IS-Black Gunner-   作:reizen

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相変わらずのタイトルセンスのなさです。


第25話 つまり色々と限界が近い、思春期だから

 ラウラ・ボーデヴィッヒは15歳でありながらドイツ軍の一部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ」の隊長を任せられる人材だ。だが今はラウラがIS学園に在籍している都合上、副隊長のクラリッサ・ハルフォーフが部隊を指揮している。隊員は彼女を除いた全員がドイツ軍によって生み出された遺伝子強化素体(アドヴァンスド)で構成されており、軍内でもかなり戦績を誇っていた。そしてクラリッサ自身もドイツ軍人に知らない人間がいないというほどの有名な人間を排出する「ハルフォーフ」の家の出で、ある意味お嬢様とも言える存在だった。だが彼女の両親は既におらず、姉も不慮の事故により死亡しているため天涯孤独とは言わずとも家の中では疎遠になっている。

 そんな彼女は独断的な動くが多いラウラのサポートが多く、未だに部隊が崩壊していないのは彼女の手腕であると言える。それほど優秀な人物だが、やはり疎ましく思う人間も存在していたが、彼女にしてみればどこ吹く風。今日がIS学園の学年別トーナメントの三回戦だと聞いていたクラリッサはラウラから吉報を待っていた。

 

(織斑教官の弟君とコンビを組んだ時は肝を冷やしましたが、なんとかなっているみたいで良かったです)

 

 クラリッサは特に一夏に対して思うところはないようで、今はともかくいずれは凄い選手になるのだろうなと思っているぐらいだ。むしろ彼女は国際指名手配されている《天災》篠ノ之束の妹である箒が専用機を手に入れた事の方が気になっていた。というのもクラリッサの姉もとても優秀な軍人として名が知られていた為、いつも比較されることが多かったためである。

 少しばかり同情していると、クラリッサの端末にメッセージが送られてきた。内容は「特秘の為、注意されたし」というものであるポイントを指していた。

 

【いずれあなたたちが危険になるため、その際はこのポイントまで来られたし】

 

 クラリッサは下らないと思いそのファイルを削除を考え、その前に発信源を特定しようとするが、発信源はドイツ軍内からだった。不信に思いつつも何かの証拠になると考えたクラリッサはファイルを削除することを止め、ロックをかけた。

 

 

 

 

 

 学年別トーナメントが始まってからの一夏の動きはおかしかった。いつものような思いっきりがなく、これまでの二戦では訓練機相手に苦戦していた。

 

「貴様、やる気があるのか?」

「やる気はあるさ」

 

 そう答える一夏だが、それでもその返事はどこかはっきりしないものである。尋ねるラウラも「これ以上はどうにもできない」と判断したため、放置した。

 おそらくその様子を武が見れば「もう既になれてんじゃん」と突っ込むかもしれないが、ここにいるのは小さいラウラに壁に叩きつけられる一夏を見たいがために集まった奇特な人間しかいない。

 

(……何でだよ)

 

 一夏を悩ませているのは武との差だった。入学時点からの圧倒的な差。そして一夏はこれまで感じていなかったが明確な差をデュノア社の件で感じることになる。

 一夏はシャルルが転校してきた週の土曜―――つまり武とラウラが冗談抜きの殺し合いをしようとしていた日に知っており、境遇を聞いて一夏は同情し、協力することを約束していた。自分の周りにいる人間を守る―――その心情に従った行動で、一夏はその時点で「自分が黙っていればいい」と判断したのだが、それは実は無駄だった。あの時点で武はシャルルの正体も知っていて、それどころかシャルルの行動原理であった妹のリゼットを既に保護していたからである。

 別に一夏は戦っていたわけではないが、それでも敗北感を感じていた。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 一年と二年、三年の学年別トーナメントの規模はかなり違う。第一学年はデュノアのようにまだ学園に戻ってきていないとかならば欠場は認められるが基本的には強制的に出場させられる。しかし二年から操縦科と整備科に大まかに分かれる。その事もあって大幅にスケジュールが短縮されるわけだ。

 その為俺たちAグループの三回戦は三日目の朝からになった。ちなみに二回戦も箒一人で戦わせたがまだ最適化が終わっていない。

 

「ここまでかかるとはな」

「……というか、何故普通に装着して一次移行を済ませてはならないんだ?」

「簡単な事だよ。俺がそれをできないようにプログラムしたから」

「………おい」

「それにその方が良いデータが取れるからな。安心しろ。絶対防御は問題なく発動する」

「そういう問題ではないがな」

 

 やはり重要なのは質ということか。だが今日の相手のボーデヴィッヒは俺を狙うだろうから、必然的に箒は織斑と戦う事になるだろうが……ボーデヴィッヒに当てた方が良いかなぁ?

