オーバーロード外伝 炎の魔術師   作:ヤギ3

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さぁ、ストック切れたぞ!
どうしようか!

少し、投稿頻度落ちるかもです。


第2ラウンド

「ぐっ!」

「なにこれ……っ!」

「動けない……!」

 先行していたガガーランと、男を確保していたティアとティナ。

 前にいる3人の動きがピタリと止まる。

 

「ど、どうしたの3人とも!」

「バッカ! 止まれ!」

 そういって、ラキュースを制止するK。

 そして、すかさず〈火球(ファイヤーボール)〉を悪魔に浴びせる。

 

「うおっ!」

「動けるようになった」

 そうすると、ガクンと再起動したかのように3人の体が動き出す。

 

「近くで目を見るなよ!」

「あの悪魔を知っているのか」

「ああ。魅了の魔手(テンプテーション・ハンド)って言ってな。魅了に特化した悪魔だ。近づくにつれて魅了の効果が強くなる」

 

「魅了。精神支配か」

「厄介ね。対処法は?」

「離れる。もしくは、視線の先に立たない。後、掴まれたらおしまい」

 

「ならば、私がやろう。――精神支配には耐性がある」

「ほぅ。じゃ、俺も付き合うぜ。俺も精神支配に耐性があるからな」

「例のコレクションか?」

 イビルアイに問われて、肩をすくめる。

 

「ふん、まあいい。せっかくだ、手伝え」

「はいよ」

 もともと前衛だったガガーランたちと入れ替わるように、後衛にいたイビルアイとKが前衛に変わる。

 それに反応したのか、両掌をこちらに向け、掌から真っ黒な泥のようなものを出し続ける。

 その泥は、地面に落ちたところから新たに悪魔を召喚する。

 

「おい。増えたぞ」

「掴まれると終わりっていうのは、そういうこと。アレの仲間入りは嫌だよねー」

 現れた悪魔は、動物のようなもの、人のようなもの、生物とは思えないもの、様々な形状をしているが、一様に正気とは思えない。

 あの大きな両手に捕まれると、魅了されたうえで召喚獣にされるのだ。

 おそらく――あの人間も召喚獣のうちの1体だったのだろう。

 

「人間が召喚されるってのは、聞いたことないけどな。……胸糞悪い」

「まったくだ。――おいラキュース。耐性のある私たちが本丸をやる。周りのザコは任せるぞ」

「わかったわ……気を付けて」

「誰に言っている。――行くぞ! 遅れるなよ!」

「はいよ!」

 

 イビルアイが〈飛行(フライ)〉で空から、Kが〈爆速(ニトロ・アクセル)〉で真正面から魅了の魔手(テンプテーション・ハンド)に迫る。

 

「まずは目から! 〈火球(ファイヤーボール)〉」

 〈火球(ファイヤーボール)〉が悪魔の足元、地面に打ち込まれる。

 大きく弾けた〈火球(ファイヤーボール)〉は、土煙と炎を巻き上げ、視界を潰す。

 強力な魅了の力を持つ魔眼だが、視界を潰されれば意味がない。

 

「〈酸の矢(アシッド・アロー)〉!」

 その土煙と炎の隙間から、酸で出来た矢が飛来する。

 その酸の矢は、魅了の魔手(テンプテーション・ハンド)の目に直撃。大きな焼ける音と煙をたてる。

 甲高い声を上げ、仰け反ったところに――

 

「よっと」

 炎を足に纏ったKが、その体を蹴り上げる。

 

「パスだ、イビルアイ!」

「ああ。〈水晶騎士槍(クリスタル・ランス)〉!」

 蹴り上げた悪魔は宙高く舞い上がり、飛行しているイビルアイと同じ高さにまでなる。

 目の前に来た魅了の魔手(テンプテーション・ハンド)の体に、イビルアイの巨大な槍が突き刺さり、今度は地面へと激突する。

 

「よっと。100点だな」

「ああ」

 魅了の魔手(テンプテーション・ハンド)が落とされた場所は、先ほどいた場所の反対。ガガーラン達と召喚された悪魔とは、広場を挟んで反対側だ。

 雑魚との分断、魔眼への対処。

 この2つを同時にこなしたのだ。

 

 赤い目を血走らせた魅了の魔手(テンプテーション・ハンド)

 その大きな手から人間の頭ほどの火球がKを襲う。

 しかし――Kには効かない。

 

「おっと、第3位階。こんな魔法も使えたっけな」

「なるほど。精神支配を封じれば勝てる相手というわけでもないか」

 炎の中からKが顔を出す。

 その体には、煤1つ付けられていない。

 

 血の混じった泡を口から吹きながら、今度は人差し指を向ける。

 その指の先から、青白い電気――第3位階〈電撃(ライトニング)〉が撃たれる。

「うおっと!」

 炎への完全耐性を持つKも、それには飛びのく。

 

「ちぃ!」

 その電撃は、イビルアイにも向けられる。

 イビルアイ、K、魅了の魔手(テンプテーション・ハンド)の魔法戦は、更に加速する。

 電撃、火球、水晶の弾丸が三者三様に向けられる。

 

「はぁ……はぁ……」

「どうしたイビルアイ。もうダウンか?」

「うるさいっ。……くそっ。やはり身体能力で上をいかれるのは、厳しいな」

 魔法だけを見るなら、イビルアイが圧倒的に優れている。

 使える魔法が、第3位階と第5位階の差は大きい。

 

