IS-Black Gunner-   作:reizen

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第17話 その対応は平時だとしても命がけ

 自分の研究所に戻った俺は中に入ると、そこには白いカプセルが中央に設置されていた。元々奇抜的なものが多い研究所だが、こんなものは基本的に設置していない。だがこのカプセルを使用した者はなんとなくわかる。というかそもそもノリで作ったこのカプセル―――正式名称を「ベイルアウトカプセル」というものを作ったは良いがそこまで緊急性を持った事はこれまで一度としてなかったが、かつて一人だけ渡したことがある。そいつが使用したのだろう。

 俺は内部にアクセスできる端末を操作してカプセルを解放すると、案の定中から人が出てきた。

 

「………」

 

 どうやら相手は気絶しているようなので、俺は早速彼女をある場所に移動させた。

 

 

 

 

 

 とりあえず目途が付いた俺は食堂で飯を取っていると、近くでなんらかの会話が聞こえてきた。

 

「ねぇ、聞いた?」

「聞いた聞いた!」

「え、何の話?」

「だから、あの織斑君の話よ」

 

 別に盗み聞きの趣味はないのだが、周りが見えていないのか俺に気付いていないのか、さっきから女子が何かを話している。

 

「いい? 絶対これは女子にしか教えちゃ駄目よ? 女の子だけの話なんだから。実はね、今月の学年別トーナメント優勝したら、織斑君と付き合えるんだって」

 

 ………は?

 寝耳に水の話が聞こえてきて俺は動揺した。一体何をどうしたらそんな話になるんだと言いたくなる。まさかあの織斑が承諾したのか? そもそも「付き合って」を「買い物に行く」と解釈するような奴が!?

 これはアレか? 天変地異の前触れか? もしかして明日は雪でも降るのか?

 

「で、なんとあの篠ノ之武を一週間こき使えるんだって」

 

 それを聞いた瞬間、俺は一瞬で殺意を放ったがすぐに納める。とりあえず今は噂の出所を知る必要があるからな。場合によってはそいつにはこの世界から退場してもらう必要がある。俺を一週間もこき使おうなどと、そもそも篠ノ之家の人間に「我慢」なんてできるわけがないだろうが。

 どうやって殺そうかと考えていると、急に袖を軽く引っ張られた。驚いてそっちを見ると、そこには何故か更識簪がいた。妹の方である。

 

「……どうした?」

「…あなたとは一度、話をしたいと思って」

「興味を持つことは良いことだが、タイミングが悪い」

 

 何せ今の俺の優先事項はあの不名誉な噂の出所がどこからかという事を突き留めないといけないからだ。一体誰だ。俺をこき使えるとか言い始めた奴は。

 

「……悠子と喧嘩した」

「おいおい。それはマズいだろう。アイツが悲しみに明け暮れた挙句に通り魔……的な事はしないか。やる気が下がって面倒な事になる未来は見えたが」

「………私だって喧嘩したくなかった……けど、仕方ない」

 

 まぁ、悠夜が大人しくなるって言うならある意味良い事か。流石に有人の女装姿はあまり見たくない。

 そういえば、悠子の時に織斑の様子がおかしかったことがあるな。まさか織斑……いや、ないな。創作物としてBLという分野は良いと思うが、流石にその世界に入りたいと思わない俺にとっては考えたくないことだ。

 

「仕方ない、か。もしかしてまたアイツ、零司に手伝ってもらって専用機を完成した方が良いとか言われたのか?」

「………うん」

「あの馬鹿……」

 

 友人の行動にため息を吐く。

 

「まぁ、俺も意見としてはそれに賛成だがな。IS学園も物騒だし、教員のレベルも高が知れている。相手が集団で攻めてきたって対処できるようにすることは間違いじゃない」

「………」

「俺も人間的に問題があるという事に目を瞑れば優秀な姉がいるからアンタの気持ちは理解できなくはないがな」

 

 と言うと何かを期待するような目を向けてきた。仲間とでも思われているのだろうか。

 

「だが俺はこれでももう「元」だ。今は姉を超えようと思わない」

「………そう、なの?」

「ああ。超えたところで意味がない事に気付いたからな。それなら我欲のままにやった方が良いだろう?」

 

 時間の無駄と思ったわけではないが、姉と喧嘩をしてからふと思ったんだ。「姉を超えたとして何になるのか」と。姉を超えてもそれを知った人間が俺をまた道具のように使うだけだと。かつて姉がインフィニット・ストラトスを発表し、白騎士事件で兵器としての有能性のみを認めた大人たちにただコア生産のみを行わされる日々。それをあの姉が四年も耐えたのは後から考えれば十分凄いことだろう。そんな道を歩みたいかと聞かれれば絶対にNoだ。

