IS-Black Gunner-   作:reizen

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第20話 二人の遺伝子強化素体(アドヴァンスド)

 放課後、俺はIS学園島にある零司の執務室に寄ってからまた箒がISを使えるようになったので付き合ってやって部屋に戻る。いつも通り風呂に入ってのんびりしていると窓が開いてクロエが入って来た。

 

「泊まりに来ました」

「お、おう……」

 

 さも当然のように現れるクロエ。だがうまい具合に俺の視線からはクロエは後ろに月を背負っているように見えて月世界から舞い降りた姫君のように見えたと思うのは俺の根源たる中二病が正常に働いている証明でもある。

 などと思っていると、楓は「じゃあ千冬お姉ちゃんのところ行ってくる」と言ってドアを開けて飛び出した。

 

「おい楓―――」

「大丈夫だから!」

 

 俺は楓を保護するためのシステムを起動させる。これで少しはマシになるだろう。

 

「って言うかクロエ。お前も断ったって良いんだからな?」

「………好きでやってますから」

 

 口を尖らせるクロエを見て少しほっこりしたのは言うまでもない。……ん? 好きでやってる?

 

「では、シャワー浴びてきます」

「今度はちゃんと身体を拭いて出て来いよ~」

 

 そう言えばクロエはちゃんとシャンプーとボディソープを持ってきているのだろうか。もしなければちゃんと買って―――いや、そもそもここにいる事自体が異常だっての。

 最近は平然と入ってくるので慣れつつあるが、そもそもここで俺たちが一緒にいるのはおかしいわけだ。個人的にはありがたい事は否定しないが、度々報告入れているのに誰もクロエに接触しないし。

 というか姉貴にトラウマの事を言ったのは間違いだったか? 隙あらばクロエがここに来ている気がするんだが。ここは一度しっかりと言ってやった方が良いかもしれない。まぁ、今はゲームでもしていよう。

 

 

 

 

 しばらくすると、クロエが出てきたようで姿を見せる。その姿に俺はフリーズした。

 

「にゃー」

 

 棒読みだがその行為すらも可愛く感じる。俺は一度頭を冷やしてグループチャット画面を開いて入力した。

 

『姪が可愛すぎて辛いんだけどどうすれば良い?』

 

 そのまま送信を押して助けてもらう。いやマジで助けて欲しい。主に俺の理性から。

 

悠夜『何を迷う必要がある。求めているなら襲えば良い』

 

 その後に悠夜から覆面を被り、窯を研いでいるキャラクターのスタンプが送信された。嫉妬で殺すつもりらしい。

 

零司『避妊すれば良いのでは?』

 

 ダメだコイツら。何でどっちもGOサイン出してんだよ。どっちか止めろよ。

 

悠夜『冷静になった。状況kwsk(詳しく)

『姪が黒猫のコスプレしてる。頭にネコミミ装着済み。尻尾もある。原理不明』

悠夜『サイ〇フレーム搭載着ぐるみか。流石は天才。俺も真似するから零司手伝って』

零司『狐耳仕様なら開発済みだけどいつ使う? 僕は同行しない』

 

 同行したら問題なのではと思いながらも心を落ち着かせる。するとクロエが俺の所に来て腕に顎を乗せた。

 

「にゃー」

 

 その日俺は、姉貴にスタンプ百連打した。

 

 

 

 

 

 クロエ・クロニクルはまだ俺が姉貴と組んでいた頃、襲撃先の施設で拾った少女だ。唯一の生存者で姉が何を思ったのか「娘にしよう」と言い出したが、実のところ二週間ほど俺が面倒を見ていた。姉貴が家事などを疎かにしていたからというのもあるが、ともかく彼女は何もできなかった。幸い物覚えが良くすぐにできるようになったが、そういえば料理だけは教えてなかったな。

 だがこれだけは言える。彼女が姉貴の命令なしに俺をあそこまで惚れるなんてあり得ない。

 

「どうしたんだ、武」

 

