一夏と箒の乱入。それはラウラの心を傷つける事にしかならない。だが二人はそれに気付かずに、武もまた気付かずに攻撃を仕掛ける。
その光景を見ていたラウラは何故自分がここにいるのかわからなくなっていた。
(……私は強いはずだ)
千冬に鍛えられ、部隊のトップになったはずの自分。だけど今は討伐または取り込み対象だった武に膝を付かされている。決して過小評価をしていたわけではなかったが、それでも武の実力は自分が想像していたよりも遥かに上すぎた。
負けられないはずの立場でありながらあっさりと負け、挙句につい最近ISに関わり始めた素人にまで助けられる始末。
―――ならば、力を求めれば良い
どこからともなくラウラの耳に声が聞こえる。辺りを見回すがラウラの周りには誰もいない。
―――貴様にはある。すべてを覆す力が
(何のことだ。私には―――)
―――何故求めない
―――この状況を打破するべき力を
―――何ものも寄せ付けない力を
―――何故使わない
―――使え
―――使え
(負けられない)
―――そうだ
―――力は使うためにある
―――そしてその力ですべてを壊せば良い
(壊すだと?)
―――そうだ
―――見ろ、あの男を
何かに導かれてラウラは目の前の男たちに視線を向ける。その一人が気付いてこちらに銃口を向けた。咄嗟にワイヤーブレードを展開して守る図を頭に描いた瞬間、それは別の物で実行された。
(何だ、これは)
―――よくやった
「違う、私は―――」
その時、ラウラの身体に何かが這うような感触が襲う。
―――しばし眠れ。そして見せてやる
(何をするつもりだ―――)
―――見せてやる。学習させてやる。お前が持つ本来の力を
「止めろぉおおおおおッ!!!」
だがラウラの声はそのものには届かない。届くわけがなかった。
Damage Level……D.
何故ならこの状況は予定調和だから。
Mind Condition……Uplift.
何故ならこの状況は最初から決まっていたことだから。
Certification……Clear.
知らないのはすべて彼女と彼女の周りのみで
《Valkyrie Trace System》………boot.
傲慢な大人たちがすべてとっくの昔に決めていた事なのだ。
《Lorelei System》………Start
■■■
「何だ、これ……」
姿を変え、咆哮するそいつは俺は見たことがあったが、流石にアウトロー案件なので織斑はわからないだろう。
「こいつはヤバいな」
「武、知ってるのか?」
「………超ド級で面倒なのは間違いない」
だが俺にとっては好都合な展開であるのは確かだ。
「武、何なんだ、あれは―――」
箒が言葉を途中で止める。俺はその姿を見て納得していたが、織斑の様子がおかしい。
「《雪片》……!」
俺は織斑を押すと俺の方に《雪片》を振り下ろす。身をよじって回避した俺は後ろにいた箒を掴んで距離を取る。
「ふざけやがって!!」
「一夏!!」
織斑がそいつに特攻すると篠ノ之流の剣技が一つ「後絶ち」を放ち、白式のシールドエネルギーをごっそり持っていかれた。
「それがどうし―――」
「落ち着けや!」
織斑にドロップキックをかまして距離を取らせる。
「邪魔するな武! お前も―――」
「落ち着け一夏! 今は喧嘩している場合だろう!!」
「退けよ箒! 邪魔するならお前も―――」
埒が明かないので一度織斑の顔を殴ったら思いっきり飛んで行った。
「一夏!」
「とりあえず落ち着け織斑。今すぐテメェの力を奪ってやってもいいんだぞ」
そう言うと段々と落ち着きを見せる織斑。どうやら落ち着いてきたようだ。
「何だというんだ。わかるように説明してくれないとこちらとしても困る」
箒の言葉が止めとなったのか織斑は完全に落ち着いたようだ。
「あいつは……あれは千冬姉のデータだ。それは千冬姉のものだ。千冬姉だけのものなんだよ。それを………クソッ!!」
「………織斑」
「何だよ」
「その理屈で行くならさ、俺もう世界滅ぼしていい?」
箒と織斑が何を言ってんだという顔をする。
「忘れているようだから教えてやるが、そもそもインフィニット・ストラトスは宇宙進出を目的としているんだぜ? だったら今もここでこうして燻ぶっているのは筋違いだよな? 各国で開発合戦しているならとっとと宇宙に出ればって話なんだけど、お前が言っているのって」
「…………でも、それとこれとは―――」
