二人の“誓い”は運命を変える   作:坂本パン

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 内容が変わった為、タイトルも当初の予定から変えました。


[第二十三話]後悔の形

 ~美遊side~

 

 7月20日。今日はわたしの誕生日。

 

 イリヤとクロも同じ誕生日であった為、今日は学校の同級生たちと一緒に海に行く事になった。

 

 誕生日。知識にはあるけれど、誕生日って祝うようなものなのだろうか?少なくともわたしは一度も祝ってもらった覚えは無い。

 

 全てを知った今となっては、お兄ちゃんを非難しようなんて気は無い。ただ、お兄ちゃんも悩んでたんだって知ってるから。

 

 歳を重ねるごとに、神稚児はただの人間へと近づいて、堕ちていく。わたしがひとつ歳を重ねるごとに自身の理想と、家族の情に挟まれていた彼の苦悩は、わたしなんかには推し量れない。

 

 だから、家族として生きていけるようになった今だからこそ、わたしはお兄ちゃんと一緒に時間を過ごしたかった。わたしがあの日、行きたがった海という場所で。

 

 イリヤたちとの誕生日会が終わったあと、わたしはお兄ちゃんを海に誘った。

 

 もう時間は夜になるけれど、星が映る海はなんだか、心揺さぶるものがあった。

 

「それでね、こっちの世界の士郎さんが言ってたの。誕生日って、生まれてきたことを祝福し、生んでくれたことに感謝し、今日まで生きてこられたことを確認する、そんな日じゃないかって。………お兄ちゃん?」

 

 返答がなかったため、視線を星空からお兄ちゃんに移す。

 

 遠くを見つめるその瞳は、何を映しているんだろう。

 

 思えば、今日わたしが誕生会から帰ってきた時からお兄ちゃんの様子は変だった。わたしがいなかった日中に、なにかあったのかもしれない。でも、それをお兄ちゃんはわたしには教えてくれないで、ひとりで胸の内に抱えてしまう。

 

 わたしじゃ頼りないのかな…、お兄ちゃんの力になれないのかな…。

 

 無力感、自己嫌悪。そんな感情にわたしの心が埋め尽くされそうになった時、ふわりとお兄ちゃんに抱きしめられた。

 

「…お兄ちゃん?」

 

「ごめんな、美遊。心配かけて。それと、今までまともに誕生日を祝ってやれなくて本当にすまなかった」

 

「ううん。…しょうがないことだと、わたしは思う」

 

 改めて見た、お兄ちゃんの目はまっすぐだった。

 

「俺は…諦めない。それが運命だとしても、抗ってみせる」

 

 お兄ちゃんがなにを思っているのか、細かい事は分からない。けど、わたしは今まで貰ってばかりだったから。

 

 今度はわたしが彼の思いを守りたい。そう思ったんだ。

 

 ~美遊side out~

 

 

 

 

 

 今日は美遊の誕生日だ。今まで、ろくに誕生日も祝ってやれていなかったが、今は美遊が歳を重ねる事に悩む必要もないのだ。

 

 日中は学校の人たちと誕生日会をするらしい。こちらの世界の衛宮士郎がいるので、俺は参加できない。認識阻害の礼装を着ていても、こちらの世界の衛宮士郎と並んで立てば、違和感に気がつく者がいてもおかしくない。

 

 そこで、夜に美遊とふたりで海に行くことになった。プレゼントでも買おうかと、俺は出かける事にした。

 

「うーん、といってもどうするかな。プレゼント選びなんて分からないしな…うわっ!」

 

「きゃっ!…す、すいません」

 

 考えながら歩いていると、人とぶつかってしまった。

 

 女性が抱えていた荷物を拾おうとしゃがみ込むと、視線がぶつかる。

 

「せん…ぱい…?」

 

「さ…くら…」

 

 そこには、いるはずのない彼女がいた。

 

 

 

 

 

「世の中には同じ顔の人が三人はいるって言いますけど…、本当にそっくりな人っているんですね。しかも、名前も士郎さんだなんて」

 

「ああ、俺も驚いたよ。君が知り合いにそっくりで…」

 

 冷静に考えれば、俺が知っている桜がこの世界にいるわけがないのだ。

 

 目の前にいるのは、この世界の間桐桜だ。

 

 今まで無意識に俺は考えないようにしていた。あの世界に置き去りにした彼女の事を。

 

 切嗣の言葉を思い出す。誰かを助けるという事は、誰かを助けないという事。

 

 俺は選択したのだ。妹を、美遊を助けると。

 

「あの…言峰さん?なにか、悩み事ですか?」

 

 桜は不思議そうにこちらの顔を覗き込んでいる。

 

 彼女にとって、俺は先輩では無い。少し、チクリと胸が痛む。

 

「悩み事、聞きましょうか?さっき出会ったばかりの私が言うのも変かもしれないですが…」

 

 どうしてそこまで?そう聞くと、彼女は照れながら言う。

 

「なんだか、放っておけなくて…ですかね?」

 

 そんな彼女を見た俺は、つい聞いてしまった。

 

「もしも…君の好きな人が、目の前からいなくなってしまったら、君ならどうする?例えば、妹を助けるために…とか」

 

 うーんと、首をひねりながら桜は悩み、そして答えた。

 

「きっと、待ち続けますかね…私にはそれしか出来ないから。それに、私の大好きな人だったら必ず戻ってきてくれるって、信じてますから」

 

 そう笑った彼女は、…綺麗だった。

 

 俺に残された後悔。

 

 だけど、いつかそれを乗り越えようと俺は改めて思った。

 

 彼女が、待ち続けているのなら。

 

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