ダーウィンズゲーム 簒奪の異能者   作:かい

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クラスA1になったら最後のイベントが開催されるって考察されてたのに、世紀末になってDゲームがなくなったのであれはなんだったの?ってなってる楠木です。
あくまでカナメたちの考察なのであれですが、それでもあんなページ数使ったのにそれは悲しいなぁ。


game#2 異能

走る。

走る走る。

息が切れても、脇腹が悲鳴を上げても、全身から汗が溢れようと。

脇目も振らず、走り続ける。

 

「ぐぅっ!?」

 

しかし、何事にも限界はある。

足を引っ掛け、無様にも顔面から転んでしまう。

あぁクソ、痛いし鼻血出るし死ぬほど痛い。

 

「……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

それでも立ち上がろうとして、再度ばたりと膝をつく。

頭が痛い。フラフラする。

立て、走れ、逃げろ。……何から?

 

「……なに、から」

 

俺は一体、何から逃げようとしている。

あの場所から?逃げたい。

ダーウィンズゲームから?逃げたい。

警察から?違う。そうじゃない。俺じゃない。あれは事故、不慮の事故なのだ。

 

「……クソ……」

 

不慮の、事故だろうが……!

俺はどうすればいい?これから。

 

「……すぅ、ふぅ……落ち着け、原因は分かってんだ。まずはそっからだろ」

 

ダーウィンズゲーム。

俺がまずすべき事は、このゲームを理解する事だ。

理解しなきゃ、何もわからないし始まらない。

 

「取り敢えず帰ろう……怪我を治さなきゃならないし」

 

もっと落ち着いたところが良い。

そう思って、ボロボロの体を引きずって家の方向へ歩いていった。

 

◆◇◆◇

 

「……どこも怪我してねぇ」

 

無事、我が家に帰って。

怪我を治そうと救急箱を取り出したのだが、さして痛くない事に違和感を覚えた。

そこで洗面所で自分の顔を鏡に写したところ、どこも怪我をしていないのだ。

 

「鼻血が止まったのはわかるけど、だいぶ派手にこけたよな?」

 

怪我の一つや二つしててもおかしくないのだが、一体どういうことなのか。

……あぁクソ、頭痛くなってきたぞ。

怪我のことはひとまず置いておいて、部屋に戻りダーウィンズゲームを起動する。

 

「……はは、なんだよ。マニュアルあんじゃん」

 

ホーム画面の、端っこ。

そこにポツンと、『マニュアル』があった。

思わず自嘲の笑みが溢れる。

 

これをあの時見つけていれば、アキラが消えることもなかったのだろうか。

いや、今更そんなどうしようもない後悔をしたところで意味はない。

 

「ポイントとクラス……」

 

そして、1時間ほどかけて一通り読み終わった。

一度ゲームを始めたら、死ぬまでやめられないこと。

他のプレイヤーとの対戦で殺すか勝利すると、1ポイント10万のポイントを根こそぎ奪えること。

ダーウィンズゲームの情報をプレイヤー以外に話したりネットに載せると、死ぬ事。

さらに、

 

「対戦中に降参と言うと、対戦が終了する事、か」

 

あぁ、なんだこれ。

全身の力が抜ける。

もっと早く見つけていれば。もっと早く知っていれば。

……まだだ。感傷に浸るのは、まだ早い。

 

どうやらこの対戦、マッチングの仕方が二種類あるらしいのだ。

一つは俺とアキラがやったように、直接対面する事で出来るエンカウントバトル。

そしてもう一つが、ランキングから相手を選ぶクラスマッチバトル。

 

後者が対戦したい奴をランキングから指名し、対戦を申し込む。

そうする事で指名した奴の近くにテレポートし、殺し合いが始まるのだ。

申し込みと言ったが申請されてからこれを拒否する事は出来ず、申請される前に手を打っておく必要がある。

その手とは、

 

「10ポイントでシェルター購入、と」

 

10ポイント、つまり100万円もするシェルターというアイテムを購入する事だ。

これでクラスマッチバトルを申し込まれる事が無くなり、安心して生活できる。

まぁ、一週間したら切れるのと、エンカウントバトルは防げないという欠点はあるが。

そして、最も大事なルール……いや、特典と呼ぶべきか。

 

「ダーウィンズゲームを始めると同時に与えられる力……異能(シギル)か」

 

超能力、サイキック能力、呼び方はごまんとあれど、俺にはその力が与えられたらしい。

マニュアルに従って詳細プロフィール画面を開くと、異能の名称が記載されていた。

 

======

 

所持シギル:【簒奪神(クロノス)】 【生来の王(レナトゥス)

 

======

 

それぞれタップすると、能力と思われる項目が追加される。

簡潔に言うと、【クロノス】が殺した相手か対戦でポイント全損させた相手の異能を奪う能力。

【レナトゥス】は再生力を高める異能で、こけた傷が治っていたのはこれのおかげだろう。

そして異能は原則一人一つらしいので、【レナトゥス】は奪ったということになる。

俺が殺した、もしくはポイント全損させた相手は、一人しかいない。

 

「アキラ……」

 

【レナトゥス】は、間違いなくアキラの異能だ。

不意に、悲しみとやりきれない怒りが込み上げてくる。

だが、それと同等に疲れた。

 

「……これで、今できる事は全部やったよな……」

 

ひと段落ついて、ベッドの上に寝転がる。

すると、一気に眠気が襲ってきた。

たった一日で色々な事が起こりすぎて、嫌になりそうだ。

あぁ、これじゃあ、何も考えられないな……。

そのまま落ちるようにして、俺は眠りについた。

 

◆◇◆◇

 