 近くにいた箒がアリーナの壁にもたれている俺に声をかける。

 

「……ちょっと気になることがあってな」

「気になること?」

「ああ。クロエの事で」

「………」

 

 クロエの名前を何故か箒が不機嫌になった。

 

「前から気になっていたことがあるのだが、あの少女は一体どこで拾って来たんだ?」

「………美人ポジが奪われそうで困る、と?」

「そういうわけではないが、どことなくボーデヴィッヒに似ている気がしてな」

「………いや、クロエの方が可愛いだろ」

 

 何言っているんだこの馬鹿はと思っていると箒がため息を吐いた。

 

「そう言う問題ではないだろう」

「……まぁ、おいおい知れば良いし、知らなくても良い事だ」

 

 知ったところでどうするのかという話になるのだが。

 ふと、上で繰り広げられている織斑とデュノアの模擬戦に目を向ける。試合展開は距離を離され続けて織斑が一方的にデュノアに圧されていた。最初は投擲などしてビビらせていたが、元々対応力は高いのかそれも防がれて一方的になっていったのである。

 そして白式のシールドエネルギーがなくなり試合は終了。いや、ほんとなんで未だに牽制用火器が搭載できないのか不思議でならない。

 二人はカタパルトに降り立ち、エネルギーの補給と同時に反省会を始めた。

 

「ええとね、一夏が篠ノ之君たちに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握していないからだよ」

「そ、そうなのか? 一応わかっているつもりだったんだが……」

 

 俺はその様子を遠巻きに見る箒と凰を観察する。こいつらはいつになったら積極的になるのだろうか?

 

「うーん、知識として知っているだけって感じかな。さっきと僕と戦った時もほとんど間合いを詰められなかったよね?」

「うっ……、確かに。『瞬時加速』も読まれてたしな……」

「一夏のISは近接格闘オンリーだからな、より深く射撃武器の特性を把握しないと対戦じゃ勝てないよ。特に一夏の瞬時加速って直線的だから反応できなくても軌道予測で攻撃できちゃうからね」

「直線的か……うーん」

「あ、でも瞬時加速中はあんまり無理に軌道を変えたりしない方が良いよ。空気抵抗とか圧力の関係で機体に負担がかかると、最悪の場合骨折したりするからね」

「……なるほど」

 

 デュノアの説明はわかりやすく、織斑のウケが良いようだ。まぁ俺がいない時に聞いた箒と凰の教え方よりも断然良いだろう。オルコットは理論に寄り過ぎて織斑相手ではアウトだったので俺が大体翻訳していた。人を選ぶがまだ二人よりかはマシだろう。

 

「一夏の白式には後付武装(イコライザ)がないんだよね?」

「ああ。武に何回か調べてもらったんだけど、拡張領域(バススロット)が空いてないんだって。だから量子変換(インストール)は無理だって言われた。確か、なんとかアビリティに容量を使っているって言ってたな」

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)な。お前の「零落白夜」がそれだって前に言っただろうが」

「……そう、それだ!」

 

 一度ぶん殴ってやろうかと思ったが堪える。せめて自分のISの鍵ぐらいは把握しておけよ。

 

「でも不思議だね。普通は第二形態から発現するんだよ。それでも発現しない機体の方が圧倒的に多いから、それ以外の特殊能力を複数の人間が使えるようにしたのが第三世代型IS。ブルー・ティアーズと衝撃砲がそうだよ。あれ? そう言えば銃姫にも第三世代兵器ってあったよね? あれの名前って何?」

「何で知ってんだ? まだ使った事ないのに」

「え?」

「え?」

 

 俺とデュノアがお互いに疑問を浮かばせる。

 

「あの、銃姫にもビットはあるよね? それじゃないの?」

「いや違うけど」

「……え?」

「そもそもビット程度でドヤっていること自体が異常なんだよ。その教科書なんて昭和時代からあるんだぜ? さっさと実現させない方がおかしいだろ?」

 

 そう言うとデュノアは信じられないという顔をしていた。

 

