IS-Black Gunner-   作:reizen

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第24話 学年別トーナメント開始

 六月も末となり、学年別トーナメントが開始の朝。偉そうな男女が入場しているのを画面で見ながらストレッチをしていた。

 

「……それにしても、凄い人だな」

 

 同じ部屋で男の織斑が呟いた。

 

「ISスーツって布面積少ないから今日の夜のおかずでも探しに来たんじゃね?」

「……たぶんそれはない」

「どうかな。案外ありそうだろ。まぁそれは良いとして―――どうするよ、織斑」

 

 別に織斑がどうなろうが知ったことじゃないが、今回は面白い事になっているのだ。

 デュノアの停学期間が学年別トーナメントにまで影響を及ぼしているのだ。これほど面白い事はあるまい。

 

「……本当、どうしよう」

「一人目の男性IS操縦者、まさかの相方行方不明」

「言うなよ……」

「しかも向こうで足止め食ってるって話だろ。悠子から聞いたけど」

 

 後は帰るだけという事なのだが、実はこの時に色々とあって足止め食らっているのだ。

 

「ま、あがいてもしゃーないわな」

「そうだけど………」

 

 実のコイツの相方問題は既に後の祭りだったりする。何故なら性格的にあぶり易い箒は俺と組んでいるのだ。元々第一学年は俺の入学のせいで奇数スタート。その後に凰が来て偶数になり、二人の転校によって偶数状態。それで一人抜けたらアウトなのだが、今回は試合参加が強制でない三年の中から助っ人が来るのだ。だがそれを一般生徒への緊急的措置として割り当てたので残るは織斑とボーデヴィッヒになる。

 画面がさっきまでスカウトや研究員を映していたが、切り替わって対戦表が表示された。

 

「あ、やっぱり」

「え? 嘘だろ……」

 

 学年別トーナメント Aブロック 一回戦

 

 第一試合

 織斑一夏、ラウラ・ボーデヴィッヒ―――

 

 

 

 第三試合

 篠ノ之武、篠ノ之箒―――

 

 

「俺がボーデヴィッヒと!?」

「まぁそうなるだろ」

「何で!?」

「専用機持ちは専用機持ち同士ってのが実のところ良いからな」

 

 そもそもタッグ戦からして専用機持ちを組ませる事を目的としているからな。主に今後俺たちは標的になるから。その他の生徒とかぶっちゃけ知らん。逃げるだけの生徒にまで気を配ってられるか。

 

「え? でも箒は専用機持ちじゃないだろ」

「専用機持ち相当の実力はあるからな。適性は低いとは言えど、いつ声がかかってもおかしくはない」

 

 なんてな。実のところ箒の専用機持ち獲得は既に決定事項だ。それが早いか遅いかの違いだけ。というかこれはノヴァからもたらされた情報だが、箒の適性は公には「C」になっているが、実際は紅椿装着により「S」になる仕組みだということである。

 

「ボーデヴィッヒとタッグなんてどうすれば良いんだ?」

「そもそも背後から撃たれる心配とかあるだろ?」

「……俺、防ぎようねえぞ」

 

 そりゃあ剣一本だもんな。しかも砲弾となると難易度がさらに跳ね上がる。

 

「どうすれば良いんだ……」

「頑張りな。どうせ二試合すれば俺たちと戦うことになるんだから」

 

 それまであれば箒も慣れるだろうしな。

 

 

 

 

 

 結論から言うと、織斑とボーデヴィッヒペアは意外と簡単に勝利した。織斑は専用機持ちとしてのキャリアの長さから、そしてボーデヴィッヒは元々のレベルの高さから。

 そして今、第二試合中に俺と箒は待機中だ。

 

「遅い!」

 

 だが箒の機体はいつまで経っても来ることはなかった。

 

「そろそろ試合も終盤なのに何故打鉄が来ない」

「あ、それは俺がキャンセルしておいた」

 

 そう言うと箒が俺の方を見たが、その顔はなんとも酷いものだった。

 

