一昔前のカントー地方には、町そのものが墓地となっていた場所があった。
全体的に雰囲気が暗く、来る者といえば、長旅で疲れきった身体を休めるもの、里帰りで戻って来たもの、そして、渡り鳥ポケモンだけであった。
しかし、現在ではそんな噂話もなく、かつて怪しく聳え立っていた町のシンボル"シオンタワー"も、今では立派なラジオ塔と化していた。
シオンタウン その名だけが、かつての面影を残すだけである。
シオンタウンには、フジ老人と呼ばれ親しまれている男が住んでいる。
主に、身寄りのないポケモンを一時的に保護していただけであったのだが、ポケモン達の墓地であったシオンタワーを取り壊す際に、殆どのポケモンの墓の世話を引き受けたのである。
そのためか、彼の家は"ポケモン屋敷"といつしか呼ばれるようになった。
当初、まさかご老人の家がこんな事になるとは思ってなかったであろう。
しかし、毎年増えるポケモンと墓のせいで、今では改築を申し出る町民が出る始末。
・・・尤もフジの性格からか、増えること自体には満更でもなく、むしろ歓迎しているようであるが。
あくる日の出来事、フジが用事で隣町まで行くと、そこで懐かしい仲間がいると言う話を聞いた。
その仲間は、とある研究の傍ら各地で講演会を開いているらしく、今日がたまたま隣町で開演する日だったらしい。
フジはその仲間から、今の状況と"あること"を聞こうと、その仲間の下もとへ急いだ。
「メガシンカ、ねぇ・・・」
ホロンと言う名の学者は、フジの前でそうつぶやいた。
~ホロン~
ポケモンの属性、所謂タイプの研究者で、なぜポケモンはそのタイプなのかとゆうことを研究している人物である。
一方で、カロス地方に伝わるメガシンカの研究チームの一人でもあった。
通常と違うタイプのポケモンが生息する地"ホロン"とゆう名称も、それを発見した彼の名からきている。
「それはプラターヌ君から聞けばいいことではないのかね?」
会場の近くのポケモンセンターで、ホロンがそう提案する。
「そうはいかないんだよ、ホロンさん。第一、この話は彼には関係ない」
フジが自宅で焼いてきたクッキーをつまみながら、ホロンにそう言う。
「では何かね?君の自宅の改築の相談かい?まあ、金は出さんがな」
ホロンが、そう冗談を言ったからか、フジは閉口してしまった。
余談ではあるが、フジがいくらポケモンが好きであっても、生活するスペースがないのでは本末転倒であり、ホロンのこの冗談はフジの心に矢が刺さったようであった。
・・・何分かたった後、先に口を開いたのはフジのほうであった。
「・・・実は今日会ったのは、かつての研究の話なんです。」
「と、言うと?」
「かつて、私たちのチームが生み出した"兵器"についてなのです」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
カントー地方の北には、ハナダの洞窟と呼ばれる場所がある。
洞窟のなかのポケモンは総じてレベルが高く、迷ったら最後、絶対に抜け出せない
と言われている。
云わば、ひとつの自殺スポットとなっているのだ。
その証拠に、ご丁寧にもエリートトレーナーが一人、ぽつんと立っている。
さて、この洞窟の最奥部には一匹の魔物が棲んでいる。
魔物は人の形をしているが、紛れもないポケモンである。
ポケモンは、ただあることを夢想しているだけであった。
「なぜ、私が生きている。なぜニンゲンは、私を殺さなかった」
自分がなぜ生きているのか、ただそれだけが、ポケモンの悩みであった。
そして答えが見つかるまで、洞窟の最奥部で生きるつもりでいた。
・・・ポケモンの名はミュウツー、ミュウの遺伝子より生まれし、最強の魔物