IS-Black Gunner-   作:reizen

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思考が乗っているのか手が進む~


第23話 姉妹愛、兄妹愛

 応接室に案内された俺たち。そこには俺とデュノア、そして楓に織斑千冬、轡木さんが揃っていた。他の奴らは悠子が連行していったので酷い目にあっただろう。あと、織斑はここにいるが姉に睨まれているか大人しくしている。

 

「………お兄ちゃん」

「何だ?」

「……痛いです」

 

 そして俺は今、楓に物理的にお仕置きしていた。

 

「まさか精神操作系のISとはな。挙句にデュノアを操って誘拐させるって一体何のつもりだ?」

「そ、それは場を引っ掻き廻したいとか色々と……あ、でもその女は最後に日頃頑張ってるお兄ちゃんにあげるつもりだったよ?」

「女のスパイの末路が悲惨とはいえ、誰がブスに欲情すると?」

「酷い!?」

「あ。ごめん、愚問だね」

 

 あっさりと答える楓。別にフォローする気はないのでスルーしておく。そもそも今はアイアンクローというお仕置き中だが、楓の方が十分可愛いに決まっている。

 

「……本題に入らせてもらって良いか?」

「どうぞどうぞ~」

 

 楓が手を抜いていたとはいえ俺のお仕置きを離脱して代わりに返事をする。

 

「はぁ……まぁいい」

 

 ため息を吐いてから今回の問題であるデュノアを睨む織斑千冬。

 

「デュノア、自分がしていたことを自覚しているか?」

「………」

「沈黙は肯定とみなすぞ」

「………」

「なんとか言ったらどうだ?」

「アンタの教育方針が悪いとしか……」

「よりにもよってスパイの擁護するなんてねぇ……」

 

 俺と楓で織斑千冬にそう言うと、頭を抱える。

 

「待ってくれ千冬姉。シャルルは本当はしたくてしたわけじゃないんだ!」

「問題はそこじゃない。デュノアが別の組織と繋がっていて、お前と篠ノ之兄のデータを取るために近付いたのが問題なのだ」

「だけどそれは―――」

「その結果がある以上、この状況はどうにもできない」

 

 冷たく言う姉に対して悔しそうな顔をする織斑。

 

「まぁ、同情ポイントがあるとすれば腹違いの妹が人質に取られたから仕方なくってところだろうが、それでもスパイ行為は明るみになれば悲惨な目に遭うからな」

「!?」

「……待ってくれ武。今のどういうことだ?」

「デュノアがデュノア社以外と関係を持っていた理由。いや、正確にはデュノア社の後釜を狙う親戚と組んでいたと言うべきだろうな。上手くいけば万々歳。リゼットの開放を条件にシャルル・デュノアは本来の任務外だった俺と織斑の遺伝子データと機体データを持ち帰るという話だった。あとは女を処理するのに適切な方法をとれば良いだけだ」

「……おい」

 

 織斑千冬が楓を顎で指すが、楓はこの手の話には慣れている。

 

「えっと、流石にその子の前でその話は……」

 

 織斑も流石にマズいと気付いただろう。だが楓はこういうのに慣れているから別に気にしない。

 

「別に普通じゃない? 裏の世界じゃ女権団関係の組織以外だと女の扱いって酷いものだし。むしろISの登場で確定で女の扱いなんて操縦者として使えなくなったら性欲処理に使われて捨てられるかだよ?」

 

 そして楓もこれである。そもそも楓がいたのはそういった組織で、楓はそれを見て見ぬふりをしていた。

 

「……何言ってんだよ。そんな酷い事できるわけ―――」

「女尊男卑が蔓延している時点でそんなものだろ。その裏で男が女に何をしようがどうでも良いという事だ。例えば会社の社長が自分の娘を使って政府の人間を抱き込んでもおかしくはない」

 

 そう言うと織斑は何も言えなくなる。どことなく感じ取ってはいたのだろう。

 

