二人の“誓い”は運命を変える   作:坂本パン

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[第二十四話]二枚目のアーチャー

「八枚目のカード回収の作戦会議、始めるわよ」

 

 地中深くにあるカードに接触するための、ボーリング工事は完了。

 

 あとはこれまで通り、鏡面界にジャンプしてカードを回収するだけ…なのだが。

 

「簡単にはいかないでしょうね。八枚目のカードはこれまでの比じゃないほど魔力を吸ってる。地脈が収縮するほどにね。そして、そのカードはおそらく…」

 

 こちらに視線を向けた遠坂の言葉を、俺が引き継ぐ。

 

「英雄王ギルガメッシュ…、数多の宝具の原典を有しそれを矢のように無造作に無尽蔵に放つ。俺が参加した聖杯戦争の本来のアーチャー」

 

「まさか、そんなカードまであるとはね…本当にインチキじみてるわ」

 

 英霊を象徴する宝具は原則ひとりにひとつ。だが、この英霊の所有している宝具の数は規格外だ。

 

 頭を抱える遠坂。魔術師ではないイリヤは、いまいち深刻さが分かっていないようだが、それでも場の空気に呑まれ表情は暗い。

 

「あのカードは間違いなく…最強だ。俺達だけで仕留めきれるとは限らない」

 

「バゼットさんはどうなったんですか?」

 

 手をあげて発言する美遊。

 

 それも問題のひとつね。と言う遠坂。

 

「彼女も同行することになったわ…といっても勿論仲間ではないわ。バゼットの使命はカードの回収、どちらが先にカードを手にするかの競争になる」

 

「協力を求めるのはムリってわけね…」

 

 なら、とにかく速攻で決着をつけるべきじゃない?とクロは提案する。

 

 その意見は、確かに一理ある。

 

 放っておけば、地脈より魔力を吸い続けているカードはより強くなる。

 

「そのとおりね。予想通りなら、おそらく過去最強の敵…そんな相手にとれる作戦はひとつだけよ。最大火力をもって、初撃で終わらせる!!」

 

 カード回収、最後の戦い。

 

 それはもう、今夜に迫っていた。

 

 

 

 

 

「―――いきます!」

 

 鏡面界への接界(ジャンプ)が終わった時、そこには悪意が満ちていた。

 

 可視化するほどの黒い魔力の霧。空間にはそれが溢れていた。

 

 それでも、ルヴィアは怯まずに飛び出す。

 

Zeichen(サイン)――!」

 

 世界蛇の口(ヨルムンガンド)。吸引圧縮型の捕縛陣は敵を一箇所に留める。

 

「まずは捕縛成功!!イリヤ!!美遊!!チャージ開始!!20秒よ!!」

 

 すかさず、カレイドの少女達が魔力砲のチャージを始める。

 

 俺達が持っているクラスカードはキャスター、アサシン、バーサーカーの三枚。

 

 アサシンでは火力不足。キャスターでは時間がかかりすぎる。バーサーカーは味方が近くにいる時は危険と判断され、カードの使用はせずに戦う事に決めていた。

 

Vom Ersten zum achten(1番から8番)Eine Folgeschaltung(直列起動)――」

 

 そして、遠坂の砲台と評しても過言ではない、魔力の高速回転増幅路・打ち砕く雷神の指(トールハンマー)

 

 放たれた魔力砲は、敵をもろともに飲み込む。だが、まだ決着はつかない。気配が消えていない。

 

「―――I am the bone of my sword」

 

 クロと俺は同時に投影を始める。

 

 俺は螺旋剣を、クロは聖剣を矢として番える。

 

「「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)………!!」」

 

 それは剣の持つ概念そのものを使い捨ての爆弾とする絶技。

 

 俺達はみな、今振るえる最大の一手を打った。

 

 だが、アレは俺達のすべてを超えていた。

 

「やはり…駄目かッ!」

 

 いつの間にか現れた盾に、攻撃は防がれていた。

 

「退却ですわ!!作戦は失敗!!戻って立て直しを……」

 