「そんな……ちょっと待って。じゃあ銃姫の第三世代兵器って他に搭載しているの?」

「まぁな。だが使ったことないんだよなぁ」

 

 と言って適当にはぐらかせる。

 実のところ銃姫に世界的な第三世代兵器はおそらくティアーズに衝撃砲、マルチロックオンシステムとほとんどコンプリートしているようなものだが、特殊能力という意味ではまだ解禁していない。銃姫に搭載されてコアこと「ノヴァ」曰く「使ったら機体が大破する」という事で未だに使えていないのだ。ちなみにシステム的にも面倒になっており、本来の6割以上を出したら自動的にシステムも発動するという仕組みだ。まぁ6割でも十分軍用と渡り合えるから気にしていないが。それよりも銃姫が―――そしてノヴァが壊れる事が問題だ。

 ちなみにデュノアが顔を青くしているのは、やはり世界的にも俺の存在と思考は異常だからだろう。

 

「……でも凄いよね。白式は第一形態なのにアビリティがあるっていうだけで物凄い異常事態だよ。前例が全くないからね。しかも、その能力って織斑先生―――初代「ブリュンヒルデ」が使っていたISと同じだよね?」

「まぁ、姉弟だからとか、そんなもんじゃないのか?」

「ううん。姉弟だからってだけじゃ理由にならないと思う。さっきも言ったけど、ISと操縦者の相性が重要だから、いくら再現しようとしても意図的にできるものじゃないんだよ」

「そっか。でもまぁ、今は考えても仕方ないだろうし、その事は置いておこうぜ」

 

 ま、真相はなんとなく予想はつくが、言ったところで姉貴が否定すれば嘘になるから黙っておこう。あの姉の事だから展開装甲の実験ついでに入れたんだと思うが。にしてもデュノア凄いな。突っ込みたいのを全力で我慢してるよ。

 

「そ、それもそうだね。じゃあ、射撃武器の練習をしてみようよ」

 

 ちょうど白式のエネルギーも回復したようで、二人はグラウンドに降りる。俺もそれに付いて行き、練習用パネルを出してやった。

 

「はい、これ」

 

 デュノアは自分の機体の領域から55口径アサルトライフル《ヴェント》を展開して織斑に差し出した。

 

「え? 他の奴の装備って使えないんじゃないのか?」

「普通はね。でも所有者が使用許諾(アンロック)すれば登録してある人全員が使えるんだよ。……うん、今一夏と白式に使用許諾を発行したから、試しに撃ってみて」

 

 ちなみにこの機能は別に考えないわけではなかったが、織斑の技量を考えれば銃を持たせるのはエネルギーの無駄だと思っていたので考えなかった。それに機体が耐えられるとは思わないし。わかりやすく言えば、俺の《リヒトブリッツ》は某一本角のマグナムを他の機体で撃てば腕が大破するみたいなものだ。織斑の事だから「大体わかった」とか言って最大出力でぶっ放すに違いない。

 

「火薬銃だから瞬間的に大きな反動が来るけど、ほとんどはISが自動で相殺するから心配しなくていいよ。センサー・リンクはできてる?」

「銃器に使う時の奴だよな? さっきから探しているんだけど見当たらない」

「別に目視で大丈夫だろ。銃なんざ相手を殺そうと思っていれば自然と当たっているようなもんだ」

「無理だからね!? そんなことで標的に当たるなら誰も苦労しないよ!?」

 

 そんなものか? 俺は大体勘で当てれるが。

 

「……まさか篠ノ之君も使っていないとかないよね? 一夏に言ったのってセンサー・リンクがないからだよね?」

「いや切ってる」

「……え?」

「通常のセンサー・リンクだと自動照準でブレる。だからリンク部分を改良したら無駄に情報量が多くなったから切った」

「……………ハハハ」

 

 どこを見ているのかデュノアは呆然とした状態で笑い始める。

 

「……撃って良いか?」

「う、うん! とりあえず撃つだけでも大分違うと思うから撃ってみて」

 