「所詮は女性優遇制度なんてものは名ばかりでしかない。今この時も酷い目に遭わされているだろう。それでもお前はその白式()を振るうか? 可哀想だからと?」

「ああ。俺はそうする」

「それで相手は殺すか」

「……いや、それは―――」

 

 答えに迷った織斑を見て俺は確信した。こいつがいる限り、いずれ面倒が起こると。とりあえず白式を作ったと思われる姉は半殺しにしておこう。

 

「まぁそれは良い。俺が離反するか俺よりも強い奴らが現れない限りそうそうそんな目に遭う事はないだろう」

「どうしましょう織斑先生。IS学園がチェックメイトされているのですが」

「私にそれを言わないでください」

 

 責任者共が後ろで何かを言っているが無視しておこう。

 

「さて、話は変えよう。リゼットの事だ」

「……あれ? 僕、君に妹の名前を言ったっけ?」

「ようやく気付いたか。入ってきて良いぞ」

 

 ドアが勢いよく開けられたと思ったら、黄色い弾丸が織斑を弾き飛ばしてデュノアに抱き着いた。

 

「お姉様ぁ!!」

「リゼット!?」

「会いたかったですわお姉様! 子どもたちに囲まれて幸せでしたが、やはりお姉様の胸が最高ですわ!」

 

 そう言って脱がそうとするのでデュノア姉が抵抗していた。

 

「ちょ、流石に恥ずかしいから止めてリゼット!」

「あら、大丈夫ですわ。ただ私がお姉様のお胸を直に味わうですから」

「それが問題なの!!」

「リゼット・デュノア。とりあえず姉の胸を堪能するのは後にしろ」

 

 静止したリゼットは向き直り、「仕方ありませんわね」と言って自分の姉の上に座った。

 

「……えっと、君が?」

「リゼット・デュノア。これでもデュノア家の第一継承権を持っていますの。まぁ、親戚に狙われてここに来たのですが」

「……武、どういうことか説明しろ」

 

 焦れた織斑千冬がそう言ってきたので簡単に説明する。

 

「リゼットと初めて会ったのは三年前。俺が諸事情でフランスにいた時に襲われていたリゼットと遭遇して助けたのがきっかけだ。その時に貧弱なこいつでも逃げられるように試作用のベイルアウトカプセルを渡していた。それで日本に外出していた時に研究所に飛んできたんだ」

「え? その時から?」

「元々私は身体が弱かったのでそこを狙われたのです。それにしてもあのカプセルは素晴らしいので今後はデュノア社に委託してはいかがでしょう」

「商売は止めてくれ。まぁ、色々と応用が利くことは実証できたので良しとするが」

 

 あのほどはベイルアウト回収機能を残しておいて良かったと思ったからな。

 

「まぁ、そんなわけで最初からデュノアの目論見はわかっていた。俺があえて馬鹿な振りを演じていたのもそのためだ」

「………そう、なんだ」

「それにですが、シャルル・デュノアさん。あなたは最初から女として入学しています」

 

 轡木さんの言葉に驚くデュノア。実のところ、轡木さんの所に最初からフランス政府から連絡があったらしい。

 今のところフランスにとってデュノア社が生命線。別に何もフランスにはデュノア社だけしかISを開発している国がないわけではないが、それでも今のところデュノア社がリードしていると言っても過言ではない。そんな状況でデュノアが共倒れなんてなればフランスはそれこそ世界から後れを取る。だからこそフランスは「シャルル・デュノア」をフランス代表候補生にして送り出せた。

 基本的にIS学園は世界からの干渉は良しとしないが、大人の都合に振り回されている子どもを見捨てるのも目覚めが悪い。それに轡木さんにとって「シャルル・デュノア」の存在はある意味タイミングが良かったと言っていた。

 

「なのであなたは男装を止め、いつでも女生徒として通ってもらって構いません」

「………ありがとうございます」

「ただし、あなたも織斑君も処分は受けてもらう事になりますが」

「なッ!?」

 

 何故そこで驚くのだか。

 