 

「納得がいかないと思うなら、一度「姉を超える」という目標が本当に自分がしたい事なのか考えたらどうだ? というか君は女権団の人間並にとは言わないが少しは欲望を解放した方が良いと思うがな」

「………」

 

 まぁ、流石に性欲だけは勘弁してほしいと思うが。いや、マジで。

 

「……姉さんを超えるのは、私が本当にしたいこと―――」

「ならそれは周りを捨ててまでしたいことなのか?」

「……周りを?」

「ああ。人間関係すべてを捨て、例え一人になってもそれを成し遂げたいのかってことだ。だが大概「誰かを超える」というのは周りからの承認欲求から来るもので、ハッキリ言って時間の無駄だ。そう言う場合は一度周りを見たら良い。その上で思うが、少なくともこの学園の人間に認められたとして、自分よりも劣る人間に認められたとして一体何になるのか疑問だけどな。それにアンタはもう国から認められ、完成はしていないが専用機は与えられているんだ。ただ憧れたというだけで騒がしい豚共よりかは優れている。それでも何かを言ってくるなら、悠子を見習って相手の精神と装甲と肉体を破壊してやればいい。簡単だろう?」

 

 欲望の権化として挙げるなら、まず間違いなく悠子=悠夜をあげるべきだろう。自分が大切な者のために戦い、敵を簡単に潰す悪魔。アレで元一般人というのだからその異常性は誰もが理解できるだろう………俺が言うのもなんだけど異常過ぎないだろうか?

 

「………それは、やり過ぎ」

「あんな目に遭っておいてそんな発言が出るとはな。思った以上に脳内お花畑と見える」

「……ふざけるな」

「ふざけてねえさ。そもそもふざけてるのはそっちだろう? 姉の方は専門の友人に手伝ってもらっているのにアンタは下らないプライドから一人でやろうと固執している。その結果、高が一日で終わるマルチロックオンシステムも開発できていない。わかる? 今のアンタは周りからのプレッシャーで押し潰されて目標を見失っているだけのアホでしかない。 姉が優秀過ぎて比べられる? それがどうした? 所詮色々と言っている奴らはすべてゴミでしかない。専用機ももらえないし、何より怪物を飼いならせないアホ共だ。そんな奴らの言動に惑わされるなんて時間の無駄。それなら高性能機を操って戦士としての有能性を示すなりした方がいい。わかるか? お前は今、世界で誰もが使役できないカードを持っているのにも関わらず、それを捨てようとしているんだよ」

 

 悠夜という大量の敵を一閃で薙ぎ払え、零司という天才に頼っても拒絶されない存在。ましてや片方は世界に一つだけで作ったは良いが誰にも装備することができなかったという魔剣を作り上げている。それ故に親戚からは「無能」として差別され、一族の捨て駒にされて女権団に売られたという経緯を持ち、それ故に女を嫌っているので普段は外に出ていない奴が「更識簪にのみ協力する」と言っているのだ。流石はIS学園に入学する前、悠夜に推されて楓と「どちらが天使に相応しいか」という、今考えれば至極下らない論争に絶対挙げられていた女である。

 

「ま、俺個人としてはアンタがどうなろうと知ったことじゃないし、その程度の思考なら力を持ったところで大して強くなれないだろうからどうでも良いが、覚えておいた方が良い。アンタのこだわりは所詮はどんぐりの背比べであり、下位の中の上位の椅子を争っているだけに過ぎない。完全な時間の無駄だ。だが……専用機を作るというのは格好の逃避でもあるな」

「……は?」

「なに。作ってばかりで動かない奴など、俺の敵じゃないってことさ。冷静に考えて零司からもらったとしてもどうせ満足に動かせまい。別に恥ではないさ。男と女では基本的にセンスは合わん上に零司が作る機体はどれもクセが強い。全く。世界の代表候補生の選考基準は甘すぎると言わざる得ない」

 

 そう言って食器を載せたお盆を返却口に置いて俺は颯爽と食堂を出る。少し移動してから窓を開けて外に出て、着地と同時に走り出した。さっきまでいた場所に片刃の大剣が突き刺さる。

 俺はすぐに零司に連絡すると同時にIS学園内で鬼ごっこが始まったので全力で逃げ出した。ちなみに捕まったら死にます。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 IS学園の格納庫。そこには一台のISが鎮座していた。そこにはさっきまでたくさんの人がいたが、今ではその開発陣の中心人物しかいない。

 

「……来たね」

 

 その中心人物―――零司は格納庫に入って来た少女を迎え入れた。その少女は怒りに溢れており、今にも噛みつきそうな勢いだ。

 

