主人公は、たぶん俺の予想を超える生粋のバニー好き。
「クサイ」
「え? お風呂には入っているのですけれど……」
恩赦が言い渡され、裁判のような会議は終了。
現在は、第三王女であるラナー王女の私室にいる。
先ほどまでいたクライムとブレインの他、蒼の薔薇の面々。
そして、部屋の主であるラナーが勢ぞろいしている。
仮にも王女の私室でありながら、冒険者である蒼の薔薇が慣れた様子でいる点を見ると、その交友関係の深さが窺い知れる。
「別にラナーは臭くないでしょ」
クサイと言われて、心配そうにするラナーと否定するラキュース。
主を侮辱されたと思ったのか、クライムも顔を顰めている。
「クサイってのはあんた自身じゃなくて、この恩赦のこと」
「それってどういう……」
「初めからあの会議の着地点を決めていたっぽい感じがしてな。策略くせぇなと思って」
「――ああ、そういう。はい。はじめから『恩赦』という形になるようお兄様とレエブン候にご協力いただきました」
「ザナック王子とレエブン候に……」
そのカミングアウトにクライムが驚く。
クライムだけではない。他の面々も大なり小なり驚いている。
「理由は、あの場で申し上げた通りです。いまの王都は冒険者の方々を必要としています。その状況であなたを罰するわけにはいきませんでした」
「そんだけなのかねぇ……。まぁ、いいか。助かったのも事実だし。そんで、恩赦の内容とやらだけど、俺に何やらせるんだ?」
「簡単なことですよ? この王都を取り戻すために全力を尽くしていただきたいのです」
「はぇ? もうやってるけど……」
実際、Kは冒険者組合が発行している悪魔討伐の依頼を受けている。
パトロールから戦闘まで、すべてだ。
『悪魔からこの王都を取り戻す』
それは、もうやっているといっても良い状態だ。
――いや、待て。
「まさか……」
「はい。そのまさかです。K様は、非常に強力な魔法のアイテムを多数所持しているとお聞きしています」
「くっそ! やっぱり俺のコレクションを強請るのかよ!」
あのロリですらそんなことしなかったぞ! と、心の中で悪態をつく。
今までもアイテムを渡してきたことはあったが、さすがに強請られるのは勘弁だ。
なんというか、気分の問題で。
「……いくら嘆いたところで選択肢は1つしかあるまい。恩赦まで拒否すれば、今度こそ赦されんぞ」
「うっ!」
「というか、恩赦が策略と気付いたときになすがままだった己の自業自得だろう」
「気付いてねーよ! 勘だったの!」
「勘でラナーの計画を見破るとはね……。ちょっと驚きだわ」
「私も少し驚いてしまいました」
「それで、どうするんだ?」
「Kさん! この王都に平和を取り戻すために更なるお力添えをしていただけないでしょうか」
「あーもう! わかったよ! ……ハァ、やっぱり苦手だなァ」
相も変わらず真っ直ぐかつ礼を尽くすタイプのクライムに弱い。
他に選択肢がないことも相まって、あっさりとOKを出してしまう。
「うーん。何があったっけなー」
そうと決まればさっそく、という潔さで鞄からポイポイとネックレスや指輪を机の上に放り出していく。
それらすべてに魔法の力が込められている。
はっきり言って、マジックアイテムは総じて高価なものだ。
国家に召し抱えられている正規兵ですら、魔法の『ま』の字もないただの鉄剣を使用しているのだから。
それらが目の前で飴玉でも取り出すかの如き気安さで出てきたのだ。
目の前で見ていた面々は、当然のように驚愕している。
「おいおい……とんでもない量だな……」
すでに机の上に無造作に散らばっているマジックアイテムが10に迫ろうとしていた時にブレインがボソッと呟いて、その中の1つをつまみ上げる。
それに続いて、クライムもアミュレットの1つを手に取る。
「これは一体、どんな効果が……」
「ああ、それ失敗作。状態異常を火傷に固定するって代物な」
「ハァ!?」
「……どこが失敗作だ」
「厄介なアイテム」
「大枚をはたいてでも欲しい貴族は多い」
「そうかぁ? 失敗作だし、やるよ」