「何でですか!? シャルルはこの子を守るためにしたことなんですよ!? それに俺はシャルルを助けるために―――」

「理由はどうあれ、彼女が誘拐し学園に敵意がある人間に加担したのは事実です。本来ならば退学処分もあり得る状況ですが? そしてあなたは学園での無断使用。並びに学外での使用を行ったためです。ちなみに篠ノ之君も妹さんの監督不行き届きとして本来は同じ停学処分にしておきたいところですが、彼の場合は自由の時間を与えるだけになるので逆に処分しません」

「……チッ」

 

 正しく処分を免れているように見えて処分された状況だ。クソ、このジジイ、流石と言うべきか。

 

「ちなみに織斑君は一週間停学並びに反省文をお願いします。あなたに対する処分は以上です」

「でも―――」

「出て行きなさい。織斑先生、弟さんに部屋を送って差し上げてください」

「…わかりました」

 

 理事長に素直に言う事を聞く織斑千冬。弟を無理矢理外に連れ出した。まぁそれが正しい。

 

「やれやれ。ああいう子どもは本当に困りますね。まるでそこらにいる、男を見下している癖に発情するようなゴミとなんら変わらない」

 

 おっと。どうやら本質を表す時間のようだ。

 

「ではデュノアさん。あなたとリゼットさんには一度フランスに帰国していただきます」

「な、何故……」

「なぁに。ついでです。最近、随分と甘く見ているゴミが多いので少し掃除をしに行こうと思っているだけなので」

 

 冗談ではなく本気である。

 

「では篠ノ之君。私は悠子君と共にしばらく留守にします。その間の学園の事をお願いしますね」

「……それ、生徒会長に言わなくても?」

「あとで伝えます。それにあなたが裏切らない限り大丈夫でしょう? 心強い援軍もいますしね」

「……楓を使えってことか?」

「いざと言う時にはですよ。まぁそれはあまりお勧めしません。死体が増えるだけですから」

「そうですね」

 

 それに関しては否定しない。

 

「え?」

「落ち着きましょう、お姉様。別に不思議ではありませんよ?」

「リゼットは順応しすぎだよ?!」

「というよりも考える事を放棄しているのですわ。私としてはあの方が出張ってフランスが壊滅、なんてことは嫌ですし。そうなった場合、私たちは慰み者として扱われてしまいますわね。それはそれでそそりますが」

「ねぇ、君たちに何があったの? リゼットって父親以外の男性は苦手なのは知っていたけど、なんか篠ノ之君の前だと凄く奔放なんだけど……」

「冗談でしょう、お姉様。今私たちが襲われたらなされるがままですよ?」

 

 姉妹の会話を他所に轡木さんが俺に話しかけた。

 

「ところで、シャルロット嬢のISはどこでしょう?」

「………ああ、ちょっと待ってください」

 

 俺は奪ったISの履歴からデュノアのラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡを出して轡木さんに渡した。

 

「ありがとうございます」

「いえいえ」

 

 悠子も同行するという事だから、いざと言う時にデュノアが暴れても問題ないどころか同情するレベルになるのは目に見えている。いざと言う時に渡しても問題ないと判断した俺は楓と部屋に戻った。楓は部屋に戻ると風呂の準備をしたので、それが終わってから言ってやる。

 

「楓」

「………ごめんなさい」

「今日は久々に一緒に寝るか」

「うん! お風呂も一緒に入ろ!」

「……ああ、時間もないしな」

 

 別に俺は妹に発情しないからな。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 風呂から出て、パジャマに着替えて歯を磨いた同じベッドに入る。だが楓は不満が募っていた。

 

(………血の繋がり、なかったらよかったのに)

 

 クロエが来て、そして今日のリゼットを見た楓の感想だった。リゼットの言葉には何ら嘘がない。この時期で既に武は国を一つ壊滅させる程度の能力は既に有している。しかも、銃姫の使用は一切せずだ。それを間近で見たことがあるリゼットだからこその言葉を冗談ではないことを知っている楓はますます不満―――そしてあるモノが溜まっていた。

 情欲、恋慕。それが積もってきて楓は寝ている武に襲いかかろうとしたが、止めた。この行動で嫌われることが何よりも嫌だったからだ。

 