 

「ところで箒」

「何だ?」

「織斑とボーデヴィッヒ、どっちと戦いたい?」

「一夏」

「ですよねー」

 

 まぁ織斑は織斑で俺と戦いたいのではないかとは思うがな。思うだけで実際は知らんし、それを織斑が言った瞬間、たぶん箒はキレる。

 

『対戦者は指定の位置に移動をお願いします』

 

 スピーカーからアナウンスが聞こえたので、先に箒を行かせた。

 

「そういえば、武がいつも言っているアレ、言わなくて良いのだろうか?」

「アレって?」

「出る前に何か言っていただろう?」

「ああ、あれは別に言わなくても良いよ。俺は癖で言っているだけだし」

「そうなのか」

 

 アニメの影響でついつい言っちゃう奴だ。でもさ、言いたくなるのがオタクって奴なんだよ。

 

「意味はあるっちゃあるけどさ。今はまだ戦時中じゃないんだし言わなくて良いだろ」

「……そうか」

 

 もし言ったら箒の場合は胸が強調されるのだろうなぁと昭和時代にやっていたアニメを思い出していると、箒は先に出ていた。

 グラウンドに入ると既に三機揃っており、俺は箒の後ろに待機する。

 カウントダウンが開始されていくと、俺と箒を見た奴らが空気を読んで静まっていった。

 

 ―――3

 

 ―――2

 

 ―――1

 

 ―――0

 

「うぉおおおッ!!」

 

 織斑が瞬時加速で突っ込む。その先は箒ではなく俺の方だが、いち早く反応した箒が割って入って膠着状態になったところをボーデヴィッヒが織斑諸共砲身を向けて発射する。

 俺は《ヴァリアブルシューター》で砲弾を破壊してボーデヴィッヒに仕掛けた。

 

「覚悟しろ、レイヴン!!」

「やっぱり釣りか―――と」

 

 ボーデヴィッヒのシュヴァルツェア・レーゲンからワイヤー付きのブレードが射出される。

 

「どうした! 動きが止まっているぞ!!」

「止めているの間違いだろう?」

 

 そう。俺がワイヤーブレードに目が行った時にすかさずボーデヴィッヒは俺にAICを発動させて動きを止めたのだ。

 

「やれやれ。俺はあくまで従順系が好きなんだがな」

「何の話だ!?」

「束縛系はそこまで好きじゃないんだよ」

「ふん。ならば徹底的に潰してや―――」

 

 ボーデヴィッヒの周囲を撃って粉塵を起こさせて近接妖刀ブレード《村正》を展開して濁流を発生させボーデヴィッヒにぶつけた。

 

「な、何だこれは!?」

「おいおい、誰を相手にしていると思っているんだ、お前は」

 

 水が炎に変わり、炎が風に変わる。そして風が礫となり、砂へと変わって地面に混じる。

 

「あり得ない? できるわけがない? 一体何をしているんだ? 現実を受け入れろよ、無能共」

 

 そう言った俺は《村正》を振った。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

「……………ここまで、とはな」

 

 管制室にいた千冬は武の異常っぷりに唖然としていた。画面内では多彩すぎる攻撃に翻弄されるラウラ(以前の教え子)の姿。千冬は決して身内贔屓をしないというわけではないが、それでもラウラの実力は代表候補生の中でもかなりの位置にいると思っていた。

 だがそんな彼女を刀一本で攻撃する。その動きは確か剣を修めている者の動きが、高い機体性能と独自に作り上げたスタイルで押しているとも言えるだろう。

 

「ブレード一つにそこまでの機能を盛り込めるなんて……篠ノ之君の技術力は一体……」

「ま、お兄ちゃんは宇宙に行った後の事しか考えていないから当然と言えば当然だけど……あれは遊んでいるね」

 

 さも当然のように管制室の椅子に座っている楓。その発言に真耶は驚いて楓の方を向いた。

 

「遊んでいるって……」

「簡単な事だよ。《村正》は世界にない「近接妖刀ブレード」。そして日本は陰陽術が蔓延っていた時代に「妖術」と呼ばれていた」

「……つまり、あの現象はすべて幻だというのか?」

 

 千冬の質問に楓は頷く。だがそうなるとハイパーセンサーで看破できない事に気になり始めた千冬は管制室のパネルの操作をする。

 

「ん? すべて幻術の類ならば何故シュヴァルツェア・レーゲンにダメージが入る」

「本人曰く「剣戟は飛ばすもの」だって」

「………は?」

「つまり妖刀ブレードはどこかのダークなんとかを組み込んだ剣みたいなもの」

 

 その言葉に千冬も真耶も首を傾げた時、会場が盛り上がりを見せる。

 