「どうするつもりなのだ!? まさか私に生身で戦えとでもいうつもりか!!」

「それは面白そうだな」

「冗談ではないぞ!?」

「流石に俺だってそれは言わねえよ」

 

 俺は赤と銅の鈴が着いた紐を出してインフィニット・ストラトスを展開した。

 

「……これは」

「箒用のインフィニット・ストラトス。その名も「皐月(さつき)」だ」

 

 子どもが勝手に積んで蜜を飲んでいたなぁと思っていると、箒は嬉しそうにしていたがやがてその顔は曇りを見せる。

 

「………すまないが、このISは貰えない」

「何で?」

「姉さんが武経由で準備したものだろう?」

「いや、コア以外は俺の自作だけど」

 

 箒の思考は停止したようだ。

 

「……私がおかしいのだろうか?」

「篠ノ之基準だとな。一般レベルじゃむしろちょっと近接が強い程度だから問題だろ」

 

 実際、全国大会で優勝しているのを「ちょっと強い程度」なのはおかしいだろうが、篠ノ之基準になるとそうなるわけだ。姉貴はバケモノの類だが楓はどうだろうか。やりあった事ないからあんまりわからないが、おそらく成長スピードは他よりも高いだろう。

 

「つうか何で姉貴の作った奴が嫌なんだ?」

「……ちょっとな」

 

 ま、皐月は紅椿に乗る前にある程度慣れれるように作ったこともあって、総合的なスペックは紅椿の方が高いだろうが。

 

「さてと、簡単な説明だ。皐月は第三世代型のインフィニット・ストラトスで、近接を主眼として開発した高機動型だ。だが箒が銃は使えないのでオートロックオンシステムを搭載したレーザー兵器と自動対空防御機関砲、弓が入っている」

「……第三世代兵器は積んでないのか?」

「積んでいないわけではないが、この機体の第三世代兵器は特殊過ぎてな。認知されない」

 

 むしろこれが物凄く難産だったと言うべきだろう。なにせ箒のようなタイプの人間が今世界に出回っている第三世代兵器を使うとむしろ弱くなる部類だと理解しているからだ。

 

「そうなのか……」

「安心しろよ。少なくとも変な武装は入れていない。織斑の機体がイレギュラーすぎるだけだ」

 

 というか暮桜もそうだけど、何で武装が一つだけなんだ? そりゃあ織斑千冬はある意味異常だから良いとして、織斑みたいな素人に剣一本とか頭がおかしい。いや、元からか。

 

「良いのだろうか?」

「何が?」

「いや、私は日本の代表候補生じゃないのだから、専用機を持って良いのかと思ってな」

「そんなの今更だろ。安心しろよ。その打開策くらいは用意している」

 

 すると箒は俺の言葉を信じたのか、皐月に乗る。ちょうど第二試合が終わったこともあって箒の機体を一次移行する時間はない。どっちにしろ、その機体は戦って置かないと最適化が進まないようになっているからどっちにしろだがな。

 

「んじゃ、行くとするか」

「ああ」

「そして優勝して織斑と付き合って既成事実だな」

「ああ……おい待て。何故お前があの話を知っている!?」

「たまたま食堂で聞いたんだよ。まぁそれはどうでも良いだろ」

 

 俺たちは飛び出すように外に出ると、先に来ていた相手さんらが俺たちを見て驚いていた。

 

「何よその機体!?」

「まさか学年別トーナメントに間に合わせたって言うの!?」

 

 予想通りの反応をしてくれる。箒は少し恥ずかしそうにしているし、こっちとしては上々か。

 

「何でよ………何で大して努力してない奴らがこうポンポンと専用機貰えるのよ。そこからしておかしいじゃない」

「私たちだって頑張ってるのに」

「あ、箒。実は言ってなかったことがあるんだけどさ」

「何だ?」

「この雑魚共、お前一人で倒してね」

 

 その瞬間、箒も対戦相手二人も呆然とした。

 

「何を言っているんだ、お前」

「大丈夫。量産型ぐらい例え初期設定だとしてもお前程の技量があるなら普通に倒せる」

 