 言われて織斑は撃った。やり方はなっちゃいないが、そもそも銃なんて俺みたいな特殊な立ち位置でない限りそうそう持たないしな。

 

「うぉっ!?」

 

 あー、その反応わかる。最初に撃つと情報ではわからない衝撃ってあるもんな。

 

「どう?」

「お、おう。なんか、アレだな。とりあえず『速い』っていう感想だ」

「そう。速いんだよ。一夏の瞬時加速も速いけど、弾丸はその面積が小さい分より速い。だから、軌道予測させ合っていれば簡単に命中させられるし、外れても牽制になる。一夏は特攻する時に集中しているけど、それでも心のどこかではブレーキがかかるんだよ」

「だから、簡単に間合いが開くし、続けて攻撃されるのか……」

「うん」

 

 ブレーキか。俺も案外ブレーキかけてたりするのかな。

 

『日常で常にブレーキしっぱなしじゃない。クロエに関してもそうだし』

『あれは完全に別だろうが』

 

 ノヴァに突っ込みを入れていると、織斑は射撃を続けながらデュノアの機体の話になった。

 

「そういえばシャルルのISってラファール・リヴァイヴだよな?」

「うん。そうだよ」

「そのISなんだけど、山田先生が操縦していたのと大分違うように見えるんだが、本当に同じ機体なのか?」

 

 カラーリングが違うのはよく聞くが、確かにデュノアのラファール・リヴァイヴは従来型とはかなり違う。名前に「カスタムⅡ」と入っていることから恐らく自分の機体を大幅に改造したのだろう。

 

「僕のは専用機だからかなり弄ってあるよ。正式にはこの子の名前は「ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ」。基本装備(ブリセット)をいくつか外して、その上で

拡張領域を倍にしてるんだ」

「倍!? そいりゃまた凄いな。ちょっと分けて欲しいくらいだ」

「あはは。あげられたら良いんだけどね。そんなカスタム機だから今量子変換してある装備だけでも二十はあるね」

「うーん。ちょっとした火薬庫みたいだな」

 

 そんなものではないだろうが、個人的には奴の機体内にある装備がどれくらいのものか気になるところだ。と、男三人で談笑していると俺たちがいたAピットとは反対側の方から騒がしくなった。

 

「ねぇ、ちょっとアレ……」

「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」

「まだ本国でのトライアル段階って聞いてたけど……」

 

 ちょうど織斑は撃ち終わったのか、スコアが表示される。素人にしては高い程度でまずまずレベルである。

 

「おい」

 

 開放回線(オープン・チャネル)でボーデヴィッヒの声が飛んでくる。

 

「……なんだよ」

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

 おお。早速挑発だ。喧嘩っ早い織斑の事だからキレて挑発に乗るか?

 

「嫌だ。理由がねえよ」

「……織斑?」

「貴様にはなくても私にはある」

 

 まさかの拒否である。この冷静さが四月にあったならオルコットと安易に喧嘩に発展しなかったのではと思うのは俺だけだろうか?

 

「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業を成し得ただろう事は容易に想像できる。だから、私は貴様を―――貴様の存在を認めない」

 

 あれか? んなもん裏の事を全く知らない織斑にどうにかできると思うとか笑えるんだが。裏に染まり過ぎて表の能天気さを甘く見ているとしか思えない。

 

「また今度な」

「ふん。ならば―――戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

 そう言うとボーデヴィッヒは奴の機体である「シュヴァルツェア・レーゲン」の右肩に装備された大型レールカノンを織斑に向けて発射―――したところで爆発した。

 

「何!?」

「え?」

「…あれ?」

 

 ボーデヴィッヒは驚き、突然の爆発に織斑も砲弾を弾くつもりで織斑の前に出ていたデュノアも驚いていた。

 

「………全く。いくらここがアリーナ内だからっていきなり砲弾ぶっ放すったぁ穏やかじゃねえな。IS未装着の奴だっているんだぜ?」

 

 俺の手には銃が握られており、銃口から煙が上がっている。

 