「これは―――」

「皐月の一次移行が終わったみたいだね」

 

 楓はパネルを操作すると、武装がいくつか増えているのを確認した。

 

(でもお兄ちゃんは「皐月はあくまで前座」って言ってた)

 

 皐月は前座―――という事は束が開発した機体に乗り換えるという事を予想した楓はすぐに「違う」と断じる。

 

(まぁ、お兄ちゃんの事だから……束お姉ちゃんや箒お姉ちゃんが損することはない……と思いたい)

 

 そんなことを楓が思っている間に試合が動いた。

 一次移行したことで皐月の武装がいくつか解放されたが、箒は自身が持っていた近接ブレードで戦闘を続ける。

 

「どうした一夏! 何を迷っている!?」

「……いや、俺は―――」

「剣に迷いが見えるが?」

 

 指摘されて動きを止める一夏。すぐに後ろに下がって攻撃を回避するが、どちらにして近づかなければ意味がない。そして何より―――箒が遠慮なしに近付いてくるのだ。

 

「そ、そういう箒だって迷ってるだろ!?」

「この立場だからな! 迷うというよりも呆れたりしているのは否定せん!」

「―――って言うか箒! 一次移行したんだったらそろそろ特殊能力使えよ馬鹿!!」

 

 ラウラと戦いながらも気付いた武はそんなヤジを飛ばした。

 

「「特殊能力?」」

「何でそんな疑問が飛ぶわけ!?」

 

 本気で驚く武。その隙を突こうとあがくラウラだったが、武には見えているようで攻撃をすべて防ぐか回避された。

 

「何故だ、何故当たらん!!」

「この学園に来るまでに何度か死にかけたからねぇ。その過程で直感力が上がってるんだよ。今考えたけど」

「ふざけるなぁ!!」

「仕方ないじゃん。IS界隈にそこまで強い奴いなかったんだし。これでも俺頑張ってる方だよ? 手加減の方向でだけど」

 

 煽りに煽りまくる武に対して挑発とわかっていながらも怒りを抑えられないラウラ。実際ラウラの実力も低いわけではない。むしろ全世界の代表候補生の中でも高い位置にいるぐらいだろう。だが武のレベルが異常すぎて弱く見えてしまう。

 

「大体、お前の機体に搭載されている武装が少なすぎるんだよ。文句は俺じゃなくて貧相なシステムしか作れなかった国に言いなさい」

 

 欠伸をして隙を見せる武。その様子に一夏は苛立った。

 

「ふざけんな!!」

 

 瞬時加速で箒を抜き、そのまま武に迫る一夏。武は《雪片弐型》の通る筋を見て《村正》で防ぐ。

 

「何でお前は正々堂々と戦わないんだよ!! 相手に失礼だろ!?」

「失礼?」

「ああ、そうだ」

「ふーん」

 

 武はその瞬間に目の色を変えた。そして一夏から距離を離したかと思うとラウラの目の前に現れて顔面に蹴りを食らわせる。脚部ブースターとエネルギーブレードによって破壊力を増したその蹴りはシュヴァルツェア・レーゲンのシールドエネルギーをごっそり奪った。

 急激な数値変化にダメージを感じるよりも驚いたラウラは壁に吹き飛ばされた。

 

「……え?」

「もう少し絶望させてからって思ったけど気が変わったよ。代表候補生にして軍人のラウラ・ボーデヴィッヒには死んでもらうとしよう」

 

 これは一夏は知らない事だが、武は姉である束に対しての憧れは異常なレベルになる。妥協をしたとはいえその本質は変わらず、ともかく追い付こうとしたがその中で彼は理想に出会った。

 新しくできた妹を内心「天使」と呼んで可愛がっているが、姪もそれ以上に可愛がっている。束と行動を共にしていた時に色々と教えこんだ事もあるが、一緒に街に降りた時は大体何かを買い与えていた。それほど可愛い存在を自分の自由にしないのは武には箒以上に家族に対する憧れがあった。

 箒は一夏と離れた事もそうだが、何より家族と離された事に対して姉に恨みを抱いていた。だが武は束に対してそんな感情を一切持たずに「またみんなと一緒に暮らしたい」と心のどこかで願い続けていたのだ。だがそれは同時にある呪いすらも生み出してしまう。そう。クロエの立場だ。

 クロエの存在は武にとってもプラスに働いており、実のところ束が派遣したのは間違いではない。武に常日頃から蓄積されていくストレスから解放されていることは確かであると同時に彼のストレス量はかなりマズいことになっている。それが膝枕に甘えるという結果を生み出す程なのだが、武はある感情を持ってクロエとは一定の線引きをしていた。それは「武とクロエの家族的関係=叔父と姪」だ。