「一緒だっての。そうしないのは俺が慈悲深いからだ。だから本来世界は俺に首を垂れて跪くべきなんだよ」
まぁ正しくは姉に、なんだがそこは敢えて言うまい。とりあえず今は織斑が落ち着けばいい。
「それだけじゃねえよ。あんな、わけわかんねえ力に振り回されているボーデヴィッヒも気に入らねえ」
「………なぁ織斑」
「今度は何?」
少し焦れる織斑に対して俺は思いっきり殴った。
「一夏!? 武、一体何をしているんだ!?」
「何にするんだよ、武!?」
「やっぱり気に入らねえわ」
俺は剥離剤を白式に着けて奪い取った。
「それって、まさか―――」
「お前何様だよ、織斑」
俺も銃姫を解除して織斑の懐に入って思いっきり殴った。
「力に振り回されているのが気に入らねえ? だったら白式すら十全に扱えねえテメェは何だ!?」
「俺は……」
「弱えよ。お前も、世界も、すべてな」
剥離剤含め、白式のコアを量子化した俺は奴に―――VTシステムに仕掛けようとした瞬間、咆哮を上げたVTシステム。織斑千冬の形を成したそいつは自体の収束に来た訓練機相手に暴れ始めた。
劣化とはいえ
「あそこはマズい!」
「箒、織斑、お前らはやられた奴らを助けろ。奴は俺が引き受ける」
「俺も行く!」
「じゃあお前は、三年前に誘拐されてから強くなったのか?」
そう言うと織斑は図星を突かれたような顔をした。
「俺はお前が誘拐されるよりも前から戦い続けた」
「……俺は」
「お前は選択を間違えた。そんな奴にあの戦いに臨む資格はない」
白式のコアを織斑に返すとVIP席に移動すると、一人の女性が既に戦闘をしていたが、負けたようだ。
「来るな! こいつは様子がおかしい!」
「それはどういう―――」
急に銃姫が解除される。自動的に戦闘形態をとるISスーツ。
『これは、私たちの展開を阻害する波が発生させられているわ』
ノヴァからの警告に俺は思わず笑みを浮かべた。
『だけど武装はロックされていない』
『そいつは面白いな』
『嫌らしいと言えるわね。通常、私たちようの武装規格を生身で扱える人間なんていない』
『だがそれは弱者の思想だ』
振り下ろされる《雪片》と相手の間に割って入った俺は弾いた。
「何!?」
「アンタ邪魔」
「え?」
鎖で後ろに投げて戦闘可能粋を拡大させる。
「俺が相手だ。ああ、別に本気出していい。後ろの雑魚よりも俺の方が楽しめるぜ」
もっとも俺は楽しむつもりは一切ないが。さて、どうやってボーデヴィッヒを出すか。
■■■
千冬は専用機持ちたちに生徒たちの避難誘導を指示した後に真耶に指揮権を渡し、武器を持ってVIPルームに移動を開始するが、生徒たちがごった返しており、思うように進めなかった。すると千冬の身体は自分の意思を無視して重力に逆らい始める。
「少し我慢して!」
逆を向いて天井を走る楓。彼女が千冬を掴んで移動をしているのだ。どういう原理か千冬にはわからなかったが、今は感謝を述べる。
「すまない」
「でも正直、向かうこと自体無駄だと思うけどね」
「何故だ」
「相手がVTシステムだから」
そう答えた楓は天井を蹴って床に着地する。VIPルームが近いからだ。
「緊急システム起動。……応答しないだと?」
「というか機械そのものが機能停止しているみたい。私のは私独自のシステムだからまだ使えるみたいだけど」
「安易にぶっ壊せないしな」
「……壊せると思える時点で相当人間を捨ててるね」
楓の言葉に一瞬呆けた千冬だったが、すぐに元に戻してどうしようかと思っていると向こうから悲鳴が上がり、ドアから凄い音がした。
「楓、この状況を打破できるものはあるか?」
「……何人か死ぬけど?」
「死なない奴で頼む」
「無理だよ。たぶん今ドアの近くに群がっているだろうから。とりあえず説得してみるけど」
楓はチューブのような物を展開してドアの隙間を潜らせてから声を発した。
「みんな、ドアから離れてください」
『助けてくれ!! 死にたくない!!』
『早く助けなさいよ!!』
一向に動く音が聞こえない楓はつまらなさそうに言った。
「もう助けなくて良いんじゃない?」
「…………助けてやってくれ」
そんな時、ドアから思いっきり叩かれる。
「五月蠅いわね! 助けたくないけど助けてやるから―――」
『え? 楓?』
「!?」
楓の顔が一瞬で青くなる。さっきの罵声がよりにもいつの間にか移動していた武に聞かれたからだ。
