りゅうおうのおしごと!八銀SS特別編 作:しおり@活字は飲み物
13巻読了後推奨。14巻以降と一部設定が異なります。
バレンタインを書いたんだから、ホワイトデーも書かないと…は言い訳で、新作が煮詰まってるから、リハビリ第二弾です…
「はい、これ。一日遅れちゃったけど」
「……ふ〜ん。覚えてたんだ。今週はお互い仕事が忙しかったとはいえ、メールでも電話でも、な〜んにも言ってこないから、例年通りスルーされたのかと思ってたわよ?」
「いやいや! 毎年スルーしてないでしょ!? 去年までは銀子ちゃんが食べたい高いスイーツを無理矢理奢らせてたくせに!」
「なによ、今更文句? 気の利かない弟弟子の負担を減らす為に、こっちからリクエストしてあげてたんじゃない。高いって言っても、そもそも姉弟子へのホワイトデーのお返しなんだから、10倍返しは当たり前でしょ?」
「当たり前なんすか……」
「当たり前よ」
「……百歩譲って、弟弟子だったら10倍返しだとして。彼氏からのホワイトデーのお返しは、いらないの?」
「…………いる」
「ふふ。素直な銀子ちゃんはかわいいな〜」
「うるさい、バカ! それと、急に抱きつくな!」
「いてて……そんな全力で押しのけなくても……まあ、テレる銀子ちゃんもかわいいけど」
「て、テレてないもん! それにしても何この薄い……封筒? 」
「ほら、プレゼント開けるならこっち来て、俺の膝に座って」
「わわっ! ちょっと、引っ張らないでよ」
「はい。定位置に収まった? それじゃあ、開けてみてよ」
「封筒……チケット? ホテルの名前……レストランの……招待券?」
「そう! 京都センチュリーホテルのイタリアンレストランディナー券!」
「ここって、タイトル戦とかの会場にもなる高級ホテルじゃない?」
「ここのレストランはスイーツも美味しいんだって。個室もあるからゆっくりできるかなと思ってさ」
「高級ホテルの、レストランの個室で、ディナー?」
「銀子ちゃん、前から恋人らしいデートしたいって言ってたでしょ?」
「やいち……」
「お、銀子ちゃんからハグしてくれるなんて珍しい。そんなに感動してもらえ……ぐぇ!?」
「吐け」
「なんで、また急に!? く、くびが……絞め……」
「誰の入れ知恵?」
「ぐっ……な、なんの……ごどっ……」
「こんな気の利いたプレゼント、あんた一人で考えられるわけない。誰にアドバイスしてもらった? 京都ってことは、まさか……」
「ち、ちがっ……」
「じゃあ、どうやって思いついたのよ!?」
「ぜぇ、はぁ……ほら、女王戦の、神戸の、結婚式場……招待券、みたいなのがっ! ホテルでも!できるかなと思って……!」
「ふ〜ん……でもなんでわざわざ京都なのよ?」
「げほっ……大阪、だと、近すぎて、人目が気になるでしょ!? でも、時間的にあんま、遠くには、行けないから、京都ならと思って……」
「…………そう……」
「はぁ、はぁ……苦しかった……(やばい……供御飯さんにそれとなくお勧めホテルを聞いたことは内緒にしておこう……)」
「高級ホテルでディナーデート……ホワイトデーのお返しとしてはまずまずね」
「ちょっと、せっかく色々考えてプレゼント選んだのに、首絞められたんですけど?」
「ゔっ……ごめん……」
「お詫びのしるしも欲しいな〜銀子ちゃんからキスしてくれたら、許しちゃうんだけどな〜」
「む〜〜いっかい、だけだからね?」
「はいはい。一回だけね」
「…………そんな、じっと見ないでよ!」
「だーめ。恥ずかしがってる銀子ちゃんが俺にキスしてくれるまでを眺めるのも、お詫びに含まれてるから」
「この! ヘンタイ!」
「ヘンタイですがなにか? ほらほら、早くしないと恥ずかしがってる姿をず〜っと見られちゃうよ? 俺はそれでもいいけど」
「バカ!……んっ………………ふッ……んんッ!?……だめぇ……もう……いっかい、した!……のに!」
「はぁ……なんで? 銀子ちゃんからの、キスは一回でも……俺からするなら、いい、でしょ?」
「耳元でっ! 喋っちゃ……だめっ!…………あっ!! ちょっと! ひゃん! どこ触ってるのよ!」