 理想(家族の団欒)を求めているからこそ理想(クロエ・クロニクルに対する感情)を捨てようとしていたところに理想(ラウラ・ボーデヴィッヒ)が現れた。だが、普通に付き合うだけでは「代表候補生」と「軍人」(その国に所属している)という称号が邪魔になる。だからこそ武は最悪の事をしようと考えた。

 

「させるかぁああ!!」

 

 武がラウラに対して追撃をかけようとしたところを一夏が割って入る。だが武は笑みを浮かべて一夏を斬った。

 

「え?」

「邪魔だよ、お前」

 

 一夏の背後に回った武はウイングスラスターを切断し、さらに首に刃を滑らせてダメージを与えた。

 

「ぐっ!?」

 

 怯んだ隙にラウラの所に移動した武はこれまでの武から想像もできないほどの恐ろしさを感じさせる。

 

(こんなところで怯えて何になる!!)

 

 自らを奮起させて武に迫るラウラ。プラズマ手刀を展開して瞬時加速で接近して手刀を武の首を狙う―――が、伸ばした手は払われ、蹴り飛ばされた。

 

「がはっ!!」

「ボーデヴィッヒ!!」

「果敢にも俺に仕掛けたその度胸は褒めてやるよ。そうじゃなければ意味がない」

 

 武の今の様子は周りから見て異常すぎた。まるで獲物を見るような目をしていながら笑みを浮かべている。

 

「もっと楽しませろ。もっと足掻け。お前の培ってきたものが伊達ではない事を証明してみせろよ」

 

 武がそう言ったその時、ラウラの前に一夏と箒が現れた。

 

「って、箒!? 何で!?」

「流石にこれ以上は見ておられんのでな。助太刀させてもらう」

 

 近接特殊ブレード《椿姫(つばき)》を構えた箒。本来は敵であるはずだが一夏はただ「わかった」と答えて《雪片弐型》を構える。

 明らかな異常な状態だが教師たちは止めず、中には一人になった武を嘲笑う者もいた。

 

「やれやれ……全く」

「さっきまでの威勢はどうしたんだ?」

 

 優位になったからか挑発する一夏。だが武は笑みを見せた。

 

「妖気解放。暴れるぞ、村正」

 

 すると《村正》から黒いオーラのようなものが放出され始める。

 

「私に応えろ、《椿姫》!」

 

 箒の《椿姫》も《村正》のように赤いオーラのようなものを放つ。

 

「へぇ、よく気付いたな。名前を呼んで力を解放させるとは」

「皐月もお前が作ったのだからこれくらいは仕込んでいると思っていた」

「なるほど。では密かに渡しておいた漫画はすべて読破したと」

「手すら着けていないぞ?」

「………はぁ」

 

 心からため息を吐いた武は「まぁいいや」と言ってから仕掛ける。箒はその攻撃を防ぐと一夏が上から奇襲した。

 

「舞え!」

 

 腰部から小型独立兵装《サーヴァントシューター》が飛び出して一夏の攻撃を防ぐと箒から距離を取る武。そして笑みを浮かべて《村正》を振るうと竜の大群が降り注ぐ。

 

「何ッ!?」

「竜だと?!」

 

 だがそれは幻影だったのか姿を消した瞬間、爆風が二人を襲った。

 

「やれやれ、これだからお前は弱いんだよ」

 

 箒の前に現れた武は遠慮なく《村正》を振るう。

 

「いいや、お前だけじゃない―――世界の9割が雑魚だ!!」

 

 剣戟が形を成して箒を襲う。一夏はすぐにカバーに入ろうとするが、それよりも先に武が反応して《ヴァリアブルシューター》で牽制してくる。

 武の顔から段々と笑みがなくなっていく。

 

「もういい。つまらん」

 

 そう言うと一夏の前に移動して《村正》を振るおうとした瞬間、武は何かに気付いて距離を取ると同時に《ヴァリアブルシューター》の前部に付属しているカバーバレルを引き上げてボタンを押すと音声が流れた。

 

【End of charge, Sonic Shot】

 

 緑色の銃弾が高速で発射される。だがそれは装甲から鞭のようなものが舞って防いだ。

 

「……何だ、何だこれは……」

 

 機体の唐突な変化。操縦者であるラウラすら戸惑っており、機体の異常だと何人かは気付いた。

 

「違う、私は―――止めろぉおおおおおッ!!!」

 

 機体の装甲はやがてラウラを呑み込み、徐々に変化していく。それはやがて人の形を成し、ISを纏った女性の姿をなると雄叫びを上げた。




千冬「つまり何が言いたいんだ?」

楓「お兄ちゃんの性癖は異常」

真耶「あれ? そういう話でしたっけ?」
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