「ち、違うよ? 私は―――」
『楓、とりあえずドアの破壊は任せる。思ったよりも手こずりそうだ』
「わかった」
『ってことで死にたくなければさっさと離れろ!』
ドアの向こうで叫ぶ武に安堵した楓は大型の炸裂式杭打機を展開して発射した。
瓦礫が吹き飛び、VIP席への障害がなくなったことで楓は鎖を展開してそこにいる人すべてを引きずり込んだ後に鎖で道を塞いだ。
「何をしている!? まだ武が中に―――」
『ナイス楓』
「はぁ!?」
向こうからの返事に驚いた千冬は楓に鎖を解かせようとするが、楓は頑なに首を振る。
「何故鎖を解かない」
「……千冬お姉ちゃん」
「このままだと武が―――」
「大丈夫だよ。むしろ足手纏いがいなくなって清々したんじゃない?」
平然と答える楓は向こうに放っておいたカメラの映像を見せる。そこには既に戦いを終わらせようとしている武の姿があった。
武が持つ武器の一つ『ダークフェイト』。闇の運命の名を冠する漆黒の剣には干将と莫邪のような対となる剣が存在する。その名は『グロリアスパスト』と呼ばれる白い剣だ。それらは武が念じる事で形態を変化させることができ、各武器事に4つに分離したビット形態、先端をビットのように自分の意思で動かすことができる鞭形態。あらゆる攻撃を防ぐ大盾形態などが武が使用する形態だ。
そんな自在の剣を扱う武は剣形態の状態で浮かせて今では翼すら生やした偽の暮桜と渡り合っていた。
『マズいわよ、武。あなたのお気に入りのバイタルが低下してきているわ。そろそろ危険粋に達する』
『そうだな』
武はダークフェイトとグロリアスパストに突っ込ませる。振られる《雪片》を鎖で動きを止めさせ、さらに襲い掛かる装甲の鞭すらも鎖で防いで装甲に突っ込ませた。さらに武も突っ込んで二本の剣の握りを掴むと両腕を広げて装甲をえぐり取った。武はギリギリの所でラウラの身体に傷を入れずにそれを成し、すぐに顔付近の所も吹き飛ばし無理矢理引き剥がして距離を取った。
すると触手が伸びてきたので武はすぐにコアを投げた。偽の暮桜はそれに満足したか触手を引っ込めようとした瞬間に異変が起きる。
武が投げたコア。それを中心に自分が逆に吸われ始めたのだ。すべてを吸い尽くしたコアはひとりでに武のところに戻ってキャッチする。
「任務完了……てな」
すると武の身体がガタが来たのか、膝を付いた。
『ノヴァ、ボーデヴィッヒの様子は?』
『バイタルは危うい状態だけど、さっきよりはマシね。でもまだ予断は許されないわ』
『そうか。でもまぁ、楓が近くにいるから大丈夫だろう』
武が鎖の方を見ると、ちょうど楓が中に入って来たのを見て意識を手放した。流石の武も生身でISの相手は堪えたらしい。
気が付けばラウラはとても暗い場所にいた。
「私は死んだのか……?」
その質問に答える者はおらず、代わりに一人の少年が虐められる光景が見えた。
「何故抵抗しない?」
周りには女たちがいて、無様にやられる姿を笑っている。全く反撃しない少年にしばらくすると飽きたのか、撤収していく。
少年は立ち上がり、汚れを払ってからその場から去る。
―――本当に面倒だな
そう吐き捨てた少年は何事もなかったように家に帰る。だがこの時点で帰る方法は徒歩ではなく迎えもなく、空だった。
場面が変わる。顔を腫らしていた少年は家に入って家事を始める。しばらくするとドアのチャイムが鳴り、女性が現れた。
「何? まさかまた文句でも良いに来たの? だから最初から言ってるじゃん、俺に護衛は必要ないって」
玄関先で雑に対応していた少年だが、やがて相手の様子がおかしいと気付いて近づくと急に押し倒された。咄嗟に頭を上げて受け身を取ったが、それでもかなりの衝撃があったようだ。よく見ると女性の服は乱れており、胸元が見えている。
「何すんだよ、アンタ!!」
「良いから大人しくしなさい!」
「大人しくしていただろ、さっきまで」
ズボンをパンツごと降ろす女性。そして少年の物が露わになった。
「いい加減にしろよ変態!」
少年のその言葉に反応した女性は思いっきり少年の顔を殴った。
「あなたが篠ノ之束の弟なのが悪いのよ」
「……は?」
「男の癖にあの方の身内なんて虫唾が走る。多少虐められれば死ぬと思ったらしぶとく生き残ってさ。醜いったらありゃしない」
「……テメェが仕組んだ事だったのかよ」
そう言った少年に女性はまた殴った。
「口の利き方がなってないわね。まぁいいわ」
