二人の“誓い”は運命を変える   作:坂本パン

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[第二十五話]運命

 鏡面界を割って現れた敵は、市街地へと出てしまった。

 

 ルヴィアがとった次善の策、爆破により160万トンのコンクリートと720万トンの地層で押しつぶすというのも、飛行する宝具により突破された。

 

 そして聖堂教会のカレンと名乗る人物の情報により、奴の目的地は円蔵山のはらわた、地下大空洞であると推察された。

 

 飛べるイリヤと美遊は先行。残った俺達は車とバイクで移動する。

 

 

「アインツベルンが10年前に起こした願望器降臨儀式。今回の事件は…その残骸が招いたと見られているようね」

 

 だが、実のところそれは違う。

 

「聖杯戦争は不完全な形で集結。聖杯は成ることなく、術式は半壊したまま今も大空洞に眠っているはずよ」

 

 その聖杯になるはずだったはずのクロがそう言う。

 

「そして、私達にとって既知のことですが…アインツベルンのものとは別に存在する、もうひとつの聖杯戦争。シェロが勝ち残った、カードを用いた別物が混ざり込んだ」

 

 俺がもといた世界の降臨の儀と、同じ場所。

 

「儀式を、大魔術陣を乗っ取るつもりだっての…?」

 

 

 

 

 

 山のふもとにたどり着き、駆け上がっていると突然カレンが血を吐き出した。

 

「かッ…!!」

 

「ど、どうした!?」

 

「これは魔術の反動、気にしないでいいわ。私はただのカナリヤだから。それより…貴方達の予想通り、この術式はアインツベルンのものではないわ」

 

 カレンは置いていくことにして、移動を再開する。

 

「…速度を合わせる必要もないでしょう、先に行きます」

 

 先行するバゼットに、俺とクロが追随する。

 

 たどり着いた先には、肥大した黒いなにかがそこにいた。

 

「なんなんだ…こいつ!!」

 

「攻撃方法から見て…八枚目のカードでしょう。しかし、どうしてこんな異形に…!」

 

 合流したイリヤに状況を尋ねる。

 

「あの中に、美遊が…!?」

 

 悔しそうに顔を歪めるイリヤ。

 

「美遊は嫌だって、言ってた。こんなところで、終わりたくない。運命に、抗うって!!」

 

「だから、わたしも逃げない。美遊を…絶対、絶ッッ対助け出す!!!」

 

「サファイア!力を貸して!」

 

 迫りくる神造剣を、イリヤは真っ二つに切り裂いた。

 

「…君は、なにものだ?」

 

 それは誰が呟いた声だったか。いや、この場にいる者ならば皆思ったことだろう。

 

 イリヤの出力が桁違いに増大している。

 

「力の規模が大きすぎる…!個人であんな魔力の行使が可能なのか…!?」

 

 あれほどの大出力は、イリヤには原理的には不可能なはず。ならば考えられるのは、代償がいるインチキをしているという事だ。

 

 その強大な一撃は、神々の盾すら貫いた。

 

「友のために身を滅ぼすか。ああ…君は…君こそは。僕の全力に相応しい!!!」

 

 二人の全力の攻撃は、地を揺らし空を割った。

 

 凄まじい魔力の奔流に、思わず足が後ずさる。

 

 それが収まった時、あの黒い異形は消滅していた。

 

「動くなよ、英雄王の半身」

 

 俺は泥に埋もれる人影に刃を突きつけながらそう言う。

 

「心配しなくても、しばらく動けないさ」

 

 少年のような見た目をした英霊は、抵抗する気はなさそうだ。

 

「イリヤ…」

 

 同じく泥の中から現れた美遊に、イリヤが近づく。

 

「美遊、わたしね…もう逃げないよ。美遊はわたしの友達だから。友達が苦しんでるなら…もうほっとかない!」

 

「ほら、帰ろ?わたしたちの家に――」

 

 伸ばした手が、握られる寸前。

 

「なん……!」

 

 突如降り注いだ雷撃が、全員の体の自由を奪い取る。

 

「エアで切り裂いた世界の裂け目…まさか…」

 

夢幻召喚(インストール)

 

 現れたのは、人影は即座にカードを夢幻召喚(インストール)した。

 

「お、お前らは…!!」

 

 忘れもしない、エインズワースの尖兵。あの剣が世界を繋げちまったのか…!。

 

「お迎えに上がりました、美遊様」

 

 美遊が、連れていかれる。

 

 そんなのはダメだ。俺は何のために、聖杯戦争を勝ち残ったんだ。

 

 立て。

 

 立つんだ、衛宮士郎。

 

「揺り戻しだ」

 

 世界が揺れる。

 

 ビクンビクンと痙攣し、言うことを聞かない体に鞭を打ち、気合いで立ち上がる。

 

 思わず目をつむりたくなる程の光のなか、それでもかろうじて捉えた美遊の姿に向かって駆け出す。

 

「待ち、やがれッ!!テメェらッ!!!」

 

 踏み出した右足が、まるで泥の中に嵌まり込んだかのように動かなくなる。

 

 足元を見ると、周囲は明るいはずなのにその光を全て飲み込むかのような、闇が広がっていた。

 

「やっと…ヤっと、みツけタ―――。セ・ン・パ・イ……!」

 

「お前、は……!?」

 

 闇の中から現れた手に引きずり込まれ、俺は体も、意識も、その闇の中へと落ちていった。

 




 ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

 本話でツヴァイ編は完結。次話からはドライ編となるのですが、次の投稿までに2~3週間ほど休載致します。

 理由としては、ここまで毎日投稿で頑張ってきましたが、正直ちょっと無理をしているのと、ドライ編は話数が少なく一話あたりの文字数が多い感じになるので一日じゃ書ききれないと判断したからです。

 予定では、ドライ編は五話。一応、年内には当初想定していた部分まで投稿して形だけは完結させようと思っているので、どうか気長にお待ち頂けると幸いです。

 投稿休んでいる間でも反応はするので、感想や質問がありましたらコメントしてください。
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