他にも、蒼の薔薇の面々とブレインがマジックアイテムの説明を求める。
炎によるダメージを30%カットし、低確率で跳ね返すアミュレット。
1日に5回まで、とある第2位階の魔法を魔力なしで使用できる指輪。
火を噴くことのできる面。
作成者本人の特性というか得意分野によっているのか炎に関連するものばかりだが、それでも1級品のアイテムを「失敗作」と語る。
先ほどのアミュレットもそうだ。
毒や催眠といった状態異常の効果を火傷という形に変質させる。
立場上、その手の危険が多い王族や貴族はこぞって欲しがる一品だろう。
「いえ、ですが」
「いいから貰っとけって」
「……はい」
そのうえ、強引に押し付ける始末だ。
なるほど、問題児だ。魔法と製作、このどちらも英雄級など冒険者組合では持て余す。
かといって、王女相手にこの態度では、宮仕えも出来なかろうことは想像に難くない。
「お、いいのあったぞ」
その声に、その場にいるすべての人間が声の方へと目を向ける。
あの出来のマジックアイテムを失敗作と言ってのける人間が推すアイテムが気にならないはずがない。
そういって取り出したのは、女物のような黒い服だった。
いや、服だろうか。
股間の部分がグッと、これでもかという鋭角を描いているせいでギリ隠れているという感じである。
肩は完全に露出している。
そのまま、背中の大部分までもハッキリと布がない。
そして、頭へのオプションには何時ぞやの夜に見たような細長い耳が。
「バニーはいいぞ」
「却下ッ!」
いわゆるバニースーツを見せられたラキュースが大声で却下する。
「えー似合うと思う」
「私も似合うと思うっ!」
「そういう問題じゃないでしょ! あと、ティアは少し黙っていて!」
「黒はイヤか? 安心しろベーシックな黒の他にも赤や白といったマイナーどころから、ファーを付けたゴージャスバニー、布地4割減のデンジャラスバニーとラインナップはそれなりにあるがどれなら……」
「だ・か・ら! そういう問題じゃないでしょ!」
「だが、込められている魔力は本物だぞ」
「兎さん魔法の3種を使用可能、炎に対する完全耐性、拘束の無効化、矢避けの加護、自動回復、身体能力上昇なんかもある」
「……国宝級じゃない」
ラキュースは、頭が痛い。
「そんなにすごいものなら、1着いただこうかしら」
「ラナー様!? いえ、ですが、これは、少し……!」
「ふふっ。問題ないわクライム。これを着て人前には出ないもの。……ああ、でもクライムになら見せてあげてもいいかもしれないわ」
「いえ……それは……」
からかうようなラナーにクライムは頬を赤らめて戸惑うばかりである。
「なぁ、なにやってんのアレ」
「いつものこと」
「いつもなの?」
「いつも」
以前、ラナーの自室に来たことがあるらしいティナに話しかける。
聞いた後は、嫉妬マスクで……と呟いているKに対して冷ややかな目を向ける女性の面々。
「まぁいい。バニーはいいぞバニーは。バニー人口が増えるのならそれはそれでよし」
「結局そこに落ち着くんだな」
そういいながら、バニースーツ一式をラナーに渡す。
ラナーが汚れないよう気を使っていたラキュースは、頭を抱えている。
服の形状を見なければ、国宝級の魔道具を王家に献上しているのだから、非難のしようがないのも、頭痛の原因だ。
「さて、実働部隊の面々にも渡しておくか」
「俺はいい。俺には、こいつがあるからな」
と言って、剣の柄頭に触れるブレイン。
「我々もだ。自前のもので間に合っている」
「あー。まぁ確かに自分のものとの兼ね合いもあるからな」
イビルアイとガガーランもいらぬという。
蒼の薔薇のメンバーもそれに追随する。
「んじゃ、クライムにやるわ」
そういって、取り出したのは真っ赤なガラスでできた、半透明の笛。
小さく簡素な造りの笛だが、その炎を模した装飾は見事の一言。
美術品としても欲しがる好事家は多そうだ。
「『
「これほどのものを……。必ずやご期待に応えて見せます!」
「はいはい。頼むわー」
「それでは、恩赦の内容も決まりましたし、今後の方針について話し合いましょう」