少年の竿に触れた女性。そしてそれを上下させた瞬間、少年に妙な感覚が走った。しかしそれは少年にとって嫌悪する感情で暴れ始める。
「暴れんなって言って―――」
もう一度殴ろうとしたのか、女性が動いた瞬間に思いっきり相手の下腹部を蹴った少年。モロに入ったこともあって女性はふらつき、壁にぶつかる。そして立ち上がって少年に迫ろうとした瞬間、銃が落ちて少年の方に転がった。
少年はすぐに掴んで銃口を女性に向けた瞬間、思考がクリアになる。
―――このまま撃ったらこいつを殺せる、でも
そうした時のデメリットがあまりにも大きいと予感した少年はわずかに銃口をずらし、相手の左耳を吹き飛ばした。女性が痛がるが構わず右耳も吹き飛ばす。
女性が踏みつけようとした瞬間に少年は回避して銃口を相手の頭に向ける。その時の少年の顔は瞳孔が開き、いつでも殺せるような目になっていた。その目が鋭く、すぐに引き金を引けるように指が掛けられ、銃口を向けられる。女性は逃げ出した。
少年はドアをロックした後チェーンもかけ、銃を慣れた手つきで安全装置をかけて銃をリビングのテーブルに置いた後、すぐに洗面所に駆け込んで口から汚物を吐き出す。
気持ち悪い、気持ち悪いと何度も呟く。少しして「そうだ。シャワーを」と言ってから着替えを用意してシャワーを浴びた。
少ししてテーブルで突っ伏していると、チャイムが鳴る。見ていなかったがテレビが付けっぱなしだったこともあり、面倒と思いながらもドアを開ける。
「夜分遅くすみません。警察のものですが……えっと、ご両親は? お父さんかお母さん、いないかな?」
「この家にはいません。どこかで仲良く過ごしていると信じてはいます……」
「じゃあ、君は今ここに一人で住んでいるの?」
「………ええ。でも大丈夫ですよ。自分の事は自分でできます」
少し困った顔をした二人の男性警察官。年配の方がため息を吐いてから少年に尋ねた。
「じゃあ君、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……この人の事、何かわかる?」
見せられたのは先程少年に性的暴行を働き、耳を吹き飛ばされた女性だった。
「政府の人間で、確か女権団に所属していたとか。今度は盗みでも働いて逃亡中ですか? 自分は悪くないと走りながら言ってます?」
「………先程、亡くなられたよ。頭を強く打ってね」
「……………え?」
寝耳に水だった少年は驚く。
「ただ、気になることがあってね。何故か両耳が一部無くなっていたんだ。まるで銃か何かで吹き飛ばされたような跡があってね」
「………それが直接的な原因とか?」
「……まだ原因はわからないが……ん?」
年配の警察官は何かに気付いて部屋の奥を見ようとする。流石に嫌だったのか、少年は厳しい視線を向けて「何か?」と尋ねると、
「すまないが、中に入らせてもらうよ」
「………まぁ、良いですよ」
自分の部屋の電子式鍵を閉めた少年。だが警察官の目的はそちらではなく、リビングにあった銃だった。
「これ、君の?」
「………違います」
「だよねぇ。これ、本物だ。一体どこで手に入れたのか教えてもらっても?」
少し考えた少年はやがてため息を吐いて答えた。
「あなたがさっき死んだとお姉さんから奪いました。リビング内を探せばどこかに耳の一部があるのではないでしょうか?」
平然と答えた少年はその後、「話を聞く前に着替えだけさせてもらって良いですか? 流石に寝間着で外を出歩く趣味はないので」と述べた。
少年はありのまま話した。
死んだ女性に性的暴行を加えられかけた事、抵抗して落ちた銃を拾って耳を吹き飛ばした事、逃げたのですぐに施錠した事、だが襲われた理由は知っていたが自分から名前を明かしていいのかわからなかったのでそれは政府に問い合わせて欲しいと伝えた。
だがそれが相手の警戒心を誘ってしまい、厳しい口調で問われる。
「何故理由を言えないの?」
「政府の人間に怒られたくないんですよ。とりあえず死んだ女の人が所属していたところ問い合わせてくださいよ」
何度も言われたが頑なにそう返す少年。その態度に反省の色なしと判断した女性は怒鳴った。
「いい加減にしなさい!!」
机を叩く女性に対して限界が来ていた少年は睨んだ。
「反省のなしとして起訴されたいみたいね」
「反省って何?」