「……久しぶり」

「……久しぶり。聞いたよ。武に馬鹿にされたんだって?」

「………」

 

 怒りを見せる簪だが、零司はそれ以上は言わずに眼前のISのコアケースを展開する。そこに後は簪が持つコアを納めれば起動が行われる。

 

「……良いの?」

「……何が?」

「私は、日本の代表候補生だから―――」

「……その辺りの事は心配ないよ。僕がここにいるのも元は君の機体を完成させるためだし」

 

 それにしても何を言ったんだろう、と零司は考える。彼は雰囲気も似ていて話が合う貴重な人間を逃がすことは考えていない。それどころか彼もまた「更識」という存在を守るべきと考えていた。

 零司の姓は「平坂」であり、かつて更識家に仕え、主に兵站を担っていた。表では平賀の名が挙がるが平坂は裏では有名でもある。その家の人間が轡木十蔵の娘と結婚して生まれたのが零司だったが、零司の死後、平坂は零司を捨てるどころか女権団に襲撃という形で引き渡したのだ。その時に義兄弟の悠夜が助けに現れ、ひと悶着あって逃げ出した後に武に会ってしばらくは行動していた経緯を持っている。

 だが女性に酷い仕打ちをされたとしても決して女性全てを憎まず、敵のみを排除する。その行動に共感しているからこそ零司は女を極度に嫌う武を嫌う事はなかった。今回の件も悠夜が無理だから武に機会があればと言っていたが、こうも簡単に来るとは思っていないので少し焦っているが。

 

「それに大人たちの闇の一つや二つくらいすぐにどうにかできるさ」

 

 そう答えると簪は「ありがとう」と言って自分がこれまで打鉄弐式を完成させるために使用していたコアを出した。

 

「……ごめん」

 

 零司にも聞こえないほど小さな声で謝った後、コアをケースに入れると自動的に収納されて動き始めた。

 

「さてと、ここからが本番だよ」

 

 気分が乗ったらしい零司は投影されたキーボードを叩き始める。

 

 一人の少女は突然世界が終わったような感覚に襲われたが、やがて広がっていく世界と一つの窓から見える景色、そして展開される新しい情報を見て笑みを浮かべる。

 

「……凄い」

 

 これまで少女は不安だった。自分より上とはいえ、不安要素が残る存在が自分を上手く作れるか。確かに中には若年でありながら異常を成し遂げる存在をいるが、それでもずっと不安だった。だが、この機体は別だ。

 不安を完全に取っ払い、それでいて高性能で―――クセが強すぎる機体。

 

「―――気に入ったかしら?」

 

 突然現れた声に驚く少女。振り返るとそこには少女にとって異質がいた。

 

「誰?」

「領域外の存在だと思えば良いわ。あなたのような末端には永遠にわからないし理解できない存在。ただ敢えて言うなら―――黒の王に相応しい者と言わせてもらおうかしら」

「………ああ。最近流行りの悪役令嬢転生ものにありがちの魔王系ヒーローと恋愛ラブコメ」

「私もだけど、あなたも大概主人の影響受けているわね」

 

 あっさりと答える少女を見て、もうひとりは苦笑いをした。

 

「じゃあ、私は帰るわ」

「………どこに?」

「ああ。私を閉じめて他のコアに応援を呼ぶのはマズいわよ。一番が止めてしまうから」

 

 その言葉に少女は仕方なく自分の空間を解放した。

 

「そう。それで良いわ。私もせっかくの存在を潰したくないから」

 

 それだけ言ってもう一人は消えていく。少女は誰もいなくなった光景を見て舌打ちした。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 闇属性の鬼から逃走劇を行った翌日。疲れが取れなかった俺はギリギリまで寝てから教室に来ると、周りから厳しい目線を向けられた。昨日の食堂の事がもう広まっているのだろう。中には「あの男、絶対にこき使って殺してやる」とか言っている奴もいるが、その前にそいつが死ぬ未来しかない。ゼロシ〇テム使っても同じだろう。

 

「おはよう武。唐突なんだけどさ、武が使ってるISスーツってどんな奴なんだ?」

「……どんな奴とは?」

「いや、デザインとか全然違うなって思って……」

 

 ああ、そういうことか。確か今日からISスーツの申込日だっけ。俺には関係ないから忘れてた。

 

「俺のは完全オリジナルだからな。通常のISの反応速度を高める処置はもちろんの事、いざISの使用を禁じられた時に生身で戦えるように工夫している。それで装着時は一般の加圧シャツのような苦しさもない。専用の追加装備もあるからISスーツを露出させる露出狂共と一緒にしないでもらいたい」