「……やっぱ封鎖されてるか」

 

翌日。

俺は再度、例のデパートに来ていた。

しかし、アキラが消えた場所に残った四角い凹みを警察が調べているため、入る事は出来ない。

いやまぁ、俺の目的はあの四角い凹みを調べる事なので、別に中に入る必要はないのだが。

 

しかし、調べられない。

警察が封鎖しているというのもあるが、人が多すぎるな。

それには理由がある。

なんと、この四角い凹みは今朝ニュースになった。

どんな精密機械を使ってもコンクリをこうは出来ないとTwitter等で話題となり、これほどまでに人を呼び寄せたのだ。

 

「いやー、人多いですよねぇ」

「え?あ、あぁ、そうですね」

 

どうにか見る手段はないかと悩んでいると、誰かが後方から話しかけて来た。

振り返ると、20代前半ほどの青年が立っている。

糸目で、他に特徴らしい特徴はない。

 

「君もこの凹みを見に来たのかい?」

「テレビで見て、ちょっと興味が湧いて」

「だよねぇ、全国各地にこの凹みが出来たとなれば、近くのを見に来るのは当たり前か」

 

この凹みは、ダーウィンズゲームで負けた人間の跡だ。

つまり、全国各地でダーウィンズゲームに招待された人間がおり、その人達が殺し合いをしたという事に他ならない。

無意識のうちに、拳に力が入る。

 

「ところで、ちょっと良いかな?」

「はい?」

「君の顔に既視感があってね、ちょっとこっちを向いてくれないかい?」

「はぁ……」

 

既視感、と言われても。

俺はこの人と出会った覚えはないのだが、と思いつつも首を捻って顔を横に向ける。

糸目の男はスマホの画面と俺を見比べ、

 

「うん、やっぱり同じだ」

『Encountering Battle is open!』

「なんっ!?」

 

昨日聞いたばかりの音声が、糸目の男と俺のスマホから鳴り響いた。

という事は、こいつもダーウィンズゲームプレイヤー……!?

慌ててその場から飛び退き、男から距離を取ろうとして、

 

「あ……ぐ……!?」

 

体が痺れたように言うことを聞いてくれず、転んでしまった。

慌てて立ち上がろうとするも、まるで麻痺したかのように体が動かない。

指先などの末端器官はまだピクピクと動かせるが、走れないんじゃ意味がない。

 

「ヒュー、ヒュー……こ、れは……!?」

「お、やっと呼吸困難になった」

 

呼吸困難!?やっと、だと!?

まさか、これが異能か……!

 

「ぐ、ぅぅ……!」

 

周囲の人たちはダーウィンズゲームの機能によって、どこかへと消えてしまっている。

視界に入るのは糸目の男だけで、誰も助けてくれそうにない。

なんとか、逃げるしかないんだ。

 

なぜか俺に攻撃してこない男を警戒しながら、非常にゆっくりと立ち上がる。

依然呼吸は苦しいし、全身の麻痺と疲労感は拭えてない。

だが、なんとか体は動く。

 

「バカな……どうして動ける?耐性……もあり得るけど、異能に耐性は考えづらいし、君の異能と考えて良いかな」

「ヒュー……ヒュー……」

 

男の考察を背に、引き摺るように移動する。

こんな事に意味はないのだろうが、一歩でも遠くこいつから離れたい。

しかし、

 

「あぁ、そんな移動しないでくれよ。そんな離れちゃ効かなくなっちゃうだ、ろっ!」

「ごっ」

 

男に回り込まれ、思いっきり鳩尾を殴られて再度地面に蹲ってしまう。

痛い。昨日からこんな目に合ったばかりだが、集中しろ。この状況をなんとかする方法を、考えろ。

効かなくなる、とは俺の体の異常を引き起こしている”何か”だろう。

異能というものの造詣はあまり深くはないが、おそらく距離によって発動するタイプ。

 

筋肉が麻痺するような感覚、呼吸困難。

この症状は神経毒に間違いなく、こいつはそれを散布してるのか?

なんとか射程距離から外れれば解除されるタイプなら良いが、神経毒なら一回かかれば後は永続的に症状が続くと考えて良いだろう。

 

「……しかし君、中々良い異能を持ってるじゃないか。もう6分も経ってるのに、一向に症状が現れる気配がない」

「症状、なら、出てん、だろ」

「あぁいや違う、神経毒の方じゃない。もう一つの毒の方さ」

 

マズい、と直感的に理解した。

普通の人間ならこの神経毒だけでも十分殺せるだろうが、異能を持つ俺は殺せない。

直接攻撃しない理由が謎だったが……なるほど、もう一つの毒も散布されているなら納得できる。

一刻も早く、こいつから離れなければ。

 

「ぅ、あぁぁぁ!」

「うぉっ、スタンガンなんて危ないもの持ってるなぁ、君は」

「買っといて、良かった……痺れ、も引いてきた。中断しろ」

「中断?勘違いは良くないな。有利なのは、依然僕の方だよ」

 

異能のおかげで、神経毒は無力化されてきている。

しかしもう一つの毒の正体はわからず、俺にこいつを殺せる度胸はない。

不利なのは、俺の方だろう。

だが、負けるわけにはいかない。

こいつに負けるとはつまり、死ぬという事なのだから。




書いててクッソテンポ悪いと思いました(小並感)
次は頑張ってテンポ良く書きたいですねぇ!
あ、ちなみに糸目男の異能は天笠のアスクレピオスの下位互換ですが、差別点として効果範囲に優れます。

レンくんの異能に攻撃系がないのが痛いですねこれは痛い。
アキラに攻撃系を覚えさせれば良かったか……?(遅すぎた後悔)
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