「……ありえん。対人用で砲弾を破壊したと言うのか!?」

「いつから対IS用を生身で使えないと錯覚していた? ちなみに正当防衛はアンタが撃った瞬間に撃ったから成立しているぜ?」

「………」

 

 固まるボーデヴィッヒ。俺は何かミスったかなぁと考えていると、スピーカーから怒鳴り声が流れた。

 

『そこの生徒! 何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』

「一年一組、31番だ。調停中だから傍観していろ」

『何!?』

 

 管制室にいるであろう教師が騒ぎ始める。ボーデヴィッヒは舌打ちして去っていった。

 

「こんなもんか」

「…………ねぇ、僕がおかしいのかな? 対IS用の銃を生身で使って平気なのって」

「いや、武がおかしいと思う」

「何言ってんだお前ら。ただ貫通力を高めただけだから反動自体はそんなにないぞ」

「それでも十分異常なんだよ!!」

 

 あの温厚なデュノアがキレた!?

 という冗談はともかくだ。実のところ今のは俺が開発した対人から対ISまでこなせる銃だったりする。出力を調整しているだけである。

 

「………」

 

 目が空ろになるデュノア。おそらく自分の中の常識が崩壊している頃だろう。

 

「シャルル! 戻ってこいシャルル!!」

「アハハハハ、デュノア社ってただの雑魚じゃん。フランスとかただのゴミ国じゃん」

「シャルルゥウウウウッッ!!!」

 

 何やってんだろうな、こいつら。

 俺はそろそろアリーナの閉館時間ということもあって先にピットに戻って着替える。少しすると織斑もやってきたがデュノアの姿がなかった。

 

「ん? デュノアはどうした?」

「いや、先に着替えてくれって言われてさ。本当は一緒に着替えたいんだけど……」

「え? 織斑ってホモ?」

「何でだよ!? ちゃんと女の子好きだけど?!」

「普通この年頃で男と一緒に着替えたいとは思わない」

 

 俺の考えすぎか?

 

「でもこの一週間、シャルルの様子って変なんだよな」

「どこが?」

「俺と着替えたがらないんだよ」

「それに関しては普通だと思う」

「いやでも、同じ男子なんだぜ? やっぱりこう、裸の付き合いとかしたいだろ」

「その思考で俺をこれまで着替えに誘わなかったことは褒めておこう」

 

 にしてもデュノアの奴、哀れだな。色々と可哀想になってきたのでフォローでも入れておいてやるか。

 

「織斑、忘れているようだから言っておくが、デュノアはフランスの代表候補生だぜ? 国や会社と連絡取り合ってるところを流石に他国のお前が介入するのはマズいだろ」

「……あ、そっか」

 

 まぁこれ、当たらずとも遠からずなんだが、それをわざわざ織斑に言う必要はあるまい。こいつの鈍感っぷりを考えれば気付くことはないだろうしな。

 

「じゃあ俺は先に帰る」

「ん? 一緒に帰らないのか?」

「まぁな」

 

 別に男だから一緒に帰る規則もないしな。

 と思いながらアリーナから出た俺は一人で帰っていると、織斑先生とボーデヴィッヒが話をしていた。

 

「何故こんな所で教師など!」

「……何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ」

「このような極東の地で何の役目があるというのですか!」

 

 しかも暮桜も持たずに、な。確かにちょっと疑問だったので話を聞いてみることにした。

 

「お願いです、教官。我がドイツで再びご指導を。ここではあなたの能力は半分も生かされません」

「……ほう」

「大体、この学園の生徒など教官が教えるに足る人間ではありません」

「何故だ?」

「意識が甘く、危機感に疎く。ISをファッションかなにかと勘違いしている。そのような程度の低い者たちに教官が時間を割かれるなど―――」

 

 それを聞いた俺は盛大に噴いた。

 

「ククク…ハハハハハッ!!!」

「誰だ!?」

「こいつは痛快だ。まともだと思っていた奴がここまで愚かだとは思わなかった。軍人もここまで堕ちるのか」

 

