ダーウィンズゲーム 簒奪の異能者 作:かい
強奪系主人公に如何に異能を奪わせるか悩んだ結果、なんと4700字という1話とは思えない字数になりました。
ダーウィンズゲーム、略してDゲーム。
そう呼ばれるソーシャルゲームが、世の中には存在する。
無料でダウンロードできるにも関わらず完全な招待制で、このゲームの情報はその一切がネットに載っていない。
ポイントを奪い合う典型的な対戦ゲームだが、そのバトルはネットではなくリアルで行われるのがこのゲームの最大の特徴だろう。
いや……最大ではないか。訂正しよう。
このゲーム最大の特徴は、負けると死ぬ。
そんなゲームを俺は、俺の知る限り最初期、つまり5年前からやっている。
いわゆる、ファーストプレイヤーというやつになるのだろうか。
このゲームを始めた日のことは、今でも鮮明に覚えている。
◆◇◆◇
ある日のこと。
土曜日の昼過ぎに、それは送られてきた。
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メールだ。
初めは迷惑メールだとしか思わなかったが、これが送られたのは全受信ではなくiCloud。
つまり、俺はこのダーウィンズゲームとやらを運営している会社にメールアドレスを登録しているという事になる。
「……したかなぁ?」
けれど、そんな記憶は全くない。
俺が登録した会社は少なく、その中でダーウィンズゲームを運営している所は見つからない。
ならばこのメールは一体?と頭を捻るも、わからないものはわからない。
「……後で考えるか」
どの道、このURLで飛ばなければ被害はないので、放置しておこう。
家に帰って、登録会社を一通り調べれば良い。
「レンどうした?」
「なんか変なメール来たんだよ。意味わかんねぇけどさ」
帰宅路の途中、親友のアキラが俺のスマホを覗き込んできた。
ちなみに、レンとは俺の名前である。
「えっ、お前もこのゲームやってんの!?」
「はぁ?やるわけないだろこんな怪しいの。てかアキラ知ってんの?」
「おう、俺もそのメール来たんだよ。朝にさ」
そう言ってアキラが出したスマホを見ると、確かに同じメールがあった。
URLも……全く同じだ。
「で、飛んだ?」
「飛んだ飛んだ。でも普通のゲームだったな。まだ対戦したことないけど」
「えぇ……お前これ絶対迷惑メールだろ。ウイルス植え付けられてるんじゃね?」
「なんも請求されてないしヘーキヘーキ、ヘーキだから」
「えぇ……」
そんなわけで。
俺もこのゲームをやってみる事にしたので、アキラと近所のフードコートに寄った。
「で、これ押せば良いんだよな?」
URLをポチると、画面にはダーウィンズゲームという文字に絡みついた蛇と、スタートボタンがある。
それを押せば良いのだろうが……なぜか、なぜか少し躊躇ってしまい、アキラに確認を取った。
「あぁ、それ押せば始まる。あ、ちょっとこえーこと起こるけどビビんなよ?」
「大きな音でも出んのか?そう言われたらビビんな――」
結論から言おう。
かなり、心臓が止まるかと思った。
蛇だ。
スマホから現れた蛇が、俺の右腕に噛み付いた。
思わずスマホを落としながら右手を離すも、蛇の姿はもうどこにもいない。
「はぁ……はぁ……幻、か?」
「ハハ、やっぱお前もそう思うよな」
未だ荒い息を繰り返す俺に、アキラはスマホを渡してくれる。
また蛇が出てこないかと警戒しながら右手を伸ばして、前腕の中心あたりに変な印があるのに気付いた。
しかしアキラの右腕に印はないので、質問してもわからないか。
「で、これがホーム画……ぱっと見普通じゃん」
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名前:イヅキ レン