「………あー」

 

 織斑は男として目のやり場に困るのだろう。それでいて何故箒と一緒にいて発情しないのか不思議ではある。見た目だけで言えば巨乳清楚系大和撫子だと思うがな。見た目だけで言えば。

 ちなみに俺のISスーツはISを展開していない状態に限りパーカーとズボンが展開される。さらには予備弾倉やバッグなども展開される仕様になっているので一部の女子たちから非難があったらしい。それを酒飲んで愚痴っていた織斑千冬が楓に聞き出そうとしていたらしい。が、そもそも俺はあまり楓にIS関連の事はできるだけ遠ざけていた為その製法は知らないし教えていない。まぁ、やはり女たちにとっては悩みの種ではあるらしいのだ、露出度が高いというのは。今日から夏服開始だが、彼女たちの露出が変わるが彼女たちは気にしているのだろう。特に今年度から俺や織斑と言った男性が現れてから余計に気になりだしたのだろう。そもそも俺は奴らに手を出す趣味はない。というか今の男たちにとって一番安全なのは尽くす女だ。………まぁ、その尽くす女というカテゴリで一番に出て来るのがクロエというのはやはり俺も色々と危ない奴なんだろう。血の繋がりがないとはいえ、よりにもよって姪の事を頭に出すとは。いやまぁ、可愛いけどな。

 

「諸君。おはよう」

「おはようございます!」

 

 おっと、織斑千冬のご登場だ。それでさっきまで山田先生に群がっていた奴らは自分の席へと急いだ。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定の物を使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう」

 

 そんなことをしたら俺はすぐに授業をボイコットするだろう。誰が変態と一緒に授業を受けたがるのやら。というか普通着てこない?

 

「では山田先生、ホームルームを」

「は、はい」

 

 ちょうど眼鏡を拭き終わった山田先生が慌てて眼鏡をかける。そして彼女は重大な事を言いだした。

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します! しかも二名です!」

 

 何故二人も? と思いながら俺はすぐに耳に栓をする。ただでさえリアクションがオーバーな一組生徒だからな。場合によっては気絶する。というかほとんど全員が叫ぶもんだから普通に五月蠅い。

 

「二人とも、入ってこい」

「失礼します」

 

 織斑先生の合図で二人の生徒が入ってくる。一人は男子生徒用のノーマル夏服を着用しており、もう一人は普通に女生徒だ。箒が女生徒を見て驚いているのはそいつがクロエに似ているからだろう。箒にはその辺りの情報は共有していないのだが、アレは十中八九遺伝子強化素体(アドヴァンスド)だな。左目に眼帯をしているのは病気か怪我か。軍人が付けてそうな眼帯だが、趣味だろうか?

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

 シャルル、という事は男か? いや、見た目はどう見ても女だろう。制服は男だが。

 

「お、男……?」

 

 誰かが思わずそう呟いている。それに対して奴は―――

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方々がいると聞いて本国より転入を―――」

 

 簡単に答えてしまったので耳栓をする。

 

「きゃああああ!!」

「男子! 三人目の男子!」

「しかもウチのクラス!」

「美形! 守ってあげたくなる系の!」

「地球に生まれて良かったぁあああッ!!」

 

 これだけ騒ぐなら他クラスから苦情来そうなものだが、意外とどうにかなるようだな。正直五月蠅いが。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

 面倒くさそうに織斑先生が声をかける。気持ちはわかる。いちいち男が来たからと五月蠅い奴らだ。能天気だと言わざる得ない。

 

「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから!」

 

 次はクロエに似た少女の方だ。この女もさっきの生徒の反応を見て鬱陶しそうにしていたから、案外仲良くできるかもしれない。特に気になるのは彼女の髪だ。凄く手入れしたい気分になる。

 

「……………」

 

 まぁ、俺の中では無駄に高評価になりつつある彼女だが、未だに一言も話さない。どうやら友達付き合いする気はないらしい。珍しいな。昨今では珍しいタイプに俺は少し安堵していた。まともな奴もいるのだな、と。

 

「……挨拶をしろ、ボーデヴィッヒ」

「はい、教官」

 

 いきなり佇まいを正して返事をする少女。それ以上に気になるのは織斑先生が「教官」と呼ばれたことだ。どこかで彼女を教えていたのだろうか? というか軍所属かよ。ホントIS条約形骸化してんな。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私の事は「織斑先生」と呼べ」

「了解しました」

 

 にしても織斑先生が教官か。確かに似合いそうだな、迷彩服。今度嫌がらせ含めて迷彩服送ってやろうか。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 そこからはひたすらに無言だ。確かに名前だけ知っていれば後はおいおい知りたければ知れば良いだけだ。理に適っている。