 そう言って俺は姿を現すと、何故か織斑先生も驚いている。

 

「貴様はレイヴン!? 何がおかしい?!」

「だってそうだろう? 何故ここの生徒に不満を抱くお前が軍人などをしている? そんなに不満だと言うのならばまずは自国を滅ぼしたらどうだ?」

「ふざけるな!! 私は誇り高いドイツ軍人だぞ! 祖国に背くなどできるはずがない!!」

「貴様の言う「程度の低い者」というのはお前の国を含め優遇されることで出来上がる存在だ。ならば消すのが先だろう?」

「ふざけたことを抜かすな!!」

 

 ナイフを持って俺に仕掛けてくるボーデヴィッヒ。織斑先生が止めようとしたがそれよりも早くナイフが俺に届く―――前にボーデヴィッヒの腕を掴んだ俺は投げ飛ばした。だがボーデヴィッヒ身体を捻って傾斜に着地する。

 

「貴様!」

「止めろボーデヴィッヒ!! そのナイフをしまえ!!」

「ですが教官!! この男は祖国を侮辱した!! そんな人間など―――」

「どうした遺伝子強化素体(アドヴァンスド)越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)を使わないのか?」

「何故それを知っている!?」

「知っているさ。貴様が三年前まで軍内で落ちこぼれと言われ、たまたま売った恩で来たあの女に強くしてもらったんだろ? 崇拝するのは勝手だが、だからと言ってあの女の汚点を付けた弟に牙を向けるのは違うだろう?」

 

 なにせこの女は生まれてくる性別から間違えた存在だ。それを言うならある意味織斑もそうか。アイツは家事スキルは高いがこっち方面はからっきしだ。言うなればこの姉弟はある意味共存関係にあると言えるだろう。

 

「黙れ!! あの男は教官の汚点!! だから私はあの男を排除する必要がある!!」

「………そうか」

 

 笑いが止まらない。そりゃそうだろう。

 

「武、ボーデヴィッヒももう止めろ!!」

「ボーデヴィッヒ、それの思考は正しいと思うか?」

「そうだ!!」

「そうか。ならば俺は―――姉の理想を潰し、インフィニット・ストラトスを兵器として取り扱う愚国を終わらせて良いわけだ」

「……何?」

「そうだろう? インフィニット・ストラトスは元々宇宙に行くためのものだ。それをあろうことか白騎士事件で敗北したからと研究するだけに留まらず、実質的に兵器として運用しているのは誰だ? パーツと性処理の道具としてしか見ていないお前らを優遇し、国民を苦しめているのは誰だ? その答えに気付けない奴がインフィニット・ストラトスを扱うなど―――虫唾が走る」

 

 俺の手には先程ボーデヴィッヒの機体を損傷させた銃《ヴァリアブルシューター》を展開。制服も量子化からの収納を行い、戦闘服に切り替える。これで腰にドライバーを付けてSの文字が付いたメモリで変身すれば完璧だろう。中身ハーフボイルドだけど。

 

「随分大層な宣言だな、レイヴン」

「貴様の理屈に合わせてやっただけだ。感謝しろ」

 

 そう言って《ヴァリアブルシューター》の銃口を向けるとボーデヴィッヒも銃を抜いて発砲した。俺はそれを撃ち落とそうとしたがそれよりも早く織斑先生が割って入り、出席簿で叩き落としたのである。

 

「……あの女の親友になるだけあるわ」

 

 思わずそんなことを言ったが、それがダメだったようで織斑先生に首根っこを掴まれた俺はそのまま寮監室に連行された。理不尽だと声を大にして叫びたくなった。




天才は時として「どうしてこんなものを作った」というものを作る。尻尾付きパジャマはその最たる例。ちなみに先端に脳波を感知してならば挿さなくても良いと思われます。この意味がわからなければ一生純粋なあなたでいてください。

ハーフボイルドでも映画でのジョーカー変身シーンは本当にカッコいいんだよなぁ(個人的感想)
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