所属クラン:所属していません
戦績:0戦0勝0敗
ポイント:30pt
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それらの文字の右には俺をデフォルメしたような顔、上にはガチャやポイント、バトルやランキングなる機能があった。
名前を入力した覚えはないし、このデフォルメした顔もどこで作られたのか。
蛇の件も相まって謎は深まるばかりである。
「とりあえずガチャやろうぜガチャ!やっぱ最初はガチャだろ!」
「ソシャゲ脳やめろって。それにこのゲームちょっとおかし……まいっか」
いざとなればアンインストールすれば良いと楽観視して、ガチャ画面に移行する。
一回1ポイントで、十連が10ポイント……多分良心的だ。
「じゃあいくぞ?せーのっ」
「あっ、待っ」
アキラに合わせてボタンを押すと、ハズレ!という文字とともにハリセンが出てきた。
……ハズレでハリセンって、なんか悲しくなるな。
「お前は?」
「俺はタライ。あー、リセマラするか!」
「早すぎて草。もうちょい待とうぜ……ん?」
瞬間、俺たちが座るダイニングテーブルの上に何かが落下してきた。
ぱっと見アマ◯ンの箱に見え、二つある。
俺とアキラは困惑しながらもその箱を開けると、
「……ハリセン」
「こっちはタライだ……正真正銘タライだ……」
先程ガチャで引いた物品が出てきた。
周りの人は気にもしてないようだが……これは明らかにおかしいし、マズい。
「……アキラ、アンインストールしよう。このゲーム、明らかにおかしいだろ」
「それが出来ないんだよ。朝試したから間違いねぇ。ネットにもダーウィンズゲームなんてもんねぇし」
「はぁ!?検索エンジンに引っかからねぇゲームとかヤバすぎんだろ!」
……予想以上だ。
予想以上にこのゲームはヤバくて、俺らはそれに足を突っ込んでしまった。
目の前が真っ暗になる感覚に、スマホを机の上に置いて空を仰ぐ。
そうして数分、親に素直に報告するか悩んでいると、スマホの通知が鳴った。
億劫な気分でそれを手に取ると、
『Encountering Battle is open!』
「……バトル?」
そんな音声が流れ、ダーウィンズゲームの画面が移り変わった。
イヅキ レンVSイイジマ アキラ……つまり、俺とアキラが戦うという事か?
「……何やってんだお前」
「良いじゃん。楽しめるもんは楽しんでこーぜー。で、これどんなバトルなんだ?」
「知らないんかい。どうせテトリスとかクラロワとか……じゃないっぽいな」
画面には俺とアキラのデフォルメされた姿が向かい合っており、それ以外には残り時間と思われる00:59:34という文字のみ。
なんだ?普通の対戦ゲーじゃないのか?
おかしいと言えば、周囲の人たちもおかしい。
「異様に静かだな……ってか誰もいねぇじゃん」
「あれ?さっきまでたくさん人いたよな?どこ行ったんだ?」
気付けば、人一人っ子いなくなっている。
あと一時間もすれば夕食の時間なので、いくらフードコートとはいえ0人というのはありえない。
だが、目の前に広がる景色は間違いのない事実だ。
「店員もいない……。アキラそっちは!?」
「こっちもだー!誰もいねー!」
アキラと手分けして探すも、本当に誰も見つからない。
監視カメラに映ったらマズいので厨房などには入らないが、それ以外だけで十分異様だとわかる。
「なぁレン〜これあれじゃね?俺とレン以外の人間全員消えたんじゃね?もしくは夢だろ」
「バッカお前、夢だったらお前と会話してる俺は……お前何食ってんの?」
「ビッグマックを食べた」
「……食ってるんだろ?」
「お前このネタ知らないんかい」
残念だが全くご存じない。
ってか、お前それまさか盗んだのか?