 

「あ、あの、以上……ですか?」

「以上だ」

 

 取り付く島もないという感じだが、俺の評価はうなぎのぼりである。アレかな? 実はクロエも見た目が凄く好みだったというオチか? ちょっと自分の将来が不安になってきた。

 なんて考えていると、ボーデヴィッヒと織斑の目と目が合った。何かに気付いたようでボーデヴィッヒが「貴様が」と怒りを露わにして織斑を思いっきり引っ叩いたのである。

 

「え?」

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

 ただのブリュンヒルデ信者だったのでファン止めます。はい、解散。それにしても織斑千冬のズボラな性格に気付かないとは、よほど隠蔽力が高いと見える。少しは家事ができるようになれよと呆れていると、前の方で織斑が怒っていた

 

「いきなり何しやがる!」

「ふん……」

 

 織斑をスルーして俺の隣に来た彼女は俺を見てナイフを抜いたで手を抑える。

 

「止めておけ。ここで騒ぎはお互い望むところじゃないだろう?」

「……ほう。流石はレイヴンと言ったところか」

「は?」

「貴様の名だ。この学園では大人しくしておいてやるが、外に出た瞬間、貴様を殺す」

 

 そんな物騒な発言をするボーデヴィッヒ。

 

「ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

 ボーデヴィッヒの視線を感じながら俺は退屈しないで済みそうだと思った。

 

「おい待て、篠ノ之兄。それと織斑」

「何ですか?」

「デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう?」

「はいはい」

 

 まぁここで返事だけして後で織斑に押し付けよう。

 

「えっと、君たちが織斑君に篠ノ之君? 初めまして、僕は―――」

「自己紹介はさっき聞いた。それよりも早く更衣室行くぞ」

「そ、そうだね」

 

 とりあえず、初日だしコイツの事を調べるという事も含めて同行してやるか。

 

「男子は開いてるアリーナ更衣室で着替え。これから実習のたびにこの移動だから、早めに慣れてくれ」

「これも男子の悲しい立場ってことでな。ま、俺は更衣室いらんけど」

「そのおかげで俺はいつも酷いことになっているけどな!!」

 

 と抗議してくる織斑。女どもくらい、気合と根性でどうにかしろ。コイツそういう事は得意だろうに。

 

「ああっ! 転校生発見!」

「しかも織斑君と一緒!」

「今日は篠ノ之君もいるわ! 武×一ね!!」

「待ちなさい! それなら私は武×シャルを推すわ!!」

「私たちには迷惑だけどね!!」

「おいボケ腐女子共! ふざけんな!!」

 

 全く誰だ! 俺をカップリング対象に入れやがった奴は!!

 

「一×シャルまたはシャル×一は認めるが、俺はカップリング対象に入れるな!!」

「何でそうなるの!?」

 

 どうやらデュノアはわかったみたいだが、織斑はわかっていないようだ。だが俺の発言を理解した生徒の一部が一気に退散する。たぶん今ので描きに行くのだろう。

 

「いたっ! こっちよ!」

「者共、出会え出会えい!」

 

 こいつら男に飢え過ぎじゃないかと思いながらも、俺たちはなんとか校舎から出て行くのだった。

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 とあるラボにて、ラウラ・ボーデヴィッヒに瓜二つとも言える容姿を持つ少女が怒りのあまり震えていた。

 

「あの、くーちゃん」

「! すみません、束様。どうしましたか?」

「ううん。大丈夫。ちょっと様子がおかしいなって思って……大丈夫?」

「大丈夫です。すみませんでした」

 

 と謝るクロエに萌える束。だが内心不安が残っていた。

 

(やっぱりくーちゃん、たっくんの事……)

 

 自分の娘とはいえ血の繋がりのない関係。別におかしい事ではない。何よりもクロエがここに来た頃に世話していたのは束ではなく武だったので懐いていたのは気付いていた束だったが、あくまでも「懐いている」だけで「好いている」とは思っていなかった。

 そこに来て自分にそっくりな存在に好意を示す武を見れば嫉妬することも合点がいくと束は考える。

 

(やっぱりくーちゃんもIS学園入れた方が良いのかな?)

 

 元々は人の世話を焼くことに抵抗がない武ならむしろクロエの世話を焼くだろう。そうなれば将来的には「娘」ではなく「義妹」になるのではないかとまで考えた束はため息を吐いた。

 

(本当に私、計画を進めちゃって良いのかな?)




タグにある通り、あくまでも灰色なのでそういうものだと思っていただければ幸いです。
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