IS-Black Gunner-   作:reizen

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すみません。個人的に難産だったということもありますが、アトランティスから平安京まで走ってました。
金時来たけど段蔵も欲しかった


第22話 藍色の月は牙を剥く

 学年別トーナメントがタッグ戦になったという事情を知った一夏とシャルルは二人で登録をした。二人にとって窮地だったそれは一夏の機転で回避されたが、いつものシャルルならばおそらく気付くだろう。そんな事を勝手にして良かったのか、と。

 だが今の彼はそれどころではなく、ただただ恐怖を感じていた。

 

 

 

 

 怖い。怖い。怖い。

 何であの人はISを展開していないの? 何でISを使わずにISを倒してるの? 何なの? 篠ノ之には化け物しかないの?

 

「シャルル? 大丈夫か?」

「……うん。大丈夫だよ?」

 

 大丈夫なわけがない。何であんな男からデータを奪えって言うの? 勝てるわけがない。無理だ。死ぬ。

 

 ―――僕には、リゼットを助けることができないの?

 

 脳裏にリゼットが死体に変わるイメージが過る。嫌だ。それだけは嫌だ。

 

「……ごめん一夏。先帰るね」

 

 それだけ言って一夏から離れる。まるで狙っているようにISに文書が送られてきた。

 

『子ウサギはまだ手に入らないのか?』

 

 まだ言うのか? あんな男に守られている者をどうやって手に入れろと? 冗談じゃない……でも、ヤラナイト、リゼットガ……。

 

「―――ねぇ、お兄さん」

「………リゼットが……」

「お兄さんったら!」

 

 

 

 

 急に頭が走ったシャルルはハッと頭を上げる。気が付けば彼―――彼女は森にいた。自分が道から外れていた事に気付いてすぐに引き返そうとしたが、周囲は森ばかりで辺りが見えない。

 

「そ、そうだ、ISで―――」

「別に大丈夫だよ? まっすぐ歩けば寮に着くから」

「そうなんだ……君は」

 

 シャルルは声の正体を見た瞬間、ハッとなった。何故ならこれまで自分が探していた目標が目の前にいたのだから。

 

「どうしたの、お兄さん」

「えっと、どうして君がここに?」

「ここは私の秘密の実験場の近くなの。私みたいな子が学園にいるのは色々と問題だからね」

 

 そう言った子ウサギは笑顔を浮かべる。

 

「ねぇ、お願いがあるんだ」

「何?」

「お兄さんとどこかに行かない?」

 

 シャルルの言葉に子ウサギ―――楓は笑みを浮かべる。

 

「うん、良いよ」

 

 やった、とシャルルは内心喜ぶ。思いがけない幸運に恵まれたという喜ぶ。これでリゼットを救えると歓喜するシャルルだが、彼女はある事を忘れていたのだ。楓もまた、「篠ノ之」なのだと。

 そう。この展開はシャルルが望んでいたことでもある。だがそれは―――仕組まれている事なのだ。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 部屋に戻ってくると、さも当然のようにクロエがいるので実は内心「そろそろ転校してくるのでは」と考えているが、一体いつになる事やら。

 

「あれ? 楓は?」

「私が来た時はまだ帰っていませんでした」

「………え? それで入れたの?」

 

 てっきり楓が部屋にいるから入れている者だと思っていたが、どうやらそうではないらしい。

 

「以前、私たちが訪れた時に束様が保険として窓を改造していましたので、カードキーで入っています」

「………」

 

 衝撃の事実発覚だわ。まぁ……あの人見知りがこの部屋のカードキーを渡すとすればこっちだが……いや、大丈夫だろう。

 

「武様」

「な―――」

 

 唐突のキス。ファーストキスをされた俺はフリーズしたが、それはチャイムで正気に戻される。

 

「隠れています」

 

 そう言ってクロエは近くの壁に潜む。俺は混乱しつつもドアを開けると、そこには織斑がいた。

 

「織斑?」

「なぁ武、シャルル来なかったか?」

「………十回だ」

「え?」

「十回殴らせろ」

 

 せっかくクロエと良い雰囲気どころかキスしてたのに―――って、落ち着け。クロエは姪だ。姪との恋愛はご法度だ。

 

「いや、何で!?」

「……ああ、すまん。今の冗談だ」

「あ、何だ。冗談か」

 

 コイツはコイツで凄く心配なんだが。何で混乱していたとはいえ「お前を殴る」と宣言した奴を「冗談」という言葉で信じられるのかわからん。

 

「それで、デュノアか。来てないな」

「……そっか。たぶんここだと思ったんだが……」

「何だ。アイツ俺に話でもあったのか?」

「………まぁ」

 

 俺は時計を確認。そろそろ七時か。

 

「とりあえず、俺もデュノアの事は気にかけておく」

「悪い。頼むな」

 