 楓の出生は普通じゃない。同じ腹から生まれておらず、両親の遺伝子を調整されて生まれた存在で唯一の成功例。3歳の時からその才覚を現し、政府の研究所でISコアを作らされていた。だが成果が挙がらず破棄されそうになっていたのを女権団が広い、ISと武装を開発させていた。そんな時に出会ったのは武だった。

 その時の武は一切銃姫を使わずに自作した銃と剣で周囲を圧倒して殺して回り、ISが出てくれば剥離剤(リムーバー)で奪っていった。仮面で顔を隠していたがその姿は正しくカッコよく、楓にはそれが王子に見えたのだ。

 

「無事か?」

 

 ドアを斬ってばらし、入って来た武はそう声をかけるが、すぐに楓に刃を向ける。そして彼女の首に付けられていた枷を破壊した。

 

「これで出られるか?」

「……うん」

 

 それから武は囚われていた者たちを介抱し、障害を排除して施設から逃げ切った。

 少しして楓は以前から聞かされていた武に打ち明け、束に会ったが初対面の時の対応は酷いの一言だった。というか武がもし束と同じだったら楓は生きていなかっただろう。

 

「………お兄ちゃん」

 

 眠っている時の武は周囲の警戒が無関心になる為、多少の事では動じない。楓は武をうつぶせにした後に上に乗った。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 翌日。シャルル・デュノアと織斑一夏の謹慎が伝わった放課後に俺は箒の部屋に来ていた。

 ドアを開けるとクラスメイトが出てきた。確か鷹月という奴だったか?

 

「どうしたの?」

「箒いる?」

「今シャワー中」

 

 確かに音が聞こえる。部屋で待たせてもらっていいか確認すると俺に対しての嫌悪感はないのか許可をくれた。そして、

 

「すまない静寐。今出た―――って何故武がいる!?」

「妹の目の前で妹の友達を襲うため?」

「それを本人に聞いてくる辺り本気じゃないよね」

「当然」

 

 普通の男ならば年頃の女子に襲い掛かるだろうが、生憎俺はそこまで女性を意識できないのでね。

 

「まぁ、襲っていないなら……」

「というかさっさと服着たらぁ?」

「い、言われなくてもそうするつもりだ!!」

 

 と自分のベッドの上に置いていた寝間着を取って洗面所に戻る。

 

「慌しいなぁ」

「……あんまり興奮しないんだね」

「妹にか? 冗談だろ?」

「というより、あの胸に」

「まぁ大きくなったな。女性らしさを感じるが発情はしない」

 

 というよりも性欲がそこまで働かないのだ。……まぁ、最近はクロエに関しては別ってことになってきているが。

 

「待たせたな」

「じゃあ、私はシャワー浴びて来るね。あ、覗かないでね」

「そうするよ」

 

 たぶんそういう体勢は付いているんだろうなと思いながら答えてからふと考える。

 

「鷹月は尻が綺麗だと思うと伝えた方が良かったか?」

「何を言っているんだ、お前は」

「ん? 相手を褒めた方が良いのかと考えているだけだよ」

 

 IS学園の奴らはレベルが高いからなぁ。都市部に行ったらブスが男をこき使っているのが本当に二重の意味で哀れになる。

 

「ところで何の用だ?」

「ああ、そうそう。学年別トーナメントがタッグ戦になっただろ? それで箒を誘いに来た」

「……何?」

 

 警戒を始める箒だが、正直無駄だ。まぁ俺の事を信用していないからだという事は理解しているけど。

 

「何故私なんだ?」

「お前と組んだら俺の方がメリットがあるって思ったんだよ。それに箒は近接特化。俺は射撃メインの万能タイプ。相性は良いだろ?」

 

 箒は少し考えてから「良いだろう」と言ってくれた。

 

「紙はあるか?」

「もちろん。サインくれたら俺が提出しておくよ」

「……頼んだ」

 

 サインをもらった俺はついでにペンを借りてサインし、翌朝提出した。

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