「では、次は私の番ですね」

 

 そう言ったバゼットが、単身で突っ込む。

 

「クロッ!!合わせるぞ!」

 

「うんッ!お兄ちゃん!!」

 

 これは俺がクロと打ち合わせていた事だ。

 

 俺達の作戦が失敗した時、バゼットは自分ひとりでも戦おうとするだろう。

 

 バゼットの突破力は、英霊にも比類するものだ。俺達と合わせて、英霊三人分の力。

 

 仮に協力は出来なくても、俺達が勝手に彼女のフォローをする分には関係無い事だ。

 

 バゼットに飛来する宝具の数々を、俺とクロが迎撃する。

 

 一振りを弾く事に干将・莫耶は砕けるが、その度に投影する。

 

「貴方たち…礼は言いませんよ」

 

 そして標的にたどり着いたバゼットは、数え切れないほどの殴打を浴びせる。

 

 だが、いくら損傷を与えても莫大な黒い魔力がその身体を修復していく。

 

 そしてお返しと言わんばかりに、数多の宝具が降り注ごうとしていた。

 

「マズイッ…!クロ!!頼む!」

 

 俺達はまだ良い。だが、後ろにいる者たちにはこの宝具の雨を防ぐ手段が無い。イリヤの物理保護壁だけでは、防ぎきれない。

 

「まかせてっ!」

 

 先程まで隣にいたクロが、瞬時にイリヤ達の元へと戻る。

 

 俺には出来ない彼女自身の技、転移。これが出来るからこそ、俺はイリヤ達の元から距離をとっても大丈夫だと判断した。

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)―――!!」

 

 そして、英霊エミヤの絶対の守りが花開く。

 

 開いた六枚の花弁は、一枚、また一枚と壊されるがそれでも充分に時間を稼いでくれている。

 

「さぁ――詰めだ」

 

 前へ。前へ。

 

 逸らし、躱し、俺とバゼットはとにかく前方へ進む。

 

 俺はバゼットが近づく為の、隙を生み出す。

 

投影開始(トレース・オン)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)…!!」

 

 彼女に迫りくる剣を、投影した剣を射出し撃ち落とす。

 

「…!!、まさか二度も助けられるとは」

 

 そう言い、ゴキリと指を鳴らした彼女のグローブが光る。

 

「硬化、強化、加速、相乗…!!」

 

 いつか見た、ルーン魔術による必殺の一撃。

 

 その一撃は確かに奴のカードを獲った。

 

 だが次の瞬間バゼットの手は弾かれ、奴はまた動き初めた。

 

「バカな…!!カードを抉り出されてなお…!動けるのか!!」

 

「セイ…ハ…イ…」

 

 その時、俺達はその声を聞いた。

 

 だがその言葉の意味を理解する間もなく。

 

 奴が取り出した剣は――根源的な恐怖をもたらした。

 

 解析、不能。

 複製、不能。

 

 あの剣は、俺達の手に負えない…!。

 

 俺達は必死の思いで、鏡面界から脱出した。

 

「だ…脱出…できた?」

 

 全員があの、神話のごとき光景を見た。その光景は、思い出すだけで心胆を寒からしめる。

 

「我々だけではどうあっても勝ち目がない。もはやカードを回収するのではなく、別の解決案を模索すべきだ」

 

 立ち上がったバゼットは、そう言う。

 

「そうね。出来る限りの事はしたし、あんな奴を相手にして誰も犠牲にならなかっただけ僥倖ね」

 

 遠坂もそう同意した。その時。

 

 ビシッ。

 

 音が聞こえた。

 

 空間に亀裂が入り、広がって割れていく。

 

「こんなことが…あり得るとは…」

 

 敵は、鏡面界を破って現れた。

 

 まだ戦いは、終わっていない。

 




補足1:クロの投影の技術は大幅に成長している為、アイアスの花弁は六枚としています。一枚減っているのは、士郎と違い彼女はエミヤそのものではないから投影の質は一歩及ばぬという、作者の解釈からきています。
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