 織斑は部屋から出て行く。俺はすぐさまハイパーセンサーを起動してデュノアのラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡの反応を探した。そこには―――楓の反応もある。

 

「クロエ、済まない。用事ができた」

「……わかりました。今日は帰ります」

 

 残念そうにするクロエ。近い内にクロエを転校させるように姉貴に打診しようかと考えていると、またクロエがキスしてきた。

 

「……帰る前に一つ聞いていいか?」

「何でしょう?」

「何でキスするんだ?」

 

 自分で言うのもなんだが、俺は欲望に忠実なだけの最低野郎だ。人は百を軽く超えるほど殺しているし、真っ当な人間ではない。そんな人間にいくらなんでも簡単に惚れるわけがないのだ。だがクロエは―――

 

「束様の命令はあくまで武様を癒す事です。ですが私は、許されるならあなたと一緒にいたい……そう思っただけです」

 

 直球で言われた俺は思わず呆然とした。

 クロエがいなくなってからどれくらい経っただろうか。俺はすぐに轡木さんに繋いだ。

 

『どうしました?』

「楓がさらわれてしまいました」

『………それはそれは。油断しましたね』

「ええ。なので帰ったら説教します」

 

 俺は窓から外に出て改修が終わった銃姫(ガンプリンセス)を展開する。出力は60%に固定して印がある方に直進だ。

 

『周囲に四機、来るわよ』

「たかが四機か」

 

 ノヴァからの知らせで鼻で笑いながら現れた奴らと対峙する。

 

「篠ノ之武か。妹が酷い目に遭って欲しくないならば一緒に来てもらおう」

 

 リーダーなのか、一人が俺に声をかけてきた。

 

「やれやれ。舐められたものだな、篠ノ之も」

「何?」

「あんなナリでも楓は立派に篠ノ之なんだよ。むしろお前らこそ見張りの心配してやれよ」

 

 俺はすぐさまエネルギーライフル《リヒトブリッツ》を展開して攻撃した。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

「シャルル! どこなんだ、シャルル!!」

 

 一夏は外に出てシャルル・デュノアを探す。その顔には焦りがあるのは、一夏もシャルル・デュノアの正体を知る者だからだ。知ったきっかけは本当に下らなく、彼の親切心とラッキースケベが働いた結果である。そして彼―――彼女にすべて話され、彼にとってその理由が不自然すぎたために匿う事にしたのだ。

 だが二日経った今、シャルル・デュノアの姿がなくなり、一夏は嫌な予感がして外に出て捜索しているのである。

 

(シャルル、まさかお前―――)

 

 まさか帰ったのでは―――そう思った時、一夏の耳に何かが聞こえた。

 

(これは戦闘の時の……)

 

 ハイパーセンサーを部分展開し、確認する。センサーには五機が戦闘していると表示され、その内の一機に銃姫と表示された。

 

「ガンプリンセス……まさか、武!?」

 

 幼馴染にして自分の先を行く自分と同じ男性IS操縦者。それが外で戦闘をしているなんていくら非常識の塊といえあり得ないと感じた一夏は白式を展開してそこに向かった。移動中、ハイパーセンサーに表示された内の四機の反応が消失。残っているのは―――銃姫のみだった。

 

 

 

 

 

「あーあ。全員やられちゃったー」

 

 と、呑気に言ったのは楓だった。身体を拘束されているのにも関わらず陽気な声を出した少女にシャルロットは恐ろしく感じる。

 

「どうして、そこまで平気でいられるの……?」

「おかしい?」

「おかしいよ! だってあり得ない! こんな怖い目に遭っておいて、それで怖がらないなんて―――」

「―――篠ノ之の兄妹で一般人なのは箒お姉ちゃんだけだよ?」

 

 その発言に疑問を感じた瞬間、シャルルは吹き飛ばされた。

 

「―――誰が決めたの?」

 

 シャルルは恐怖する。目の前の状況に、恐怖を覚えてしまう。

 

「私がISを持っていないって」

 

 手には七支刀。七房の刃が肩から飛び散り、シャルルの首に狙いを定める。

 

「……何で」

「これは私が作った私だけのオリジナル。でも作るのに苦労したからもう作らない。面倒くさいし」

「……うそでしょ」

「ホントだよ? 私がまだ縛られていた時に作ったもの。だけどその時に存在していた人は誰も知らない」

 

 楓はそこから後ろに下がると銃弾が通る。

 

「何をしている!? 馬鹿が!!」

「……あらあら。感謝してほしいわね。私をさらうという事を経験させてあげたのだから」

「ふざけるな! だが、ISを持っているならちょうどいい。そのISごと―――」

 

 突然現れた黒いラファール・リヴァイヴ。だがその操縦者が認識をするよりも早く楓は通り過ぎる。

 

「え?」

「忘れた? 私も篠ノ之なんだよ?」

 