「性的暴行なんて嘘ついて。どうせ子どもができたと迫られて捨てたのでしょう? 挙句耳を吹き飛ばすなんて最低ね。これだから男は―――」
その言葉に今度は少年が切れた。
「誰があんなクソババアなんかに手を出すか!! 優遇されているってだけで調子に乗るのも大概にしろや!! こちとらそういう事はキッチリと線引きどころか四角を軽く百回は厳しく閉めるほどの厳格の家の出じゃ!! あと彼女いない歴=年齢だ!!」
あまり堂々と言えることではないが、女尊男卑に染まりきろうとしていたこの社会では珍しいことではなかった。
「な、男の癖に反抗するなんて―――」
「当然だろうが!! 謂れもない事を言われて大人しくするほど大人になった覚えはねえ!! そもそもちゃんと俺が殺したって証拠がある上でのその発言だろうな!?」
すると女性は思いっきり少年を殴る。
「男の分際でよくも私に逆らったわね」
その発言がトリガーになった。少年はその場で飛んで身体を回転させて女性の頭部を蹴った。
「ちょっと、ヒートアップしすぎ―――」
男性警官が取り調べを担当していた女性が衝撃で机にぶつかったのを目撃した。すると女性は椅子を掴んで思いっきり少年に振り下ろされる。だが少年は回避して隙ができた女性を殴った。
モロに食らってふらつく女性を見た少年は笑みを浮かべ、自分がさっきまで座っていた椅子で女性を殴る。
「止めろ!!」
男性警官の声に耳を貸さずに女性を殴る少年。血を流して倒れた女性を見てさらに笑った。
「あれ? 何で……」
「誰か担架を!! そして
人だかりができたため、少年は離れると刺叉を持ってきた警察官たちに囲まれる。
「……ねぇ」
「な、何だ?」
「何であの人、動かないの?」
その質問に疑問を感じた警察官たち。その内を一人が答えた。
「何でって、当然だろう? 血を流しているんだから」
「………え? でも女って強いんでしょ? だから優遇されているんでしょ? だったらアレくらいで動かなくなるわけないじゃん」
傍から見れば何を言っているんだろうと思う言葉。だが少年はそう思う根拠があった。
「ゲームでもやっているのか?」
「頭がいかれているとしか思えないな」
「何言ってんだよ。だってISには絶対防御があるんだよ? だったらそもそも血を流す事はないし」
「……何を言っている。ISは467個しかない。そんなもの、常時展開しているわけないだろ」
「……そう、なんだ」
少年から笑みが無くなり、怒りを見せる。
「教えてほしいんだけど、ISってどれくらい成長したの? もう宇宙行った? ファ〇ネルとかドラ〇ーンとかあるの? 小型の独立兵器を自分の意思で操縦したりとかさ」
「さっきから何を―――」
「……確かまだ発表されていなかったな」
マニアらしい男がそう答えると、少年は銃を展開して壁を破壊した。
「は?」
「え? 何で?」
今度は警察側が驚く番だった。
「ああ、そっか。そうなんだ。その程度なんだ。その程度で女ってのは粋がってんだ。クソ論外だわ!!」
少年の感情が高ぶり、背部から翼が生えて周囲の壁を破壊した。
「お、おい」
「何だ、君!!」
「まさか君、男権団に―――」
「さっきの女を出せ。今すぐ!!」
「いや無理だ。彼女はそのまま入院する」
「薬の無駄だ」
そう言い切った少年。両手に剣を展開して刺叉を回転してすべて破壊して移動する。救急車に運ばれようとしているさっきの女性を見つけた瞬間、すべてを巻き込んで蹴りを入れた。
また、場面が変わった。
少年が登校している後ろから誰かが蹴りを入れた。
「おいゴミ宮。ちゃんとお姉ちゃんにISコアねだった?」
「今蹴ったの、お前」
「は? 当然じゃん。ゴミ宮なんてサンドバッグ程度の価値しかないんだから」
そう言った女生徒はコンクリートの上に倒され、抗議するよりも前に蹴り飛ばされ、渡り廊下にぶつかった。
少年は投影式キーボードを展開してシステムを奪い、屋上に飛んで移動して宣言した。
「ピンポンパンポーン。突然ですが、これよりクズ政府が施行した法律「女性優遇制度」に乗っかり、粋がった家畜共の処分を始めます。対象は教師と生徒、問いません。だってさ―――生かす意味、ないじゃん?」
そう宣言した少年―――武は校舎の中に入っていく。彼の家畜共の処分をするために。
ラウラは恐怖した。自分自身の所業を。そして―――自分が敵と定めた男の異常っぷりを。
千冬「いや、こうはならんやろ」
武「なっとるやろがい!」