 しかしながら、イビルアイが攻めきれない理由は、悪魔の基礎的なパワー。

 人間種や亜人種にはない、異形種が持つ圧倒的なステータスをフルに利用してくることにある。

 特に、覚えられる魔法やスキルに『才能』という限界があるこの世界では、その基礎能力の差は致命的になる。

 人間種が追いやられ、亜人種の間で家畜扱いになる程度には。

 

「というか、何で貴様はそんなにノンビリとしているんだ!」

「手ぇ抜いてるからー」

「本気でやれぇ!」

 大きく怒鳴るイビルアイ。

 

「わぁった。わかりましたよー。……んじゃ、あの悪魔を浮かせられるか?」

「どういうことだ?」

「全力の魔法、1撃でやってやる。だけど、射線上には王都の建物もある。魔法で見境なくやるのは本気で手を貸すって言った手前、やりづらい」

「『やりづらい』ではなく『できない』の間違いじゃないのか?」

「……マチガイダヨー」

「答えなくていい。愚問だった」

 ハァとため息をつきながら、聞くんじゃなかったと聞こえないように呟くイビルアイ。

 

「やってやるさ。任せろ」

「ん。任せた」

 矢のように空中へと飛び出す。

 

「こっちだ、悪魔! 〈結晶散弾(シャード・バックショット)〉!」

 水晶の散弾が悪魔の体に殺到する。

 悪魔が蝙蝠のような羽根を使い飛翔し、その大きな手でイビルアイの矮躯を包み込むように右手を叩きつける。

 しかし、それは透明な水晶の楯によって防がれる。

「〈水晶盾(クリスタル・シールド)〉。まさかこんなに簡単に来てくれるとはな。……そしてダメ押しだ。空中では巻き込むこともあるまい」

 

 異形の悪魔が身を引こうとするが――

「遅い! 〈砂の領域・全域(サンドフィールド・オール)〉!」

 巨大な砂の領域が悪魔とイビルアイの周りを纏わりつく。

 移動阻害、盲目化などの効果で身動きが取れなくなる領域へと魅了の魔手(テンプテーション・ハンド)は、引き摺り込まれたのだった。

 だが、悪魔は動けない領域の中を、鈍くではあるが足掻く。

 

「やはり止めきれんか。最後の仕上げだ。〈魔法抵抗難度強化(ペネトレートマジック)重力反転(リヴァース・グラヴィティ)〉!」

 魔法の抵抗力を貫通する魔法の強化をなされた、魔法。

 その効果は、重力を中和し反転させる。

 もはや重力すら感じられない魅了の魔手(テンプテーション・ハンド)は、天地の方向すら分らぬまま、砂の領域に翻弄される。

 

 そして、砂の領域が消えた頃には――

「十分な高さだ」

 右手を、高々と空中へと上がっていた悪魔へと向けていた。

 

「〈|魔法三重最強位階上昇化《トリプレットマキシマイズブーステッドマジック》・龍炎(ドラゴン・フレイム)〉」

 龍を象った炎が迫る。

 魔法三重化によって、三重に発動。

 魔法最強化によって、魔法の威力のポテンシャルを引き出す。

 そして魔法位階上昇化によって、その威力は――第十位階へと達する。

 

 英雄を超え、神話の魔法へ。

 宣言通り1撃で終わる。

 それだけの威力を持つ炎の龍が王国の夜空を走る。

 それを一身に浴びた悪魔が生きていられるはずもなく――声すら出せずに灰と化した。

 

「はぁーしんど」

 それだけを言ってKは地面へと倒れこむ。

「おい!」

 それを見た、ガガーラン達が駆け付ける。

 どうやら召喚された悪魔との戦闘は、とうに終わっていたらしい。

 

「もう空ですよ。ボヤも起こせない……しんどい……」

「まあ、あれだけの魔法だからな。撃てば倒れもするか」

 あれだけの威力ある魔法ならば消耗も激しいだろう。

 そう思って、功労者であるKを担ぐ。

 

「とりあえず、帰ろーや。宿屋に帰りたい」

「……そうね。今回の件、ラナーに報告しないといけないしね」

 その言葉に反対するものは居らず、一同は帰路へとつく。

 




魅了の魔手(テンプテーション・ハンド)
レベル:45~50
概要
 ヤギの頭に肉感的な女体を持ち、めちゃくちゃ大きな手を持つ悪魔。ジャンル的には下級の淫魔。ユグドラシルでは女淫魔(サキュバス)の部下みたいなモンスター。

 淫魔らしく魅了の魔法やスキルが多い。視界の先にいる相手の動きを止めるパッシブスキル、距離が近付くにつれて魅了の効果が高くなるスキルなどからもわかる。

 ちなみに、手から魅了した魔物を出す力は、ユグドラシル時代はただのフレーバー。出現したフィールドにいる魔物を魅了状態でランダム召喚するスキルの隠れ設定みたいなものだった。転移後の世界でデスナイトが死体に乗り移るようになったのと同じ感じ。

 強さは、かなりヤバく1体いれば都市1つ壊滅も可能なレベル。イビルアイ1人で攻めきれない。ただし、ステータス高めだがスキルの数は極端に少ないため、種族値より職業値を上げた方が強いユグドラシルでは、あんまり強くはなかった。
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