 俺は後ろに下がって壁を背もたれとして座りこむ。

 

「おい武!」

「なんだよ」

「何故戦わない!?」

「お前が戦えているから問題ない」

 

 というのも箒は初期設定の機体で自分のスタイルで打鉄とラファール・リヴァイヴを相手にしているのだ。これなら本当に俺の出番はなさそうだ。

 

「コネで手に入れた癖に生意気なのよ!!」

「いや、箒はきちんと実力で手に入れたぜ。そもそも、キャッチボール感覚で銃弾ぶっ放して一体何人切り落とせるって言うんだよ」

 

 ま、二、三年生の中にはそれをできそうな奴が何人かいるかもしれないが、年上こそ信用できない俺が関わるわけがない。

 

「つうかそもそも―――インフィニット・ストラトスを作ったのは篠ノ之なんだし、持っていない方がおかしいんだよなぁ」

 

 箒がラファール・リヴァイヴを先に仕留めた。それから打鉄の操縦者が鬼神の如く戦う箒を見て後ろに下がり始める。

 

「に、二対一なのに……何で……」

 

 ハッキリ言って、箒の実力は既に常人を超えている。インフィニット・ストラトスに搭乗しているとはいえ銃弾を捌け、専用機持ちですら警戒する高い近接戦闘能力。そして箒は織斑姉弟と同じで近接をメインとしているが故に中・遠距離戦が苦手と来ている。

 奴らの戦法は正しかった。やる気のない俺は放置してまずは箒を倒しに来たのは評価に値する。だが予想よりも箒の近接対応力が高く、機体の機動力も異常だということからラファール・リヴァイヴを落とされてしまったという事だ。

 

「まだよ! 私だって―――」

 

 そしてインフィニット・ストラトスは絶対数が少ないため、練習にも待たなくてはいけない。では何が有利に働くか―――それはどれだけ戦闘経験があるかということだ。質は俺には及ばないだろうが量に関してはおそらく俺を超えるだろう。

 そんな箒だからこそ皐月のような機体性能を活かす事が可能なのだ。

 

【試合終了。勝者、篠ノ之武、篠ノ之箒ペア】

 

 おそらくこれで日本はもちろん、他国も新たな存在を認識したはずだ。

 

「……終わったぞ」

「ああ、お疲れさん」

 

 打鉄から紅椿に搭乗するのは特に機動力という面では苦労するだろう。それに性格面から考えても思い上がりやすい。新しい力を持って喜ぶのは篠ノ之一族の悪い癖だ。

 ピットに戻った俺たちは機体を待機状態に戻してピットから出ようとしたが、嫌な予感がして俺は箒に抱き着いてワープする。

 

「お、おい、何をする!?」

「急を要するからな。あそこにいれば質問攻めにあっていた。……まぁ、面倒なのが来るが」

 

 その声とほとんど同時に珍しく静かに現れた姉。その目には珍しく怒っている。

 

「……どういうつもりかな?」

「別に。最初から入学時点から考えていたことだ」

 

 だがこちらとしてもちょうどいい。予定は狂うがここでこの姉にどちらか上かを教えてやるとしよう。

 そう思ったら束の前にクロエが割って入って来た。

 

「クロエ、そこを退け」

「……退きません」

「………箒、先に戻っていろ」

 

 俺は素早く姉貴とクロエの間に割って入る。クロエの反応は鈍かったが流石は姉貴、すぐさま俺から距離を取った。

 

「って、逃げんなよ!」

「だって今のたっくんは危険だって―――」

「とって食いはしねえよ!? というかそんな危険人物だったら最初にクロエと寝た時にとっくに襲ってますが!?」

 

 あの馬鹿は自分の娘がどれだけ可愛いと思っているんだ。普通の男だったら従順系女子はすぐに調教ルート入ってる。

 

「それにここだとゴミに見つかれば面倒だろう? ドイツ関係者にクロエの事が見つかれば面倒になる」

「………無理矢理連れ戻すと?」

「もしくは強制的に破棄するかだろうな。そんなことする前に消すが、戦闘自体が面倒だ」

「………わかった」

 

