「おっと。見つけた」
兎耳をピコピコと動かしながら、不意に立ち止まる。
その顔には、獣のような笑みが浮かんでいる。
「悪魔のお客様がこっち見ているぞ」
「……確かに気配を感じる」
「……斥候で負けた」
「気にすんなよ。1人でやってきた上、それ用の魔法を使ってたんだからな」
「ウサ耳?」
「ウサ耳。バニーはいいぞ」
「考えとく」
ティナの答えに、うっし! とガッツポーズをとる。
Kがガッツポーズをとっている間に、闇の中から複数の存在が出てくる。
その上位種である
そして、極めつけ。
「――蟲のモンスター」
「あァ」
苦々しく口を開くティアとガガーラン。
その視線の先には、蟲の見た目をしたモンスター。
見た目は二足歩行のカマキリ。
人とカマキリを足して2で割り、おぞましさを加えたような見た目のモンスター。
「
「知っているのか」
「まぁね。蟲というより悪魔に近い奴なんだけど」
「詳しいことはどうでもいいぜ。せっかくなら蜘蛛の形をしていりゃ鬱憤を晴らせるってのによ!」
「同感!」
ガガーランとティアが
旋風を巻き上げながら、戦鎚が横殴りで迫る。
それだけではなく、反対側からも空間を切り裂くような鋭い短刀での1撃。
それらを蟷螂の騎士は、自身の両手に当たる大鎌で防ぐ。
「あの脳筋どもめ! 〈
「言ってる場合じゃない」
その撃ち漏らしを疾風のような速さでティナが斬り付ける。
「んじゃ、俺は
「わかったわ。イビルアイ、貴方も
「了解。鬼ボス」
「了解した」
ラキュースの判断を聞いた二人は、すぐさま行動を開始する。
お互いの邪魔にならないように、立ち位置を考えながら戦う様子は、さすがの一言だ。
「それじゃ俺たちは俺たちで遊ぶか」
その口から、巨大な火の玉が飛んでくる。
Kは防ぐでもなく避けるでもなく、そのまま火の玉を全身に受ける。
「おい!」
「大丈夫。問題ナシ」
炎の中から、手をふりふりと振りながら気安くイビルアイに答える。
炎が消えて中から出てきたKは確かに怪我の類は何もない。
「ま、赤熱なんていわれている
にやりと笑って右手を向ける。
「〈
真っ赤な魔法陣が右手の先に浮かび上がる。
そこから更に真っ赤な火が
着弾した火は、大きく弾けて3匹すべてを炎で包む。
炎が収まった後には、黒く焼き焦げた3つの焼き跡が地面に残っただけ。
「おい! もう少しまわりのことを考えろ!」
「やーごめんごめん。悪魔相手とか久しぶりでさ」
イビルアイの叱咤に軽く返しながら〈
「確かに強い」
「そうね」
真面目に聞いているのか! いや、聞いてるって。
そんな問答を繰り返すイビルアイとKを眺めながら、ラキュースとティナの2人がKの実力を評価する。
確かに、並大抵じゃない強さを持っている。
遥か格下である
なにせ、明らかに手を抜いている。
それも手の内をほとんど見せていない。
最初の攻撃をわざと受けたのも、パフォーマンスの類だ。
戦っているというよりも、遊んでいるという方がしっくりくる。
「それよりもガガーラン達」
「ええ。そうね」
こちらの掃討はほとんど終わり。
あの大きな〈
対してガガーラン達は、まだ戦闘中のようだ。
「おらぁ!」
「シッ!」
とはいえ、あちらのモンスターもすでに満身創痍。
重い1撃の戦鎚を防げば、無防備な体を神速の斬撃が刻む。
素早い1撃を躱せば、手緩い防御ごと恐るべき衝撃が粉砕する。
ガガーランとティアのコンビネーションに翻弄されている蟲の剣士がいた。
と、不意に蟷螂の大鎌が地面を大きく抉り、地面を割る。
「うぉ……!」
「……ッ!」
体制を崩した2人の隙を突き、背中の羽根を使い飛んで逃走を図る。
しかし――
「はい残念」
そこには、足に炎を纏ったKがいた。
〈
炎を足に纏い、蹴りの威力や移動速度を上げる魔法。
その魔法を、鎌を振り上げた瞬間に唱えていたのだった。
無防備に向かってくる蟷螂に対して背中の大曲刀を抜く。
その刀身は、赤熱しながら火の粉を巻き上げ、蟲の体を真っ二つに焼き切った。
「なんだよ。最後に美味しいところ持って行きやがったな」
「ずるい」
着地したKのもとに
「いただきましたわー」
「ちぇ。まさか、あそこで足元崩して逃げるとはな」
「予想外だった」
「お陰様でいいとこ、いただきましたわー」
軽口をたたき合っている彼らを見ながら、思案を走らせるイビルアイとラキュース。
「やはり強いな」
「ええ。剣も飾りというわけでは無いみたいね」
「それだけじゃない」
イビルアイが見ている先には、真っ二つになり炎に包まれている
「あのマジックアイテムの剣。相当強力なものだ。――自作が本当ならそちらも恐ろしい腕だな」
パッと見ただけでも、斬撃の強化と炎属性のダメージの2つの効果を持つ。
どちらか1つの効果だけでも、優れた魔法武器だ。
あの出来の武器であれば、買うのに金貨が100枚以上積み上がってもおかしくはない。
「危険だぞ。あの男」
「ええそうね。でもねイビルアイ、私はこうも考えているのよ」
笑いながらイビルアイに返答する。
「彼が味方でいてくれれば、すぐに王都の平和を取り戻せるのでは、ってね」
フロスト・ペインが秘宝クラスなら、一級品レベルかな、と。
妄想設定です。