「バカ、いくら人がいないっつっても怖いだろ。ちゃんと金はレジに置いてきた」
「豚になっても知らんぞ?」
「オイ!それってyo!?千と千尋じゃんか!」
「あっあっあっ」
……こんな高校生テンションでふざけてる場合じゃない。
とにかく今は、情報を集めなければ。
「外行ってみるか。誰かいるかもしんねぇ」
「だな。へへ、まさかこんな事になるとは思わなかったぜ……!」
「やべぇ状況なのになんか面白いよな!俺たちしかいない世界ィ!」
アキラと競走しながら外に出るためにアパート内を駆けるも、やはり人はいない。
胸の奥から漠然とした不安が湧き上がってくるも、それから目を背けているうちに出入り口に着いた。
「……いる。ちゃんといるぞレン!」
「あぁ見てる!おかしいのはこのアパート内だけだったな!マジで俺たちだけじゃなくて良かったわ!」
人が、いた。
アパートのように無人などではなく、ちゃんと。
その事に安心してしまい、思わず尻餅をついてしまう。
「じゃ、一旦戻るか」
「え、マジで言ってんのかレン。このまま外に出ようぜ?俺ビッグマック盗んだようなもんだしさ……」
「盗んだ自覚あるなら最初から盗むなよなぁ」
と、そこまで言ったところで一つ思い出した。
こうなったと考えられる、原因かもしれない要因を。
「……なぁ、俺らってまだ対戦中だったよな?」
「ん?あぁ、あと3分って書いてあんな」
「それじゃないか?無人になった理由。俺らが対戦始めてから人いなくなったよな?」
「あ、あー、あー!そう、だった!ような!そうかも知んねぇ!」
無論、なぜ俺たちが対戦を始めた事によって無人になったかなどわからない。
荒唐無稽な事を言っている自覚はあるが、そんな事を思えるぐらいにはこのゲームはおかしいのだ。
そりゃ、蛇なんて出てきたらな……。
「なら、対戦をやめれば人が戻る可能性がある!」
「っしゃあ!対戦やめんぞレン!……どうやって?」
「……アキラが知らんのに俺が知るわけないだろ?」
残り時間は1分30秒を切っている。
いっそこのままタイムアップまで待つのも一つの手だ。
ただ、ただまた胸の奥から不快感が溢れてきた。
嫌な予感がする。
このまま待っては取り返しのつかないことが起こるような、そんな予感。
「中断する機能はないのか?あるはずだろ!?」
「な、ない!そんなボタンどこにもねぇよ!」
「マジか……」
中断機能が無い?
なら、残り30秒のタイムアップを待つしか無いのか?
本当に?
「……レンお前、何焦ってんだ?」
「なぁアキラ、嫌な予感がしないか?」
残り、20秒。
時間が過ぎてゆくたびに、嫌な予感は自己主張を増してゆく。
だが、何も出来ないだろう?
中断が出来ないのだから、このまま時間が経過するのを待つしかないのだろう?
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
心臓がバクバクする。
脂汗が止まらず、制服が肌に張り付いて気持ち悪い。
だが今は、今だけはそれすらも気にならない。
「な、なぁ、ほんとに大丈夫か?レ」
『Time up!Thesistem judges win or defeat!』
「ゲーム終了……」
俺とアキラのアバターの下に、得点表がある。
ダメージ、技術点、芸術点。
しかし、それらは全て0だ。俺もアキラも。
引き分けだと思った。
けれど、
「……引き分けじゃねぇじゃん」
画面には、俺のアバターにwinと書いてあった。
最近のゲームによくありがちな、ランダムで勝者を決めたのだろう。
まぁ、いい。
俺が勝者になろうが敗者になろうが、今起きているこの異常な事態が解決すれば。
別に、なんでもいい。
「っあぁ!?なんだこれ!?」
アキラの叫び声がする。
見たくないという感情を抑え込み、後方に振り返る。
手が、ない。
アキラの右腕が、綺麗さっぱり消えていた。
生々しい断面が見えるも、血は一切出てない。
「なになになに!?何が起こってんだよ!レン!?」
「あ……あ……」
手が消えたのを皮切りに、体の各部位がどんどん消えていく。
足、肩、脇腹、胸、首。
俺はそれを、黙って見ていた。
怖くて、その場から動けなくて。
俺に突き出す手首から先がない腕を掴めず、その腕さえも消える。
そして最後に残ったのは、地面に四角形に切り抜かれた穴だけだった。
現実味がない。
けれど、アキラの死は目の前に事実として横たわっている。
ショートした脳でこれ以上考えることが出来ず、
「ッ!」
俺はその場から逃げ出した。
ちょっとどころではない無理があるのはわかってたけど、仕方ないのです。
実質異能なしで戦闘シーンを書こうなんて無理だったのです。
なのでアキラくんには犠牲になってもらいました(ど畜生)
書いてるうちにアキラ好きになって、コンビでも良いのでは?と思ったのは秘密(未練タラタラ)
ストックはないので次回更新がいつになるかはわかりません。