 ―――青

 

 だがそれは純粋な青と言い難い。むしろ「青」よりも「藍」と言うべき色合いだった。

 

「いくよ、藍月(らんげつ)

 

 一気に加速する楓、黒いラファール・リヴァイヴの操縦者はその攻撃をかわそうとするが、それよりも先にシャルルの首に飛んでいた刃が彼女が襲い掛かり動きが封じられる。

 

「このッ―――」

 

 ラファール・リヴァイヴの操縦者の首を抉るように切る楓。咄嗟に回避した操縦者だが、浮遊する刃に思いきり撫でられたことでシールドエネルギーをごっそりと持っていかれた。

 

「……嘘だ」

「私の誘拐が簡単に行くと思った? 残念。私は今代のどの兄姉よりも残虐で冷酷なの」

「―――それはない」

 

 急な男の声。全員がその声の方向を見ると、銃姫を展開したままの武がいた。

 

「あ、お兄ちゃ―――」

 

 楓の頭が思いっきり殴られる。突然の事に楓は涙よりも先に驚き、自分が何をされたのか理解した。

 

「……篠ノ之、武」

「インフィニット・ストラトスを置いてここから去れ。命だけは助けてやる」

「黙れ、貴様が我々と共に―――」

 

 武が何かを展開して黒いラファール・リヴァイヴに放る。一瞬で装甲にくっついたそれは光を放ったかと思うと独りでに武の下に戻った。

 

「何を―――私のISはどこだ!?」

「奪わせてもらった」

「……まさか、亡霊共が開発したという剥離剤(リムーバー)か!?」

「俺個人でIS回収のために開発したんだがな」

「おい! この男を拘束しろ!!」

 

 シャルルは咄嗟に動いて武に銃を向けようとしたが、急に地面に叩きつけられた。

 

「この圧力は……まさか……ボーデヴィッヒに使った。でも何も……」

「最近ああいうのが人気だからと聞いたからな。言ってみただけに過ぎない」

「ISすら動くことができない圧力なんて……そんな……」

「別に難しい事じゃない」

 

 武は《ヴァリアブルシューター》を展開して操縦者の顔に銃口を向け、引き金を引いた。まともに食らってか操縦者は動けなくなる。

 

「……き、君は……」

「次は貴様だ」

 

 そう言った武は剥離剤を使用してシャルルからラファール・リヴァイヴを強奪し、銃を向けると、

 

「―――止めろ!!」

 

 武はその場から離れると《雪片弐型》が空振る。

 

「織斑」

「武、お前今何をしようとした!」

「………」

 

 楓は一夏に攻撃しようとしたが、それよりも先に楓を制する。

 

「お兄ちゃん、でも―――」

「織斑」

「何だよ。それよりもこっちの質問に先に答え―――」

 

 瞬間、一夏の腹部に衝撃が走る。唐突の事に対処しきれなかった一夏はそのまま床に落下した。

 

「な、何を―――」

「それはこちらの台詞だ。一体どういう了見で生身の人間でその力を振るった?」

「シャルルを……守るため……」

「そうか。では死ね!」

 

 一夏にかかる衝撃と重力が激しくなる。さらには武から放たれる殺気が周囲にいる者たちを怯えさせるには十分なレベルになる。

 

「やはり世界は一度滅ぼさねばならないようだ。テメェのようなクソを殲滅するためにな」

「止めて! それ以上は一夏が死んじゃう!!」

「インフィニット・ストラトスでしか力を振るえんクズが消える。それだけだ」

 

 シャルルの声を無視し、一夏に《ヴァリアブルシューター》を向ける。そして引き金に手を乗せようとした瞬間、放たれた殺気によって武は上に銃口を向けた。

 

「そこまでよ、武」

「……悠子か」

 

 機体を解除して降り立つ女性。実際は男であるそいつは優雅な動きで武に近付く。

 

「何の用だ?」

「ある人からのメッセージ」

「………嫌な予感がするんだが」

 

 大型のパッドを展開した悠子。画面にはスーツを着た男性が映し出される。

 

『やぁ、篠ノ之君。随分派手に暴れたようだねぇ。欲望を解放するのは実に良いことだ!!』

「実は裏でなんとかベンダー隊でも作ってたりしてます? もちろん捨て駒で」

『冗談だよ。さて、ここから本題だ。そこにいる人間を君の妹以外、引き渡したまえ』

 

 その発言に武はため息を吐き、展開していた重力波を解除した。

 

「……身体が……軽い」

『織斑一夏君』

「だ、誰だよアンタ」

 

 その発言に武と悠子、そして楓は引いた。

 

『IS学園の関係者だと言っておこう。当然、君の処分を下す立場でもある』

「え……?」

 

 ようやく相手がどういう人間かを理解した一夏。そんな状況を無視して各々作業を開始するのだった。

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