 俺と普通に手を繋ぐ姉貴。それでも最大限に距離を取っているのは俺を警戒しているからだろうか。

 

「それで一体どういうつもり。箒ちゃんにISを与えるなんて」

「……アンタはモノを作ることに関しては天才的だが、兵器の分野となると欠陥品を作るからな」

「……言ってくれるじゃん」

「事実だろ。そうじゃなければ白式の性能は異常としか思えない」

 

 それにノヴァを介して白式に何度か接触しようとしたが、どうやらかなり厳重にプロテクトを敷いているのか近づくことが難しい。別に危害を加えるつもりはないので今は撤退しているが、そろそろじれったいので本格的に破壊するところだ。

 

「それは―――」

「姉貴、アンタはインフィニット・ストラトスで何がしたいんだ?」

「宇宙に出るんだよ。でももうその夢は難しいだろうけど」

 

 まぁ、それは確かにそうだ。今の人類では宇宙に出るなんて難しい。それは俺もわかっているが、俺は思いっきり姉貴を殴り飛ばした。

 

「たっくん、いきなり何するのさ」

「やっぱりアンタ、腑抜けたな。白騎士事件を起こして少しはマシになったと思ったら今度は弱音かよ。情けない。もっと我儘になれよ! 欲望の塊になったら良いさ、アンタは。その為の力だろう!? そのためのインフィニット・ストラトスだろう!? だったらアンタだけでも宇宙を目指せば良い!」

「……たっくんって、私の事を恨んでないの? たっくんは私がISを発表したからあんな酷い目にあったのに……」

「俺も零司も、少なくともアンタに個人的は持っちゃいねえよ。………まぁ、俺は別の線でキレちゃいるが、それとこれとは話は別だ」

 

 と言うかその事に気付いていなかったのか、この女は。

 

「あの時の俺はただただ力不足だった……というよりも、戦う事に興味がなかった。それにどうせ男だから妹と違って気に入られてないと思われていたんだろうよ。まぁ、あながち間違いじゃないだろうが、少なくとも俺はアンタに見捨てられたなんて思った事はなかった。そうじゃなければこの銃を俺に渡す事はなかったからな」

 

 俺が出して見せたのは俺が姉貴からもらった銃だ。

 

「それ、まだ持ってたんだ」

「《ヴァリアブルシューター》はこれが原型だからな。元ネタは他にあるし本当はもっと使いたかったが流石に手がキツイ」

「その銃はとっくに捨てたと思ってたよ」

「………もう五回ぐらい殴って良いか?」

「…武様、すみませんがそれ以上は束様の身体が持ちません」

「いや、大丈夫だろ。元々人間としてあり得ないくらいの身体能力と細胞がある。高校生が本気で殴ったぐらいで早々大怪我なんて―――」

「……たっくん」

 

 涙目になっている姉貴を見て俺は本気で驚いていた。

 

「姉貴……?」

 

 昔、姉貴は「そういう気分」だとか言ってアルコールを摂取して漏らしたことがある。「私は細胞レベルでオーバースペックだから、お酒を飲んでも兵器だよ!」と。それに俺も流石に素手だとそこまで力はないだろうと思っていたし、化け物レベルになった覚えがないしさっきも殴ったが、どう見ても様子がおかしい。

 

「さっきから頬が凄く痛い」

 

 嫌な予感がしたのでノヴァに俺の事をスキャンさせると、ノヴァはむしろ驚いており、

 

『この学園の切り札はあなただから黙っていたけど、割とあなたもそこにいるウサギや織斑千冬に近付いている方よ』

 

 と普通に返されて俺は地味に泣きそうになった。




今回は雑魚戦なので学年別トーナメントの試合はほとんどあってないようなものです。そして少し早いですが箒に専用機が! 安心してください。ちゃんと世界標準ですでできています。

そして判明する武の身体の秘密。そうじゃなかったらISを撃破できるような武装を生身で扱えるとでも?
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