「いてて……だって、やわらかいな〜と思うとさ、つい……」
「まったく! まだ招待券の裏面とかちゃんと読めてないし、今はダメ!!」
「ふぅ……そうだったね。じゃあ、行こっか」
「へ? 行くって、どこに?」
「どこって、京都」
「えっ!? 今から!?」
「うん。レストラン予約してあるし」
「よやく!? これから!?」
「だから、一日遅れのホワイトデーだって」
「でも、今から行ってもご飯食べて帰ってくるだけになっちゃわない?」
「大丈夫だよ。ホテルに部屋も取ってあるし」
「へへへへ、部屋!?」
「だって、一緒になんか食べるだけじゃ弟弟子の時と同じでしょ? 銀子ちゃんの理論でいくと、彼氏からのお返しとしてはそれだけじゃ足らないでしょ?」
「うぐ……確かにそうだけど、でも!」
「俺からのホワイトデーのお返しは京都のホテルディナーとホテルステイです!」
「も、もしかして、だから八一、今日はいつもよりちゃんとしたカッコしてるの!? 先に言ってよ! ホテルに着ていくような服は実家の方にあるんだから!」
「先に言ったらサプライズにならないじゃん。今着てるのも十分かわいいから大丈夫だよ?」
「か、かわいいから大丈夫とか、そういう問題じゃないの! 大体! そ、外で泊まるなら、泊まる準備とか、色々あるし……」
「一泊って言っても今から行ってご飯食べて、のんびりして明日帰って来るだけだし。荷物なんて下着くらいで……」
「気楽な男子と一緒にするな! 女の子がその、お泊まり……する時には色々準備や持ち物があるの!」
「そうなのかもしれないけど……だって二人の予定、中々合わないし。でも明日は夕方まで一緒にいられるんでしょ?」
「いられるけど……」
「今春休みだし、高校もないでしょ?」
「ないけど……」
「閑散期の今のうちに二人でゆっくりしたいって言ってたじゃん」
「ゔっ……言ったけど、ほ、ホテル泊まるなんて……心の、じゅんびが……」
「いまさら? 早くしないとレストランの予約時間に遅れちゃうよ?」
「もう! あとどれくらい余裕あるの?」
「そうだな…ここから電車で向かうとして、到着がギリギリでよければ、1時間くらい?」
「………………タクシー」
「えっ? タクシー?」
「タクシー呼んで。いつものこのマンションからちょっと離れた交差点に」
「京都のホテルまでタクシーで行くの? その方が時間かかるよ? 渋滞もあるかもだし」
「違うわよ。一旦実家に寄って、一昨年の誕生日に釈迦堂さんからもらった黒いドレスに着替えてから行くから! 早くアプリで配車依頼して!」
「えっ!? あ、はい……」
「えっと、鞄はここにあるのでよくて、靴は……家で履き替えて……明日の京都観光用の服と靴も……明日の天気は……タイツ、どれ持っていこう……あっ! 京都で人気のカフェ特集の雑誌、どこに置いてあったっけ? もう! こうなるなら、前々から準備したのに!」
「銀子ちゃん」
「なに?」
「ホワイトデーのプレゼント、喜んでくれた?」
「当たり前じゃない! 早く行くわよ! クズ!」
「はいはい」
fin.
●京都センチュリーホテル
https://www.keihanhotels-resorts.co.jp/kyoto-centuryhotel/
京都のホテルでスイーツビュッフェを物色してたら時期は違うけど美味しそうだったので詳細検索。歴史あるホテルだし、内装も和風モダンで素敵。ざっと調べたら、以前は中原名人の通算1000局目の第22期十段戦七番勝負第5局でも対局会場になっているとのこと。
個室もあったのでディナーデートに方針転換しました。プロポーズプランとかもあるので、するかどうかはともかく、色々融通をきかせてくれそうだなと思いまして。こちらのホテルが招待券的なものを発行しているかは不明ですが、リクエストすればそれらしいもの渡してくれそうな気もします。
あとは、18歳と16歳じゃ保護者の同意書が……とかも考えましたが、その辺はまあ、業界特権ということで気にしないことにしました!
一番リーズナブルなスーペリアルームでもソファーというかカウチがあるので、そこでもイチャイチャしやがれ。