。欠点と言えば、どの攻撃も無意識に手加減していた事だな」

 

 訓練が終ったあと、士郎さんは今日の総評を話してくれた。

 

「君の優しさは美徳でもあるけど、戦いにおいては弱点にもなり得る事だけは覚えておいた方が良い。実際、さっきの攻撃なら俺は喰らいながらでも反撃できるくらいのものだった」

 

 戦いにおいては、非情に振る舞う必要がある。

 

 家族を奪われそうになった士郎さんだからこそ、その言葉には重みがあった。

 

「それでも…わたしは話し合いの余地があるなら、そうしたい。だって、わたしに大切なものがあるように、相手にだって大切なものがあるはずだから」

 

「そうだな…君は、それで良いのかもな」

 

 優しく微笑んだ士郎さんは、わたしの頭をポンポンと撫でてくれた。

 

 …美遊には悪いけど、ちょっと得したかも。

 

「今日はありがとうございました、士郎さん。わたし、なにか掴めた気がします」

 

「いや、俺も今日は良い一日になった。これからも美遊をよろしく頼むよ、イリヤ」

 

「はい!士郎さん!」

 

 そんなこんなで、少し自分に自信がついた一日だった。

 

 ~イリヤside out~

 




補足1:士郎とクロが強すぎて、イリヤの出番がなく本来より弱くなっていたので、一応イリヤ強化の回でした。
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